九重宗佑という男①
◇◇◇
九重家は旧名家だったらしい。
死んだじいちゃんが誇らしげに話していたのを今でも覚えている。
俺の生まれた時には既に九重家は名家に含まれていなくて、九重が名家だったことを知る人も少なかった。
八つの名家との差は歴然で羨ましく疎ましく思っていた。
名家であることを鼻にかける大人がほとんどだった八家もある時を境に変わった。
八神伊弦が現れてからだ。
幼い頃から有名だったがBAKUに正式入隊してからは瞬く間に活躍し、最年少の師団長となった。
彼は不思議と周りに人が集まる人だった。
こんな俺にも平等に接してくれる、彼が人気な理由がよく分かった。
名家の人間は嫌いだったが、俺も彼だけは嫌いにはなれなかった。
八神伊弦の師団に入りたい一心で鍛錬を行うくらいには尊敬していたし、憧れでもあった。
結局、八神伊弦の師団には入れなかったが彼の妹と同期で入団した。
彼との接点はたったそれだけ。
それだけなのに彼は俺の名前を覚えていてくれた。
少しでも彼に近づきたくて訓練場に篭る日もあった。
ある時、辞令が出た。
八神伊弦が特攻部の特攻部司令官となるというもので、師団長達が入れ替わった。
新しい師団長の中には彼の妹も選ばれていた。
八神の時代になったと誰もが言っていた。
そんな時、差出人不明のメールが届いた。
[お前の家族の命は俺達が預かった。返してほしければ我らの望みを叶えよ]
馬鹿馬鹿しいと思っていたメールも実家に帰るとただの迷惑メールじゃないことを知った。
実家は荒らされていて所々血で汚れていた。
すぐ返信すると指令が送られてきた。
最初は小さな事からだった。
〇〇に接触しろ、△△に行けなど。
段々とエスカレートしていったがどれも頑張れば出来る範囲のもので、送り主はすぐ近くから見ているのではないかと考えるようになった。
そして2年前の事件の日、送り主と接触することが決まった。
送り主はKと名乗った。
Kはどこかで見たことのある人だった。
“罠は仕掛けた。これでアイツも終わりだ”と言っていた。
何を言っているのか分からなかったが、次の日明らかとなった。
八神伊弦が死んだ。
いや、多分Kが殺したのだと思う。
周りが泣いているのに俺は悲しむことさえ出来なかった。
Kに逆らえば本当に家族が殺されると背筋が凍った。
みんなが寝静まる時間、Kに呼び出され選択を迫られた。




