崩落
目を覚まし、身体を起こすと窓から光が差し込んでいた。
明るくて昼なのか夕方なのかよく分からない。
私が捕まったのが昼過ぎだったので、時間が経ったといってもせいぜい1日くらいだろうか。
見覚えのある白い部屋。
意識下の白い世界とはまた別の独特な雰囲気があった。
はっとして横を見ると結が寝ていた。
結がいるということは、私が今いるのは本部に隣接している病院。
誰かの厚意が働き、同じ病室になったのだろう。
左手には点滴が入っている。
「...ま、いっか」
邪魔な点滴を抜いてベッドを降りると少し歩きづらさのある足で結のベッドまで歩いた。
「私は起きたぞ...」
喉が渇いているからか掠れた声しか出ない。
結の頬に手を添えるとガタンという音がした。
音のした方を見ると朔夜が荷物を落とした音だった。
状況を把握できていないのか、真顔で固まっている朔夜。
朔夜はそっとしておいて床頭台の下に設置されている冷蔵庫の中を漁り、水を出して喉の渇きを癒した。
「...夢?」
「ブッ」
朔夜から搾り出しされた一言に水を吹き出しそうになるのを堪えた。
「かもね」
ペットボトルを冷蔵庫に戻しながら返事するが朔夜は何も言ってこない。
「朔夜?...え?」
まだ病室にすら足を踏み入れてない朔夜が廊下で膝から崩れ落ちた。
「え、え⁉︎ちょっ、なに⁉︎目立つから病室入って」
「はぁー!」
病室の扉を閉めて2人で正座で向き合うと大きなため息をつかれた。
「俺がどんな気持ちだったか分かる⁉︎結ちゃんみたいに目を覚まさなかったらどうしようって...」
「......」
「けど来てみたら起きて普通に動いてるし、俺無視して水飲んでるし、それ見て安心してる自分もいて...もう感情がおかしくなる」
両手で目元を隠して上を向く朔夜。
ため息が止まらない。
「ごめんね?...でもすぐ起きたでしょ?」
「はぁ?“1週間”はすぐとは言わねぇわ」
結の専用の棚にある電子時計を見た。
そこには間違いなく私が捕まった日から1週間経過した8月上旬の日付が表示されていた。
1日後だと思っていたら1週間も経っていたという衝撃が今襲ってきた。
そりゃ怒られる訳だ。
「もう疲れた...」
「心配させてごめん。朔夜、」
顔が見たいのに手が邪魔で見れない。
両手で手を繋ぎ顔を覆えないようにすると、今度は下に俯かれた。
「...ズッ...」
そのままの体勢でいると鼻を啜る音が聞こえ、私の手の甲に雫が落ちた。
手を離してティッシュを取ろうと立ち上がったら手を掴まれた。
「ティッシュ...」と言うと解放された。
元の位置に座り直し、箱から数枚のティッシュを取って朔夜の頬を流れる涙を拭いた。
温かい涙が紙を湿らせる。
涙で濡れたまつ毛が光に反射しキラキラしている。
不謹慎にも綺麗だと思った。




