脱出
◇◇◇
せっかくいい夢を見ていたのに死神のせいで邪魔されて台無しだ。
どんな夢かも忘れてしまった。
魘魔に比べればまだマシだが、敵に囲まれていることに変わりはない。
人数でも圧倒的に不利な状況。
胸元に手を伸ばすが、いつも首から掛けているはずの鍵がない。
「私の鍵は?」
男達に聞くけど返事は返ってこない。
一人ひとり遠目から観察していると、私が被らされたであろう機械に鍵が刺さっているのが見えた。
「...来い」
手を伸ばすと鍵が1人でに私の手の中に飛び込んで来た。
男達を乗り越えた先に唯一の脱出口となる扉がある。
ここからは簡単には出られそうにない。
「八神さん、さっきのって...」
「その話は後で。今から戦える?」
「すいません...剣取り上げられてます」
中邑くんの腰にあるはずの剣が見当たらない。
そりゃそうか。
ここまで完璧な手口で私達を罠にハメた人達が武器を回収しない訳がない。
どうにかしなくては...
胡蝶が頭に浮かんだが、ここで胡蝶を晒すのはリスクが高い。
かと言って、私1人で中邑くんを庇いながら戦うのも厳しい話だ。
何か方法は......あ、ひとつだけあった。
《正気か?》
死神の声が頭に響いた。
私は起きているはずなのに死神の声が聞こえる。
精神状態もいつもと変わらないはずなのに。
〈2人が脱出するにはそれしか方法ないでしょ。暴走するギリギリまで力を貸して〉
《どうなっても知らんぞ》
「...分かってる」
小さく呟くと鍵が鎌に変わり少し重くなった。
「中邑くん、私が合図したら扉に向かって一直線に走って」
「八神さ「返事」」
「はい」
深呼吸して息を整える。
信じてるよ...死神。
「行って!」
言いつけ通り走り出した中邑くん。
その前に立ち塞がる男達を鎌で薙ぎ払う。
男達もタダでは逃してくれないみたいで見たこともない武器で対抗してくる。
傷ができてもお構いなしに鎌を振り続ける。
工場を壊すことでみんなが居場所に気づいてくれるという願いも込めて。
中邑くんが無事、扉にたどり着いて中に入った。
私達が把握していた男達の人数はこの部屋の中に揃っている。
扉の向こうに敵はいないはず。
もう少し...あと少しだけ時間を稼ぐ。
どうにかして中邑くんが逃げれるだけの時間を...




