目覚め
まるで一つの物語を聞いているかのようだった。
「俺だってあなたと契約できるなら命を賭けれます!」
先頭の男を筆頭に契約を交わすために必死な男達。
「娘はそれを5つでやった」
衝撃的な言葉に男達のみならず俺も息を呑んだ。
死神と名乗った“それ”は淡々と昔話をした。
八神さんは自らの命を差し出してまで妹の命を守ろうとしたらしい。
「自分の命を差し出す5歳...」
「興味がそそられぬ訳なかろう?」
俺は5歳の時に何をしていただろうか...
なにも考えず暮らしているそこら辺にいる普通の子どもだった。
死が怖いものとしか考えたことがない、ただの少年。
八神さんの幼少期はそんなにも過酷なものだったのだろうか?
「死神、八神さんは...」
「おい小娘!そろそろ起きろ!こっちの世界は疲れて敵わん。小娘!」
死神に言葉を遮られた。
八神さんを起こそうとする死神を見て、男がクスリと笑った。
「無理ですよ。そいつは「黙れ。無理かどうかは私が決める」」
「さっさと目を覚ませ...チッ」
椅子から勢いよく立ち上がると死神は俺の前にやって来た。
「小僧、支えろ」
「え?」
それだけ言って、いきなり目の前でガクッとバランスを崩した八神さんの身体。
「え⁉︎八神さん⁉︎」
咄嗟に支えて地面に座りこむ。
「......」
返事はないが、八神さんの目から涙が流れた。
長い睫毛をフワッと揺らしながら八神さんは目を開けた。
「...八神さん?」
ゆっくりと瞬きを繰り返す八神さんに声を掛けた。
「中邑くん...無事でよかった」
俺を苗字で呼び、いつもの優しい笑顔で笑っている。
死神じゃない間違いなく八神さん本人。
「ありがとう、もう大丈夫」
八神さんは身体をゆっくり起こして立ち上がった。




