誘拐
◇◇◇
手と足が椅子に縛られていて動かせない。
「よぉ目が覚めたか?八神香織」
気色悪い笑い声が部屋に響く。
最後の記憶を思い出す。
ちょうど監察していたビルに人のいなくなるタイミングが巡って来た。
そのため監察の担当だった私と中邑くん、差し入れを持って来てくれた朔夜の3人でビルの一室に向かったところまで。
入った部屋には煙が充満していて、先頭にいた中邑くんが目の前で倒れた。
2番目にいた私も指先が段々痺れてくるのを感じたので、後ろにいた朔夜に体当たりして部屋から追い出した。
そこまでしか覚えていない。
この場に朔夜がいないことを見ると無事に逃がせたようだ。
「...あんた達、ナイトメア?」
「ああ」
顔まで気持ち悪い男越しに私と同じ状況の中邑くんが目に入った。
肩が上下に動いているのが見える。
眠っているだけのようで生きてるのを確認して安心した。
「ここはどこ?」
記憶を辿りながら男に聞く。
「ククク、その冷静さに免じて教えてやろう。ここはある廃工場の地下室だ」
さすがに位置が特定できるような有益な情報は得られないか...
「なにが目的?」
「お前は知らなくてもいいことだ。さて、ようやく準備ができた」
準備...?
頭からヘルメットのような変な物体を被せられた。
「なにこれ?」
「じゃあな、八神香織」
ビリビリとした衝撃が走り、電球が切れたように光が見えなくなってしまった。




