マーク
自動ドアを通ると受付があり、受付嬢が笑みを浮かべている。
それをスルーしてエレベーターのボタンを押した。
隊服と私服の2人がエレベーターの前で待っている姿は異様なものだろう。
何とか一言も発さず獏さんが待つ部屋へ辿り着くことができた。
総司令官室に入ったはいいものの、獏さんの圧がすごい。
事件の詳細を報告するとさらに眉間の皺が濃くなった。
私の隣にいる刑事もなかなかに強面で気合が入っているが比にならない。
これは相当怒ってらっしゃる...
私達ではなく犯人達に対して。
「で、犯人達の主張は?」
「犯人達は“ある男に依頼された”と。これを見てくれ」
獏さんの圧で喋れない私達に刑事から資料が渡された。
「依頼主の男の手の甲には、資料の刺青があったそうだ」
資料には、バツ印の目玉に4本のまつ毛をした目のマークが描かれていた。
「あの...本当にこのマークですか?」
「ああ。男に接触した全員から証言が取れてる」
質問して返ってきた刑事の言葉に迷いはなかった。
間違いない...
「“ナイトメア”と名乗る組織のマークだと調べがついた」
まさかBAKUの人間以外からその名前を聞くなんて...
結を暴走させて、伊弦を殺した元凶。
「香織の名前を知っていた理由は?」
「まだ調べ中だ。が、話した感じ犯人達は尻尾だな」
「尻尾?」
ニャーンという鳴き声と共に猫の姿が脳裏に浮かんだ。
「トカゲの尻尾。トチれば上から切られるだけの存在ってことだ。情報は出ないと思った方がいい」
トカゲ、か...
確かに、あの人達からは大きな組織に属しているような雰囲気は感じられなかった。
ブーブーブー
「部下からだ。失礼」
刑事は連絡が来たので部屋から出て行った。
宗があの場にいなかったことは朔夜から獏さんに報告したと聞いた。
「獏さん、あの作戦を」
私の考えた作戦は随分前に獏さんだけに伝えてある。
「大丈夫か?」
獏さんの目が語りかけてくる。
その作戦で大丈夫なのか、適任者は信用できるのか、と。
「大丈夫です。きっと」
朔夜によく似た目を真っ直ぐ見つめ返す。
必ずしも作戦が上手くいく保証なんてない。
しかし、これ以上疑ったままでいるのは仕事に支障が出る。
「分かった。許可しよう」
「ありがとうございます」
朔夜だけが理解できていない会話を繰り広げる中、刑事が戻って来た。
「くそ、面倒なことになった」
「なんだ?」
刑事が私の方を見て気まずそうな顔をした。
私に都合の悪いことでも起きたのだろう。
「言ってください。覚悟は出来てます」
刑事は重い口を開けた。
「裏サイトで八神香織に懸賞金が掛けられた」
「え...?」




