腕
「2人とも廊下で何してんの?」
「香織がぶつかって来たんだよ!」
「ふーん大丈夫?ん、香織?」
顔に掛かっている私の髪を誰かが掻き分けた。
「すごい汗...どうしたの?」
瞑っていた目を開けると風真の顔がある。
「3人して何騒いでるん?」
「真白来て!香織がおかしい!」
男子更衣室から出てきた真白に叫ぶ風真。
その形相にバタバタと真白が走って来るので、振動が腕に響く。
「何や...どないしてん!」
「いた...い...」
息を吐く合間に振り絞って声を出す。
「腕か?見るで」
真白にワイシャツの裾を捲られる。
「「っ...!」」
真白と風真の息を呑む音が聞こえた。
「風真、叶人呼んでき。今日...はずやから、かお...乗せて.....行く...」
あ、なんか目の前白くなって...
《人間は脆いな》
死神の声とその姿が見える。
話しかけられるけど、ものすごく眠たい。
《聞け小娘。お前は私を死神と......い。私は....》
そんな大事そうな話、なんで今する...の...
痛みを感じて目を覚ました。
腕を上げてみると包帯でぐるぐるに巻かれていた。
右手でベッドを押して身体を起こす。
ここ...医務室ではないが医療機関特有の匂いがする。
この匂いは好きじゃない。
カーテンが開けられ、白衣を着た女の人が現れた。
「あら、起きた?気分はどう?」
「大丈夫です」
「起きてすぐで悪いんだけど、あなたの状態を説明するわね。こっちどうぞ」
診察室に隣接されていたようで、ベッドから降りて椅子に座った。
デスクの上にある時計は1310と表示されている。
「ここって現実ですよね?」
「現実ですよ」
私の変な質問に先生はふふっと笑った。
「八神さんは反射性失神と言って強い痛みを受けたから倒れたの。原因はその腕ね」
問題の左腕を指された。
「捻挫ですか?」
「残念ながら骨折です」
健康だけが取り柄だった私が骨折...
折れていた骨がぶつかったことで神経を圧迫して痛みが増し、倒れたらしい。
「ちなみにどのくらいで治ります?」
「一般的に4週間から6週間。早く動きたいなら手術って手もあるけど」
4週間もギプスを巻いたままで最前戦から遠ざかる...?
「...運動は、してもいいですか?」
「もちろんダメです」
笑顔でドクターストップがかけられた。




