ツボ
◇◇◇
えっと...なんだこの状況は。
意味もわからず朔夜から謝られてる私。
中邑くんには可哀想な人を見るような目を向けられてるし。
「ハハハッ」
獏さんは堪えることもせず大声で笑った。
「獏さん...」
「すまんすまん。いつの時代にも面白いやつがいるなと思ってな。ハハ」
獏さんの笑い声だけが部屋に響いている。
笑いのツボが変なわりに笑いだすと止まらないからな...
「はぁ...朔夜と香織が付き合ってるのは薄々気づいてたよ」
「へ...」
朔夜が間抜けな顔で獏さんを見ている。
獏さんは薄く微笑むと、
「朔夜のことをよろしく頼みます」
私に頭を下げた。
そこには息子を思う父親の姿があった。
いつか獏さんが呟いていた言葉が脳裏に浮かんだ。
“私はちゃんとした父親をしてきてないからな”
そう言って、獏さんが苦笑いをしていたのを覚えている。
親子であることを隠くしてきた特殊な関係の獏さんと朔夜。
側にいる時間より離れていた時間を数える方が早いだろう。
十分、父親してるじゃないですか...
私の父よりもずっと父親の顔してますよ。
「...は、はい。こちらこそよろしくお願いします」
寧ろ、私なんかでいいんだろうか。




