真白の爆弾
◇◇◇
「お前、いつ戻った...」
私の前に立っている男によって叶人の表情が見えない。
「今さっきやね。再会のハグでもしとく?」
冗談混じりで飄々としている男にみんなが駆け寄った。
特攻部司令官補佐 壱柳真白
3年前、大厄災が起きる前に関西支部から声がかかり、今まで支援に行っていた。
帰ってきてくれてよかった。
これで人材不足はなんとかなりそうだ。
「あれ君、誰やっけ?」
「⁉︎」
みんなと楽しそうに話していた男は爆弾を落とした。
「えー、俺だけ覚えてないとか酷くないー?」
「僕、記憶力はええ方なんやけど。んー、君とは初めましてやね」
真白も獏さんのところで叩き込まれたうちの1人。
その真白が覚えてないということは、私の推理が正しかったことになる。
「白ちゃん、大丈夫?宗くんも昔から一緒だったでしょ?」
「あんた向こうに小さい頃の記憶、忘れてきたんじゃない?」
麻子と蘭が真白を問い詰める。
「...冗談やって、忘れるわけないやんか!宗くんもおちょくってかんにんな」
「なんだ冗談か〜」
顔は笑っているが、目は笑っていない宗。
真白を宗から離さなくては...
「急だけど、真白にやってもらいたいことがあるんだよね。説明するから私の部屋来て」
「ええよ。僕も向こうでのこと報告したい思うとったんや」
真白と幹部室から司令官室に向かう。
「香織、」
幹部室から少し離れると低い声で名前を呼ばれた。
「分かってる。みんなに聞こえるから部屋まで待って」
司令官室に入ると通信機を電波遮断できる箱に突っ込み、私専用の椅子に座る。
「どういうことや。なんで、あないなことになっとる?」
真白が怒るのも無理はない。
真白がいない3年の間に知らない人が、昔から一緒にいたことになってるんだから。
「ナイトメアのことは知ってるよね?」
「ああ、人の夢をいじっとる連中やな。向こうでも噂になっとったわ」
悪夢を強制的に見せたり、魘魔のレベルを変えている連中こそナイトメアだ。
「宗はナイトメアの諜報員...スパイよ」
さっきの真白の反応で疑いが確信へと変わった。
「な...!みんなは知ってるん?」
首を横に振る。
「知らないというより、記憶を上書きされてるから宗のことを信じ切ってる」
真白が頭を抱えた。
「香織はどうもないんか?」
「うん、死神が守ってくれた。既に契約してたから」
方法は分からないが、ナイトメアは眠っている人間の意識の中に潜り込み記憶を操作する。
私は死神との契約を済ませていたので、記憶操作を施されても効果はなかったのだ。
「叶人と朔夜は?さっき反応しとったやろ」
「分からない...ナイトメアのことは知ってるけど、宗のことは極秘任務だから伝えてない」
はぁ...とため息をつく真白。
「まだ聞きたいことは山程あるんやけど、結はどこにおる?」
「...「結は眠ってる」」
私じゃない誰かが答えた。
扉が開き、叶人と朔夜が司令官室に入ってきた。




