緊急会議2
「私は出張を命じた覚えはないが昨日はどこにいた、機本?」
「......申し訳ありません」
機本は謝るだけで答えは言わない。
「獏さんはどこにいたのかって聞いてんだから、ちゃんと質問に答えなよ?」
風真が機本に噛み付いた。
「なに?言えないようなことでもしてたの?」
風真の言うことは一理あるため、誰も止めることができない。
「い、家の都合で見合いに...」
観念した機本が話した内容は何ともくだらないものだった。
「くっだらな...あ、」
慌てて口を押さえたが、時すでに遅し。
機本は顔を赤く染めて私を睨み、特攻部のみんなは顔を背け肩を震わせている。
私を睨んだところでこの状況は変わらないし...
「...お前はそれを他のやつに伝えたのか?」
途中まではよかったが、最後だけ堪えきれなかった叶人。
“か”の部分だけ裏返っている。
「伝えたさ!じゃなきゃ安心して行けるわけないだろ!」
私達の態度にキレた機本。
「あんたがキレるのは違うでしょ?こっちは4人...いや、百合入れて5人もあんたらの尻拭いしてるんだけど?」
蘭が機本を一喝した。
それもそうなのだが、話が逸れてきている。
「機本以外は?なんで連携がとれてなかった?」
朔夜も怒っている...珍しいこともあるものだ。
そして、逸れていた話が少し戻った。
「......」
「そりゃできないよねー。真面目に訓練してなかったんだから」
宗が見透かしたように言った。
「科学部はさ、昼間に魘魔なんて出る訳ないって訓練を疎かにしてたんだよ」
「なにデタラメ言ってんだ!」
科学部は立ち上がり、今にも殴りかかりそうな勢い。
「科学部の友達に聞いたよ?訓練なんてこの一年やった記憶ないってさ」
「そんな訳ないだろ⁉︎」
宗の話が本当なら昨日の混乱ぶりも納得できる。
科学部が何か叫んでいるが、私の耳には入ってこない。
正面の機本も立ち上がって叫んでいる。
さっきまでの塩らしい態度のままでいればよかったのに、いつもの調子で嫌味でも言ってるんだろうな...
特攻部は冷静さはあるものの、反論してる。
「ちょっと黙ろうか...?」
私の一言でヒートアップしていた室内が一気に静かになった。
壁に掛かっている時計は1330を指している。
普段ならまだ寝ててもいい時間。
何のために本部に来てるんだろう?
科学部は反省も改善する気もなさそうだし。
クソ眼鏡の顔を拝まなくてはならないので今日は気分の悪いことばかりだ。
「獏さんどうします?科学部潰しましょうか?」
「「「⁉︎」」」
驚いている面々は置いておいて、獏さんを見る。
実際、特攻部を日中と夜間に設置した方が効率いいんじゃないかと思っている。
獏さんが許可してくれるなら、今すぐにでも私1人で科学部を潰しに行く。
「香織の考えは?」
「私は潰れたらいいと思ってますよ」
しかし、潰した場合の失業者の数を考えると現実的ではないのは分かっている。
「それが無理なら...科学部全員を特攻部体験させますかねー。腐った根性を叩き直します」
「なるほど...では1週間、それを実施しよう」
あっさりと許可が出てしまった。
提案したのは私だけど獏さんも思い切ったことをする...さすが師匠。
「全員ですか⁉︎」
驚いた機本をよそに頭の中で予定を思い浮かべる。
獏さんは本部の総司令官。
獏さんの決定を覆すことなど支部の司令官にはできない。
そうと決まれば、新人研修を早める必要がありそうだ。
支部に帰ってからも会議だな。