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潜夢士  作者: 藤咲 乃々
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ゲートの内側

ゲートから夢の中に入ったが、今のところ身体や精神に異常はない。


潜夢中と変わらない感じだ。

なんなら、いつもより鎌が軽くて動かしやすい。


「百合、聞こえる?」

『聞こえてる』

通信機の状態にも問題ない。


「本体の場所わかる?」

『そのまま進んだらいるよ』

「お、ほんとだ。発見した」

敵を倒しながら百合のナビ通り進むと元凶を発見した。


魘魔の体には魘力を全身に流すためのコアがある。

人間でいうところの心臓だ。


そのコアを破壊すれば魘力が巡らなくなり消滅する。

他にも魘魔によって形は様々だが、大体は首を切ることで倒せる。


「よっ、あれ?」

胴体を切断したはずなのに倒れない?

それどころか分裂して2体になってしまった。


《そいつは足にコアがある。足を狙え》

頭の中に死神の声が響いてくる。

眠ってる時しか聞こえないはずなのになんで?


《他人のものだが夢の中ということに変わりはないだろ?》

なるほど...というか、味方の弱点を教えていいのだろうか?


《どうせ下っ端で話すこともできん。私の楽しみはお前の夢を堪能することだからな。死なれてはかなわん》

そんな理由で...と思ったが、この状況で会話できる相手がいるのは少しありがたい。


死神に言われた通りに足にあるコアを破壊すると魘魔は消滅した。


「百合、本体倒したから特攻班下がらせて」

レベルは低かったが、分裂した上に足をピンポイントで狙わなければならなかったので集中力を使った。


《落ち着いてる場合か?ゲートを見てみろ》

「⁉︎」

見るとゲートが閉じかかっていた。


私はゲートから入ってきた実体。

ゲートから出ないと戻れないし、夢現者にもなんらかの影響が出るだろう。


「あ!」

あと一歩のところでシュっとゲートが閉じてしまった。


「うそ...」

ゲート内に取り残されてしまった。

身体が半透明に透けてきている。


まあ、私が消えることで悲しむ人より喜ぶ人の方が多いだろう。


「こんなことになるなら、朔夜の言うこと聞いておけばよかった」



◇◇◇


潜夢規定を破ったことで如月師団長から1週間の謹慎を言い渡されたため、仕方なく高校に来ている。


授業を受けていると外が騒がしい。

何事かと見てみるとゲートが開いてグラウンドに魘魔がウジャウジャと沸いていた。

教室内は大騒ぎだったが、俺は窓から身を乗り出してグラウンドを見ていた。


「おい、あそこ!誰かいるぞ!」

一緒に見ていた友達が指した方向には、私服の八神さんと男の人がいた。

2人は見たこともない武器を持っていた。


「あれって...」

「四辻師団長よ」


「へー。ってなんでいるんだよ、西宮!」

「こっちのクラスの方が見やすいのよ。それより、昼間に2人が来るなんておかしい」

たしかに、昼間は科学部の管轄のはずだ。


ジャージ姿の七尾師団長も合流すると、ゲートから出て来る魘魔よりも倒す勢いの方が強くなり優勢に見えた。


3人で背を守り合いながら戦闘をしていると思ったら八神さんは走り出し、ゲートの中に入って行ってしまった。


「...今、八神さんゲートの中入ったよな?」

「う、うん...」

なんでも教えてくれる西宮も青ざめた顔をしている。


「また誰か来たぞ!」

校門の方から猛スピードで走ってくる人影があった。


「如月師団長⁉︎」

師団長が3人も揃ったということは、相当な緊急事態だということを物語っていた。


八神さんが入ったことでゲートから出てくる魘魔の数が減り、グラウンドにいた1000体以上の魘魔は殲滅された。


3人で1000体を数分で倒したことになる。

師団長達との間には大きな差があることを実感させられた。


「中邑歩夢!ゲートが...」

西宮の言葉でゲートを見ると閉じてきていた。

師団長達も焦ってゲートに近寄る。


それもそのはず、八神さんはまだ出てきていない。


その時

『叶人離せ!』

四辻師団長の声が2階の教室まで届いてきた。


『落ち着け、お前まで行ってどうする』

如月師団長が必死に四辻師団長を止めている。


『香織!』

『落ち着けってんだろ!』

鈍い音がこっちまで聞こえてきそうなほどの頭突きを如月師団長が繰り出した。


頭突きと共に2人の声量も元に戻り、四辻師団長も落ち着きを取り戻したようだった。


七尾師団長はクラスの生徒の手を借りて体育館から大きなマットを運んできた。

勢いよく飛び出てきた時のためだろう。


その甲斐虚しく、ゲートは閉じてスッと消えてしまった。

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