女郎蜘蛛
◇◇◇
香織の淡々とした通信で3年前の事件は終わりを告げた。
北小路に近づく香織の元へ行った。
「小僧、手錠を貸せ」
「え、ああ...」
言われるがままに手錠を差し出したが、完全に死神の口調。
死神は北小路に手錠をかけた。
「おい蜘蛛女。起きろ」
気絶している北小路に話しかけるとぱちっと目が開いた。
「ハデス様...」
「貴様の本当の狙いは小娘だな」
通信機で中邑くん達も言っていて気になっていた。
北小路の狙いは死神の解放であって香織ではないはずでは?
「お前はその男と契約し八神伊弦を狙っていたが、より魘力の高い小娘を見つけた」
「香織が伊弦くんより魘力が高い...?」
「ああ。小娘の兄では2体の魘魔と契約することはできんだろうな、1体は仮契約であったとしても」
淡々と話す死神は北小路達の考えが読めるのだろう。
しかし、香織が伊弦くんよりも魘力を秘めているとは。
「どういうことだ、北小路は死神を解放して世界を作るって...」
「女郎蜘蛛は能力こそ興味深いが魘力の弱い魘魔だ。小娘の魘力を得て自分の思い通りに全てを動かす算段だったんだろう」
それも阻止されたがな、と香織の姿で肩をすくめる死神。
「私と契約していることを聞き、私を解放するとかこつけて小娘と契約をしようとした」
死神との契約を解除した香織と契約しようとしたという。
なんともずる賢い計画だ。
「残念だが、私達が契約を解除することはない。小娘が死ぬまでな」
「その娘にそう言って迫られたんですか?」
「最初からこういう契約だ。もうお前には関係のないことだがな。お前は人の手によって封印される」
話に気を取られ過ぎて周囲の状況が見えていなかった。
死神が言い終わると、特攻部と警察が突入してきた。
北小路の身柄は拘束され、すぐに女郎蜘蛛が北小路から切り離された。
教会自体は今にも崩れそうなくらいの打撃を受けていたが、第一師団の誘導のおかげで周囲の家に被害はなかった。