手帳
通信機で四辻師団長に連絡した。
俺達は手がかりを求めて部屋の中を捜索し、机の引き出しの中から一冊の手帳を見つけた。
目を見合わせてから手帳を開いた。
4月1日
入団式でいきなり師団発表があった。
他の師団には10代の人もいるらしい。
4月8日
初めて出動があった。
俺達が何もできない中、同期の八神伊弦はボスを倒していた。
5月20日
新人合宿、八神だけ別メニューの訓練をしていた。
八神は強い。
あいつみたいになれば俺も強くなれるだろうか。
北小路が入団してからの毎日の記録が記されていた。
北小路は強さを求めて同期であり、当時最年少で師団長まで登り詰めた八神伊弦に目をつけた。
最初は一種の憧れであったらしい。
どうすれば八神伊弦のようになれるのか、考え観察していた。
そして、北小路は八神伊弦に妹がいることを知った。
八神伊弦だけでなく妹まで強いときた。
憧れであった感情はやがて嫉妬へと変わり、魘魔に付け込まれ恨みになった。
恨みからは黒く濁った感情しか生まれない。
僻み、怨み、憎悪...
八神伊弦に対して憧れという眩しい感情からは真逆の感情を抱くようになった。
そんな時、ある話を耳にした。
名家と魘魔についての噂である。
魘魔と契約できると知った北小路が次に調べたのは、なぜ名家が魘魔と契約できるかについて。
潜夢士としての仕事をこなしつつ調査を続け、ひとつの結論にたどり着く。
“魘力の高いものが魘魔と契約できる”
魘力は生まれつき備わっているものであり、努力次第でどうにか出来るものではない。
名家は魘力が強い者が多いからこそ名家なのである。
強さを求める北小路はどうにかして魘魔との契約を交わしたいと思うようになった。
そして、北小路の中に仮説が生まれた。
名家の人間の血液にも魘力が含まれているのではないか、と。
結論からいうとその仮説は正しかった。
名家の遠縁にあたる人達から血液のサンプルを集め、潜夢中に実験を行ったらしい。
魘魔は血液に近づいて魘力を蓄えようとする習性を発見した。
北小路は一体の魘魔と契約した。
強い魘魔と契約するまでの間凌ぎ、作戦に必要で重要な魘魔だった。
2月14日
ついに決行だ。あいつの全てをもらう。
そして、俺は八神伊弦になる。
それ以降は見てはならないページだった。
八神伊弦の血液を手に入れた北小路が行った研究の結果。
そこで手帳の日記は終わった。
最後のページには書かれていた。
武器の製造方法と弱点、次の目標も...