現実
目を開けると、現実に戻ってきていた。
さっき見ていた映像がより鮮明で五感が加わったような感覚。
「香織!」
朔夜の声で北小路の鞭が迫っているのに気づいた。
私に向かって伸ばされた手を掴むと引き寄せられ、鞭に当たらずに済んだ。
「ありがとう。あと、お待たせ。戻ったから」
「え、香織⁉︎おかえり」
最初は驚いた表情をしたが微笑んだ朔夜。
「戻って早々悪いけど作戦とかあったりする?」
「あの武器を壊して北小路を捕える。朔夜には鞭の方を頼みたい」
ピアスとブレスレットを外してポケットに収めて伸びをする。
「北小路は?」
「...あれは私が倒さなきゃいけない相手」
北小路を睨みつける。
「了解、」
普通の人なら理由を尋ねてくるはずだ。
しかし、それが当たり前であるかのようにスルーをして返事をする朔夜に私が戸惑う。
「理由とか聞かないの?」
「言いたくないから言わないんでしょ。なら今は聞かない」
この先も理由は言わないかもしれないのに、私が言うと信じきっている顔だ。
私の理解者過ぎて笑えてくる。
「...ありがとう」
「ん、何か言った?」
「なんでもない。とりあえず無事に帰るよ」
2人で武器を構え、飛び出した。
◇◇◇
一方、その頃
「あったぞ」
「これが北小路の家...」
西宮と特攻部の寮とは別のBAKU所有のアパートにいた。
四辻師団長が教会に突入してから作戦変更が言い渡された。
八神さんが相手をしている“北小路”の家を俺と西宮の2人で探ってくること。
教会にいた北小路という男は今まで見てきたどの敵よりもヤバいと感じた。
本人よりもその武器に...
八神さんと死神とは違って冷や汗が出るほどの恐ろしさと、本能で危機感を覚えるほどの禍々しさ。
「西宮、四辻師団長に言われたこと覚えてるな?」
「うん」
危険だと感じたら迷わず逃げる。
これを約束させられてここに来ている。
「入るぞ」
一見普通のアパートの一室だが北小路が生活しているという事実があるため緊張感が走る。
2人で武器を構えて玄関の鍵を開けた。
北小路の部屋はシンプルなものだった。
しかし、1つの部屋だけは異質な空気に包まれていた。