充電
◇◇◇
死神が私を眠らせてから随分時間が経った気がする。
目の前に私以外誰もいない白い世界が広がっていて、底をついた魘力が戻っている感じがする。
白い世界にいるのが何よりの証拠だ。
〈外はどうなってるかな...〉
《そう焦るな。頃合いを見て交代する》
ポツリと呟いた言葉に死神の返答が白い世界に響いている。
スピーカーを通して聴いているみたいだ。
普段とは逆の立場にあるので私の声もこんな風に聞こえているのだろう。
〈頃合いっていつ頃?〉
《小娘の魘力が半分まで戻ってからだ。今は4割といったところだろう》
割とすぐに変われそうではあるが...
何せ暇である。
《と言っても小娘のことだ、大人しく待っているのも無理な話だろう。私の普段見ている景色を見せてやろう》
さすが死神。
長年一緒なだけあって何もかもお見通しという訳だ。
目の前に小さいテレビのような画面が現れた。
〈朔夜...〉
見えるのは私の鎌と北小路と戦う朔夜の姿。
死神の目を通して見える世界。
《しかと見ておけ。あと少しで小娘が肌身で感じる世界だ》
〈分かってる〉
やっぱりカギは北小路の持っている鞭。
スピードもありリーチが長い分近寄れない。
それはさておき、朔夜の方には何が起こっているんだろう。
刀が光を放っているように見えるのは私だけなのか?
〈朔夜になにかあった?〉
《白虎との繋がりを強くさせた》
繋がりを強くさせた?
よく分からないが死神が朔夜と白虎に何かしたということはわかった。
《小僧の剣がなければあの鞭は壊せないだろうな》
朔夜がいればあの武器は壊せると...
真っ黒なオーラの鞭と光を放つ剣。
両極端な2つ。
〈光と闇...〉
《光のあるところに影ができ、そこから闇が生まれる。だが、強い光は影すら生まぬ》
朔夜の力であの鞭を消滅させるということか。
映像では鞭が朔夜の攻撃を避けてるようにも見える。
死神の言う通り朔夜ならあの鞭を壊せるかもしれない。
〈で、私は朔夜のサポートをすればいいってこと?〉
そろそろ私の魘力も5割に満ちるくらいだろうと踏んで交代してからの行動を確認する。
《そうだ、私はあの武器を壊せたらそれでいい。男に手を出すなと言ったのは小娘だろう?》
〈そうでした、そうでした。そろそろいい頃合いなんじゃない?〉
《無駄に勘のいいやつだ。そやつにも仇を取る機会をくれてやれ》
そやつ?
音もなく隣に胡蝶が現れて何か言いたげに私を見つめている。
〈そういうことか...大丈夫、分かってる〉
胡蝶に向かって頷いた。
力は絶対借りる...よ。
目の前の胡蝶の顔が歪み意識が遠のいた。