同じ顔
本部の隣には併設されている病院がある。
BAKUの隊員やその家族も診てくれる化野病院。
その廊下を1人で歩く。
最上階の一番奥にある病室に私とよく似た顔の少女が静かに眠っている。
「結、」
名前を呼んだところで彼女が反応することはない。
「早く起きなさいよ...」
私の言葉だけが病室に虚しく響いた。
「来、てたのか」
扉が開いたのにも気づかず、私は結を見つめていた。
入り口に立つクソな眼鏡が私達を見ている。
「なんでいるの?職務放棄?」
「休みをもらった」
「あっそ...」
「誕生日おめでとう...香織、結」
最悪だ。
よりによってこいつに最初に祝われた。
「今更兄貴ヅラしないで。私も結もあんたのことを兄と思ったことは一度もない。私達の兄は伊弦だけ」
淡々と棘のある言葉を吐く。
罪悪感も湧くことを知らない。
「私が司令官になった途端、手のひら返し?ほんとクソだよね」
「そんなつもりじゃ...」
「じゃあ、あんたは私達に何をしてくれた?」
「......」
言える訳ない。
何もしてこなかったんだから。
「今すぐここから出て行って。もう私達に近づかないで」
クソ眼鏡は病室から出ていった。
広くて殺風景な病室。
窓際に置かれた花瓶だけが異物に見える。
「結はお祝いしてもらったのか...よかった」
最悪な思いをするのは私だけでいい。
「また来るね」
私も病室から出て特攻支部へ向かった。