相棒
柱の影に降ろされ、朔夜も隣に座ってきた。
「ここで戦闘してるって通報が入ったんだよ。叶人の代わりに俺が第一師団と一緒に来た」
今の叶人は通常通りの任務が出来ないと真白が判断したのだろう。
「話は分かった。私は大丈夫だから今すぐここから離れて」
北小路の狙いは私だ。
私が一緒にいたら朔夜まで被害を受けかねない。
「この状況で“はい、分かりました”ってなると思う?」
もし私が逆の立場でも多分同じことを言う。
「私ね、朔夜が思ってる以上に朔夜のことを大切に思ってるんだ」
こんな状況で私は何を言ってるんだろう。
幸いにも砂埃のおかげで北小路の攻撃は止んでいる。
それも時間の問題。
視界が良くなれば止まない攻撃の嵐がくる。
「正直、今の北小路に私も勝てるか分からない」
寧ろ、押されている状況で朔夜を守りきる自信はない。
私と北小路の戦いに朔夜を巻き込みたくない。
「たしかに俺は香織ほど強くない...でも守ってもらうほど弱くもない。俺は香織の隣で一緒に戦いたい」
もう目だけでで分かる、この目は絶対帰らないって目だ。
「私は、もう大切な人を失いたくないんだよ」
朔夜を見ていたら少しだけ涙が出そうになり、上を向いて堪える。
「誰かを失うくらいなら私が傷つく方が...」
目が霞んで正面にいるはずの朔夜の顔がはっきり見えない。
幻覚まで見え始めた。
死神が目の前に見えるようになった。
《魘力の使い過ぎだ、選べ小娘。私と交代して魘力を回復させるか、このまま眠り死ぬか》
あいつは私が倒す、手を出さないで。
交代の意味も分からないし。
《分かっている。だから魘力を回復させる間だけ代わってやろうと言っておる》
死神に任せるなんてリスクの高いことしたくないけど、目が覚める前に死んでましたっていうのは嫌だ。
色々考えてるけれど眠たくて頭も働かない。
仕方ないか...
「死神...たの...だ」
私の身体と北小路のことは任せた。
朔夜を守って...私の相棒。