黒い荊
◇◇◇
「お前を倒せば死神に会えるんだったな!」
そう言った途端、廃工場で男達が使ってた武器を出し北小路が攻撃してきた。
黒い荊みたいに棘の付いている鞭。
男達の攻撃より断然速く、ギリギリのところでよける。
ひと息つく暇もなく次の攻撃が迫ってくる。
鎌で鞭を切り落とすが、生き物の様に再生し元の形に戻った。
気味が悪い...
再生するのは魘魔の能力と結論付ければ納得がいく。
納得いかないのは攻撃の力。
最初の攻撃は私がよけたので柱に当たった。
石造りの硬そうな柱がたった一度の攻撃で破壊され、瓦礫の山となった。
鋭い刃物ならまだ分かるが棘のついた鞭で、だ。
私が北小路を甘く見過ぎていた...?
いや、そんなはずない。
今までにあった歴代のランキング内に北小路の名は1つも入っていなかった。
これほどの力があるなら実力主義だった伊弦が北小路をほっとく訳がない。
「その武器なに?」
「これは俺達が作った最新の武器だよ。誰でも簡単に強くなれるっていうな!」
攻撃の手は緩まない、鞭にも極力触れたくない。
ナイトメアで作った時点で他にもなにか隠されてそうだし、嫌な感じのオーラも感じる。
《小娘、早くあれを壊せ。不愉快だ》
珍しく死神の機嫌が悪い。
それに今再生すると知ったのにどうやって壊せと...
《あやつに聞いてみろ》
「どれほどの魘魔を犠牲にした?」
死神に言われるがまま言った言葉。
自分で口に出してから意味を理解した。
「何体だったかな?100は超えてるかもな」
北小路の持っている鞭は魘魔の怨念で出来たもの。
「でもさ、君達とやってる事は変わんねぇよな。悪夢を見せる魘魔を倒すわけだろ?」
「それは...」
私が喋り出した瞬間に北小路が腕を振った。
攻撃が来ると分かったのに反応が少し遅れる。
鞭が私に届く前に北小路との間に落雷が落ちて身体が浮いた。
北小路との距離が開く。
雷が落ちたという事は私を助けた人物は決まっている。
今ここに1番来てほしくなかった人。
「こんなとこで何してんだ、香織」
そのまま言葉を返してやりたい。
今までの現場ならまだよかった。
私の力で何とかなる魘魔ばかりだったから。
でも今回はそうも言ってられない。
それに醜い私を見られたくなかった...
「朔夜、なんでここに来たの?」