飛び込み
「飛ぶってどこから⁉︎」
「屋上から。この前も朔夜と叶人抱えて飛んだから大丈夫だと思う」
あの時は胡蝶の力を借りたとはいえ、大男2人を抱えて飛んだので本当に腕が千切れるかと思った。
それに比べて今回は宗佑1人だけ。
胡蝶と死神の力を駆使すればいける。
ただ今回の難所は宗佑が深手を負っていて、意識が遠のき始めていること。
身体を動かすことで悪化する可能性もある。
「今、一番優先すべきなのは怪我人を一秒でも早く病院に連れて行くこと」
そして、ここは寮の屋上。
救急隊がエレベーターで上がってきたとしてもそこからは階段がある。
『だそうよ。礼央、下で救急隊待機させといて』
蘭が通信機で礼央に指示を出す。
「香織のことだからどうせ止めても飛ぶんでしょ?」
「一度決めたら折れないからね〜」
頑固ということが言いたいのだろうか。
「2人とも、それ褒めてないよね」
「褒めてはないわね」
「ふふ」
否定もしない、と。
「でも「信じてる」」
「そりゃどうも。信じるついでに降りる時の周囲の警戒お願いしてもいい?」
無防備な状態で降りるから狙われても当たらないことを祈るしかできないのだ。
「「了解〜」」
鎌を出して宗佑の前にしゃがみ込む。
〈力を貸して〉
死神のように胡蝶の声は起きてる状態では聞こえない。
しかし、宗佑と肩を組んでも軽々と支えることができるので胡蝶が力を貸してくれていることを実感した。
柵の上に足を掛け、夜の街を見下ろす。
「宗佑、聞こえてたと思うけど飛ぶから」
「う、ん...」
返事を聞くと重力に身を預けた。
徐々に鎌を握る手に力を込める。
重力とは反対に浮力が働きブレーキの役割をしてくれる。
宗佑の身体に負担がかからないように細心の注意を払い、地面に足をつけた。