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巫女 早瀬 五話



 巫女の仕事は決して無くならない。何処かで誰かが怪我をする限り必ず必要とされるのが巫女だから。毎日精進することが欠かせない……いや、欠かしてはならない。里の人達が巫女に頭を下げるのは()()()()()()()()()、という事に気付いたのは……私が女になったからだろうか。


 大人になって少しは周りが見えてきたあの頃。次郎丸との時間はとても少なくて。でも毎日欠かさず私の髪を手入れしてくれていたあの頃。


 次郎丸が里に来てからおよそ一年が経った辺りの事。


 次郎丸は突如として仮面を被って私の前に現れた。


 ……次郎丸が頭おかしいのは何となく知っていた。でもいきなり仮面は無いと思った。鼻の上にかけて顔の上半分を覆う木の仮面は鬼を模していた。


 鼻から額まで隠すその仮面は目の部分だけ穴が空いていて次郎丸の宝石みたいな紫の瞳が覗いていた。頬から上に渡り、顔の半分は隠せる黄色い……というか黄土色の仮面は、ちゃんと鬼っぽく角も生えてて……こいつは一体何をしてるのだろうかと頭の調子を疑った。


 しかもまさかの手作りと聞いて、なんて器用なんだろうと思った私。十七の夏の終わり。


 知れば知るほどに、一緒に時間を過ごすほどに次郎丸の異常さが鈍感な私にもようやく分かりつつあった。


 この時の私は少し冷静になっていたのだろう。


 仮面を作る暇なんて無いのに。次郎丸の顔にぴたりと合う見事な鬼の仮面に次郎丸が遠い存在に感じた……のも僅かの時間だけだった。


 本人曰く、最近の女衆の視線が怖いから急いで仮面を作って被った……との事で私は納得した。


 納得するような問題を私も感じていたのだから。


 その問題とは……ここに来た時の次郎丸はもう何処にも居ない。あの頃の可愛い次郎丸は……もう居なくなってしまった。


 という大問題だった。


 今の私の前に居るのは……私よりも僅かに背の低い、仮面を被った精悍な男の子なのだから。


 たったの一年で優に頭ひとつ分は身長を伸ばした次郎丸。体も大きくなって……もう可愛いなんて言えないくらいになってしまった。本当に、にょきにょきと大きくなったのだ。


 美少年というか美少女というか。ものすごく中性的で見とれてしまうような魔性の男の子になってしまったのだ。慣れてる私や姫様でも次郎丸と対面してその顔を見てしまうと……呼吸を忘れるほど魅入られてしまうことが多々あった。


 男らしくもあり女らしさも感じさせる次郎丸の顔は……確かに危険物だな、と私も思っていた。でも隠すのは勿体無いなぁ、とも脳裏によぎったが……他の女に見せるのは嫌だなと感じたのは若気の至りだったのだろう。つまり嫉妬だ。


 今ならむしろ自慢できる。私の好きな人はこんなに美人なんだと。でもこの時はそこまで吹っ切れていなかったから……素直に仮面を肯定してしまった気がする。


 ……正直仮面しててもあんまり変わらないように見えていたし。顔半分を隠したぐらいでなんとか出来ると本気で思っていたのか今でも疑問だ。むしろ格好良さは引き立っていた。次郎丸は、そこんところでお馬鹿さんだった。


 でも見とれる回数は減ったから効果は少しでもあったのかも知れない。やたらと頑丈の仮面で、まるで顔から生えてるようで私と姫様が力を合わせても引っぺがせなかった。あのときの次郎丸の悲鳴はすごかった。格好良かったから剥がしたくなったのだ。後悔はしていない。


 ……まぁ、そんな感じで仮面の次郎丸になったけれど、次郎丸が次郎丸であることに変わりは無かった。でもこの辺りから、ふとした時に次郎丸に『男』を感じるようになった。細くてぷにぷにしていた腕には筋肉がうっすらと見えるようになり、少年特有の匂いが変わった気がした。


 姫様と一晩中次郎丸について語り合ったからそれは間違い無いと思う。この時には既に私と姫様はそういう仲になっていた。いわゆる恋敵というか……同盟に近かったと思う。


 日中は姫様が次郎丸の側にいて……夜は私が修行でボコボコにされた次郎丸を治療する。一緒に居る時間は負けてるけど、濃さでは私の勝ちだった。治療でもないと次郎丸は触らせてくれなかったから。


 もっと触って欲しかった。でも我慢した。朝の櫛梳る一時でもドキドキするようになっていたから……もし次郎丸に触られたら……私は壊れてしまったかも知れない。


 ドキドキを隠す為にわざと素っ気ない態度になった。もっと素直になれていたら……あなたは……どんな顔をしていたのかな。劣情に抗う姿は……いつも必死で。


 ……私はいつでも良かったんだよ? 絶対に拒まなかった……かも。


 だって本当に好きだったから。ずっと触れていて欲しかったから。あなたの声を聞いていたかった。あなたの体温をもっと感じたかった。


 ……だから握りこぶしから血が滴るくらいに我慢なんてしなくて良かったのに。その傷を治した私が微妙な顔をしていたの覚えてる?


 仮面を着けてても分かるあなたの慌てた顔。私の手があなたの体に触れる度に私のドキドキがあなたに伝わる気がしてた。この気持ちが……鼓動と共に伝わってくれるって。


 私には姫様みたいな方法は無理だったから。あんな風に気持ちを直にぶつけるなんて……恥ずかしくて出来なかった。だからせめて触れているところから伝わって欲しいって思ってた。私がどれだけあなたが好きだって事が。

 

 ……実際のところ、この当時は……そこまでじゃなかったけど。


 なんかいいな……ぐらいでドキドキというか……恋の始まりというか。弟が男の子になって……私が女の子であることを自覚するぐらいで収まっていた気がする。


 姫様と張り合っていた面も大きいかもしれない。自分の玩具を取られてたまるかという子供っぽい感情……今でもくすぐったくなるような……あの甘酸っぱい感覚。


 私の淡い恋心が本気の焔に変わったのは……いつだったか。淡い想いも全て燃え上がり、この身を焦がす焔と化したのはいつ……いや、何が原因だったのか。

 

 それは……きっとあの時なのだろう。本気であの男の子を好きになった瞬間は。




 ナマコオンライン……ではなくて輪廻カンカンのあらすじっ!


 

 神魔大戦とは?


 双子の神様が、たい焼きの尻尾と頭の取り合いで起きた大戦争。喧嘩の理由ってそんなものですよ。


 ショコラちゃんが思春期を迎えた頃の世界は滅びに瀕していました。神魔大戦の煽りが世界を包み込んであっという間に蹂躙されていったのです。それまでの世界は人族が繁栄を謳歌していた魔法技術の黄金期でもあったのです。


 黄金期だけど宇宙には出てません。精々近代に準ずる程度の魔法科学の発展です。宇宙には行ってませんけど、魔界や地獄巡りは普通にある世界です。巨大な浮遊大陸もこの世界にありましたが、魔物の群れにより大陸は破壊され地に落ちました。


 人間の住んでいた場所の多くは破壊され、街や国が幾つも消えていきました。人口が大体一割になるくらいでしょうか。ものすごい破壊が世界規模で起こったのです。

 

 確かに優れた魔法や技術がありました。しかし魔物の強さが桁違いだったのです。そう、この世界の人間は生まれながらの弱者なのです。


 これはまずい! と神々は思いました。このままでは人間が死に絶えると。そこで神々は一計を案じました。


 それが『英雄』作戦でした。


 神々が力を持つ人間に更なる超常の力を与えて人を遥かに越えた超人とし『英雄』とする。


 まぁドーピングです。


 神々は神々でルールに沿って動いています。喧嘩している双子の神をどうにかするのが一番早いのですが、そこは大人の事情って奴です。


 神々は互いに干渉出来ないというルールがある。という事で先に進みます。オーライ?


 こうして神々はようやく駒を手に入れました。性格はともかくとして、実力者である人間が百名。元々力を持つ者が更に神の力を得て超人となったもの、それが英雄達です。


 分かりやすく数字に置き換えますと、一般人の強さを1とすると、英雄は100を越えます。みんな大好きゴブリンちゃんは大体5です。ゴブリンですからっ!


 げふん!


 そして戦争を終わらせるために一大作戦が決行される事になりました。


 ぶっちゃけますが、天使と悪魔のお偉いさん、その暗殺です。


 数少ない戦争終結の条件、それが両陣営の主導者が敗北する事、だったのです。どちらかのトップが負けても戦争が続く時点で双子の神様がどれだけ戦争したかったのかが分かりますね。


 そして英雄達は悪魔の主導者『獣の王』と天使の主導者『……あ、名前考えてねぇや』の暗殺に乗り出したのでした。


 次回に続く。




 ゴブリンちゃん。


 本編に出てきたかなぁ? スライムさんは出てきたんですよ? 


 ……あ、幼馴染みが撲殺してます。幼児というか乳児の頃に石で撲殺してました。主人公はそれにドン引きしてます。


 ゴブリンは話が通じないという設定です。念話も通じない種族なんです。異論は認めん。認めぬぞ。完全に忘れてたけどね。




 双子の神様


 実はこの物語のラスボス。


 ちなみに輪廻カンカン2のラスボスは主人公のお母さんでした。お母さんの芸名は『ソイ・大豆・ソイソイ』です。

 


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