1話 救ってほしい?まずは、話をしよう。
気づけば見知らぬ場所にいた。歓喜する者達がいた。……彼等、彼女等の一部が感動で抱き合ったりするために手放し、大理石の様な堅い床で音を立てたそれは、殺傷が可能、否、殺傷を目的として作られた本物の武器だった。
「この国を救ってください」
「OK!」
「……」
「止めないの?」
「観た感じ、帰る手段が無いんだよなぁ……。臭いと思ったら魔物の死体か何かを利用してこの召喚に必要な魔力を補っていたようだし、すぐに帰る手段はまずないと言っていい。なら適当に取り入って調べる方がいい」
「「……なるほど」」
「このあたり度外視すれば色々声を大にして言いたいんだがな」
「「やめて、喧嘩始まる未来しか見えないから」」
「デースーヨーネー」
「だがこれだけは声を大にして言いたい、「情報少ない、判断に足る材料がない。」と」
「「解る」」
「そうですか……、そうですねごもっともな意見です、立ち話もなんでしょう、場所を移しましょう」
「…………やっぱり悪意がない……根は良い人なのか?」
「だといいねぇ」
移動開始……の前に、召喚された連中の足元には荷物があった、移動しようと足を動かした結果蹴ってしまった人が多発。少しだけ確認に時間をとることとなった。
「……アタッシュケースが2つ、ショットガンとライフルで(ケース?バック?が)2つ、日用品や着替えの入った大きめのスーツケースと肩下げ鞄が1つづつ、影で使う武装の入った大きめの肩下げのカバンが1つ」
「「んな物騒な……!」ちなみにアタッシュケースの中身は?」
「拳銃と弾薬に手榴弾。雑な扱いをすると爆発する」
「お前なんでそんなものを」
「しーごーとーがーら。いっても信じないだろうから言おう、暗殺、潜入、諜報その他もろもろが私の仕事だ、国家ぐるみでな」
「信じられる訳n」
「信じる必要性なし。取り上げるとかいうなら殺すね」
「ゆr」
「まぁまぁまぁまぁ、今は殺し合いを強要されてるかもしれないわけだし?戦える要素があるだけいいだろ?」
「情報が少なすぎて何すればいのかわかんないけどね。直ぐ調子に乗るわけじゃない夜宵君ならセーフ……「かな?どうだろ?」」
「信用無いねぇ」
「お前みたいn」
「「夜宵が暴力的な行動に出るのは攻撃的な敵対要素があるときだよ、お前とかな」」
「俺が枯れ葉、三上が火、篠田弟が油かね? で、お前ら確認終わったのか?」
「終わってるよ」
「ちょっと待って」
「やること先にやろうな」
「はーい(誰のせいだと……)」
「俺かね?」
「心を読まれている!!?」
移動が始まる直前に、さらっと刀、拳銃、呪符、ウエストポーチをバックからだし装備していく夜宵であった。
移動中、廊下の一部の壁が無く、軒下?の様にになっている場所から庭が見える場所を通る。
移動中、ほぼ全員の転移勢が現地人?と談笑する中、わりかし小声で暦が夜宵に話しかける。
「なぁ夜宵」
「なんだ?」
「異世界転移や転生物だと言語関係がデフォになりやすいけど、僕たちにはついているのか?」
「……あー…………、有るかどうかはわからんが、日本語喋ってるっポイな。口の動きが日本人、日本語、聞こえた内容と一致する」
「……なるほど?」
―カサカサ。葉の揺れる音がなる。
「どうしたの?」
「風はふ~いているぅ?」
「否」
「つまりは何かが居る。敵じゃないといいんだけど……」
信用する要素ゼロ、地理をはじめとし、この世界を基準としたあらゆる知識がゼロ。そういう状況下でさらに自分自身の小ささを理解している3人にとっては十分警戒する内容である。伏兵とか、奇襲とか、襲撃とか。
―ガサガサ。音は強く、近くなる。来る! そう確信した直後に姿を現したものは……。
コテッ。
「「は?」」
「あら可愛い!」
頭に赤い花の髪飾りに、緑色の腰から膨らんだようなドレスを身にまとっているかのような姿の、人の腰ほどの大きさをし、人に近い姿をした何かだった。森から出てきてすぐこけているのがかわいらしい要因の一つなのかも……?
「だ~いj」
「待て」「ステイ」「ぐぇー」
手を差し出すために近づこうとしたハクノを、襟首を掴んで2人が止める。それと同時に、白銀の体毛と、黒い刃の様なアホ毛で片目の隠れた狼と、遅れて桃色の美しい猫が現れる。猫は奥へ行けと頭で押すが、狼は人を警戒し、来るなと自身を壁にしながら威嚇をする。
「ドライディアとガーディアンウルフにフェリグルか」
「こっちから動かなきゃ、こっちには 何もしないだろうさ」
皆が皆、というほどではないが、そちらを見ており、武器を構える者も居る。そして、見ている者達の視界の奥に、赤く光る何かが―。
「火?」
(攻撃か……)
「まずい!」
(チッ!)
「おいッ!?」
その光をドライディアへの攻撃と直感で理解したハクノは飛び出す。その庭は騎士たちの修練に使われる場所でもあり、結構な広さがあるのだが、それでも、決して足が速いわけではないハクノの端から端へのダッシュが間に合ったのは、所謂主人公補正というのだろう。これで、ドライディア達は守られ、ハクノが炎に包まれる。
―訳でもなく。光の正体にして攻撃であった火の玉は、二つの半球状の物に増え、ハクノの左右を通過し、量子化とかそんなイメージで痕を残さずその姿を消す。
「熱くない……」
そこ、ハクノの前に居たのは、刀を片手に握る夜宵その人であった。
「……夜宵君?」
「いい加減借金返せやオラァ」
「ア痛ァ!?蹴ったァ!?HERO感が台無しだよ!?そして借金はしばらく待ってくださいお願いしますぅ!!」
「……はぁ、下がってろ」
「OK!」
「お前が死んだら、借金とか仕事のストレス発散の八つ当たりで三上と篠田弟が死ぬ」
「やめよう!!」
「「「なんでさ!」」」
そんなこんなやってるうちにも氷、水、土、の弾や、緑、黒、白の光弾が放たれるが、それら全てを切り捨て、蹴り飛ばしていく。夜宵の身に着けている刃と靴には―。
「深海?って感じかな?黒にも近い深い青系の魔力」
「個人的には、光刺さぬ森を包む霧 ってイメージかな?」
そんな魔力が纏われていた。
加勢のつもりか、何人かの騎士と転移勢が夜宵の方に近寄る。
「敵の場所は?」
「森の手入れ碌にできてないせいで全く見えん。どんな判断をしたら雑草もろくに生えない森が生まれるんだか。いや、斜面だし……ここ、山の中腹か」
次々とくる攻撃を視線を外したまま避け、切り裂き、捌きながら周囲を見渡す。後ろにいた足手まといに回避した攻撃が直撃する中夜宵が見た景色は、攻撃の来る方向は下り、城の後ろに山があった……それだけ。決めつけるには情報量が少ないが、夜宵は仮説を立てる程度で考える。裏や偽りを考える癖がある。
何者かからの攻撃が止み、腕にしがみついてくる三上を、夜宵が敵がいるであろう方へ投げ飛ばし、ギャーギャー騒いでいると、猿とゴリラのものらしき鳴き声が聞こえてくる。
「……嫌な予感」
「増援要請か?……気配が集まってくる」
「なんでわかるんだろぅ?」
「その子の言う通りだ。下がっているといい」
「!?……なんでわかるんだろう……?」
「お気遣いどうも。だが、自分の戦闘力がこの世界基準で通用するのか知りたい気もあるので無視させてもらう。お前らは離れてた方がいいんじゃねぇの?」
「「「「は~い」」」」
「自分1人だけが特別だとでも思ってんの?」
「NOだ」
「この!俺が!最強だ!」
「ない」
「ないな」
「ないね」
「うるsグアァ!?」
自称強者、早速頭に石を投げられ出血、地面を転がり始める。それよりも前に堅いの物同士がぶつかる音から夜宵は屋根からの強襲も察知、暦、ハクノとのアイコンタクトにより、戦わない個体は屋根からの攻撃を受けづらいはず……の屋根の下へと避難していた。
「「あぁあ、言わんこっちゃない」」
「お前ら爺臭いぞ」
回避と受け流しをメインに、元の世界で小学生時代から使い続けている、田舎の知り合い独学の殺傷特化体術で心臓、脳を一撃(受け流しこみで2、3回に1回)で破壊し、着実に数を減らしていく夜宵。一方そのころ、5分も経たないうちに、戦闘に参加していた転移勢は壊滅状態に陥っていた。と言っても、軽いダメージを受けただけで過剰に反応して転がってる程度なのだ。フルダイブのVRゲームで痛覚OFFで戦った事は有れど、現実で殺し合いを経験していない連中では、所詮この程度である。
式上達と共に屋根の下に逃げたドライディアを狙っているのか、襲い掛かる猿共の間に夜宵が割り込み、随分と攻撃的な盾になり、複数の猿が一度に来ようと即座に戦闘不能に変え、ゴリラの謎光弾も、猿を盾にして無力化していく。
「こーれはナイト」
「強いな、さすが忍者強い」
「彼奴の技能どうなってんすかね……」
「拳、キック、マーシャルアーツ、組みつき、オカルト、料理、クトゥルフ神話、それから……」
「投擲、拳銃、ライフル、ショットガン、隠れる、忍び歩き、応急手当、医学、薬学、心理学、変装、跳躍、追跡、……これぐらいは知ってる」
「ショットガン、ライフルは半分以下だろうけどぉ、多いなぁ……自分の時間削ってる人は違う。さすが、スニーキングミッションも経験済みだし、忍び歩きとコンピューターとかもありそう」
「あ、あと日本刀」
「鎖鎌」
「登攀」
「TRPG準拠で人を測るとは余裕だねぇ非戦闘組」
「「「オマエモナー(強い)」」」
居合もあるぞ……じゃなくて。
「どうした?」
「「?」」
おう童貞、仕事せえや。
「へいへい。喜べ、森羅万象を手中に収めてなお、自らとその周囲の平穏のみを求める支配者からの施しである。これを使えば、直ぐに力を得られるだろう」
「副作用が無いとは言っていない。何しに来たし童貞」
「仕事。うちの上司を居るだけで黙らせるようなのが依頼してきたんだよ。ほれ」
本を片手に、黒い何かを取り出したリアル童貞でお馴染み「ニャルラトホテプ」はそれを夜宵へ投げ渡す。が、猿……ではなく、欲に走った転移勢が「俺の物だ」「私の物だ」と、取り合いを始めた。
「なんかブーブーブザー音みたいなの鳴ってんだけど」
「仕様だよ仕様」
「今だからっポイ、悪い予感」
「お前そういうのほんと鋭いよなぁ、面白くない。あと、よそ見して茶番はさみながら淡々と殺していくさま好きだけど、あいつ思い出して嫌いだよ」
「「「誰だよ」」」
「依頼人、人?まぁそういうやつ」
群がって取り合いをしている連中に森の賢者で魔法使いなゴリラ「ワイズコング」の風属性中級攻撃魔法が直撃。吹っ飛ばされた先で、宙を舞っていたブザー音の黒い何かが一人の男子生徒に当たり、えぐり……否、融合を始める。
「ガッ!……グァアア!」
融合の痛みか。ジタバタと暴れまわり、呻き声や奇声を上げる男子生徒の腰へと、ギチギチ、グチグチとかそんな血肉を抉る様な不快な音を立てながら、ブザー音の黒い何かが移動していく。
「あれ、何て名前なの?」
「アサルト・コード。使用者の精神力を試し、ボーダーラインに至らないなら暴走させるやべー奴。一応切り札にもなるんだけどな。死か生か、その危険性をストッパーにするのが作り手の好みだからなぁ」
「なるほど。いい趣味してるねぇ……」
「なんという卑劣な……!」
「「こわ……」」
アサルト・コードが腰に移動すると、ドライバー?のようなものが形成され、ドライバーの右上辺りで止まり、ドライバーの形成と同時に体全体が黒く、その姿を変える。姿が大きく変わり始めたあたりから声が止み、ゆっくり立ち上がっていたのだが、そいつに飛び掛かる猿は、よそ見したまま急所に一撃、最低でも直ぐに再攻撃ができないように叩かれた。
「かめn……ライダー?」
「どっちかってと怪人サイドじゃね?」
「フォルムがライダーすぎる……」
「joker?」
「ベルトのせいでどちかというとハザード」
「やべーい」
「あのベルト小腸みたいだな」
「「やめろぉ!そういうこと言うなよな」」
「「…………(殺気)!!?」」
突然走った殺気の波に猿とゴリラは退散か気絶、転移勢の内にも気絶したものが多く出ている。雑談後半あたりからアサルト・コードの取り合いをしていた相手を潰しに掛かりだした黒く姿を変えた男子生徒の眼が夜宵へと移り、少しの歩みの後、走り出す。真打、戦闘開始。
初手からドストレートに首を狙った鉄拳が夜宵を襲う、が、夜宵も忍者の家系な上、発狂し、脳のリミッターの外れた薬物中毒者や狂信者の相手は割かしいつものこと、……2割程進んだ拳を見てから姿勢を低くし、水月(鳩尾)へ拳を叩きこむ。姿勢を低くし潜り込むように殴る夜宵に、無理に膝で突き上げようとしていたせいで簡単に姿勢を崩す黒いの。直ぐに足を付け、後ろに跳ぼうとするが、夜宵の追撃が首、胸(直線上に心臓)そして頭部を叩く。
「大したことないな。デルタ連中のがよっぽど強い」
「あんな改造人間と一緒にするなし」
「でるた?Δ?」
「デルタ?」
「デルタグリーンでしょ」
「他に何がある?」
「「それも知らん!」」
「な~んでこいつ等そろって(描写外で)敵を軽くあしらうかね。影でこちら(クトゥルフ)サイドと戦おうっていう非合法な連中、それがデルタグリーン。は、どうでもいいとして。やよい~ん」
「あ?(半ギレ)」
「新しい力のきっかけよ」
リアル童貞が夜宵に投げ渡したのは作る、形成するという意味を持っている名前でついていそうなドライバーと、正面からは、襖の様な見た目の何かに、青緑色の小物。「ビギニングドライバー」と起動時に鳴ったそれを夜宵が手にした瞬間、使い方が頭によぎる。
「なるほど。初変身シーンぐらいおとなしくしてろっての」
攻撃が来る前にドライバーを装着。1撃受け流し、喉元を突いて後退させ、左手で襖の方「スロットステージ「宴怪」」を持ち、その中に小物の方「クロニクルシード「影月夜宵」」がすっぽり入る。「演目決定」。右手に持ち直して「ビギニングドライバー」にセット。腰への横薙ぎの蹴りに対して、その足を踏み台にして飛び退きつつ右下から左上への軌道で顎に蹴りを入れながら半回転し、更にレバーを1回転、襖が開く……否、幕は上がった。「開!」「―Are You Ready?」。
「変身」
「絶影絶刀の万能~忍者! 影月夜宵! ハハァ」カンッ!(拍子木)
―と言うにはあまりにも見た目の変化はない、……中身、特に筋肉を中心に、反動が出ない程度に強化しているだけなのだ。さらにこの変身音、完ッ全ッに偏見である。余談だが、100%無駄な音声認証システムのせいで使用者本人が「変身」と言わないと変身できないのだ。これが無ければ夜渡は変身と言わなかった。
「……なんだこれ?」
「和風?なイメージ」
「今の日本にはほとんど残ってないよね、和」
(だから描写外で戦闘するなと)
「なんか、混ざってる気がする……待機音の音、何だっけ?」
「弦楽器……ぽいけど」
「三味線じゃないか?たぶん」
「正解」
会話中の戦闘は割と単純で、暴走?男子生徒が拳で突こうとすれば、夜宵はより早く打ち、足で蹴ろうとすれば、足場にして跳躍しながら飛び膝蹴りやらを叩きこんだり、かなり一方的なゲームとなっている。
「随分遅くなったな?」
「おーまーえーが、速くなっただけ、思考速度とか」
「なるほど」
全体的に底上げされてる上、上昇倍率もさほど高くないので気付かなくても仕方ない。というのはいとしいいとして、戦闘に動きがあった。「Last・Joker」アサルト・コードの起動ボタンが再び押されたのだ。どう変わるかというと……マックスにハザードがオンされるようなものである。ガタガタゴットンのズッタンズッタンになるのは使用者もそうだが。
加速した暴走男子生徒は、普通(転移勢基準)ならほとんどが見切れはしない、が、夜宵にはレバーを一回転させる余裕があった。「閉! 黒子」「Rolling attack!」。次の瞬間、拳が届く前に夜宵はその姿を消す。さらに、何度か聞いてきた「暴走男子生徒に夜宵の攻撃が命中したときの音」が少し高くなって響き、それと同時に男子生徒の体が前後左右へと揺れる。ただおかしい事があり、それは、音のスパンの割りに、揺れ方が大きいことである。そして、最後には天へと打ち上げられる。「開!」。直後、ジャンピングアッパー(ようは昇竜拳)をして落下している夜宵がその姿を見せる。
「一回転ごとに開閉されて、閉まると姿を消せる訳か、いいね、便利だ」
「閉 開」レバーを二回転。LastJoker再起動。「見せ場」。再び開いた幕は、その戦闘の終わりを宣言する。「トラジティーフィニッシュ」。空中の的へ夜宵は飛び上がり、よくあるライダーキックを真上へ放つ。それに対し、男子生徒の選択は「ムーンサルト」真正面から蹴り落とそうというのだ。喋ってないけど。互いの足がぶつかるその瞬間。「閉! 黒子」。夜宵はその姿を消し。「開!」。ムーンサルトを外した男子生徒の上に現れ、踵落としで叩き落す。叩き落された男子生徒はもちろん、爆発四散。
「終結の一発ゥ! これにて閉幕」
と言う訳でもなく。腰回りを中心に黒く変わったままの部分が所々残っている上で、気絶して回復姿勢をとっている。
「決まったァ!ヤ○チャだこれ!?」
「言うな」
「オラ起きぃや」と夜宵に頭を蹴り飛ばされる男子生徒がいる中、ネタを挟みながらもしっかりアサルト・コードをしっかり回収してリアル童貞に返すハクノであった。
「童~貞~」
「童貞いうなし」
「これどうやって解除するんだ?」
「レバーの上の(ドライバーの側面にある)ボタン長押しで変身解除。ヒストリースロットの下(というよりドライバーの下面、いや、底の方が分かりやすいか?)のボタンでクロニクルシードの取り外し、スロットステージがある場合は同時押し。ドライバー左の取っ手の上下のボタン同時押しでベルトが回収され、外せる」
「できた。……リアル童貞の言う通りなのに……!?」
「次元・世界が違っても上が観ている気がするんだよ。あいつはなぁ、「神格勢、チート勢程度とか、油汚れの方がよっっっっぽど手ごわいと思うってレベルで弱い」ってはっきり言えるやつだから。暴走アザ&ヨグを一撃で半殺し(残りH2~1)にできるから……」
「…………?」
「「…………?」」
4年ほどの短い人生の一部であれど、幾多の裏や悪意を隠し持つ人間を見てきた夜宵にとって隠し事は無意味だ。冗談めかしに取り繕った笑顔で語るリアル童貞の体は、心は、本気で見えない脅威におびえていることは理解できた。が、あくまで本人(外なる神)の基準とはいえ、リアル童貞が怯えているモノの大きさは把握しきれなかった。
「どうなっているんだ……!」
「目の前の力に貪欲すぎた結果だろ?地雷踏みに行ったんだよ、お前等は。自業自得さ」
「だからって!」
「人間には「敵を知り己を知れば100戦危うからず」って言葉があるみたいだけど」
「自分の技量も図れぬまま知りもしない敵に飛び込む、自殺に等しいわ。加えて、たかが爪が食い込んだり、少し爪で切り裂かれたりした程度でギャーギャー喚き散らして、傷口抑えて、転げまわって……やる気があるならその程度でどうこうならん、気ぃ抜きすぎだ。戦をするには正気すぎる。遊び感覚で戦場に来るんじゃねぇよ」
「「「経験者は語る」」」
「それはひどいんじゃないの?皆何も知らないんだよ!」
「知らないのは俺も同じ、でも酷いのはお前等だ・け。下がっていた方がいいと言われたうえで出た。自分の尻拭い他人居させんじゃねぇよ、自分の失態を何の関係もないやつに押し付けんじゃねぇよ。はい、移動移動。立ち話が嫌で移動始めたんでしょうに」
食堂に移動しましてん。
「広い!金髪!碧眼!巨乳!青髪チッパイ!ふっふぅ~♪」
「おっさんかお前は!すみませんね本当に。オラ、おとなしくしてろ」
「あ゛あ゛あ゛アイアンクローはやめてぇぇぇ!!」
「お騒がせします」
広い部屋と綺麗なメイドと騎士にハイテンションになる式上、式上の頭を片手で鷲掴みにする影月、何故か頭を下げる糸色が居たのでした。
「あ、そうだ。篠田兄と飯塚、井之頭妹は篠田弟を取り合さえとけよ」
「は?」
「よし分かった」
弟の反応から理解したのか、篠田兄、大誠が弟を羽交い絞めにする。もちろん?篠田弟、敦は取り乱すように暴れだした。
「どういうつもりだ!」
「お前が動きやすいととっても迷惑なんだよ」
「「言い方が悪い」」
「君なんだね、うちの弟がすまない」
「全くだ」
「離せ兄さん!あいつを野放しにしておくなんて正気か!?」
「彼は野放しにしておいても誰かを不幸にしようとはしないよ。お前と違ってな」
「何を言って?」
「お前がかけてきた冤罪の数々は脅迫にも近かった。それを解決してきたのが彼だ」
この冤罪は、主に、人に冤罪吹っ掛けて金儲けや笑い話にしていた意地の悪い双子の物を、敦が手を貸していたことを指す。敦自身は、犯罪者、悪人許すまじの精神なのだが、容疑者の時点で話を聞こうともしないため、簡単に冤罪が成立するのだ。篠田兄弟の父は警察、祖父は弁護士というのも拍車をかけている。これらを解決してきた夜宵の手口はかなりグレーゾーンなものばかりだが、真犯人は決して言い訳できるようなものはなかった。
(お~、怒ってる)
「兄さん!あいつh」
「ほとんどの時間を家事に回しているらしい、わざわざ敵を作ろうとしないのも知っている。彼の姉が僕の友人なんだ」
「皐月か」
「呼んだ?」
「黙れ」
「!!???」
「実際のとこどうなの?」
「彼奴が冤罪吹っ掛ける理由なら、俺が恋敵だから。三上は俺が好き、篠田弟は三上が好き、俺はどっちも嫌い、篠田弟は俺が邪魔、三上は篠田弟が邪魔、と、こういう構図だ」
「お前視点100%被害者なのな。いつものことじゃん」
「ほんとな。寝首でも掻くかね」
席につきましてん。
「で、取り合えず、お宅らはこちらに何をしろと?」
「助けてほしい、力を貸してほしい、より具体的には、我々の側について戦争に参加してほしい」
「戦争……」
「政治や食糧問題程、優しくはないか」
「ようは殺しか。勢力図は?」
この人達、現地人サイドで把握している勢力を簡単に上げてみよう。
・種族 人間、獣人、吸血鬼、魚人、ドラゴン&ワイバーン&竜人、エルフ、ドワーフ、魔族、魔人、天使、神格、その他もろもろ。
この内、人間同士で敵対関係にあり、人間の勢力は:アルター(現在地)、アルケラル、メイガスト、ノースブルー、ワダツミ、リュー、ドミネーティア、となっている。魔族は族を省くとわかりずらそうなのでこれだけ省かなかった。
「戦争中、共通の敵有りでもやりあってんのか人間」
「……あほくさ」
「自分たちだけでやれると思ってるんでしょ?」
「なるほど、「どいつもこいつもどこ行っても、バカは変わらねぇな」」
「待てよ、人を殺せって言うのか?」
「敵は敵、割り切れ、死ぬぞ」
「黙ってろ!!」
「「「「理想を抱いて溺死しろ」」」」
「協定を結ぼうとは考えないのか!?」
「この戦争、どのぐらい続いてるの?」
「そうですね、かれこれ……1000年以上」
「「は?」」
「あぁ、こっちもか」
「何が?」
「依頼主の世界も一緒なんだよ、傲慢で、ビビりで、中々戦争進まないのね」
「なんか、しっちゃかめっちゃかだな」
「な~。で、呼ぶ必要があるほど貧弱ということは?」
「交渉のテーブルに付けない。話ができるの対等な関係だけだからな」
「その通りだ」
「……狂ってる」
「次はこちらから聞かせてもらってもいいだろうか?」
「良いんでない?」
「先ほどの、……アサルト・コードと」
「ビギニングドライバー?」
「そうだ、それは……」
「はいはい、製作者のビデオレター風説明書がありますよぉ~」
そう言ってリアル童貞が鞄から取り出したものは、一見普通のデジタルカメラ、少し操作されたそれは羽の様なものを展開し、宙にとどまって空中にどこかの映像を映しだした。
「で、えぇ~と、次どれだっけ?」
「ビギニングドライバー、クロニクルシード&アサルト・コード」
「はいはい。まずはー……クロニクルシード、振りたくなる形状をしてるかもしれないけど振らなくていい、これはあくまで対象の記憶、記録を採った代物だ。こいつの記憶を構築式として、魔力の性質を変化、使用者に流し込む、ここの機能はビギニングドライバーだけど。スロットの数を見れば解るけど、基本的に2個の種が必要になる。使う種同士の相性と、使用者の相性が良くなければ、異性魔力による拒絶反応現象によって死ぬ。ステージスロットがあれば1本に絞れるけどね。」
「次にアサルト・コード。これは、単体でも使えるけど、あくまでドライバーとの併用が前提だ。ドライバーのトリックジェネレーターの反対側こっちの、ダミーハンドルを外して付ける、それだけ。」
「効果自体はドライバーもアサルト・コードも凡そ一緒で、「異形化に多少慣らしながら本人の真価を引き出す」物だ。イメージは、施錠された扉のカギの素材を作るのがビギニングドライバー、扉を爆弾で吹っ飛ばすのがアサルト・コードだ。ただ、アサルト・コードは精神が未熟だと強制的に「LastJoker」を起動して理性を殺し、生存を優先した兵器になり果てる。そうなったら使用者を殺す以外に手立てはない。あっても、解毒効果のあるシードでビギニングドライバーの必殺技を使って強制解除するしかない。併用前提のビギニングドライバーと私のみ干渉できるからな。それでもあくまで強制解除、廃人になったところで何もおかしくはない。単体での使用の本来の解除方法は、使用者がボタンを長押しすること。これだけ。使わないことをお勧めするよ。チャオ」
ここで映像は終わり、カメラはリアル童貞の元へと戻っていく。
「なんて奴だ!」
「バイキングかな?」
「ロスが多いんだよなぁ。個人的に好きじゃねぇわ」
「なぜ飯の話と受け取ったのか」
もちろん、初めに反応したのは篠田弟。それにつづいてネタ反応する式上達。更に補足を始める童貞。
「作り手的には死をストッパーにするの好きだからなぁ。本人実質不老不死みたいなところあるし」
「他人が使うものだぞ!」
「やわな人間が悪い。そもそもアサルト・コードは自爆特攻レベルの最終手段だ」
そ、そもそも常用、乱用するものではないのだ。この辺は100%童貞の悪意……と言う訳でもなく。「危険性は、身をもって理解しないと、判らないものだよ? 人間って」という依頼主兼製作者からの意図もあるのだ。
「ここで一番問題なのは2つ。1.リアル童貞が説明しなかったこと。2.お前らが目の前の都合のいいわけもない力に溺れたことだ」
「どんな聖人が作ろうと、悪意を持てば何でも凶器になるからな」
「逆を言えば、毒も適切な知識と技量の前では薬にもなりうる。結局のところ」
「「使い手が悪い」」
「あんな奴に味かt」
「ステイ!」
「……」
兄から止渇を受ける篠田弟、彼は基本的に親子仲は良いし家族好きだ。外だと大体、暴走しがちな父親と弟が祖父と兄に止められる構図ができる位には。
「そもそもあいつは恩人であると捉えている夜宵に恩返しとして作った物を俺に届けるよう遣わしたわけだからねぇ。お前ら眼中にないんだよなぁ」
「俺なんかした?」
「お前が、俺を、あいつの元に、遣わした。ok?」
「……ok」
「解ってねぇなこの野郎」
「いや、1件該当するんだが……別人レベルなんだよなぁ」
「……気にするな。狂気を隠してるだ」
「どういうことだ?」
「ハードワーク過ぎてSAN値持ってかれたんだよ」
実際は邪神だらけのティーパーティーに強制参加で全部持ってかれたんですけどね。でもハードワークが大きく削っていたのも確か。
そんな話をしている間に、ある物が配られていた。
「はいこれ」
「……なにこれ?」
「かn」
「言わせねぇよ」
配られていたのは、カードゲームで使うカードくらいのサイズの板と、前述とは別のカードの入った黒いカードケースの様なもの。
「なぁんか見たことありますねぇ」
「本当に?この世界に来たことが?」
「ないよ」
「無いのか」
「そうそう、これっくらっいのおベント箱を」
「上機嫌だねぇ」
「そりゃそうですよ。異世界だよ!?憧れだよ!?タカキm」
「「そろそろやめーや」」
「黒塗りの高級車なんて走る世界じゃない……よね?」
そんな事を言っている間に、リアル童貞が、また、カメラを操作し、先ほどとは別の映像を宙に映し出す。今度は先ほどとは別の場所で、先ほどの人物に加えて別の人物が映っている。
「はいどうも。自称通りすがりの貧弱一般人、十六夜 夜渡 です」
そう自己紹介するのは、長いくすんだ銀髪、見えていなさそうな眼をしたAPP8の男性。先ほども映っており、その時と同じ、ホックのないフード付きの灰色のパーカ―を着ている。ついでに、特に意味のない黒いロングマフラーで口元を隠している。あと、電獲蜘蛛の「たんいち」くんが後ろからくっついている。口から尾までが大体130cm程のファンタジーにしては小さめな蜘蛛だ。
「掟上学園生徒会長だった、九条院 梓 で~す」
そう自己紹介するのは、普通に美人な女子大生。黒いセミロング、黒い目とかなり普通。ただ、魔法少女なんて印象を受けそうな赤いドレスを身に着け、片刃の剣の様な刃の付いた杖、レーヴァテインを抱えている。
「で、なにするのこれ?」
「私の古い、小6までの付き合いの知り合いが飛ばされるみたいなので、「キチガイへるぷ!」と題して、向こうの世界の常識を説明していくネタ幻覚です」
「なるほど。わからん」
「ガンドラさんもいるぞ~。カメラだけど」
「ネタ考えてたけど書くのめんどいからサクサクイクゾー」
「おい。じゃなくて、その前にゲスト」
「あぁ~、いたね、そういや」
「いたね、じゃないですよ」
「はい、ゲストは「下乳の戦乙女」サレナ・ブラヴァツキーさんです」
そう紹介された女性は、胸部の下が見えるような服にスパッツ&ミニスカ、使い古されたブーツと大剣を身に着けた、銀髪巨乳なお姉さん。単騎でドラゴンを狩れたりと、割と強いお姉さん。
「どこ観て言ってるんですか?」
「胸」
「アイタァ!?」
堂々としたセクハラ発言に顔を赤く染めながら生徒会長(元)の頭をしばくサレナ。いつも通り、予想通り過ぎて何も思わない夜渡。画面外で神(自称)を撃ち殺そうとする松田(仮)。
「貴方の友人ですか」
「私に友はいない」
実際いない。夜渡の周囲は自身の作ったモノ、嫁ぐらいだ。
「アッハイごめんなさい」
「私はぁ!?」
「邪魔」
「そんなぁ……(´・ω・`)」
「小6の私と同格の戦闘力って言ってもわからんだろ?」
「どうなんですか?」
「掟上に来たのが中1の時、入学時点で高・大等学部の問題児を来た端から病院送りにしてた」
この出来事から、授業中でさえも、役に立たない警察の代わりに、生徒会&風紀員に言われ、暴力沙汰を喧嘩両成敗していた。結果として力の守護者なる異名とかあだ名とか二つ名とかその手の物が付いた、本人は一切気にしていないが。
「スキル、無いんですよね?」
「ないです」
「まぁ、向こうは手加減してたかもしれんが。演技得意だし気づけなくてもおかしくない」
「「今検索した限りだと、バク転バク宙が普通。……影月式忍び体術?……これ魔法体術じゃないか」ってえぇ!?」
文字を浮かべ、自身を宙に浮かせる本を読むどこかで見たような悪魔族チューナーっぽい音叉を持ったもの……。後者が「レゾリゾ」相手の心を読むメンテナンスチューナーのゴーレムで普段は喋れない夜渡の奴隷「アリス」の翻訳めいた仕事をしている。ってかそのために造られた。
「どうしたレゾリゾ?そんな驚くことでもないだろう?あいつは私に「リアル童貞にはかかわるな」と釘を刺したのにリアル童貞を遣わせる奴だぞ?魔術の1つや2つ、知ってて当然」
「向こうにもそういうのあるんだ……。その本はなんぞ?」
「私の自作魔導書「ソロモン」某エクストリームの上位互換かな?あらゆる世界の無駄に多い情報から私の望んだ情報を引き出してくれる」
式上「君が心のすっべってをー」
影月「いや関係ないだろ」
「……ごめん、エターナル克己のこと考えてた」
「そんなイメージでいいぞ?」
「「「うっそだろお前!??」」」
「本題行くぞ~」
「今回のお題は~こちらっ「スペックカード」でございます」
スペックカードと呼ばれたそれは、上記の内の前者、カードゲームで使うカードぐらいのサイズの板の方と全く同じ見た目の代物であった。余談、夜渡たちより向こう側で「スペックカード」と書かれたボードを持つ白い右手(袋)と黒い皮の左手(袋)がいる。
「デザインちょっと違わない?」
「何処でも一緒だと思った?向こう仕様だから。」
「おててぇ!」
スペックカードと書かれたボードを持つ白い右手と黒い左手、その内の白い右手をようじょが襲う。
「春香ァ!?春香ぁ!」
「はるかぁ!」
そう呼ばれる(人の身長より)大きな右手に飛びついた桜色の幼女……見た目のわりに割と流暢な日本語を使う。彼女は春香ちゃん。夜渡の娘で、額上辺りから2本の角が生えている。
「handsはお仕事あるからジェミニシスターズXXと遊ぼうか」
「おとうさんはぁ?」
「お父さんもちょっとお仕事してるから。リブラ!アイゴケロス!ジェミニたちの監視してて」
「な!?」「心外な!?」
「うるせぇ、ぱっぱと見える範囲で離れて遊んでなさい」
「「はーい」春香ちゃんこっちで遊ぼうねぇ」
「ぶー(・з・)」
赤と青の少女に画面外に連れていかれる春香ちゃんでした。ちなみに、リブラ達は夜渡が創った命で守護者。基本的に単騎で世界一つ滅ぼせるやべー奴らが19体(ジェミニは1カウント)いる。
「えぇ~。こっち仕様は切り替える方法があるけど、向こう仕様は「実数値」が表面と仮定した場合、裏面が「適正値」になる」
「表示する方法は?こっちとおんなじ?」
「あ?あぁ、うん、一緒。魔力を付与すればいい」
「簡単だ」
「基本ですね」
「だな」
「で、まずは「適正値」からにしようか。解りやすいところだと……そうだな、「属性」の表記が、実数値は多くて2つの所、適正値は7つ有り、それぞれの評価が下されている。後者の方を見てくれ」
適正値には、基本、カテゴリといった大きなの範囲から総合評価額下されている。
例えば、さっきも出た「属性」に「隠密・隠蔽系」(隠す、隠れるといった類のスキルが属するカテゴリ)「攻撃系」(ダメージを与えることを主目的としたスキルが属するカテゴリ)
「放射系」(圧縮、一方への魔力の放出などのテクニックへの評価)「操作系」(スキルの起点を維持し操作するテクニックへの評価)
「呪術系」(魔術、忍術、妖術等の割と根幹のカテゴリ、使い方、傾向が多少変わる)といったスキル等への適性・傾向や「筋力」「魔力」「生命力」「敏捷」といった基本ステータスの傾向まで様々である。
スキルはカテゴリが複数組み合わさることが前提である。例えば、「ファイアーボール」なら……「火属性」「魔法」「放射系」「攻撃系」 といった具合である。
「適正値にはBとかAとかCとかついているけど……。夜渡君!」
「なに?」
「それぞれどんな評価なんですかね?ね?」
「……上から「S」.その事柄に心血情熱注いでやれば結果を残せる。あなたの存在意義と言ってもいい。「A」.それがあなたの得意分野。とりあえず鍛えとけ。「B」.それがあなたの普通、あなたの基準。これが強いかどうかであなたが強さがだいたいわかる。「C」.あなたはそれを好まない。しかし、鍛えれば輝くさ必要に応じて鍛えよう。「D」.あなたはそれを見てはならぬ、関わってはならぬ。それを鍛えるのは時間の無駄と言っても差支えがないほどだ。……こんな感じ?ようは、適正値の基準は本人基準。万能超人は全てSではなくBだ」
「得意分野はA、Sは規格外かな?」
「ですね」
「適正値は……ほかに言うことあるかな?」
「強いて言ってどれがほしいとか……」
「それは本人の構成しだいだ」
「そういやマスター」
「何じゃい?」
「マスターは適正値Cばっかりだったよね?」
「おう、おう?……バグってる?」
「そういうことは割とあるようだ。主な理由は使いまわし。別の人が長く使っていたり、スペックカードに本来に用途基準で必要以上の魔力をこめたりするとなるらしい」
「へー……リセット」
カードが浮く、白銀の魔力に包まれる、経験が消える、はい終わり。
「あー……」
「どこまで変わりました?」
「基本スペック以外のCがBになったぐらい。特徴は呪術に弱化によってるだけかな」
「つまり……夜渡君は「万能超人系」」
「んなわけねーだろ」
実際の所、適正に限れば器用貧乏という評価が正しいくらい「普通の努力」じゃ伸びない、今の「実数値」が操作系攻撃魔法以外全てSなのは「狂っているほどの努力」の影響と(評価はBだけど)強化系に割と長けている事が主な要因である。
「次、「実数値」ですよ」
「今現在の能力を評価している方ですね。こちらの表記もS、A、B、C、Dです」
「こちらは種族の範囲で評価される。人間基準だと……Bで中々戦えるモブレベル。Aで国の中で指折り。Cで非戦闘一般人。Dで一生ベットの上。 Sは種族関係なく、A以下はいくらいても問題ないほどの強者だ」
「種族ごとか……」
「劣等種程Aが長い、広い、故に、上位種族のBやCに、自分たちのAやBで負ける可能性はある」
「でもそれって、下等種族のAだからって侮っていると死ぬってことですよね」
「そうだよ」
「そうだよ」
「あーとーは、こっちで表記される属性は高いものから最大2つ、無属性が出た場合は適正に一切の差が無く、1つの場合は、他の属性が一番高いものの半分もない」
「後言うべきことは、……仕様経験のあるスキルのみ表示、評価されるところですかね」
「二度と使いたくないならE、もう伸びないならS、だったかな?ほんっとかわったよなぁ」
「前はそういう表記……なかったねぇ」
「あとは、何か言うことある?他のパートに比べてかなり短くなるけど」
「他のパートは……?」
「「魔力と生命力」「魔力の性質」「スキルとアビリティ」「ナイトメア」って感じ、魔力傷なんかはほかでしゃべる予定」
「他に向こう特有の何かは無いの?」
「そ、う、だ、なぁ~、「エンゲージデッキ」ってのがあるな、こんな奴」
そうして取り出されたのはまさしく、先ほど夜宵たちが渡された「おベント箱(仮)」とわかるほどの黒い箱だった。
「なにそのおベント箱?」
「あぁ、何でしたっけ、たったー一度―とかなんとか」
「そうそう、そういうやつみたいだね。エンゲージのカードを相手に見せ、了承が得られると契約できるって代物。ただ、契約に拘束力は皆無」
「ようは裏切られる可能性があると」
「かもね?」
「はい、もう喋ることもないし、ここで終わり。最後に、魔力付与も放出もできないようなと―しろが魔力をもらっても愚かなだけだよ。じゃぁ別パートで会いましょう。チャオ」
「しーゆー」
「統一しません?さようなら……さようなら?」
映像はここでおしまい。カメラは戻るよ。
「はい、次」
「待て待て待て」
「敦は黙っててくれ頼むから!」
「っ……!!?」
篠田兄の本心の一喝が、篠田弟を傷付けた。まぁ、硬直が目的なので良し。
「で?なんなんだ?確認しながら見てたんなら凡そはわかるだろう?」
「見れてないんだ」
「……」
「最低でも、僕と敦は見れていない。他にもいないか?」
この質問に対し応じ、挙手をした転移勢は 影月夜宵、糸色 暦、式上ハクノ、影月皐月、井之頭椿姫、以外全員(童貞はもちろん除く)とほとんどである。
「……えぇと、2年B組が28人、教師1人、2Bより上が、皐月(夜渡の姉(大2))、大誠(篠田兄(高3))、乱華(描写してない気がする変態。年下なら割と何でもokなムチムチおっぱい(高3))、椿姫(井之頭姉(高3))、「おまけに吸血鬼(超小声の早口)」で、計33人(+a)か。無駄が多い」
「「「無駄にじゃないのか」」」
「……井之頭椿姫氏」
「ん?」
「お前確か「妖の類と殺し合い市武井ケインがあった」よな?そこで魔力、もしくはそれに準ずるものを?」
「yesと言っておくけど、何故知っている?」
こんな時でも割とのほほんとしていた大太刀を帯刀しているポニーテールの女が、敵と相対したかと言わんばかりに目を細め、柄に手を伸ばし、警戒を始める。それに対し答えは呆れた顔をしながら……。
「夜中に歩き回るのはお前だけじゃない」
「「あれぇ!?早寝早起きだよね?」」
夜宵は4時起きからランニングで2時間つぶしたりするからね。それを知ってる式上、皐月は驚くよね。まぁ、夜宵は一週間連続くらいなら徹夜余裕なんだけどね。
「こういうパターンはほとんど僕が巻き込んだから……」
「「「ふぅ、やっさしぃ」」」光輝、皐月、ハクノ
「ハモるなうるさい」
「「キャー☆」」
「……」
「「はい……」」
あー……うん。井之頭椿姫は所謂退魔な家系の血筋である。故に、妹の樹は怖がり、見えぬ、所謂「妖怪」「幽霊」といった存在が見え、そういったモノを払うための力を持つ。が、その家系の「悪霊や妖怪を退ける」使命も不必要となり、形だけと継がせてきたものを「古臭い」と一蹴し、受け継がれてきた凡そ2mの大太刀「黒猫」を勝手に持ち出し、門限を無視して、夜中に歩き回る。結果として、夜回り中に面白半分で切り捨ててきたモノたちは、使命の対象がほとんどであり、その過程で「魔力」や「呪詛」といった謎エネルギーと邂逅。家系、素質もあり、ちゃっかり体得している。
「「……(何を言っているのかわからない)」」
「そりゃ幽霊なんて非科学的な代物をいきなり大真面目な話で出されても話す奴の正気を疑うだけだろうよ」
「実際にあってもらうのが一番なんだけど……」
「D100振る?」
「やめーや」
「知らぬが仏ってやつだよ」
「おぉ、ポークよ、寝ているのですか」
「それじゃぁ豚だ」
「しかも死んでるし」
「お肉だよそれ……」
「えぇと君たちは?」
夜宵、皐月、ハクノ、暦の順で―。
「知らぬが仏って言われたろうが。仕事柄」
「家柄」
「私も家柄かな」
「僕はオリーブオイル」
「明らかに関係ないのが混ざってますね?」
「オリーブオイルが魔力をくれた?」
「オリーブオイルはマジックアイテムだった?」
「おい夜宵」
「あ?」
「「これ」もう渡しておくぞ」
「おう」
くっそどうでもいい話に脱線している中、リアル童貞が渡した「これ」は一見はただの「ポーチ」だった。次のセリフを喋りながら夜宵がポーチの中を探ってみれば、人の腹に自動車でも入れるかのように普通ではありえない空間が有るのだと理解した。まるで、自分の背丈ほどもある樽の爆弾を腰のポーチから取り出すかのように。
「魔力の扱いの話のはずだよなぁ?無縁の転移勢―サイバーサイドがちょっと聞きかじっただけで理解できるわけないだろ」
「扱える我々は何なんですかね?」
「転移勢―オカルトサイドとか? どうあれ別グループだから一々あんな奴とかかわる理由なし、得もなし。はぁい次々」
「オイ待て、馬鹿にしているのか?!」
「こら敦」
「そうだよ?」
「そうだよ(便乗)」
「便乗するな!わざわざ煽るな!」
「解ったら黙ってていただけます?」
「ふざけやがって」
「いたって真剣です、大真面目です。真面目にお前は迷惑以外の何物でもないと言っているんです」
「そもそも、さっきの映像も、お前の知り合いなんて信用できる訳ないだろ!」
「敦!」
「そういうお前が一番信用ならんは」
「何だと!?」
びっくりした人がその声の方を向けば、信用ならん映像から、信じられない程状況に合った言葉が出てきていた。
「もうはじまっとるぅ!!?」
キチガイヘルプ……ではなく、おまけの雑談兼威嚇パートである。
「どうした?」
「いや、私よりもひどい自己中のクソガキが見えてしまってな……」
「マスターよりもひどい?いや、マスターは曲げられる内容なら聞くし曲げるし、基本腰は低いか」
「未来視なんてするもんじゃないな」
そんな話をするのは宙に浮いた単眼のベルトと、説明にも出て来た白髪の男性「十六夜 夜渡」だ。そこに入ってくる当時のリアル童貞が……。
「未来視してたの?」
「してた。大丈夫、ティンちゃんの許可は得てる」
「猟犬や王をちゃんてお前……」
「ティンダロスは地域であって……」
「解ってる解ってる」
「ティンちゃんってなぁに?」
「いいかい?春香。ティンダロスの猟犬ていうのは=時間を捻じ曲げる阿呆を食い殺す化け物の事で、猟犬は生態、思考からイメージ、二つ名や異名的な物であって犬じゃない」
「躾けてドーベルマンそっくりに異形化させた変態がなんか言ってるよ……」
「「ティンダロスの狂牙」っていう実質別種だから。それにそうさせないと私のSAN値がマッハ……いや、誰かさんのおかげで一気に消し飛んだわ」
ティンダロスの狂牙……十六夜夜渡が躾けた3匹のティンダロスの猟犬の総称。240度以上の角度から出入りすることが可能となったやべー奴ら。それ以外は変わらない、強いて言えば神と魔法に高い耐性が付いたくらい。夜渡に従順。
時を超え、夜渡と夜宵に同時に、SCPの猫みたいな目でガン見されるリアル童貞であった。
「さて、そろそろパート2始めたいから、別の席に言っててくれるかな?シュークリームは持って行ってもいいから」
「はーい。お母さん、夜接、行こ」
「はぁい♪」
「……うん」
「家族が居なくていいんですかね?」
「いいんでない?後で甘える予定は有るし」
「「なになに」何するご予定で?」
「?……温泉宿の予約があるってだけだが?」
「温泉か~」
「いいですね」
「温泉って言ったら「ゆうぎり」?」
「そうそう、「ユウギリ」の「ユクラ」って温泉宿」
ユウギリはマスター「十六夜夜渡」が今回の体で生まれ育った世界でいう「別府」に当たる地域。温泉宿がとても多く、人気のある地域だ。「ユクラ」はクラゲの亜人のユクラ氏が経営する温泉宿。どや、ええやろ?(煽り)
「っていう話はもういいよね?始めるぞい。「平穏の悪魔」です」
「このメンツなんだ。生徒会長です?」
「神です」
「それじゃ見る人わかんないでしょ?」
「シュブニグラスって言って誰が信じるよ」
「メイちゃんです~、黒山羊メイちゃんです~」(―з―)
自らを「黒山羊メイ」と名乗る黒い長髪、だぼだぼのセーターに隠れていない駄肉と巨乳、○なるものとは一切関係のない別個体のシュブニグラスである。やろうと思えば一撃で大地を砕くパワーアタッカー……は基本スペックだけの産物であり、スキル構成はガチガチの魔法ヒーラーである。
メイは今、膝に黒い羊と山羊を抱きかかえている。夜渡は夜渡で今度は白い猫を膝に抱えている。今のこれはクリッターの類なので一切関係ないが、猫の本性は獅子だったりする。
「メイちゃんは……強いぞ!」
「あぁ、そう。今回のお題は~」
「「スルー!?」」
「こちら「魔力と生命力」でございます。」
「・生命力は言っちゃえばしぶとさ、現世、肉体にその魂を留める力であり、体が傷つけば減り、一定以下(個人差有り)で魂が抜ける、つまりは死ぬ。生命力が低い人は基本魔力が多い、体調が悪いとかある程度分かりやすい。」
「老化でも減るね」
「せやな」
「生命力の働きは魔力で代用可能、故に、常に保持している魔力の量が多いほど、生命力は低くなりがちだ。ついでに、生命力は、スタミナ、回復力にも直結する。魔力と反比例、と言いたいところもあるが、生命力は適切に運動する奴に付くぞ。」
「・魔力についてだが、謎エネルギーだ」
「いや謎エネルギーって……」
「謎かな?」
「発生源はわからない、一定のスキルorアビリティ所有者にしか直視できない。魔力回路は実態を持つタイプと持たないタイプがある。これだけでも割と謎だろう? 行ってしまえば「魔力」はもっとも広まり、知られた「謎エネルギーの総称」だ。事実、この世界の魔力と、他の世界の魔力で、違う点はいくつもあるしね」
「まぁ……」
「違うんだ?」
「違います。属性を後から付与する世界もあるけど……この世界と向こうの世界は、全ての魔力発生源が全ての属性の適性を所有する、多かれ少なかれ。故に無属性スキルは術者次第、実数値無属性表記は全属性同時発動に値する。まぁ、Bライン次第になるけど」
「魔力について、主に知ってもらいたいことは「射程」「魔傷」「魔力回路」かな?他はそのカテゴリのパートでするし」
「魔力回路は魔力の東リ道ってだけでしょ?説明いる?」
「ま、それもそうなんだが……やりようによっては魔力回路ふさいだりできるし、これのせいで魔力を外部から受けるのって結構つらいんだよね。まぁ、存在ぐらいは知っておいてほしいかな?魔力は簡単に霧散するし」
「魔傷ってあれでしょ?異性魔力による―」
「異性魔力による拒絶反応現象による炎症、と、超過集束による炎症、この2つだ。簡単に言うと「別性質の魔力を取り込むと痛い」「魔力が集まりすぎると痛い」って訳。後者は魔力回路から外れることで神経に影響が出たり、物理干渉が発生して燃えたりとかね。前者は血液型のそれと同じ認識でいい」
「自分で言ってて気づいた。それから物理干渉を忘れてた。物理干渉は、物理干渉値に決められた量以上の魔力を集めることで発生する。こっから先は化学の分野だ。物理干渉が発生しているからといって壁を素通りできるわけじゃないし、物理干渉が発生しなければ火属性でもモノを燃やすことはできない。注意な」
「最後に射程」
「銃のやつ!」
「「雑ゥ!?」違うよ?」
「違うの?」
「違うよ。つか回復も雑にばらまくだけ、攻撃も雑に素手で殴るだけのお前じゃ意識しないだろ。私も放射軸の立ち回りだしないようなもんだけど」
「仕方ないなぁ、私が教えよう。……、…………、………………教えて?」
「だろうね。魔力の安定した保持が可能な距離、リンクコードの長さが「射程」だ。それ以上の距離は射出してやれば届く。魔力の霧散が加速して碌にスキルとして保持できないが。それ以降は修練積んで、慣れろ。終わり」
終わり。
「雑ぅ……」
こっから先は割とおまけだぞ。
「早……」
「おまけ(割と重要……かも?)。まぁ、あんま一気に出してるとだれるし?」
「この映像は、どこまで合っていますか?」
「そう、ですね」
「大体あってるんじゃないか?しっくりくるとことかもあったし、向こうの方が詳しいくらいだろ、たぶん」
「この……イザヨイ―ですか?彼に協力を頼むことは―」
「何を言っているの!?あんなのと一緒にいるやつと手を組もうというの?!」
「handsは手の化け物だな。夜渡が作った」
「命を……作った……?」
「夜渡は「力」の他に「生と死」「始まりと終わり」「破壊と創造、再生」に加えて「過程」「時間」「成長・進化」「変わらない愛」なんかを司る神でもあるからな。命の(世界)一つ(分)や二つ(分)、あって誤差でしょ。自重の出来る人だし、力の乱用は好まないやつだから、下手なのが力を持つより安全安心。神格からも割と高評価なんだぜ?バステトやアスクレピオス、アマノウズメや毘沙門天辺りは特に」
「え~と?猫の神に?……」
「エジプトの猫の神「バステト」、ギリシャの医の神「アスクレピオス」。「アマノウズメ」は日本の芸能の神。「毘沙門天」は武だったか?インドの富の神、「ヴァイシュラヴァナ」の事だな、日本での別の呼び方は「多聞天」だな」
「「あ~ワカル」マン」
「で、話を戻して。夜渡の現状は?」
「人の形をした「あらゆるものを凌駕した」存在。侵略とかは興味ないから一般人やってるけど襲って来るやつ多いからトレーニングは欠かさない……人として最低限のスペックでも神格殺したりできるのに。命をないがしろにするやつには容赦しない。あと、会話はできるけど攻撃一回でも入れると話ができなくなるぞ」
「「「ちょっと何言ってるのか分かんない」」」
「私にもわからん」
「オイ童貞」
「お前が分からなくてどうするんだよ童貞」皐月
「そんなんだからお前は童貞なんだよ童貞」ハクノ
(こいつら神格相手に容赦ねぇ……)
「クトゥルフ系の連中は宇宙人。ok?」
「おk」
「まずメンタル。解離性同一性障害レベルの切り替えが可能。99.8%が虚無、残りが愛と殺意で出来てる戦闘特化の心理と、命大好きマンの心理がある。前者の方が強いし、それのせいで警戒を怠らないけど、後者の影響で基本的には戦い、争いを好まない。ただ、戦闘になると理不尽に襲ってくる戦闘狂も理不尽に感じるほどの戦力差で圧倒するやべー奴」
「戦闘嫌いなカウンター瞬殺マン?」
「うん、有ってる。攻撃始めたら後出しで先制して殺す感じ」
「おっ!早いな?」
「思考、情報の伝達を大きな隙として捉えられる超スピードマンだからな……。1fは大きな隙」
「おかしいだろ……?」
「ダッシュで光超えるしヘーキヘーキ」(白目)
嫁がピンチなら摂理も世界も捻じ曲げて助けに行くしへーきへーき(白目)。ダッシュ超光速は空気や重力がない場合に限られます……緊急時を除いて。
「基本スペック、パンチ力とかジャンプ力とは「無限化」で好き勝手あげられるからなぁ……。装備の基本スペック(中の人無し、強化無し)なら、パンチ力が低くて260トン、キック力は一律でパンチ力の4倍。光速も超える。世界の終わりくらいなら平気で耐える装甲が自立行動可となっている。ぶっちゃけ自作拘束具」
「某ハイパー無慈悲が金ぴか粉雪強化込みで256t……。おかしいだろ?」
「チート対策に盛りに盛った結果がこれだよ。外の世界の記憶、記録がないから本や映像作品のやべー奴らに対抗できるよう訓練積んでんだよ?あいつ。最低ラインがチートでもおかしくないよ?おかしいけど」
あと愛だよね、愛。夜渡は愛に生きる人。peace&love、そのための力、あと、そのための殲滅。そして呪い。
「理由、経緯は理解できるが結果がおかしいよね?これ」
「異形化持ちはいくらでも化ける。努力次第で。割とマジで可能性無限大。神になったやつもいる」
「やばいですね☆」
「でもま、戦争やってる連中に参加しろって言われたらとりあえず喧嘩両成敗と称した殲滅始めるだろうな。次元規模の戦争に(戦場にされた無関係な次元の抑止力やガイア共に)首突っ込まされて、会話を試みたけど無駄だったので「ジェノサイド・スカーレット」と「ライトニング・ドゥーム」で殲滅したみたいっすよ?」
ち・な・み・に
ジェノサイド・スカーレット……夜渡の使用率最上位の必殺技格。「攻撃宣言」を打ち込み、その部位へと蹴りを放つ「クリムゾン・ストライク」の超高速連打バージョン。蹴り事態は(光速超えてたり、やろうと思えば星砕くの余裕なことを除けば)普通。しかし、攻撃宣言サイドに問題がある。大体五秒(戦闘開始3秒目から行動)で宇宙を埋め尽くす自称宇宙そのものな女神様を1体だけ残して消し飛ばした事がある。惑星に被害はない。
攻撃宣言……夜渡は「クリムゾン・ストライク」「ジェノサイド・スカーレット」「グランド・ヴァーミリオン」と名の付くスキルで使用されるスキル。「ブースター」と名の付くスキルでも使われることがある。元は敵に打ち込み、その部位に攻撃すれば炸裂して大ダメージを与えるスキルだったが、夜渡の改造は拘束力のある状態異常から始まり、現在は……神経や魂を拘束し、相手の核に直結させ、抵抗、解除、攻撃に反応し炸裂。敵を消し飛ばすスキルとなっている。喰らったら負け確と言っていいだろう。
「グランド・ヴァーミリオン」という「クリムゾン・ストライク」の強化版で広範囲を汚染しながら、威力を上げながら消し飛ばす、鍔迫り合い前提の技よりも初動の火力が高いのは主にスピードのせい。
ライトニング・ドゥーム……光をぶっ放す……それだけ。ワープしても逃がさないホーミング性能とか、熱量と合わせて吸収&反射する前に消し飛ばされるのが落ちだったりする火力が有るけど……それだけ。一気に使える数に制限もないけど……別に問題ないよね。
「エッグ……」
「どうしてそうなった?」
「パターンA 遊び全部と遊び全部が超融合。 パターンB ここはこうした方がいいかな?こっちの方がいいかな?これもいいな……が重なった結果。ちなみに攻撃宣言はガチでやってた頃のパターンBにパターンAが融合した結果、相手の核に直結するマーカーを火力低めの子たちが活躍するためにその場で作ったんだと。」
名付けて「弱点さらしの奇跡」。
「殺意すごい……凄くない?」
「……サツイスゴイ」
「本当の話ならな……ちょっと想像出来ねぇわ」
「事実として受け取れる奴はいないだろうな、できるやつは狂ってんじゃない?夜渡がそうだし。……自然に配慮するから一発デカいのよりチマチマ(消し飛ぶ威力を)連打する方が好きみたいだし。後、やらないだけで事象や過去の改変とかできるらしい。封印は神性ぐらいしか開放しないし」
「封印?かけてるんだ?」
「何をした?」
「ドレインを常時発動する癖を付けちゃったらしく……。本人は元々魔力周り糞雑魚だから、リカバリーにね。鍛えた結果……そこに居るだけで生物が存在できない場所に早変わり。異形化も有るし……」
「また変なものを……」
「よりよくしようとした結果がこれだよ……(白目)」
「イキスギィ!……?」
「夜渡氏、怖いでしょう……」
「自然とか好きな方だし、配慮するし……、乙女心もわからないわけじゃないし?。他者のためになることも普通にやってるんだよなぁ、発狂した彼氏持ちの女性を正気に戻したり、帰る場所を失った者を拾ったり。でもまぁ、優しいじゃなく、あくまで「自衛の延長線上」だからねぇ」
「自衛の延長でやることじゃないでしょ?」
「夜渡的には自衛の延長なんでしょ?知らん」
「おう、いい加減夜渡の今を教えろや」
「あぁ、はいはい。山奥でいろいろ拾って暮らしてるよ」
「いろいろ?」
この後めちゃくちゃ余計な動画も見たのでカット。
「で、どうよ?」
「あー、うん。大体わかった」
「謎なほどにハイスペック過ぎるでしょう……」
「強~い」
「自作武器連射、でそれが全部自立行動可?どっかの金ぴかより強いんじゃ……」
「金ぴかは「重武将・武 「一掃」」……だったか?そんな名前の薙刀で完封可能だろうな。」
重武将・武 「一掃」……「重武将・武」という「重武将」装備の武器の仲間の一つで薙刀。幻影や分身、巨大化等で対多数を得意とする武装。対単では全方位からの連撃によるハメに変わる。逆に主君たる十六夜夜渡が、数で襲われれば勝手に出動、神器だろうが何だろうがいともたやすく切り伏せ、主君を守る。
重武将 ……夜渡製和風鎧と武器に付く名前、及び総称。メインの鎧は総重量300キロを超え。主君無し、自己バフ無し、かなり手加減してパンチ力500トンと、かなりのパワーアタッカー。別枠な仲間がいなければ火属性以外が使えない(火属性も割とおまけな部類)。
「改めて、簡単に説明すると?」
「故意に呪って、恋に呪われた転生系一般人、それが十六夜夜渡。
転生のたびに記憶は失えど、因果・運命を捻じ曲げ会う、それが十六夜夜渡。
基本的に会話ができるのは心器「フェイクマテリアル」の影響であり、本来の姿により近い心器「リベリオン・ネメシス」はカウンター限定の殺戮者という、若干で極端なSAN値0の平和主義者。最愛の者のなら姿形性格を問わず愛し、守り抜く漢でもあり、反面、家庭的な女子力も持ち合わせている。
神としては「義憤」を司り、絶対悪、や煩悩、欲望に弱すぎる屑、それから問答無用で自身の敵に対して悲惨な結末を与える、裁きの全能神。という立場だと勝手に他神に決めつけられちゃっている。多神教の中ではぶっ飛んだバランサーという良心でもある。それが、神格としての十六夜夜渡の姿の一つ「ニルヴァーシュナ」
こんな感じですかね?」
「疑問形で言われても……」
「困る」
「欠陥自体はあるみたいなんだけど、「それ」限定であって切り替え、リカバリー可能で隙が無いんだよねぇ。例えば「フェイクマテリアル」は人間らしさのせいでストレスが溜まって逆鱗触れやすくなるとか……リセットできるけど」
「短気なんだ」
「短すぎるんだよなぁ」
「えぇと、1.運命操作で運では勝負にならず、2.感情がない側面と、感情が任意で切り替えられる側面で心理戦は不可、さらには3.肉体面でも殺傷性は超えられないと」
「勝てねぇ」
「勝てねぇ」
「……勝つ必要ある?」
「無い」
「で~す~よ~ねぇ~」
閑話休題。
「で」
「ナイトメアとやらのおさらいをしようか」
「うっす。お前が強要しないと話が余計なほうに進むしな。
「ナイトメア」夜渡曰、心器に似たものの形の一つ。心理状態が極限を迎えると変化し迎える形の一つ。ナイトメアは絶望等で生まれる形であり、宿主諸共食い破り、変化させ自らの形へ変える。怨念と魔力で動く元心の有った何か、故に、ナイトメアになれば体は不定形の肉塊、意思疎通は不可能となる。一応救う手段は有るが、ジーニアスなてぇんさいでもない限り不可能と言って間違いない。」
「ブレイブ」夜渡曰、夜渡のいる世界で言うところの心器。心理状態が極限を迎えると変化し迎える形の一つ。ブレイブは義憤等で生まれる形であり。宿主と共に運命を変える存在。宿主の心が崩壊した際に砕け散り、宿主の心が戻れば復活する。
「グリード」夜渡曰、欲望に走りすぎた奴の成れの果て。どうあがいても見満たされることは無くなるが、欲望に一直線にしか進まない。
ざっくりとこんな感じ」
「これ聞いた感じだと戦争等の硬直はこれが原因だよね~」
「せやな」
「俺なら敵の勢力に生み出すかな、やったらめったら暴れまわるんだろ?」
「おい忍者、おい忍者!?ゲスかお前は!?」
「割と正攻法だろ?」
「おっそろしい奴」
そうこうしているうちにこの勝手にやってる連中とは別のグループから話題が投げられました。
「元の世界での関係、やってたこととか……アバウトな」
「全般って印象でいいんじゃないか?」
「んなもんの話題はねぇよ」
「よっしおねぇちゃn」
「ステイ」
「むぅ……」(´・ω・`)
「くだらねぇこと言ってる暇あったら基礎訓練でも積んでろ、雑談は休憩時間にやれ。そういう時間、黙ってないんだろ?個人的には寝る部屋さえと時間あればあとはどうとでもするんだが」
「そう、ですね……。たしか……もうすぐ聖剣選抜戦のはずですからその準備のために移動します。お部屋はそちらに用意しましょう」
「移動はいつの予定で?」
「そう……ですね明日の予定です」
「いや、今日行こう!」
そう言いだしたのは赤い髪と大剣一本の女騎士。背格好のイメージはエルソードのエリシスだったりする。割と脳筋らしい。
(今から行ける距離なのか)
「待ちなさい!馬で一日かかる距離ですよ!?」
この人はこの人で王のご息女。(内容を考えるのがめんどくさいので)カットされた雑談中ずっとピリピリカリカリしていた。
「ダメじゃん」
「14時間と仮定しても早朝に出る必要が有るが。まぁ、野宿の勉強にはいいんじゃないか?俺はたまにやってる」
「それもまた、楽しそうですな」王
「だろう?」
「考えてなかったろ」
「……」
ほとんど変わっていない女騎士の顔に光るものが……。
(汗だ)ハクノ
「汗出てるじゃないか」皐月
((やっぱ)り考えてなかったか)夜宵・暦
「そ、早朝から馬が動いてくれるかわかんないだろ?」
(足は馬か)
「思い立ったが吉日!明日やろうは虫野郎!」
「それはつまり王様は虫野郎と」
「だっ!!?違う!?」
こんなことを言われても涼しい顔の王様。逆に大丈夫なのか?
「ほっほっほ。修練の方は、クラインさん」
「はい、任されました。と言う訳だお前達、お前達はこの「クライン・フィールド」が責任をもって鍛えてやる」
クライン氏は近衛兵の団長。騎士団長は普段、麓の町で指揮をしているのだが……離れて大丈夫なんですかね? 王様も一緒に行くのだが。
「無理でしょ。俺はいい」
「どういう意味だ?」
「このど素人共をまともに戦えるようにするのに必要な時間はざっと見積もって6年。基礎も基礎からだ、ここまでやって一般兵。 俺は自分のペースが有る、他人に合わせるつもりはないか!・く!・じ!・つ!(確実)に大幅に遅れるのは目に見えてる。あとほとんどが根性ねぇだろ、知らねぇけど」
「そんなにかかるのか?!」
「そんな訳ないだろ!」
「やってみりゃわかるさ。その辺は今ついてもどうしようもない」
「お前は一々声がデカい。それはそうとして君……」篠田兄
「夜宵だ」
「夜宵君。君だけ外れる、という風に聞こえるけど」
「そう言ってんだよ」
「危険だろう?」
「かもな」
「解っていてやるのかい?」
「その方がいいと判断したからな。なんだ?弟を暴走させたいのか?」
「それは俺が止める。今問題視しているのは君の安全性だ」
「危険を危険として理解できない。今この会話において最も問題なのはそこだ。怖いものは怖い、それでこそ正しい判断ができる。で?、どうだった?」
「……譲る気はないと?」
「ここ譲っても何もいいこと無いからな」
「先生は反対です」
「あぁそう。飯塚は人をを殺したことあるか?」
「いや、無ぇけど」
「なら遅れるだろうが稽古つけてもらった方がいいと思うぞ?初めはなかなか後味悪いからな」
「まるで殺したことがあるみたいな言い方だな」
「有るぞ?」
「話をそらさないでください」怒
「そろそろ外に出よう。夜宵君が怒ると怖い」
「待ちなさい」
「うるせぇ!待ってられるか。同じようなことを何度も何度も。人にストレスを掛けるなぁ!」
「先生にとってそれがストレスの原因になるけどな。譲らないが」
「強情な人ですねぇ」
「「行くぞー」」
「は良いけど。その恰好のまま行くのか」
「?……はっ!?何故夜宵君には返り血がない!?」
「そっちかよ。そりゃ着替えたからな」
「いつ?」
「さっき」
「うせやん」
爪で裂かれ、血も付き、泥に魔法の影響もあって多少変色(主に焦げ)している服のまま……このまま人前は恰好つかないよなぁ?と言う訳でお着換えタイム。適当な広い部屋を二つ、男女で分け更衣室として使う。集合場所は「宝物庫」、と言っても把握はしていないのでメイドが案内を任された。……はいいとして。
「あ、開かない!?」
「はぁ?貸してみろ……開かない」
「閉じ込められた!?」
「い つ も の~。たまになるんだよこれ」
扉があかない。がいつもの事らしい。これの原因はわかっていないらしいが……。初見でわかる奴もいた。
「なぁ、これって」
「霊的な結界の類だな。一人はさみしいんだと」
「いやそれで閉じ込められても……」
「理由が分かっているってことは~?」
「こいつだ」
何かを下から持ち上げるように見せる夜宵。その手には……。
「なるほど、わからん」
「お前(式上ハクノ)は霊感一切無いからな」
「炎の子供の霊?」
「元は何かの生き物だな、もう曇って見えないが。炎に見えるのはシャンデリアに憑いていたからだろう。対処法がなければ蹴り飛ばすんだが」
「物騒な!あっ!これはどうよ」
そうして出されたのは例のおベント箱。夜宵は納得している様子。子供、幽閉、契約……まぁ、動機はさみしいからだし当然だね。
「……やっとこう」
「いや今やれよ」
「扉は」
「「おい、おい」」
「蹴り飛ばす」
「力技だー!!」
単純明快。退魔が過ぎて滅魔と化した力を持つ夜宵にとってこの程度障害でもないのだ。九尾レベルになると相手次第ではあるが基本不利。
「ほれ、パパっと終わらせて来い。特に保護者枠」
そう言いながら出ていった夜宵。追いかけるように、我先にと出て来た者の中に、探すため周囲を見回した時には……夜宵の姿はなかった。
人目は付かぬか?屋根の上。座る影に番が近寄る。番の一方は糸色 暦だがもう一方は……?
金色の長髪、白い肌、赤と黒のドレス。少年は嘗て、彼の物が自らの完成に舞い上がり、月光の下、輝いていた姿を覚えている。
「来たか」
「よっ」
「この姿は久しいかな?」
「だな。で、どうよ?この世界の道具は」
「あぁ、中々だ」
「この世界基準の力量の把握に一役買ってもらった。どうやらこれ特有の戦場もあるらしいな。あと」
「あと?」
「姿が変わるようになった」
おぉ、何たることか……金髪の女性(だいたいAPP21)は機械仕掛けの蝙蝠もどきになってしまった。羽を無視しても横に丸い。
「……本来の姿だと目立つから影かそれになっとけ」
「解っておる。普段は影だ」
「普段は影だ」……この女なんと!暦の影に限るようだが、影の中に入れる。原理?そういう能力だとしか……。夜宵はこの能力が欲しかったりする。
・バインド「ブラッディチェーン」……呪われた血の鎖で拘束しつつ敵を呪う。 ・ガード「ナイトメアウィング」……夜の支配者の翼を模したマント。敵からの攻撃を防ぐと同時に飛行を可能とする。 ・フィニッシュ「?????F」……強力な攻撃を放つ。
「……なるほど。カードとして解りやすくなるのか」
上記の物はそういう意味。この中に金色の長髪(中略)の女の絵柄のコール(call)と書いてあるカードがある。
「そっちは?もう契約したのか?」
「した、が、カードは見てないんだよなぁっと」
ブルータルファイルから取り出してみると……と、先にブルータルファイルの方を。
・ブルータルファイル……カードや小物を無限に収集できる謎武器。元ネタはディケイドのライドブッカー。これを作ったモノ「十六夜夜渡」の持つ「ブレイクコレクター」の色違いであり、使い手の力量に合わせて出力が変わるよう、実質的なデチューンが施されている。以下機能解説。
1.ファイリングモード……最小サイズで普段はこの形態。持ち運び用のホルダーフックという部品が付き、ベルト等に下げられ手荷物にならない。
2.ソードモード……最長サイズで斬撃用形態。背表紙に有るグリップを本体の対角線の模様の直線上に来るように展開することで、普段だと仕舞われているソード延長(兼収納)用パーツ1と2に加え、刃先のパーツが展開し、完成。基本的に刃先のみで斬れるのだが、スキルで容易にカバーできる。ついでに一部スキル限定で剣先を外すこともできる。
3.ガンモード……銃撃用形態。グリップを30~45度程展開すると、天側の方にあるバレルパーツがスライドして完成。弾丸は使い手の魔力で作られるため、性能は使い手に大きく左右される。使い方と使い手次第で狙撃、連射、爆撃、散弾と割と何でもできる。バレルだけならソードモードでも出てくるが、ガンモードの様な補助機能はない。
4.アックスモード……破壊用形態。グリップを180度展開すると本体から刃が出てきて完成。非生物の破壊に長けている能力を最初から持つ、というよりもそれがないと使われない形態。有っても使わなくなる(スペックで力押しできる)ようになるため、投げると意思を持っているかのように飛び回り、使い手の元に戻ってくる機能が存在する不遇確定形態。
さて本題(?)のカードは……
・コール(多数)……「狐狗狸」「邪之眼」(日本の魔眼。眼を見る、見られると眠ってしまう)「アカエイ」(デカい(大陸レベル)説明不要)「牛鬼」(体は蜘蛛、頭は鬼の妖怪。強い)「がしゃ髑髏」(日本産妖怪で戦死者の成れの果て)「轆轤首」(東洋の妖怪。中国産なので増えた首が空を飛ぶ)「メリー」等々古今東西の様々な幽霊、妖怪、怪異他、それに加えて「ダリア」がある。ダリアは先ほどの子供の霊に付けた名だ。コールは契約相手を呼び出すカード。
・ストライカー「奇怪逆十字棺桶」……何処にどう入ってんだよと言わんばかりに武器能力たっぷり謎兵器。黒くてデカい十字こいつに入れば防御もできる。
・ガード「堕天岩社」……広範囲を囲むことも可能なドーム状のバリアを展開する。見た目は岩。天照大御神逸話が由来。
・フィールド「幽鬼閉結界」……脱出不可の領域を生み出す。墓場、古びた館等「呪素」が多い場所だとなお良し。
「呪素」……呪祖ではなく呪素。呪術や妖術に使う謎エネルギーで、恨みや死者の多い場所に多く発生する。呪素が多いほど寄って来る者達(幽霊、妖怪)等がいるのだが、そいつらも呪素を多く発生させ、呪いを生み、悲劇を生み、どんどん強くなっていく。夜宵はストレスと怒り等で多くの呪素をため込み、妖怪等の技「妖術」や「呪術」を行使できるようにしている。割と自殺行為。
「こんな感じだ」
「多いな」
「不当な式神ってていの悪霊、妖怪全員が入ったからな」
「てことはこれでも一部か」
「そうなるな」
「しかしなんだ?どいつもこいつもバックルとカードケースが別になるのか?」(リアル童貞)
「居たのか」
「今来た」
んなこたぁ無い。この二人が変わるタイプだっただけで必ず変わるわけじゃ無いし、変わるのが珍しいって訳では無い。そんなこんなしている内に、遠くから呼ぶ声がする。
「夜宵くぅん?」
「行くか」
「あいよ」
腰を上げる、影に入る、背伸びする、それぞれがワンアクション挟んで移動を始める。人目に付かない位置とタイミングで飛びを下り、角を曲がれば宝物庫に付くというところでハクノがしっぽを振った犬の様に飛び出してくる。いや、実際にしっぽが揺れている……体の前で。しかし、それに気づく前にしっぽの揺れは止まる。抱えられた黄金色の狐の耳がピーンと張っている。夜宵は気づいた、こいつは「九尾の妖狐」「自身の呪素に気づいている」ことを。しっぽは一本しか見えないのは隠しているんだろうたぶん。
「ワンちゃんゲットしたゼ☆」
「それは九尾の妖狐だろが捨ててきなさい」
「戸惑いがない」
「やだ」
「ヤダじゃないよ。放置してると俺が世話することになるだろうが」
「あ、そっち?」
「しっかり使役できなきゃ危ないだろってとこはそこまで心配してない」
「ハクノだけは友達多いからな」
「もう契約したもんね」
ハクノがドヤ顔で見せたカードには確かにその狐が浮かんでいる。名前は「ゴン」らしい。
ついでに、この子のあれは元もままだね。カードケースの表面に、「狐の頭の周りに丸くするべく、クジャクの羽の様に尻尾が描かれている」ね。円の中に狐の頭をかいて、開いた部分に尻尾を九本、炎の様にも見えるように描いたら出来上がり。
「……従属できれば戦力としては魅力的だけどさぁ」
「わかる」
「解りやすく頭抱えてんねぇ」
「……まぁ、いいか」
「ぃやったー」
向きを変え、空いたスペースで抱えた狐と踊るように回りだす。少し困ったような狐と笑顔の少女は、縁側から孫がペットと遊ぶ様子を眺めている様な気分にもなる。まぁ、おばあちゃん枠は……。
「従属もさせやすそうだし」
「と、言うと」
「以前ハクノみたいなやつに惚れていたみたいだ。目の前で死んで後悔しているが。ま、利用しやすいだろ、あいつなら」
「……」
魂にはその者の本質と経験が現れる。影月夜宵は死者の魂はもちろん、目を凝らせば生者の魂も見え、その過去を知ることさえできる。余裕が必要ではあるが。ついでに、これ結構疲れるのだ。
後ろから教師や篠田兄の保護者枠と女性陣が現れる、着替えも終わったよう。邪魔にならないように足を進め、角を抜ける、左側の壁が無くなる、その時である。奇襲、高く掲げた剣が夜宵に振り降ろされる……。
左の裏拳が剣を粉砕、正拳突きが胸部を撃つ。簡単2ステップで戦闘?は終了した。ビビッて下がる男が3人、どうやら計4人で殺そうとしたようだが大失敗に終わったようだ。もろに攻撃を受けた男も生きている、夜宵はその男の首に手をかけ、締めながら掲げるように、見せつけるように体が浮くほど片手で上げる。
「寒っ!!?」
(寒い……?)
「そこまでだ」(冷たい……!)
寒い!周囲がそう感じとったのに対し、冷たいと感じ取ったハクノ。それは夜宵に触れている腕から、つまり「影月夜宵から冷機は発生している」。影月夜宵は今、メッシュが入った様に深い水色の髪があると同時に、黒い闇を抱えた生気の感じられない青白い焔の様な影で顔は隠れ、その中から青白い双眸が覗いている。
「何故止める?」
「殺す必要はない」
「妥協して1人だけで済ませるつもりだったんだがな」
「何をどうしたところでこんな奴らが夜宵君に勝てるわけないだろ!殺す必要な無い!」
「この死は副産物程度のものだ。ドレインの感覚を掴もうとね」
「それは殺す必要ないだろ!」
「ある、見せしめとしてちょうどいい。何人殺せば確実に止まるのかは知らないが。まぁその都度だ」
「時間をかけて説いてやれば人は変われる!不必要な争いは無くなる!」
「人は変わらない。説く時間はない、それを別としても聞く耳も持たないやつに説く言葉もない。これは争いではない、虐殺、理不尽に対する相応の抵抗だ」
「こんの……わからずや!」
マッドサイエンティスト的な実験&修練という行動へのを欲求を、無関係な命への理不尽にしないために、見せしめ4割くらいの人体実験は、罪人でも救うという信念の少女の怒りを買った。腹部への初撃を軽くいなしながら投げ捨てた死体に目も向けぬ夜宵の掌底はハクノの肺から空気を押し出す。それとともに後退したハクノは……。
左手を握り左脇、腰のあたりに構え、右腰を叩き、人差し指を立てた右手を甲を前に向けて左上へ、手を軽く開きながら右へ動かし体を開いたら、右手を握り脇に構え、同時に左手を伸ばし右上に伸ばす、左腰を叩きつつ両腕を広げたら……。
「…………変身」
無色透明の装甲がパーツごとに展開、体へ装着されると同時に、多くが明るい水色に、一部のパーツ(複眼、風に流される涙のライン、靴裏等)が朱色になる。機械的にも見える見た目の変身ヒーローがここに爆誕する。
……ほんの少しだけ遡る。
「ま~た始まった」
「また!?いつもこんなことをしているんですか?」
「いや、今年入ってから2回目かな。夜宵は理不尽な罪人に情けの余地なし、殺せ。ハクノはそんな人でも助ける。っていう信念が有るから、敵が一緒でも衝突するんですよ。僕たちが基本的び相手する連中は満場一致で叙情借用の余地なしで片が付くんですけどね。小さい違反罪程ぶつかるんですよ」
「子供が裁きを下すなんて」
「自分達がやらないといけない。誰もが見て正気を保てる世界じゃないから、誰もが否定する、確かに有るけれど、決して無い、無いことにしなければならない。だから誰にも言えない……そういう世界」
「信じないでしょって高括ってるけど」
「実際信じないから情報の分かりやすさと合わせて都合がいい」
「仮にそうだとして、……ご家族は」
「僕と夜宵はその手の事件にかかわる警察。周囲からは何を訳の分からんことをって扱いだけど。ハクノは居ない」
「いないって……!」
「後で本人に聞いてください」
戦場?そこでは変身ヒーロー系女子が只の大正衣装の男にいなされ、カウンターを着実に喰らっていた。焔の影は消えています。
「人が変わる可能性に賭けないのも、過剰防衛に殺すのも理解できる!それでも!」
「助ける?俺のため?前にも聞いたわ、その戯言は。俺は助けるべき存在ではない!」
「そんなことは無い!渦中に、火中に身を投じ、確実に助けられる人を助けるその在り方は助かるべき人だ。何よりも、苦しませないために私たちを殺そうとしたんでしょ?」
「誰よりも助かるべき被害者とその親族は、お前の信念邪助けられない!」
外野
「え、え?い、今のはどういう?」
「……この辺の説明は夜宵がいた方が良いんだけどな。ハクノは依然人体実験のに被検体の一人で、夜宵は加害者被害者問わず殺そうとした。それを周囲の人間の意志によって止めた結果がいい方に転んだ一人。……殆どの被検体になった被害者が、社会に適合できない、苛められ、殺害され、自殺する、そも目を覚まさない、正気が無い人もいた。結果として、殆どの人が「あのまま殺されていた方がましだった」という結果が残っている。という話がある」
戦場
「ガァッ!」
いつの間にか帯刀していた日本刀での居合による奇襲。結果としては表面に傷をつけただけだが、突き飛ばすそれは、短時間の放水の様な黒い何かだった。手ごたえを感じたようで、夜宵はもう一度刀を振る。掲げられた刃には、青白さの殆ど無い、闇の様な黒い焔の影が立つ。振り下ろされたそれは濁流の様にもなった斬撃としてハクノを襲う。
「……!凍る!!?」
前腕を顔の前で交差させ、真正面からのガードで受け切ろうとしていた腕が少しづつ凍り始める。それはそれとして特異や不思議な防御を取ってはいないのだが、体一つ分程離れた位置から力が自身の後ろへ流れて行く。そのため、ハクノの後方にある木々に少しづつ霜が降る。そして、この攻撃の終わり頃を見計らって、交差させていた腕を払い攻撃を弾き飛ばす。
「ん……ア゛ァ゛! 消えた?」
目の前にあったはずの夜宵にが消えていることに対する困惑はすぐに晴れる。
「後ろだ!」
「!」
その声と共に振り向いた時にはもう左手で構えられており、逆袈裟斬りで先ほどのような攻撃を背面で受けることになる。
「冥桜・裁断衝!」
「……!ッハ!?」
壁を破壊しハクノが吹き飛んだ軌跡の周囲に、黒い桜の花びらが風に舞う。畏怖故か見惚れたか、恐怖すべき雅な風景を前に動く者はいない。
故に最初に動いたのは夜宵、刀を持ち換え、舞う花びらを手に取る様に掌を上に向けると、わずかに青を残した白銀の球体を作り出す。作られた球を上げると、刀の柄で球体を打ち上げる。柄で打ち上げられる瞬間に少し肥大化した球体は空中で急に止まると砕け、いくつかの氷塊となり、攻撃してきた組みの残り三人と篠田弟めがけて降り注ぐ。―白雫・氷涙霰― 二の腕、足、頭、等を捉え、確実に結果を残したが、骨折には至らない程氷は小さくなっており、すぐに消えた。
次の瞬間!
「ガァ゛!」
瓦礫を吹き飛ばして、ハクノが現れた。
「はぁ、はぁ……そろそろ終わりにしてやる」
「……ふぅん?」
ベルト左側にあるボタンの上側の枠と同化しているスイッチを押し、倒すようにスライドさせる。必殺技待機状態となったらベルトの左右のボタンを同時に叩きながら腕を前で交差させ、広げ、右足を引き、腰を落としながら両手を右腰辺りに持ってくる。アギトなイメージ。ボタンを叩いた時に展開された足元の魔法陣のエネルギーは、腰を落とし始める時から右足に収束し始める。
納刀し、無言で、構えもせずいる夜宵の右足と顔が、闇を孕んだ凍てつく青白い焔に包まれる。
ハクノの助走の後の跳躍を合図に、夜宵もその場から飛び上がる。まっすぐ上がった後、右足を突き出し夜宵に突撃するハクノに、夜宵は空中で一回転し、衝突するタイミングに合わせて右足突き出す。空中で二人が衝突した瞬間、爆発。
爆炎の中から弾き飛ばされるように二人は放り出される。ハクノは白の壁に背中から叩きつけられ、変身が解ける。対し夜宵は、樹の側面に着地した後、走るようにして地上へとも戻る。
「何とか引き分けたーハッハッハ。あーー、起こして?」
「……自分で起きろ」
夜宵の頬に白い鱗が現れる。そのまま歩いて、近づいてぇ、肩を……。
「あいて」
「こら、蹴るな蹴るな」
え?何?鱗生えんの?
生えるよ?白いの。
「なぁ、武器の方は」
「黒百合か?」
「やっぱりか」
黒百合……夜宵自作の日本刀。主な特徴「黒い刀身」は、呪い、恨み、ストレス、諦め等々負の感情と共に呪素を叩きつけるようにして鍛えられた結果の産物である。普段は2,3人の悪霊、妖怪の類がいる。
「話に聞くブレイブって言うのは」
「込めたのは殺意だが?」
「ブレイブは激情の力を制御したものだからセーフ」
バフ系?
夜宵の心器?「断刀・絶」武器だね、条件満たせてないから黒百合を依り代に無理やり顕現してる。
「夜宵君!そんな事ばかりしていると田舎のおふくろが」
「古い。中国人じゃないんだから。あんなのいても居なくても変わらんだろ」
(中国人なら効くのか)
「そんなことはないでしょう!貴方は自分で全部家事や稼ぐことができるんですか」
「してる」
「はい?」
「誰もやんないもんね」
「お前とかな」
影月家の出費の割合は、親:4、夜宵:6。家事全般は夜宵:10と圧倒的。出費は中学の夏から、家事は年中になるころにはそうだった。さらに、娯楽は無く、修練に時間を割く。故に、誰かに頼る、期待するという選択肢は夜宵にはない。誰かの助けで最善になったことも心が救われたこともない。
「そ、そんなわけないでしょう!……しょう?」
「この目が嘘をついている目に見えるか?」
その眼には、闇こそ無いが光もまた、無かった。
「疲れている目だよね?」
「おう、疲れてる」
「しゃぁない。いきなり飛ばされ実質脅迫、お荷物だらけに、今奇襲されたしな」
「殺せたらストレスじゃないんだがな、余計面倒な気しかしない」
「こ~れは仲間とか言えない。一緒の行動も嫌になるわな」
「無いね」
「む……」
全滅までの労力とその後の事を考える夜宵、夜宵の逆鱗に怯えるハクノと暦にリアル童貞、どうにかバラバラにならないよう考えていた教師。……このままだと話が進まないうえ、命も危険と察した王が半ば強制的に話を変える。
と、その前に。宝物庫という体で来ている此処、外である。いきなり屋根の上からだったのでカットされたやり取りからの情報なのだが、なんでも、「以前の王が傲慢で、作るも収める物もなく、少ないものも外の武器庫に移された」らしい。
閑話休題。王が出した話は「伝説の剣有るから抜いてみて」みたいな話。曰く、この世界の再生記に、神が人に施した7本の剣が有り、その一本がこれである。曰く、誰もこれが持てないらしい。名は、「ブレイブソード」。
再生記の話はもうほとんど消えかかってるけど、7本剣が有るという説は今でもある。と、言うのも地域によってその力が形大きく分かれ、風のブレイブソード(仮)は雷を意のままに落とすこともあるという話から、基本の7つの属性それぞれに1本あるというものである。また、使い手応じて力が変わる剣であるという説もあるが一つの伝説に2本のブレイブソードが出てくる話もあり、所詮は諸説である。
ついでに、再生記というのはこの世界にある伝説の一つ。ざっくりと言うとこの世界は異界の魔の手によって一度滅びている、神の手によって再生され、この時に剣をもらったとかなんとか。これも諸説あり。
武器庫の奥、一部だけが明らかに違う壁、そこに一本だけ鞘に収められた剣が飾られていた。鍔が、剣身の面から見て丸いこと以外は普通に見える片手剣。
この剣、ブレイブソードには魂があるようで、資格のないものを拒むようだ、その方法が強い光と共に熱を発すること。結果としては、ハクノが触れられる事を除いて、形だけパパっとやろうとした夜宵も、そこまで重要視していなかった糸色暦も、全員触れることすらできなかった。
「それじゃぁ、パパっと下りるぞー」
「余計な事を言い出すと夜宵のストレスで(こっちが)死んでしまうからな」
下山も何事も無く終わったので省略。強いていうなら、道はほとんど整備されておらず、葉が日を遮っているため暑いぐらいの気候でもとても寒い事と、……夜宵が常時「焔の影」の面だったくらいだ。
アルターの城下町
山の麓に有り、山と町の外との境界に12メートルの高めの壁を作って囲んでいる町。そんな造り故に外界との出入りには鉄門を開く必要がある。
その門の向こう、門と門の間の大通りの真ん中で、人の首を絞める白い化け物と、その化け物に飛ぶ斬撃を放つ黒い化け物がいた。
「失せな。こちとら時間が惜しい」
そう言い放つ黒い化け物に対し、白い化け物は即座に飛ぶ斬撃で焼けた部位を無かったかのように再生させた。今、ここは戦場となった。一般人は転げまわった後、そそくさと逃げていきました。
「やる気か?楽しませて貰おうじゃねぇか。ア゛ァ゛」
初手から鍔迫り合い、更に、燃え盛る黒い飛ぶ斬撃を放つ。
冥黄・裁断衝でしょ?
冥黄・裁断衝は凍る、コレは焼ける。
怨焦泥楴……純呪素で放たれる武器による中距離攻撃。斬撃、打撃、刺突等の性質は武器によって変わる。泥のようで高い粘性を持つ黒い物体が敵や地形に付くと離れず、絶えず燃え続ける。この焔は、炎のような影響を与える呪素であり、呪素に干渉しないと消えることはない。
こんなやり取りをこちら側とするリアル童貞の手には夜渡達の映像を映し出した蝙蝠カメラ。この子はスキャンした対象の情報を教えてくれるのだ。以下はその内容の一部且つ要約である。
名前は「リバイブ・インストーラー」。能力は超再生能力。見た目は白く、翼が生えており、凡そ円柱状から不気味な爪の様な物が螺旋を描くようにいくつも突き出している。今目の前にいるのは翼も爪のような物もない人型なんですがね。
大刀を片手にやったらめったら斬、斬、斬、斬、斬斬斬斬ザンザンザンザンザンザンザンザンザン……。もう、周囲の眼は恐怖か何かで真っ白である。
「「……」」
「うぅわ一方的過ぎて引けるわ。面白みの無い」
「や、夜宵くぅ~ん?」
「……ほっておいたら、いいんじゃないかなぁ……?」
断。さらに、真っ二つにした敵に雷の0.8倍の電撃を纏ったキック。敵が光速に修復、再生を行っているところに、明らかに入らねぇだろってサイズの日本刀の鞘に大刀を納刀しつつ、口から鬼火を連射と同時に8つの首が黒い焔と共に登場、その単眼から謎のビームを連射する。中国産轆轤首風の分身術である。大刀となっていた呪術的リソースは大刀納刀に連動して柄頭から出ていた鎖が伸び、右腕に巻き付き肩にまでくる。無音の納刀が終わった瞬間、鎖の先は大きな鉤爪(手の側)と分銅(肩の側)になっていた。
怨鎖月影……読みは「えんさ げつえい」。縛り付け、引きずり込む呪いの鎖。大量の呪素が心器の影響を受けて武器化したもの。本体は鎖であるため、鉤爪と分銅の部分は任意に変えられる。長さ変化の幅や硬度は呪素や妖悪霊達とのつながりの強さに比例する。
この後、鎖で掴んだり引っ張ったり殴ったりラッシュかけたりするのだが……見てられないハクノ達は門を閉めた。
「な、なにが何?何がどうなっているんですか!?」
「……暴走?リアル童貞なんか知ってる?」
「……いや?」
こうなるのも致し方なし。なんせここまで感情的?、それ以上に変貌するのは初めてだからだ。ついでに、夜宵のストレス発散に八つ当たりは無い。暴力的な場合は有るが、それは必ず「原因の排除」だからである。原因(主に同級生、この世界の未知&無知)を残したまま、というのは好まないし、妥協していたのは(口だけで)実害がなかったからである。
「強いて言うならストレスが爆発しただけじゃない」
「夜宵君はガス抜き下手だからなぁ~」
「兄弟なのに君付けなんですね?」
「実質他人……やぁだぁ~」
「「解るぅ~」」
「随分心のこもった「解るぅ~」でしたけど……?」
「ほら?家は基本両親が家にいないから、食事は大体夜宵の物か総菜だから」
「ほら?私は両親が死んだから食事はバイト先の廃棄品か夜宵君だから」
「ほら?家はうちの家事は全部夜宵君がやってるから」
「これは「いい加減自立しろ」って言われるは」
めっちゃ言われている「いい加減自立しろ」もはや口癖……とまではいかないが。ここの証言は上から糸色、式上、影月である。
「え?ゑ?ごりょ?ゑ?」
「家の両親は警察だからほとんど帰ってこないんですよ」
糸色家は両親が警察、加えて中学生の妹が2人の5人家族。下の二人もそっち(家事全般)に対しアクティブではないので、基本的には暦が行っているが、稀に掃除にも夜宵が混ざる。
「家も警察……は関係ないかな?」
影月家も両親が警察、しかもクトゥルフな怪事件にがっつり首を突っ込んでいる。上二人(皐月と睦月(こっちは登場していない))と夜宵に違法養子のマトイで血がつながっていない。上二人の母親は、帰ってこない夫に憤慨し、家を飛び出し、今は小料理屋を経営。みんなよく通っている。マトイは元クトゥルフ系怪事件の被害者。 元々大勢が住んでいたため広い敷地を、夜宵が一人で切り盛りしている上、時間が空けば修練に挑むためほぼガス抜きの時間がない。 なんなら夜宵が自立しようとしたら、全員に全力で引き留められた、なんてこともある。
「家は物心つかないうちに事故で。かえったからこそあえないかな」
式上の両親は、事故に遭う際に自身が入っていたベビーカーを突き飛ばすことでハクノを助け、そのまま轢かれて即死、以降は様々な家に引き取られる。黙っていたのが失敗だったようで気味悪がられ、希望をくれた引き取り手も家事で倒れる柱を支え(男)、煙を多量に吸い(女)死亡。といった変遷を遂げている。現在は国から支援を受けたり、バイトをしたり、夜宵に面倒を見られたりしながら一人暮らししている。
「そ、そんな事が……」
「知らんのか、教師なのに」
「た、担任じゃないので」
「と言う訳で、夜宵君に不要なストレスをかけるお前らは殺す」デデッ
「落ち着いて!わかるけど!すっごくわかるけどォ!」
(このグループは全員が夜宵ありきだからな)
「息抜きのぉ、何か!、無いんですか?」
「無い」
「えぇ?無いんですか!?」
「無い。基本家事以外は修練してるから」
「か、家事を変わってあげるとか」
「無理、片付けできないし夜宵君の方が早いし、定位置がめちゃくちゃにするのやめろって怒られたことがある。夜宵君はその辺私を信用しないから自分でする」
「げ、ゲームとか?」
「夜宵君はゲームやらない」
「いや、そもそも今ゲーム機も時間も何もないだろう」
「強いて言うなら!」
「強いて言うなら!……無いかな?」
「ダメみたいですね」
諦めかけたその時である!
「あ!」
「有るんですか?」
妙案が……。
「瞑想!」
無かった。
無い扱いなのか。
複数人いる前提で教師が考えてるからね。瞑想じゃぁ交流が一切から無いから実質無し。
「てことはやっぱ殺す以外ないのか」
(因果応報(殺される側)であり、本末転倒(呼んだ側)であり)
「不干渉を決め込むのが一番。ハイ終わり」
一回の拍手を合図に終わった話は端から分かり切っていた話。無駄な時間を過ごし、無意味に頭を抱える教師がいる中、今度は王が口を開く。
「馬車は2組以上用意してください。彼とそれ以外の方とで分けて移動しましょう。後はどう分けるか……」
「あれから目を離すのか!」
「「お前の所為だぞ(6割以上)」」
「な!」
「いや、さすがにそこまで迷惑かけられなんないから「移動は」まとめて行こう」
その声の主は門の向こう。確実に影月夜宵その人である。
「終わった?」
「まだ。開けんな」
「はーい」
すぐに鎖や打撃の音が響きだす。
「……暴走してないっぽい?」
「呪素の力は使ってるみたいだけど……。乗りこなしているな」
どゆこと?
暴走はしていない。モーションは暴走してるみたいな動きではあるもののそれも正気?の内。完全な暴走を波にのまれる、暴走への抵抗を波に抗うとした表現した場合、これは波に乗っている状態。あくまで自身の意志の範囲でハザードなことをしている。
「さて、夜宵君に助けられた時の話でも」
ふんすふんすと話をねじ込もうとした時、転移勢には聞き覚えの無い声が聞こえてきた。
「貴様!何モノだ!何をした!」
「お止めなさい」
視点を移しまして。……もう誰かも判らない肉片と血溜まりの上で、瘴気を解き、男が姿を現した。見たこともない服装の男は自分達を一瞥すると何かを言いながら血溜まりに浮かぶ小箱を拾う。
「敵じゃないと良いな。その辺はお宅らの判断次第だが」
(これがさっきの奴の変貌の原因か)
拾い上げた白い小箱、リバイブのロゴの入ったUSBメモリのようにも見えるそれを、夜宵はぼんやりながら体内にある状態で認識していた。肉片になるまで殴った理由も核となるコレが多少動くので、逃げ場をなくすためだったのだが……どうやら傷一つ無い。
「あんた!」
こんな睨み合いにもなっていないところに主婦が割って入ってきた。
「ん?」
「ありがとうね、助けてくれて。あんな男でも一度は愛した人だからさ」
「あぁ、あのへこへこ逃げて行ったのが」
「そうそう。例ぐらい言いなって言ったんだけどね、すっかり怯えちまって」
「気にしなくていいさ。元より八つ当たりがほとんどだったからな」
ここにさらに、王様御一行が後方から声をかけてきた。
「すっきり、しましたかな」
「お、王様!?」
「いんや、全然だ」
「そうですか……。貴方達は馬車の用意を」
「「はい」」
「お願いします」
「え?何?あんた、王様とどういう関係なんだい!?」
「雇用関係?かな」
「こよう?」
「「サポートするし報酬も出すからお仕事してね」って関係」
「な、なるほど?」
二人の騎士が王の命を受け動くと、遮らない様にタイミングを見計らっていた青年が動く。この青年は「貴様!何モノだ!何をした!」と言っていた騎兵の統率者のようで、一人だけ鎧の意匠が違っていた。
「父さん」
「「「父さん!?」」ってことは」
「まさしく白馬の王子様。見た感じ最年長かな?」
最年長かな?というのはあくまで「王家のご子息」の範囲での話。実際、上からこの白馬の王子様(16)、圧の強めな王女様(14)、只のクソガキ王子(10)といった順で生まれている。
只のクソガキの描写あったっけ?
してなかったっけ?三上に一目ぼれして夜宵にを目の敵にしてるぞ。とまぁこんな五人家族である。
「おかえりなさい。よく無事で戻ってきましたね」
「ただいま。この、見慣れない人たちは」
「我々に協力してくれる方々です」
(実質的な拉致および脅迫だろうに……悪意を一切感じられないのが逆に怖いわ)
「では、この人も……」
視線の先には当然夜宵。暴走にせよ正気にせよ、化け物としか見られない容姿で血だまりに立っていれば不安も当然である。
「えぇ。大丈夫ですよ、彼にも彼なりの良識が有りますから」
「有るか?」
「良識が有るように見えるか?」
「み、見ずらいんじゃないかなぁ?」
「裁くべきものを裁いているだけなので良識です……たぶん」
一応、地面以外には被害は出ていない。吹っ飛ばした敵を鎖で引き寄せたり、他所へ攻撃が飛ぶこともなく、圧倒したからである。今も錬成陣を描き、地面の修復をしている。そのため会話は基本片手間である。
「我々は北の街へ今から行くのですが、貴方達は……?」
「えぇ、行きますとも」
「では、先にギルドの用事を済ませますので少し時間ができます。その間に北門前で軽い休息を取ってください」
「「はい」」
「では、我々も」
「「は~い」」
ギルド―アルター王国・陰都支部―
北の大通りに面した「ギルド」。石材ばかりの中で木造建築という目立つそれの中は、ゲームやアニメなどの作り物のイメージからは少しばかり離れたものだった。人が少ないわけではないにも拘らずかなり静かなものだったのだ。
「お邪魔しますよ」
「わー、静か」
次々と、我先にと入っては夢に見た場所に声を上げる生徒。そんな輩に釘を刺す職員が現れる。
「静かにしてくれますか?出来なければ最悪死ぬことになる」
「はぁ?」
「随分バイオレンスなんだな」
職員は翡翠色の髪が肩甲骨の下に行かない程度……二の腕の中頃までの長髪と綺麗な顔立ち、十分豊満な胸部、そして長く鋭いようなエルフ耳が目立った特徴を持つ。
「知らないんですか?それがルールです。で、何用ですか?」
「彼らの登録をお願いしようと思いまして」
「エルh!」
「音量を押さえろ」
「……」
少しだけバカしているハクノの頭を掴む夜宵の姿を見たのち、職員さんは奥へ行き、他職員へ登録の手続きを任せる。
「自分でやらないんだ」
「さっきの奴だけ(寿命が)長い、加えて強い。立場は知らないが……」
「この場で最強?みたいだな」
今度は先ほどの職員に変わり、人間のおばちゃんな職員が来た。
「あんた達、こういうカードは持ってるかい?」
そう言って見せたのは城でもらったスペックカード。全員が持っていることを主張すべく上げたものを見て……。
「あー、魔力操作ができないのがほとんどだね。……そうだねぇ」
少しの間奥へ行き、もう一人職員を連れて戻ってくると魔力操作の出来る4人だけを履けた2グループに分ける。おばちゃんは魔力操作出来ないほうへ、もう一人の若い職員さんは魔力操作可能なグループに付いた。
まずは魔量操作出来ないグループ。最初は一人づつ某を握らされ、次に奥から引っ張り出してきた水晶への上へ、雫の様な物が水晶に落ちると水晶が光りだし、その光が下の方で束ねられ、予め水晶の下に用意していたカードに刻まれていく。これは、棒が魔力を吸うギルド専用のマジックアイテムであり、その棒からのみ、同様にギルド専用のマジックアイテムである水晶が吸い、水晶は魔力から情報を引き出し、ギルド用のカードに刻む。
次に魔力操作可能なグループ。若い職員さんが一台の機械を持ってきて説明を始める。
「初めまして。皆さんの登録手続きを担当させていただきます「小昼」です」
この瞬間!夜宵が眼を凝らす。その目に映るモノはごく最近の情報で……。
「「よろしくお願いします」小昼さん」
「はい」
「小昼は階級であって名前じゃないみたいだな」
「あえ?そうなの?」
「そうですね。貴方の様な方に安易に知られると危ないですから、基本的にギルド職員は階級で自己紹介します。私の「小昼」が示すのは新人ですね」
「ふぅん」
(呪術に対する警戒……最悪名前だけでも殺せるのを把握しているのか。一目見ただけで手の内がバレるとなると最悪でも戦闘は避けたいな。肉付きだけ見ても相当な手練れしかいない)
コレマジ?
マジやで。ギルド職員は最低Aランク相当の手練れしかいないぞ。Aランク相当の冒険者じゃぁ手も足も出す暇なく鎮圧(死)される程度。今の夜宵だと確実に勝てない。
「えぇ、では。改めまして、ギルド「理よりの監視者」をご利用いただきありがとうございます。今は、今必要な情報を説明させていただきますね。こちらの道具はギルドカードの作成、更新を目的としたものです。まずは、職員にお声をかけていただいて、こちらの~白紙の「ギルドカード」をもらってください。以前に使った履歴が有りますと値が上がって2500ベルかかりますから、無くさないようにしてくださいね?悪用された話もあるみたいです。信用も下がりますよ?次にこのマジックアイテム「AUM」のここに、更新、作成するギルドカードを、その上のこちらに、スペックカードを、そして、その横のここにクエストや試験を終えると「評価紙」というのがもらえますので、有るのなら入れてください。すると、こちらから出てきますので。以上です。何かありますか?」
AUM……オートマチック(automatic)・アップデート(update)・マシン(machine)でAUM。機能は上記の通り、ギルドカードの更新。
「はい、なんでスペックカードが有るのにギルドカードを作るんですか?」
「それはですね、スペックカードの場合、その場その場で表示が変わりますから、評価、判断基準とするのは難しいんです。しかし、スペックカードの場合、その場における能力値を判断できません、逐一このマジックアイテムを使わなければ更新できませんから。それに、ギルドカード用の項目も有ります。と言う訳で、基本的に役割は別なんです。他にはありますか?」
「……無いかな?」
「機能周りや基本ルールもパンフレットに有るしな」
「いつ取ったよ……?」
「職員が奥行ってる間に」
入って右奥、そこに無料・有料のパンフレットや新聞が置いてある。職員がAUMを持ってきている間に、式神と化した悪霊に持ってきてもらっていたのだった。
この後、ギルドの機能を教わりながら自身のギルドカードの作成を行っていったので、機能周りをこっちでまとめよう。
1.クエスト周り……ギルドでは周辺地域の管理、観察の仕事がある。その際に見つけた異常や、周辺地域の住民の依頼によって「クエスト」が生まれる。このクエストを仕事の無い冒険者や国に開示、報告する。冒険者側の手順は、自身のランクに合わせてクエストボードに有る依頼書を選び受付へ、其処で支給品や死体等の処理などの選択、確認をして最終決定を終えクエスト開始。討伐後の処理を金で任せない限り、したいなどはギルドまで自分で運ぶこととなる。我々は管理者、あくまでどうするかはそこに生きる人たちの選択なのだ。
2.輸送、商品周り……ギルドは世界各地にある。故に様々な地域の限定的な品物(食品有り、家具有り、素材も武具も有り)の入手も、大きな家具などの輸送も可能である。ただし、道中の存在(道のり、敵対する生物)によって金がかかる。金銭や物資を預かってくれたりもする。
3.その他……フリーボードという物が有るのだが、許可を取ることで求人(パーティーメンバー募集。従業員の募集)や布教のための紙を張ることができる。
4おまけ?.ランク……ギルドにはランクが存在する。S.AAA.AA.A.B.C.Dの7段階である。基本的には適正値等から取られており、AAAとAAは、アバウトすぎるA帯の細分化のために造られた。Dは登録のみ。Cは始めたばかり。Bは常連。Aは問題ありでも十分な実力者。AAは信頼できる実力者。AAAは規格外レベルの戦闘力で尚且つ信用できる。Sは主神只一柱。
仕事がもらえる!飯も食える!荷物も預けられる!ルールを守らなければ殺される……!凡そこんな感じ。
一通りの説明、処理が終わったところで職員は奥へ戻っていく。軽く見回せば魔力操作できないグループはまだ終わっていないようなので、商品やクエストボード等具体的に何があるのかを軽く見て回るという話となったところに王が声をかけてきた。
「登録は、終わりましたかな?」
「王様ぁ」
「はい」
「これからちょっと見て回ろうかとねー♪」
「ねー♪」
「そうでしたか。では、このクエストを受けていただけますかな?」
クエストボードに張られる紙、クエストシートの書き方は基本・見本が有り、殆どがそれにそろえて作られる。制作に必要な情報は……1.クエストの名称(割とどうでもいいが、簡易化した呼称の元になったりする)。2.クエストの凡その分類。護衛、討伐、捕獲、狩猟、採集が主となっている。3.対象の情報。4.場所。5.依頼主の情報。おまけ.理由、経緯。といった感じ。
王から出されたクエストは……。1.守ってくれますかな? 2.護衛 3.アルター王国の王御一行。 4.アルター王国―陰都支部―~アルター王国―戦商街―。 5.エイリス。 6.クエスト受注やギルド利用の練習です。そちらの世界では「ちゅーとりある」と、言うそうですね。
エイリス?
赤い長髪のねーちゃん居たろ?彼女。
……、頭悪そうな奴?
そうそう。
「わっかりましたー」
「行くぞー」
「オー」
「お前等……」
建て前と適当な理由付けな内容のクエストを快諾した4人は受付へ。先ほどの若い職員さんが対応してくれる窓口で処理を始めた。
「このクエスト……ですね、はい」
「?今の間は?」
「あぁ、はい。いえ、見覚えのない内容だったので。パーティーメンバーの数はは4人ですか?」
「上限があるのか?」
「はい、こちらの処理の都合で、1パーティーに付き10人までとなっております。超えた場合、あまりの方を同行する別のパーティーとして処理いただきます。えぇと、支給品の資金は依頼主から提供されていますね。凡そ一人当たり50000ベルまで支給品を相談できます」
「え~と?」
主な支給品の内容は……1.回復系(回復能力を促進させる薬や、回復魔法を行使できるマジックアイテムのセット。高い割に危険だったりもする)5000~20000ベル。 2.罠系(敵に合わせた簡易な罠の道具のセット。性能はまぁいい程度)1500~100000ベル。 3.採取系(ピッケル、虫取り網、スコップ、斧といったセット。そこらへんで買える)3000ベル。4.飯(小腹がすいたら片手間で食える食べ物のセット。料理ができるやつには不要)500~2500ベル。といった感じ。割と使う時点で三流というのが一般的な認識だが、そのイメージが先行し、意地を張った結果死んだ事例がある。飯以外は使っていないなら返却する義務があり、状態に合わせて、最大8割の返金が有る。
「飯と回復薬は欲しいな……罠も実物を一度は見ておきたいが……」
「申し訳ございません。捕獲、狩猟対象が設定されていませんので、最安値の罠しか取引できないルールですので」
「はい。じゃぁ……。一人でやりくりを考えても最高額の回復薬と最低額の罠、飯でも行けるな(小声)。決まった?」
「「「同じので」」」
「おう。一番高い回復薬のセット、安い罠と飯がこれとこれと……をそれぞれ4つづつ」
「はい。しばらくお待ちくださいませ」
しばらくお待ちくださ、来ました。
「こちらが飲み薬、こちらが塗り薬です。傷を中心に多めぐらいにとって広めに塗り込んでください。それからこちらが「Cure Crystal」です。魔力を与えると、回復魔法に変換しますのでできれば患部に近い位置で行ってください」
「……わかりました」
小瓶に入っている緑色の液体が飲み薬。夜宵が成分、製法を知るために少しだけ試飲してみると、目に映るかの様に何か微生物の様な物がいることを感じ取った。つまり、この緑色の液体は、体に害の無い培養液で、回復を促すのはこの微生物なのだ。更に黄緑色の塗り薬にも同じものを感じた。
培養液側にも回復効果自体は有る。それはそれとして、この微生物は回復効果の促進と共に妨害であり、この壁を越えられるようであればかなり高い回復力を持っている、回復力が上昇しているという所謂一つの試練なのである。回復に使う多量のエネルギーももちろん入っている。
次に飯。最安値の飯とは、おにぎりである。一つの注文に付き3個のおにぎりが入っている。おにぎりの具はある程度選ぶことができる。具は、梅干し、鮭、おかか、昆布等。さらに、少し値が張るが海老天や干し肉、唐揚げ等もあり、たくあん等も付いてくるようだ。
さらに飯。おにぎりやサンドイッチから変わる程度の値段になるとがっつりなお弁当で食べ応えのあるものだ。豚カツ、唐揚げ、ステーキ等をメインに日持ちしたり栄養価が考えられていたりとかなり良いものばかり。でも(プラス100支払わないと)味噌汁(等の汁物やドリンクが)付かない。最後に、兵糧丸が一番高かった。
最後に罠。最安値の罠は……網とロープのみ、あと杭。高いものだと鉄製の線と電流を流す装置がついていたりするのだが、さすが最安値、そんな物は無い。工夫ができれば強い!……かも?
「終わった?」
「終わった。行こうか」
「は~い♪」
地形や客層、資金面もあり、全てのギルドが統一という訳でもない内装の話をしよう。陰都支部の内装は扉を開けたらすぐ、3(縦)×4(横)のテーブルを挟むように背もたれの無い長椅子2つが多くあるメインホール。メインホールの右奥に新聞やパンフレット等が置いてあり、有料の物は窓口で支払いもせずに一定以上の情報を見ると注意されランクが下がる。左奥の方にトイレも有ったり。。カウンターのある壁を挟んで職員の仕事場、中には大量の本棚や仕事机が見える、この奥に職員用の更衣室トイレや、調理場などがある。
2階に上がると複数の応接間で埋まっており、信用の有る人に小人数で話をする際等に使われる。2階の壁と一階の窓口周りの壁は一応音が漏れないように加護が施されている。基本的には用もなく上がれない。
クエストボードに貼られたクエストの内容は……ホッパーマンの討伐、猿退治、ワイルドボウアの討伐、癒慰の草の採取等々。
癒慰の草というのはゲームでよくある薬草の様なもので、少量の回復効果有るものだ。結構色々な地域に生息している。最安値の汎用回復薬はこれと化茸を、一段上の物だとさらに蜂蜜を使った飲み薬が有る。
あまり大きくないこともあってギルドを見て回るのも終わり、軽い準備運動やヨガ、マッサージなどで時間をつぶしてようやく魔力操作不可のグループの登録が完了した。
「それでは参りましょう」
「「は~い」」
王の号令に合わせて全員が動き出す。ギルドを出て、北門に集合した。今回の足は何組かの馬車なのだが……。
「見ての通り、客席があまりなく……ほとんどの方は荷台に乗っていただくしか」
「ふむ、では私が」
「王は王の席が有りますから、其処に乗ってください示しがつきませんから!」
そんなやり取りを尻目にもしない生徒達が我先にと群がり、押し合い、言い合いになっている状態と、それを止めようとする篠田兄弟、教師に、遠目で夜宵がキレているのを抑えるハクノ達という画?が出来上がっていた。
「こいつら……。懲りねぇな」
「多少はね?ね?」
「ギルド、武器入手でリセットされてるのが分かりやすいな」
「解りたくねぇ」
「お姉ちゃん屋根の上がいい」
もちろん?解決するのは見かねた夜宵だ。怨鎖月影で暴れている全員を巻き取ると荷台に投げたぁ!
「強引だぁ!!?」
「荒業な……!!?」
「暴れなかったのから客席を使え。余りは譲歩余地の有る教師と篠田兄弟を優先させる」
「私は屋根だぁ」
人に譲り、譲歩余地の有る3人を引きずりだし座らせるとちょうど席が埋まるのが分かっているまま、夜宵は3人を引きずりだそうとするのにハクノが声をかけた。
「夜宵くんは?」
「走る」
「「はい?」」
「走る。待ってた時間が長くて体が鈍りそうだったんだ。ちょうどいい」
「バカなこと言うな追いつくわk」
「敦!言い方は悪いが俺も同意見だ」
「だろうな。まぁ見ておけ」
夜宵の指示により動き出す馬車と護衛。ゴムの無い車輪が草原を走るのは中々揺れがきついものこそあれど、屋根の上等は風が気持ちいいと新しい体験に好評だ。青い空、白い雲、過ぎ去る草木、走る夜宵……夜宵!?追いつくどころかまだ出せるとか言い始めるレベルだ。ま、引く物の影響でこれ以上の速度は出せないんですけどね。
「どんな感じよ?」
「身体強化だけなら発動、維持、切り替えは動きながらでも平気装ってのが分かったぐらいかな?」
この辺りに関しては元からだからな。
草原の道中。小さいが橋が駆ける必要性が有る川が目に入ってくる。そのタイミングで、その橋に腰を抜かした人達と人型の虫の怪物、いや、怪人が見えた。
「逃げロォ!」
「アレは!ホッパーマン!」
「ホッパーマン?」
リアル童貞が蝙蝠カメラのサーチ機能を展開する。
ホッパーマン(成虫態)……虫系の魔物の中でもまぁまぁ人に近いタイプの魔物。明らかに異形だがそのほとんどが2足歩行2本腕で武術を基本とする動きで戦う。ホッパーマンと呼ばれているのは、最初に発見された姿がバッタだったからというだけで、鳥もいれば時計もあり、電車もいればキメラもいて選り取り見取りというか何でも有りになっている。個々で似ていても違う戦い方をする上、同一個体でも複数の姿形、戦法持っていたりする。もっとも厄介なのが「ファストタイム」というスキルを共通で持ち、強い奴は慣性の乗らない高速移動からのラッシュで、少し強い程度じゃあ手も足も出ない程の強さを待っていることだ。
「わぁおハイスペック」
そのホッパーマンが今、勿体ぶる様にも見える構えから人を仕留めようととしている。
「っ!させるかッ!」
「待たんか阿保」
目にもとまらぬ速度でホッパーマンの前に飛び出したハクノ。ホッパーマンに蹴りを叩きこもうとするその足首めがけてスナイパーライフルの弾丸が追いかけてきた。
「アブねッ!??」
何とか身をよじって避けるが蹴りは不発。その隙にホッパーマンが距離を取る。
「何するのさ!」
「自分に害が有るわけでもないのに追い打ち駆けねぇよ。ほら逃げな」
「化け物に味方するつもりか!?」
「正気か?!」
言い争いを始めるころには拙い足取りで背を向け逃げていくホッパーマン。夜宵が見た彼は、傷つき、空腹を満たすために休んでいたところに奇襲を受け、戦いたくもないのに戦うしかなく、泣く泣く仕留めようとしていたというものだ。出会い方次第で仲良くもなれただろうに。
「大丈夫ですか?」
「な、何とか」
橋の上で尻餅をついたような状態の4人組に手を差し伸べるハクノに夜宵が言葉を注す。
「骨折箇所があるな、下手な動かし方すると悪化するぞ。それはそれとして助ける必要あるか?(魂で過去を)見た感じ恩を仇で返すタイプだぞ?」
「私にはそう言うの解らないので助けます」
「あっそ。親族のためってのは分かるが、背後から恩人を殴って気絶させて財布奪うとか関わら無いからな」
「……」
露骨な程の焦り様にさすがのハクノもほんの僅かに悩んで手が止まるほど。
「……少し遊ぶか」
ニヤリと笑った上空の影は、一度全くの無意味に地上に降り立つと、走ってハクノ達に接近。その道中でホッパーマンを無意味に突き飛ばした途端、夜宵の右ストレートが首から顎の左側を捉え、吹き飛ばし、柄にも無く宣言する。
「「少し遊ぶか」とか。遊び半分で他者の命に手をかけるような奴を生かしておくのは趣味じゃないんだくたばれ」
「調子に、乗るな!」
「でた!?夜宵君の柄にも無い死刑宣告を兼ねた状況説明!」
「すっごい久々に聞いたな」
「ねー」
「あえっ!?そうなの?私は毎回聞いてるんだけど」
「お前は止めるからな」
「……なるほど?」
まずは敵の初手右のストレートを回避し、そのまま何発か撃たせつつ立たせると、右目を親指で潰す勢いで左手で鷲掴みにし、攻撃を出始めで潰すのを優先しながら鎖骨を折り、執拗に鼻の頭や首、顎などを狙って鋭い攻撃を放ち続ける。
「吸血鬼をああも容易く……」
「あれが吸血鬼?」
敵の容姿は、殆どが人型で、蝙蝠風の翼を持ち、歯の中には牙もある。それだけ。
APPは?
11。
低いな。吸血鬼の名称のわりには。
「血を吸う要素は有るが、……翼、日光や銀への耐性的に、吸血蝙蝠のー……なんだ?人との混ぜ物って感じだ」
「吸血鬼じゃなくて蝙蝠の亜人?」
「先生はそう診断しているな」
(日光への耐性が完全レベルの吸血鬼なら相当強者じゃ。あの男も特攻こそあれど苦戦は必至じゃろう)
(少なくとも吸血鬼退治する吸血鬼を屠ってるんだよなぁ)
「遺伝子的にも人間の側面が有るな」
「元人間とか?」
「あーあのー、なんだっけ?ハーフ」
「ダンピール(人間と吸血鬼の混血種)?」
「それ!」
(儂は便宜上でこの姿の方が良いから使っておるだけじゃしな)
「「もうやめたげてぇ」」
そう叫ぶ外野。それもそうかもしれない、なんせ襲ってきたのは、殴られている吸血鬼の方であるが、それも忘れるほどに圧倒的で、一方的だ。
突き飛ばされ、解放させられたら一心不乱に逃げようと体を起こそうとして、(鎖骨が折れているから)腕が使えないことに気付き飛んで逃げるため、体が少し浮いた瞬間……。
敵への警戒は解かず、腰を落として構える。右足に魔力を集中させ、螺旋状に回転をかける敵が撃ちやすい位置に来るまで待機。飛び立った瞬間、走り出し、翼を掴み、「激流走破」後頭部の首の付け根辺りにドロップキックを叩きこみ、そのまま翼を引きちぎる。
まだ拙い突発な新技「激流走破」は、螺旋状のあと残すように僅かに肉を抉っていた。その後、首を切り落とし死亡を確認。
「……。行こうか……」
夜宵の呆れたような顔を見て見ぬふりして、怪我人も乗せ馬車は再び走り出す。
激流走破……夜宵が教えていた初心者向け?の技「激流槍」を足を軸に発動させたもの。直撃させれば、(ゲーム的に表現して)まず物理ダメージと水属性魔法ダメージが一回、直後に水属性魔法ダメージが、練度に合わせて超多段ヒットする。ドリル×パイルバンカー。
激流槍……螺旋回転する水の槍を作る技、もしくは、魔法で出来た螺旋回転する水の槍その物。投擲、近接戦、矢としても用いることのできる魔法。初心者技という体で紹介されている(シーンはカットしている)のだが、技術的には中々に難しい方。
草原は終わり、森に入る。
ある程度決まった場所を通っているから生まれる道を通る。整備されているわけではないのでガタガタと揺れが激しくなり、乗り心地はどれだけ盛っても良いとは言えない。木という障害物兼足場の影響で時折奇襲される……はずが、先に察知した夜宵が一撃で首等を刺し殺しているためトラブルは起きずに済んだ。
そうして多少進み、日が落ちぬ間に野宿の出来る場所を見つけ、今日はここで寝ることにした。やることは決まった。
「「飯だー!」」
「おっしゃ、調達行くぞー!」
「「おー!」」
「楽しそうだな」
「先が思いやられそうだな。」
そう、飯。買ってはいるが全員分は無いし、夜宵は買ったものは全部自分で食べる気だ、この世界の食文化を知るために。と言う訳でまずは調達。エイリスとハクノに皐月がやる気満々である。
「数人前後でまとまった組を作れ。戦えない奴は動くなと言いたい、が、行きたきゃ騎士2人以上を護衛に付けて樹の実やキノコでも集めろ。お前等(ハクノ、皐月、暦)はこっちだ」
「「「は~い」」」
「私が行こうか?」
「撒くぞ?」
「なぜ?」
「都合が悪いから」
そういうと3人は瞬く間に消え、ハクノは走って行ってしまった。
「ちょい!?あーどうする?王様」
「ハッハッハ、元気ですな。私も彼の意見に賛成です。可能な限り動かない方が良いでしょう。もうすぐ日が落ちますから、迷ってしまいますしね」
「俺は行く」
そんな事を言っても聞くわけもない転移勢。転生に限らず異世界チート物等を読んでいるからだろうか?。隊長を中心に騎士達を半分は残す制約で転移勢の全員が動き出す。
しばらくして、残った騎士達火を焚いた休憩地点に、熊に猪、樹の実や魚の入ったを抱えた人影が現れる。夜宵たちが無傷で戻ってきたのだ。
「なんだ、案外早かったなぁ、戻ってくるの」
「お前は何の成果も残せず情けない姿で戻って来ると思ったんだがな」
「なーに行ってだこいつ」
夜宵が戻ってきたころにははぼ全員が戻ってきていた。いつも通りの無意味無駄的外れな篠田弟の八つ当たりはスルー。「調理はこちらで」と変わろうとしたメイドさんに「自分でやる」と言い、手刀で皮を剥ぎ、内臓を取り、調理を始める。
「よく戻られましたな。それは、ワイルドボウアとストライカーグリズリーですな?」
「ん?そういうのか」
ワイルドボウア……bow(弓)とboar(猪)を無理に掛けた名を持つ猪。すごい勢いで突進する際、相手の頭等の高い位置の弱点を狙うために跳躍を覚えたため、矢の様に弧を描く姿からその名がついた。足が特に堅く喰いづらいうえ、味も良いとは言えない。
ストライカーグリズリー……一撃熊とかいう筋力局振り熊。容易に大木をなぎ倒す力は防御を許さず、敵を圧倒する。筋肉が大きく、堅くなったためか割かしうすのろ。全体的に凄く硬く喰いづらいうえ、味も良いとは言えない。
このほか、夜宵達は木の実や魚は普通に職様なものを選んでいる。それに対し、すぐ戻ってきた連中は、なけなしの拾い物の大半が崩れていたり、毒を持っているなど食べられないものだった。
「ストライカーは……Bだっけ?」
「力以外は低いので危険度はBですな。頭はとても厚く固い骨が有るので心臓を手早く刺し貫いて破壊するのが正攻法ですが……。これはどうやって?」
「奇襲で首に一撃。猪も一緒だ」
危険度……総合的な強さを視覚化した物。A,B,C,Dの4段階が実在する。基本的な能力値を中心に、群れるか、知性、戦略等で判定が行われる。クエストを受注可能かを問うための判断によういられるが、個体ごとの差や、相性等の要素もあり、下だからと舐めていると死んだ事例がある。あくまで総合的、なので表記以上の能力を持つこともある。理論上Sも存在する。
「夜宵君がほとんどやってくれました」
「欠陥と一緒に神経も切ったんだっけ?」
「?あぁ。そうだな、先に魚をパパっと焼くか」
「……その辺の枝を洗って使うしかないかな?」
さて、夜宵が魚を焼きつつ、獣肉を解体している間に。点呼もしない集団をハクノが数え始めた。
「1、2、3、4、……あれ?数が足りなくない?」
「幾つだ?」
「えと……?」
「転生勢のみだと初期が33人。アルターの人らが29人(王族が5人、メイドが5人、騎士が19人)」
「じゃぁ、……3人、生徒が2人、騎士が1人」
「いや、気の所為じゃないかな?」
「バカやって逸れたのを追いかけたんだろ?騎士は救済の余地有だが、他はねぇ……」
「そんなこと言わないでください」
「先生!いや、その……」
「何なんですかその顔は」
「1人は、死んでしまいました」
「え?」
「ストライカーグリズリーの一撃で、頭を」
頭どころか上半身は原形が無く、下半身も吹っ飛ばされた先で曲がってはいけない場所が曲がり、曲がってはいけない方向に曲がった。その直後、パニックになった生徒を篠田兄弟の鶴の一声で束ねるが、1人は橋って逃げ出し、1人の騎士が追いかけて行った。
この話の後に、草むらからガサガサとなりだす。姿を現したのは、逃げ出した生徒を追いかけて行った騎士だった。
「すみません。彼は、樹の下に」
「お疲れさまでした、よく戻ってきましたね。さ、ご飯にしましょう」
王が騎士の肩を叩き、止める。双方の悲しそうな顔や雰囲気からは一部の者は死を悟った。
「夜宵君!蛇!蛇!」
騎士と共に草むらの中から現れていた白蛇。それが悠々と夜宵の中に入って行った。
「なんだ?うるさい。どこに蛇がいるって?」
強制的に立たせ、叩き、中をちょっと余計にまさぐる皐月とハクノ。結果は当然夜宵に一発殴られ、漫画みたいな構図で顔から地面に突っ伏した。
「「ぶべっ!?」」
「なんなんだ?たっく……」
「いや?蛇がね」
「入ってねぇよ。ほら、追加焼くぞ」
「「あ~い」」
少し、食べながら、作りながら無駄話おば。
「そういや、採ってる時も白蛇とか言ってたな」
「だっていたんだもん」
「白蛇は、見てないな」
「居たよね?白蛇」
「あぁ、見た。そいつが来ると必ず夜宵が遠くから判定してくれた」
「変な偶然だな」
「偶然かそれ?」
ここで、当然の?疑問を先生が投げかける。
「どうとっていたんですか?獣も魚も木の実もですけど」
「獣は攻撃されたので背後から首に一撃」
「木の実やキノコは3人で探しました」ドヤッ
「夜宵君に食べられるか判定してもらいました」ふふん
「籠も夜宵が編んだ」
「じゃぁお魚は……?釣り道具もありませんよね?」
「素手。届くなら一々道具に頼る必要もないしな」
「「……え?」なにそれ?」
素手。熊とかと一緒で近くにいた魚を陸へ叩き、飛ばしただけである。ワイルド。調理してないものを見ると、どちらか一方の鱗がいくつか割れているのが分かるのだが、夜宵が触らせようとしない。
「なんだ、変か?」
「少なくとも普通じゃないかと」
「お前らの普通じゃ生きてける気がしないので変で結構だ」
「えと、じゃぁ……どうやったら素手で捌けるんですか?」
「動きで骨格、筋肉の付き方が解るだろう?そしたら消去法でも内蔵の位置が分かる。ならどこが切れやすいか分かるだろ」
「すいません。途中までしかわかりません」
「……そうか」
「あっ、でしたら教えt」
「却下だ。盗めなきゃ誰かに教われ」
「……(難しい子だなぁ)」
先生のスキンシップの試みはほとんど意味も無く終わった。
「うまい」
「味付けも何もしてないんだが?」
「大体焦がすか生だからな、中途半端に」
「え~……」
食事を、夜宵は自分たちが捕ってきた物を他生徒(もちろんハクノ達は除く)と教師と怪我人に「汚い手で触るな」とか「食わせる理由がないな。死んでくれて結構、万々歳だ」等と、最初は触らせなかったが、騎士周りから瓦解していき最終的にフリーになった。
話の途切れに童貞が干渉。調理周りの疑問と方針周りについて聞いてみる。
「ドレインは初期開放だったっけ?」
ドレインはよくある謎エネルギーの吸収を行う物。魚、熊、猪はもちろん、木の実も多かれ少なかれ魔力を持っている。下手に多く食べれば異性魔力の拒絶反応現象による炎症で死ぬため、ドレインは調理、解体に必須の能力である。
「動画にあったな」
カットした動画にあった。魔力の性質を変換する要素も込みの物だが、まだ上手く出来てていないようで、夜宵の手が真っ赤に晴れているのと同時に、手首まで白い鱗に覆われているのがが分かる。
「ん?初期開放?先があるのか?」
「有る。こっちに渡されたデバイスとお前に渡されたデバイスには、一定条件をクリアすることで「称号」もどきと報酬、武器や機能の解放がある」
「レベル50で強力な武器が貰える!的な?」
「ゲームじゃないからレベルは無いけどな。A以上も範囲が広すぎるし」
「どんなのが?」
「出てからのお楽しみだ。称号の解放を目的としたトレーニングをさせるなとのお達しだ。夜宵のもただの窓口で確認できないしな」
「ちぇ」
「ブーブー」
「それは良いが。お前等、何時どう寝るつもりだ?」
「夜宵君と一緒」
「やめろ」
夜宵と一緒に寝るのを止める皐月。彼女の述べる理由を要約すると、寝ている夜宵の領域に近づくと寝たままの夜宵が、起きるまで殺しに来るというものだ。彼女にはその経験があり、朝まで無心で殺しに来る夜宵から逃げ続けた過去がある。
「そんな話があるわけないだろ」
「夢遊病ってやつじゃないの?」
「どうあれ俺は寝ないけどな」
「寝ないんですか?」
「……ハァ(溜息)。余計なこと聞いたな。各自で必要なものだせよ?寝落ちして起きたら風邪ひいてましたとか知らねぇからな?」
「寝なくてからd」
「黙ってろ。気にしなくていいんだよ俺のことは」
そう言いながら腰を上げた夜宵は、夜闇の森に消えていく。待てと止めに入るものも、王に止められる。
しばらくして。
「ようやく全員寝たか」
リアル童貞以外が就寝した場所に夜宵が戻ってきた。
「危険人物一人を残して寝るとは情けない。お前はどうするんだ?」
「片付け」
まだ燃えている火、散乱した喰いかけや骨の残飯をパパっと処理。終われば暗闇の中、座禅を始めた。周囲に漂っていただけの魔力は渦を巻いたり、一点に集中したりしている。座禅の体制で外部の魔力を操作する修練を始めたらしい。
リアル童貞からすれば懐かしいような気もする光景である。後から名のついたニャルラトブートキャンプをやっていた頃、夜渡は寝ながら心器の修練と、寝る直前に一気に消費した魔力の回復と、魔力の消費で木津付いた体の回復を並行していた。魔力の行使は肉体的にも負荷になる、どうしても。故に休息無しも同義の行為だ。
夜明け。木々に遮られ清々しい朝日は拝めぬ故にまだ暗い中、いつもの修練を終え、朝食の準備を終え、姿を消していた間に貼っていた魔除け&厄除けの札を回収していた夜宵が戻ると、珍しく夜宵に起こされないうちに起きていた皐月の姿が目に入る。皐月はなにやら小さい生き物を抱いていて……?
「産まれたのか」
「そう!ほれ~ロンシェン、見て、あれがお父さんだぞ~」
「おいこらテキトウ吹き込むな」
ロンシェン、皐月に抱えられたそう呼ばれる子供の龍は、卵の状態で皐月が発見し、勝手に持ち帰ったものだ。黄緑色の体色、二足歩行、尻尾はさほど長くなく、姿勢はカンガルーなどに近い。食性としては、木の実や葉を好むようだ。
八時半、夜宵が待ってみるかと考えていたのを撤回撤廃し、式上ハクノ、糸色暦以外が叩き起こされ(二人は普通に起きた)始めた頃。
「蹴り飛ばすことないだろ!」
「バカ言ってないではよ喰え寝坊助。こんなとこで寝るのに警戒も無しの馬鹿どもが無駄口叩くなら飯は抜きだ」
「お前にそんな権利があるか!お前が作った訳j」
「もっかい寝るか?」
「敦、そこまでだ」
「な!?」
「メイドさんも起きたばっかり、で?夜宵君以外誰が作れると?」ドヤッ
「ドヤる?要素は無いぞ」
寝坊助の抗議は食事を人質?にされ、即座に収束した。ちなみに、寝坊助たちの言い訳は……「見張り、警戒をしていたら寝ていた」というものが主だった(主な該当者は騎士、篠田、教師)。
馬たちの食事も作り、処理する夜宵。その姿にハクノが言葉を零した。
「なんか違和感。少し考えれば当然なんだけどなぁ」
「全部は見たことないからじゃないか?」
「かねぇ?」
陰の立役者、縁の下の力持ちと言う訳では無い、この様子を例えるのなら、父親の仕事している姿を初めて直接見たようなものだろう。
「人は蹴るのに馬には優しいのか……」
「無駄口叩いて、奇襲して、無駄に犠牲出して、当然でしょ。殺さないだけ温情だよ」
「温情で済んでるか?あれ」
「怨情やろなぁ」
「全部聞こえてるからな……」
「「……」」
準備、処理も終え、さぁ出発。ねむねむレムレムしている奴もいるがそいつ等は全員荷台にぶち込んだ、王にとっては恥ずかしい話、騎士が何名かその中にいる。
森でも、抜けた先の平原でも、当然食事のため、生きていくため、獣魔物が襲い掛かってくるのだが、その全てを夜宵が対処している。具体的にはリーダー格を即殺、殺意を使った威嚇である。
ここで少し閑話を。
「や~よいん」
「ん?どうした?」
「何?その……走り方じゃないけど」
「あぁ、これ?」
水切りの石のように跳ねるように移動する夜宵。実はこれもれっきとしたこの世界の技である。
「「跳躍式走法・八艘飛び」と言うらしい」
「跳躍式走法・八艘飛び」……読みは、ちょうやくしきそうほう・はっそうとび。船から船へと飛び移るように、大きく跳ねて移動する技。実はとても静かで、極めると、水の上を小さな波紋を作るだけで移動できる。ただ、切り返しが限られるうえ難しく、下手をすると足を捻ってしまう。
歩法、走法、跳躍式はどれも移動技の持つ名。歩法は高い奇襲性を持ち、走法は高い機動力を持つ。跳躍式走法を極めると空を蹴り、跳躍式歩法を極めると(相手から見て)気づけば後ろにいる。
「跳躍式とは物好きな。まぁ、水属性走法で最も静かな奴だしお前好みかもな」
「ふぁ……(欠伸)」
「ほほう(キリッ)。他にどういうのがあるのん?」
「激流走法とかだな。これは加減しないと道が抉れる。まぁ?激流走破との相性は最高だろうが」
「地形もそうだが消費と疲労がな」
そんな雑談を挟みながら進んでいる途中。野生のホッパーマン4体が現れた。
「暦(小声)。お前ら先行ってろ」
「しかし」
「邪魔」
「「何を言っ」」
制止を無視し、ホッパーマンの間に飛び込み蹴り投げ左右へ離し、馬へ威圧?をかけ、無理に間を通らせて先へ行かせる。
一人で戦う必要があるか?有る。なんせこいつら早いと、ファストタイム無しで時速300キロを超える速度で走る奴や、城も一撃で崩壊させる威力で蹴り飛ばしに来る奴だっているのだから。まぁこいつらはそこまでの戦闘力は無いが、この集団を壊滅させるくらい簡単だ。
メインは時間稼ぎ、故に敵の攻撃を受けづに流し、投げ飛ばす。浮遊して機銃をぶっ放す奴が一体いるがそいつは他の敵を盾にする。拳メインの飛蝗と足技メインの飛蝗の連携も有ったが、それは足技の方の足を踏み台に飛び、首を蹴り飛ばす。一番気性の荒い蛇は拳の飛蝗と殴り合いを始めだし、途中2組に分かれるものの、蛇が鼻で笑った瞬間蹴る方の飛蝗が拳の飛蝗を助けに行き、それに合わせた銃撃を回避するため、蛇と飛蝗を盾にし、その結果また同じ構図になる。そんな事をしていると、遠くから黒と赤の影がこちらに歩み寄ってくる姿を夜宵は目撃する。
馬車の方では。
「何を考えてるんですか!?あの子は!!」
「私たちがいたところで邪魔なんでしょぉ?割と強かったし」
「倒せる?一対一で」
「無傷でも行ける。ただし時間はかかる」
「影月家的には堅いだけか」
「火力は有るから喰らいたくなってのもあるかな。早いし逃げられるかは場所次第かな、森は割と近い位置だし一回そっちで撒けば倒さなくても行ける」
「……あれ?こよみんは?」
いる?
いない。糸色暦は今、馬車に乗っていない。
それはそれとして、壁と門を目にした御者が声を上げた。
「もうすぐ、北戦闘商街に着きますよ」
そして直ぐ御者はその馬車を止めた。
「あぁ?何で止めるんだ?!」
「ば、化け物だ!化け物たちが街を襲っている!」