0話 今はまだ、こちら(元の世界)の話をしようじゃないか
日が照り付けるは7月20日の10時ごろ。この物語の主人公「影月 夜宵」は、帰宅部にも拘らず、夏休み初日に走って登校していた。距離的にはバスの区間なのに。
影月夜宵は決して成績の悪い生徒では無い、隠してはいるが。決して遅刻の常習犯ではない、バスの距離を走るが。やることがないので補習を教師に頼んだから行っているだけなのだ。ついでに言うと両親は仕事で影響で家にいる方が珍しいほど帰ってこないうえ、兄弟は車を持っていない。
「おそよ~ございまー、先生&皆さんさようなら」
「「待て待て待て待て待て!」園児かお前は!」
「え!?そこ!?」
ついて早々、彼が帰ろうとした理由は、「いるはずもない生徒がいたから」。不登校な生徒では無い、と言う訳でもないそういう生徒もいはするが、夏休み初日に部活にもいかず10時10分に教室にいることがおかしい生徒がってかこのクラスの生徒全員がそろっていいるのである。もう一度言います、不登校&欠席常習犯に帰宅部以外の部活に入っている奴込みでこのクラスの生徒が全員そろっている、夏休み初日に。のおかしいでしょ?
「おはよう夜宵君」
「おはよー、じゃ、ねぇよなんでお前ら全員ここにいんだよ!」
主人公、何たることか、必要ないのに席を立って挨拶しに近づいてきた美少女にアイアンクローで返す、更にはツッコミ付きだ。
「銀の龍の背に乗って」
「乗り物聞いてんじゃねぇよ。命の砂漠に連れてくぞこら」
「暇なので」
「暇なら宿題やってろ」
「「やってます」」
主人公にツッコミを入れさせ、ツッコミを入れた二人は「糸色 暦(♂)」と「式上 ハクノ(♀)」。主人公の友達で、中々変わった上にハードな人生を送っている。
挨拶をした美少女は「三上 聖羅」。かなり目立つ神社生まれの巫女さんだ。夜宵にドロップキックや回し蹴り、罵倒止渇を受けてもよく絡んでくる。
「あぁ、先生、これ」
そう言って夜渡は肩に掛けていた鞄から宿題の山が入ったタブレットを教卓に置く。
「夏休みの宿題……終わったんですか?」
「ん?、そうだよ?あ、やっぱりVRの方h」
「えぇ!?」
「……何?」
「この量を一日で終わらせたんですか!?」
「……うん」
「……とりあえず、答え合わせしておきますね」
この世界では、勉学や仕事にVRやタブレットが導入されており、答え合わせもアプリで行えるようになっている。VR、正確にはフルダイブ型VRが利用されている理由は、現実との時間の差で多く時間がとれるようになっているからである。具体例を出すなら、現実の1時間がVRで3時間ぐらいになるのだ。いやー便利ですね。おかげで企業のブラック化が進んだ。
「一度に全部の答え合わせを始めないでねー、誰とは言わんがそれでタブレットフリーズさせてたから」
「……はい」
もちろん、それ(企業や勉強)用のVR機器やタブレット端末はフリーのネット回線へ繋げられない、が、無理につなげた結果、個人情報が大量に流出した事件がある。そう理由もあり、朝の交通機関の需要は無くなりそうにない。
「ついでに距離とか道中とかで多少疲れてるので休憩ください」
「ついて早々休憩ですか」
「ついて早々休憩ですよ」
「はぁ、構いませんよ」
「ありがたい」
と、言う訳で休憩時間。早速のびをする生徒がちらほらと。二人がスマホを片手に弥生に話しかける。
「具体的に、道中何があったのさ?」
「ん~……ハイエース撃退とか」
「「朝っぱらから事件ですか」」
「だよ?、まったく物騒な」
こんな物騒になってしまった会話に他の生徒が割り込んでくる。
「待て待て待て」
「あ?何?」
割り込んできた彼は「篠田敦」どうしたらこうなるのかわかったもんじゃないやべー奴。実態を知らない人には人気。
「ハイエースって言うのは所謂……」
「誘拐、だな。まぁ対象はjkだが」
「あった」
「マジで?」
「何が?」
「SNSにそれらしき動画が投稿されてる。ニュース等話題になってるね」
「マジか……」
初っ端から女子高生数人が映る、なんでも、SNS用の簡単な動画撮影らしい……?
そこへ横から入ってくる二つの腕は女子高生を車の中に引きずり込もうと腕を掴み、引っ張る。今度はそこへ、今回の本命「影月夜宵」が腕に飛び蹴りを喰らわせつつ乱入。境界ブロックの上で着地、半回転しつつ下がり、車の前方から犯罪者の顔と数を確認する。この文章から凡そわかると思うが、車、女子高生、夜渡は全員同じ方向へ向かっていた。録画しているスマホへ顔を向けたり、後ろ歩きしていた者もいるが……。
「こんのガキィ……!!ふざけやがって……!!!」
「これが何かわかるよな?ケガしたくないなら下手なことするんじゃねぇぞ」
拳銃を持った男が運転席から降りてくる。その間に女子高生5人に二人の男が接近、一人は運転席から降りてきた拳銃で威嚇する男と一緒に夜宵に威嚇する。
(ベレッタ、か……?銃とかよく分かんねぇんだよなぁ)
夜宵は見慣れているので一切怯むことなく徒歩で男たちに近づく。男はそれに驚いたのだろう。
「おい!聞こえねぇのか!」
「……」
夜宵の足はもちろん止まらない。その姿に何を感じたか、早まった拳銃を持った男は夜宵に1発ぶっ放そうとした、その瞬間、夜宵の姿は消えたかのように錯覚するほど加速し、男の手ごと拳銃を蛇翼崩天刃が如く蹴り上げる。拳銃が宙に舞う間に夜宵の追撃、男の顎を左手の掌で突き上げ、無防備にさらされた首への右の拳で一撃、男は脳震盪を起こして失神した。そして宙を舞っていた拳銃を夜渡がキャッチし、即座に構え(装弾数15か……)、ぶっ放す。残りの三人の男の下半身が動かなくなるよう、腰回りから神経を的確に、一発で撃ち貫く。失神した男にも同じように一発。さらに車にも一発。
「お前!」
「やかましぃ黙ってみてろ」
「ぐぇ!!?」
敦の介入は夜宵の蹴り一発で終わった。
次に夜宵が拳銃を向けたのは、5人の「女子高生」。
「狙われる理由に覚えは?」
5人がそろって全力で「そんな覚えはない」と主張する。
「嘘」
そんな一言と共に一発。狙われたのは腕を掴まれた……訳ではない、カメラ役の携帯も持っていないその他な女子高生、の、鞄。大穴の空いた鞄から石膏の破片と共に白い粉末が重力に逆らえずに地に落ちて行く。
「やっほー。たぶん違法薬物もった女子高生が男にさらわれそうになってたからとりあえず全員撃っといたよ。あとよろしく」
携帯で警察に連絡を取りながら夜宵は、撃った鞄の持ち主の皿を撃つ。残りの弾を全弾適当にばらまいたのち、夜宵は去っていくのでした。
「夜宵さん」
「はい?」
「あまり危険なことは……」
「割と日常茶飯事なので」
「これが日常茶飯事だと!?」
「チャメシインシデントだ」
「割り込んでまでネタを入れるなし……つか、殴り合い殺し合いなら学校だろうと家だろうと変わんねぇよ」
「学校でも有るんですか!!?」
「有るよ。三上派閥の教信者共が「聖羅お姉さまと」うんぬんかんぬんで金属バットや鉄パイプ、バールやら持ってくるし」
「そんなわけ……!」
「有るんだよなぁ」
「有りますねぇ……「ハッハッハ」」
「何で言わないんですか!?」
「信用度0、加えてんなこと一々気にして時間つぶすと家でやることが回らないのでNG。余談だけど、そういう派閥の連中のせいで退学、退職、自殺、転校生は割と出てる」
「「!!?」」
「今いくつ派閥があったっけ?」
「三上 篠田 井之頭 以外は知らんな、結構いるみたいだが」
この勢力が今までにしてきたことを上げだすと……ファンクラブ、ソウルブラザーズ(シスターズ)を結成。これに入っていないものが崇拝対象に近づく、崇拝対象が近づく、関わる等に抵触すると、「器物損壊」「窃盗」「傷害」「脅迫」等を行い、徹底的に追い詰める。その結果が上記の通りである。
「偏見です!私たちは」
「なんでそんなことするの?」
どこに潜んでいたのか……。三上派閥の教信者が乱入してきた。廊下は信者でぎっしりである。そしていつもの鉄パイプやバールも見える。
「お姉さまのことを思って」
「邪魔しないで?私は!影月君が良いの!影月君が好きなの!」
「大胆な告白は乙女の特権」
「俺は吐き気を催すレベルで嫌いなんだけど」
「目立つ人と一緒は嫌いだからな、お前」
唐突な失恋(?)三上は膝をつく。さらに何故か激昂する信者。
「お姉さまに思われているにもかかわらず、振るとは身の程知らずが……!死ねい!」
「止めて……?」
「受け入れようが殺しに来るくせに」
「当然です」
「とばっちり」
「八方ふさがり」
「殺すか」
その時、教信者の内の一人が持っていた鉄パイプが半円形にへこんだ様な断面を残して千切れた。
「は……?」「え……?」
皆が呆気に取られている中、夜宵一人だけは反応が違った。
「ヒュー、ハッハッハァン。ナイッシュー。鉄パイプを狙撃とわ、腕上げたねぇ」
「け、警察に」
「無駄なんだよなぁ♪」
その時、夜宵の携帯が着信を告げる。
―リアル童てぇ~ぃ♪ ピ♪
「ハァイ?ジョージィ。腕上がったねぇ、元気にしてた?」
「……随分人気だな」
「何があった!?大丈夫か!?」
「すみません、電話してるんで黙ってていただけます?」
「アッハイ」
「鉄パイプで頭砕いてハートキャッチ狙われてるんですよぉ、辛いねぇ」
「……それは困るな」
「即答してほしかったなぁ……」
次の瞬間、バールが半円形の断面を残して吹っ飛ぶ、もちろん電話相手の狙撃である。
「討つか」
「撃ってからいうなし。助かるけど」
再び周囲が呆け、キャーキャー叫んでいる間に、夜宵の携帯二人目の着信を知らせる。この世界では複数人との同時の電話が可能だったりする。安定性はよくないし、誤解を生みかねないのであまり使われないが。
「もしもs」
「やってくれたわねあんた!!!」
「……」
出て唐突に大きな声、腕の長さの分だけ携帯を耳から離しながら、夜宵は仏頂面になる。
「即、大声はやめていただこうか?そも、俺が何をした?」
「いや、別に」
「ないならs」
「あんたが撃った鞄から出て来た白い粉の中に正体不明の物質が有ったりして仕事増やされたことに怒っただけよ」
「あぁ、あれか」
「そんなこと言ってたな。朝から大手柄だ。違法薬物の密売人、逮捕に十分なギャングの半殺し」
「目障りだったからやっただけなんだよなぁ……。また砂糖で召喚の生贄作ってるとかHPL案件じゃないだろうな?」
「そういう線もありか……」
HPLとは、ハワード・フィリップス・ラブクラフトのなの頭文字で、クトゥルフサイドな機密事項である。要はこの世界にはクトゥルフ関係が存在し、夜宵をはじめとしてそちらの対応に当たる存在がいる。クトゥルフ神話TRPG等、関連の作品も存在するため、人前で言っても「なんだこいつ……」って程度にしかならないので割と会話だけはオープンだったりする。
「砂糖ってあの砂糖か?」
「そ、あの調味料、シュガーだ。砂糖には「同一の形状の粒が存在しない」らしいからな、雪の結晶とかみたいに、いやよく覚えてないけど……」
「模倣犯にせよ、違法薬物に混ぜたから検証ができないのか……」
「なめれば薬中だろうな」
「で、今暇よね」
「命、狙われてます」
「よし、暇ね」
「聞けや」
「アーカムに来なさい」
「日本の?」
「海外まで手を回す余裕があるわけないでしょ?」
「しょっちゅう行かせてんのはどこの誰だよ」
「上だ」
日本のアーカム……そう呼ばれるだけの地雷原がこの世界にはある。一切関係ないが。
「おい、おい」
「なによスナイパー」
「夜宵なら死ぬことはまずないだろうが……武装女に囲まれてる」
「前にこいつらの同類が神話生物召喚しようとしたりと前科あるんだよなぁ、そういう個体は消したはずだが……。ま、とりあえず仕事だな」
携帯をベルトにあるそれ用のスペースに入れ、窓を開け、手をかけ……。襟首を掴まれて止められた。
「待て待て待て待て!!」
「危ないだろ。首が閉まって死んだらどうする。まさかとは思うが、たかが二階から飛び降りて怪我の一つでもすると?」
「ないな」「ないわね」
「当然だろう!」
「むしろ、あの廊下突っ切れって方が危ないんだが?無駄に疲れるし」
「君たちはなぜそんなものを!?」
「彫刻刀、ナイフ、ボールペン、コンパスetcetc。人殺そうってんだ十分だろう。帰った帰った」
「こわいなー(他人事)」
「こうなったら……」
「いやな予感が―」
「既成事実を」
「「はぁ!?」」「あ?」
「「「「させん」」」」
夜宵が話をしている間に「帰れ」「帰らない」の問答?を繰り広げていたりした信仰対象と信者達。しびれを切らし、力技に走る信仰対象。次の瞬間彼女の視界は、……3割くらい?影が覆うこととなる。
「い、痛たたた!!?」
「……いい加減「成仏しろ」よ」
影が覆った理由は、夜宵が顔面を片手で鷲掴みにしたから。この時、夜宵と暦にだけは確実に、三上聖羅から少しずつあふれるように出てくる黒い靄の様なものが見えていた。そんな三上さんのおでこに……。
「ぺい」
「はうっ!?」
「お札だあれ!?」
「夜宵の自作の方かぁ」
「お札作れるんだ……2つ以上あるの」
「僕があげてる方がね。事前の策としてはこっちの方がいいんだけど、直接!ってなると夜宵の自作の方が強いんだよ」
「へぇ……」
三上聖羅から出てきていた黒い靄の様なものは三上聖羅の体から飛び出し、顔を覆い、腰よりも下に来るほどの黒い長髪の女性の姿をとる。
「おぉ、出て来た出て来た。通りで見つからねぇわけだ」
「ゑ?何が?」
「悪霊」
「おばけ」
「幽霊。この学校の割と初期にいたヤンデレは、愛されず、盗人扱いした女と愛していたはずの男を殺して自害。その後、2人は成仏、こいつは地縛霊と化し恋愛感情を暴走させてた……みたいだ」
ここから扉や窓は空かなくなり、繋げっぱなしだったはずの通話も切れる。それの空間、時間となった。
登場と同時に三上のおでこにあるお札と同じものを貼り付けられ、呪った者達もろとも苦しみ、ジタバタ暴れている。故に、見えない人には空中でお札がぶんぶん動いている。ポルターガイストじゃないんだけどね。
「「「「ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ーーーーーー!!!??!!?!?」」」」
「うるせぇ!」
「空中で暴れてるやつの顔面に飛び膝蹴りが入ったァー!」
「あの浮いてるお札のあたり?」
「そうそう」
「「あ、落ちた」」
「一応、強制成仏完了だな」
「もう、何が何だか……」
「訳が分からない?それで結構。さ、部活に戻りな。まだいやな予感残ってるし」
そんなこんな言いながら、気絶している信者連中を廊下に手早く放り投げていく夜宵。次の瞬間。教室全体を包む白い閃光と同時に扉が開かれる。
「何が有っ何の光ぃ!!?」
気づけば見知らぬ場所にいた。歓喜する者達がいた。……彼等、彼女等の一部が感動で抱き合ったりするために手放し、大理石の様な堅い床で音を立てたそれは、殺傷が可能、否、殺傷を目的として作られた本物の武器だった。
中心となっているおよそ50過ぎ程の男性がこちら側に話す内容及び返事を要約すると……。
「この国を救ってください」