第1話 裏切られた勇者
こちらでは初めまして!
勇者が裏切られる話を書いてみたくて、書きました!
こちらも読んでいただけると嬉しいです!
ただ、こっちは、気が向いた時に書こうと思っているので、更新は遅くなるかもしれません!
「ごほっ……なん、で…………?」
口からドロッとした赤黒い血を吐き出す。ゆっくりと、地面に倒れた。
自分の心臓を貫く剣に手をやりながら、それを失った人物を見るため後ろを振り返る。
そこには、ニヤけた仲間がいた。
「もう、お前はいらねぇんだよ!」
「そうですわ。その強すぎた力は、第二の魔王となりえる」
「そうですね!それに、このまま帰れば、私たちは単なる勇者の仲間というだけで終わって、あなただけがもてはやされますから!それだと、困るんです!」
僕の仲間、
剣聖、アルレイド。
聖女、マリア。
魔導士、アリエス。
そして、勇者の僕。
ことの発端は3年前。
僕の名前は、篠宮神人、普通の中学生3年生だった。
突如、異世界ウェインティアへと召喚された。
ウェインティアでは、魔法というものがあって、僕の好きな異世界系のラノベみたいな世界だった。召喚された王国の王女様が聖女で、それから、剣聖、魔導士、といった勇者に勝るとも劣らない力を持った仲間と一緒に、魔王を倒した。僕たち全員の力を合わせても本当にギリギリで、仲間との信頼がなければ倒せなかっただろう。
だけど、僕は、裏切られた。あっさりと。
アルレイドは、女の子を独り占めするために、マリアは、魔王を倒した暁には、結婚をする予定だったけど、強くなりすぎた勇者の力を怖れて、王国ひいては人類のためと、裏切った。アリエスは、魔王討伐という名声と、莫大なお金を独り占めするために。
そんな、そんな理由で、殺された。
「クハハハハ!!!お前は目障りだったんだよォ!!!どいつもこいつも、勇者様!勇者様!ってなァ!俺はお前のお飾りかってんだ!?」
「ま……り、あ。僕たちは将来を……約束……ぐっ、したじゃないか……!」
「そんなもの嘘に決まっていますわ」
「そうそう!勇者は魔王に魅入られ裏切った!それを、私たちが打倒したそういうシナリオです!」
「ぐっ……」
心臓を破壊されたが、強化された僕の勇者としての体は楽に死ぬことを許さない。
体の痛みよりも、仲間だと、家族だと信じていた者たちに裏切られた心の痛みの方が大きい。
胸から流れ出た血が顔に来るまで大量の血が流れた。
高笑いする、かつての仲間の声が胸に響き渡る。
アルレイドは、僕の頭を踏みつける。いくら弱っていても、僕の防御力はその程度の攻撃では全く効かない。それでも、頭を踏みつけられ本当に裏切られたというショックがより、大きな絶望を感じる。
「あーあ、やっとくたばんのか!ったくよぉ、さすが勇者ってだけあるよな。無駄に強ぇ」
「本当ですわ、さて、もう行きましょう?」
「はいはーい!」
最後に、ドスッと腹を蹴られ、数度転がり仰向けになる。
徐々に足音が遠ざかっていくのを感じる。
体が鉛のように重く、全く動かせない。目は霞みだし、景色がぼやける。
段々と意識が薄れていくのが分かる。
裏切られた怒り、悲しみ、そして、こんなところで死ぬのかという絶望。
暗く、そこの見えない水の中に沈んでいくようだ。
暗く、暗く、とても暗く…………もう、目がほとんど見えない。
そして、意識が薄れていった。
「なんてな!」
バッと状態を起こし、立ち上がる。
「いやーほんと、計画通りに動いてくれるなんて!」
そう、俺篠宮神人は異世界に、勇者召喚された。
そして、まず思ったことは、「これは、面白そうだな」と。
だって、まず、召喚された部屋に、どでかい魔方陣が描かれていて、その周りに、王女とそれを護衛する兵士がずらっといた。そして、国王のいる謁見の間に案内されて、説明されたんだが……その時言われたことが、「勇者様!我々は今、魔王という人類の敵に侵略されているのです!我らだけの力では対抗することが出来ず、勇者召喚をするしかなかったのです!どうか!我らを人類を助けて欲しい!」と頭を下げながらお願いしてきた。
それを見た時、
「うっわ、あほらし」
と思ったが、何とか顔に出さず、
「……分かりました!僕に出来る力があるのなら、やります!」
目を輝かせながら、言った。
だが、王やその側近、周りの貴族の反応を見るに、完全に兵器としてしか見ていないのが分かった。
元々俺は、天才と呼ばれる人種だった。
産まれて一ヵ月で言葉を話し、一年で読み書き(ひらがなで)が出来、さらに一年で漢字まで書けるようになった。そして、それが異端なことも生後数ヵ月で理解したため、親に話す時も「まぁま」「ぱぁぱ」と若干呂律の回らないような感じで話していた。小中で、常にテストは満点、俗に言う頭脳明晰、スポーツ万能というやつだ。そして、それが嫌味にならないように、上手く立ち回っていた。母親は、有名女優、父親は、セレブ。つまり、お金持ちである。裕福なためお金にも困らず、親の容姿を優れていたため、俺の容姿も必然的に整っている。ただまぁ、かっこいいというよりかわいいというか、中性的顔立ちのところだけ、少し気になっているところではある。
なんでも努力せずに出来る、ということは、努力している人から見れば、いい感情を持たないだろう。それでも、俺を嫌いな人がいないわけは、人の感情が読める……とまではいかないが、考えていることが大体分かる。
つまり、俺は何でも出来る。逆に出来ないことが少ないくらいだ。それで、世界に飽きていた。つまらない、と。だから、ラノベなど非日常に嵌ってしまうのも仕方ないだろう。
そして、願いは叶い、勇者召喚という非日常が起こった。
召喚され、すぐさま状況を把握。
どうすれば面白くなるのか、考え、これからの予定を立てた。
勇者召喚系のラノベでは、いくつかのパターンがある。
一つは、完全に勇者を支援し、帰還方法も分かっているパターン。
一つは、表向きは支援し、裏で言いなりにするために動いているパターン。
一つは、完全に勇者を奴隷、強力な兵器としか見ていないパターン。
一つは、召喚陣自体に奴隷の術式が組み込まれ、召喚と同時に国の奴隷になるパターン。
最後のやつだったらどうしようかと思っていたが、違って良かった。
そして、異世界召喚で一番気になることは、帰還だろう。
一つは、いつでも、嫌ならすぐにでも帰還できるパターン。
一つは、大量の魔力が必要だから待ってほしいと言われるパターン。
一つは、お決まりの魔王を倒したら、とか、魔王が知っている、とか言われるパターン。
一つは、完全に帰還方法がないパターン。
俺の場合は、三つ目だった。
「魔王を倒したら、帰還の魔法陣が展開され帰ることが出来る!」と言われたけど、「いや、嘘だろ」と無意識に出ようとする言葉を頑張って飲み込んだ。
そして、王や周りの兵士を見るに、すぐ分かった。
なぜなら、勇者を全面的にバックアップする姿勢を取ると言っているが、その顔は、欲に塗れ俺自身のことは、ただの兵器程度にしか思っていないことが、透けて見えた。王なら少しは隠せよって思ってしまっても仕方ないだろう?
長々と、校長先生のような長いつまらん話が続き、終わったら、『スキルプレート』と呼ばれる金属板を渡された。
ウェインティアでは、ステータスというのはなく、持っているスキルだけが分かるプレートだけだった。保有魔力は、占いでよく見る水晶に手を当て、その色によって量を量る。きちんとした数字では見れないのが少し残念だ。水晶の色は、白、青、緑、黄、赤、紫、黒がある。白が一番少なくて、黒が一番多い。量った時は、水晶が弾け飛んだ。量れないくらい多いらしく、期待を込めた目を向けてきた。
肝心の魔法は、これも、よくあるイメージ力次第らしく、想像力でどんな魔法も使える。
スキルは、勇者定番の『聖剣召喚』とか、勇者っぽいスキルは一通り使えるようだ。そして、もちろん、実力は隠したままだ。
何度も言うが俺は天才だ。なんでもうあれば出来る。それは、魔法にも適用された。
魔力の扱い方もすぐにマスターし、魔法も教えられたものは、全て出来るようになり、オリジナルの魔法も数百単位で作った。
徐々に強くなるように見せ、成長しているように見せていった。
勇者召喚から一ヵ月後、勇者パーティーとして、アルレイド、マリア、アリエスが集められた。
それから、一緒に旅をしていると、マリアが肉体関係を迫ってきた。もちろん、下心ではなく、俺のことが好きだから、とか何とか言って。しかし、俺は分かっていた。勇者の子種、俺の勇者としての遺伝子が欲しいがためだとすぐに分かった。それでも、違和感なく、女性に免疫がなく、初心な少年を演じ抱いた。狙いが分かっていたため、魔法を使い、避妊をしていた。
「いやー魔法って便利だね、全く」
そして、定番である魔物も生物を殺すことに抵抗がある風を装い、人間を殺すことにも最初は抵抗があると思わせた。レベルという概念がないため、魔物を殺してレベルアップとはいかない。身体能力は、魔法を使うことによって上がるから、困りはしない。
そんなこんなで、成長していることをアピールし、召喚から2年経った頃には、仲間の誰よりも強くなっていった。強さを求めていた剣聖アルレイドは、俺の強さに嫉妬しているのが、隠していても丸分かりで、笑わないようにするのが、ほんと大変だった。
それからなんやかんやで、俺は全く国や仲間の思惑に気付いていないように思わせ、従順な仲間を演じていた。
そしてついに、魔王と互角の戦いを演じ、ボロボロになりながらも仲間と協力して倒した時に、アルレイドが俺の背後に来ているのに気付いていたが、気付いていないふりをしながら、グサッと刺された。
「いやーいつもは痛覚を切っているけど、あんときはしてなくて、痛かったなぁ」
そして、死にかけ状態になった時に正体を現した仲間を見て、やっぱりと思いながらも、最後まで、仲間を信じている、お人好し兼馬鹿な勇者カミトを演じていた。痛かったけど。
「それで、俺は死んだ。でも俺は生きてる」
それは、なぜかと言うと、スキルプレートを開いて理由となるスキルを見る。
そこには、『強化蘇生』とある。
「死ぬと生き返り、身体能力が上がる。つまり、死ねば死ぬだけ強くなるスキル。チートかよ」
そう、これは、死ぬことで発動するスキルだ。
魔法があっても蘇生魔法とかはない。死んだらそれまでだ。
だから、俺を殺してもきちんと死んだかどうか確認せずに帰っていったとも言える。
「まぁ、実際死んでるから分からんだろうけど」
俺は最初から予測していた。
この展開を。
何も知らない異世界から現れた勇者。
不要、邪魔となれば排除してくるだろうことも、読んでいた。だから、それを利用することにした。
魔王側についてもいいが、それだと、魔王と俺の脅威、二つに戦力を割かないといけなくなるし、裏返る理由が弱い。だから、国の人のために尽くしてきたのに、裏切られたとしたら、復讐する権利は十分だ。
「だから、これから、復讐しまーーーす!」
俺は、その時を思い浮かべ悪魔のような笑みを浮かべる。
「ほんと、楽しみ!どんな表情するかな?化け物を見るような目をするかな?もう一度殺そうとしてくるかな?」
今までは、日本でさえ、作った仮面の笑顔を張り付けていた。もちろん、演技だとばれたことはない。
猫を被る必要もなくなり、ようやく俺本来の性格で、行動することが出来るようになった。
ニヤケ過ぎて頬が引き攣りそうになってしまった。
「最初は、剣聖アルレイドからだね!」
最初の標的を選び、復讐(笑)に向けて準備を進める。
超越神の方も見て頂けると嬉しいです!というか読んでください!お願いします!!!