その2『お嬢様と産卵』
前人類の皆様。事件です!
「お嬢様が産卵されました」
何を言ってるのか分からないと思いますが、私にも何が何だか分かりません! 頭がどうにかなりそうでした……主に正気的な意味で。
催眠術だとか黒魔術だとかそんなチャチな代物で済めば良かったのですが……もっと恐ろしいものの片鱗を味わってしまいました……。
つまりはこういうことですか?
れっつ増☆殖?
『ちょっと。さっきから一人で何ワケの分かんないこと言ってるのよ』
いえ、その。
ご出産おめでとうございます。
『……出産て貴女』
いやー、しかしお嬢様も隅に置けないですねぇ。
まだまだお子様だと思ってましたが、いつの間に殿方とアレやコレや──ぐふっ!? い、今世にもおぞましい想像がわたしの頭をレイpッッ……!!!
『ちょ、ちょっとアンタ!? 何変なこと考えてるのよやめなさい!
わ、私はっ、そんな破廉恥なことしていませんっ』
え? でも卵を産まれたじゃないですか。
口からドバーッと豪快に。
「う、産まれるぅ……!」
とか言って喘いでたじゃないですかぁ。気持ち悪い。
『気持ち悪いは余計です。
勘違いしてるようだから言っておくけど、アレは無精卵よ?』
──は?
『だから無精卵。受精してないんだってば。
今日は排卵日だったの。初めてだったから、ちょっと怖かったけどね!』
は、排卵日ぃぃぃ?
『アンタ達もあるでしょう? 定期的に卵子を体内から排出する……ほら、あの』
ああ! 女の子の日ですか!
月☆経ですね分かります月☆経。
『そ、そんなはっきり言わないの。
とにかくそういう訳だから、変に気を回したりしないでね? 何でもないんだから!
ああもう、意識したら何だか恥ずかしくなってきたじゃないのー』
別に恥ずかしがるようなコトじゃないと思いますけどねー。
あ、初めてってことは初潮ですね! ビバ初☆潮!
『だから言わないでって!
……ま、まあ、取り乱して貴女に心配掛けてしまったのなら謝るわ。悪かったわね』
いえいえ、気にしないで下さい。
わたしの方こそ勘違いして暴走しちゃって済みませんでした。
……あ。お赤飯炊かないと!
『そういう気の回し方もやめて頂戴。
全く、これだから下等生物は──って、あら?
そういえば、卵はどうしたの?』
ああ、あの子達でしたら。
ベビー服を着せて、ベッドに寝かせておきました。
今頃皆さんぐーすかぴー、おねむの真っ最中ですよ。
お嬢様みたいなのでも、赤ちゃんの時は可愛らしいんですねー☆
『……捨てておいて頂戴』