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お嬢様は侵略者  作者: すだチ
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その1『お嬢様と冥土』

 西暦20××年○月△日。

 突如世界各地に謎の円盤群が飛来。


 ……(中略)……。


 色々あって、地球は「クトゥール人」という宇宙人に支配されることになりました。

 特撮なんかで良く登場する正義のヒーローは、とうとう最後までわたし達の前に現れることはありませんでした。


 その頃には地球人類の数は百分の一まで減らされていました。

 わたしの両親も、その中に含まれていたと聞いております。


 天涯孤独の身の上となったわたしは、侵略者が管理する孤児院という名の家畜小屋に入れられました。


 ああっ、これでわたしの人生も終わりか。

 せめて最後は華麗に、異星人の食卓を飾ってみせよう──などと諦観していた、その時でした。


 わたしが「お嬢様」と出遭ったのは。



 お嬢様は侵略者



 こんにちは。前人類の皆様方

 お元気にお過ごしでしょうか。

 わたしは比較的元気にやっております。


 現在わたしは、お嬢様の下で「冥土」という職業に就いております。

 これは極めて特殊な職業でして、数ある奉仕種族の中でも最上位に位置する、非常に名誉あるお仕事なのです。


 そのような仕事に就かせていただいたこと、被災孤児の中からわたしを選んで下さったこと……お嬢様には感謝の念で一杯でございます。


『ん? いやまあ、活きが良くて美味しそうだったから、ね』

「…………」


 そう言えば、すっかり忘れていたのですが。

 お嬢様方クトゥール人(※現・地球人類)の皆様は、わたし達先住民族の肉を好んで召し上がるとのことです。

 特に若い女や子供の肉は、柔らかくて口当たりが良いとのこと──いや、わたしは食べたことないのでその辺のことは分かりませんが。


 どうりで、近所のスーパーで人肉販売されている訳です。ちょっと絵的にグロいので表現しにくいのですが、色んな部位が適当な大きさに切り分けられて並べられていました。

 中でも人気なのが脳と心臓で、通は生でもイケるとか何とか……ううむ、何やら背筋が薄ら寒くなって参りましたよ?


 しかし、ご心配には及びません!

 わたしはもう何年もお嬢様と暮らして参りましたが、貞操(生命)の危機を感じたことなど、一度たりともございません!


『まだまだ成長期だしね』

「…………」


 そう言えば、物の本に書いてあったのですが。

 かの有名な高級料理「フォアグラ」を作る時、ガチョウを地面に埋めて運動不足にし、更に栄養価の高い飼料を与えて十分肥えさせてから捌くそうですね。

 でもわたしはガチョウではありません。人間です。


 それ以前に冥土です!


『ちょっと貴女、さっきから自分のことばかりじゃないの。

 少しは私のことも紹介しなさいよ』


 あ、そうでしたすっかり忘れてました。

 できればこのまま無かったことにしたかったのですが、先程からお嬢様が熱烈ラヴ視線(※死んだ魚の眼)をこちらに向けて来ているのでそういう訳にもいきません。


 先程申しました通り、お嬢様はクトゥール人です。しかも大金持ちです。VIPPERです。

 植民地化した地球には観光に訪れたらしいのですが、蒼き水の惑星が気に入ったらしくそのまま移住されました。いい迷惑です。


 ……こほん。

 それはともかくとして。


 天は二物を与えました。

 お嬢様は資産家であるだけでなく、実に聡明で美しい方です──あくまでクトゥール人の基準では、ですが。


 ぶっちゃけて言ってしまえば、わたしには蛸のお化けにしか見えません。一目見ただけで夢に出て来ます。当然悪夢。しかもそれが一週間程続くことでしょう。それ程の生理的嫌悪感を抱かずには居られない──あれ何でわたしこんな方のお世話してるんでしたっけ。


 ああでも可愛いところもあるんですよ?

 リボンとか。

 わたしが買って差し上げたんですけど、全身ピンク色のリボンでグルグル巻きにされたお嬢様はちょっとチャーミング。そのまま包装して誰かの家に贈り付けたら……発狂死して一家全滅、みたいな?


『…………』

「ゴメンなさい。真面目にやります」


 見た目以外ですと、声がヤバいですね。お嬢様方の声をわたし達先住民が長く聴き続けますと、やっぱり発狂しちゃうらしいです。それ以前に何言ってんのかさっぱり分からないですし。

 てな訳でお嬢様には翻訳機を着けて話していただいております。何故か股間に。ああそうかタコだから触手の付け根に口があるんですねお嬢様?


『そうよ。アンタも同じ場所に口を空けてやろうか?』

「それには及びません。もう既に付いております」

『ううう。もうヤダこいつ』


 後は臭いが少々……毎日お身体を洗って差し上げているのですが、絶えず表皮から分泌される緑色の粘液、あれ何とかなりませんか。さすがに部屋中イカ臭く、もといタコ臭くなるのは……その、乙女としてはどうかと……(赤面)


『こいつ。腐ってやがる』

「はっはっは。お嬢様には及びませんよ」

『どういう意味よ!?』


 あ、怒って真赤になったお嬢様、ちょっと可愛いかも。


『あ、あら。そうかしら?』


 ええ。茹蛸みたいで。


『○×▽◇qwty;dfkjlzxcvb〜〜〜〜〜〜ッッ!!!』


 あれ、お嬢様翻訳機外しました?

 何言ってんのか分かんないので着けて下さい……って、何触手伸ばしてんですか?


 わたしにそういう趣味は……って、聞いてます?



 ………………

 …………

 ……



 西暦20××年○月△日。

 地球は異星人に支配されたが、人類は存外しぶとく生き残っているようである。



 めでたしめでたし?

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