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18話 タダより高い物はない、ってね。

「カイン様も、苦労なさっているのね……ネロ君のした事は許せないけど、カイン様の態度も少し、悪いと思う」


 ちょっと時間は進んで、夕飯時だ。

 約束通り、レヴィの店でハンバーグ定食でも食ってた所でブレイズちゃんと合流、でもってさっきの話をしていた感じな。


 ネロがカスな性格になったのは、どう考えてもカインが悪い。ま、だからと言ってネロを擁護する気はねぇけどよ。

 どれだけ親がだらしなくても、てめぇがしっかりすりゃいい話だ。腐っててめぇを落しめちゃ、てめぇが虚しくなるだけだ。


「カイン様は完璧な人だと思っていたけど、やっぱり苦手な事もあるのね」

「俺とはベクトルが違うが、あいつも基本ダメ人間だ。自分の事しか考えらんねぇ、周りも見ねぇ。視野が極端に狭すぎる。直せつったのに、未だに悪癖引きずってんだよ」


 それをカバーすんのが毎回俺ちゃんだったわけ。ただまぁ、意外と持ちつ持たれつで、悪いもんじゃなかったが。


「ばってん先生、なしてそげんカイン様ん事ば知っちいると?」

「あん? そりゃあ俺様があいつの」

「あー! レヴィちゃん、フォカッチャのおかわりお願いできる?」

「あ、はーい。今持っちきましゅね」


 あらまブレイズちゃん、意外と大食いなのね君。


「貴方ね、なんだってそんな軽く話しちゃうの? 自分の正体明かしたら周囲にどれだけの騒ぎが起こる事か……!」

「だって俺様隠したくないんだもん。俺ちゃんは俺ちゃんだ、時代が変わろうと、世間が流れようと、そいつは絶対ブレちゃあいけねぇ。自分を誤魔化して生きちまったら、んなもん魂が死んだも同然だろーがよ」


 読者諸君もよ、てめぇの持ってる芯は絶対曲げんな。

 お前らが大事にしている物、絶対譲れねぇと思う物を、死ぬまで貫き通せ。人生ってのは一度きりしかねぇ、だったら最後の最後まで意地張って、人間らしく生きた方が得だろ。

 愛想のいい仮面被って、周りに合わせるだけの人生なんざ、何一つ面白くねぇからよ。


「つーことでレヴィ、ビールしくよろ! 今日てめぇの奢りなんだろ?」

「させんでしたぁない先生、ビールはちょっと……先生にお出ししたばい料理な、うちん練習作なしけんしゅ。だからタダで提供きるんたいばってん」

「つまり、余計な物頼んだら別料金って事になるわね」


 あ、そ。ようは店に出せないモンだからタダで食えると。ちっ、マザ○ァッ○が。


「じゃあ私から、この方にビールをお出しできないかしら?」


 お、誰だ誰だ? 俺様に潤いを恵んでくれる優しいご婦人様は。

 って、声で大体分かるんだけどな。


「は、はわわ!? 貴方様は、ひょっとしてコハク様!?」

「あらあら、そんなに緊張しないで。それと大声出しちゃうと、お店が驚いちゃうわ。ほら」


 ま、コハクも有名人だからな。周りもびっくりした目でこっち見てるぜ。


「よぉコハク、何となく気配は感じていたんだがな」

「一月振りねハワードさん、学園生活はどうかしら」

「まずまず楽しくやらせてもらってるさ。なんでここに居る」

「明日、トリスタンでちょっと仕事があるの。そのための経由地として、ベルリックに寄ったってわけ」

「確かにここを中継すんのが早いし便利だわな。んで? ビール奢ってくれる理由は」

「ネロと夫の相手をしてくれたお礼です」

「へ、たまにゃあガキの相手も悪くねぇな。ロハで酒飲めるなら歓迎だ」


 人から奢られて飲む酒は最高だぜ。けどよぉ、タダほど高い物はねぇって諺があんだよなぁ。


「ちょ、ちょっと……コハク様に対してなんて失礼な……!」

「俺様にとっちゃ元同僚だぜ。それに年下相手にどうしてへこへこしなきゃならねぇんだ」

「そう言う事。気にしないでブレイズさん、昔から彼はこんな人だから」


 おまけの余談だが、こいつ結構ドMなんだよな。

 旅している頃、日常的にカインに胸揉まれたり股間に顔面ダイブされたり、あとはヨハンから尻触られたりしても、反撃どころか「もっとやって」的な事ぬかしたくらいだからな。


 ちっ、旅している頃、こいつが二十歳超えてりゃあな。当時十七歳の小娘に手を出すわけにゃいかねぇしよぉ……ま、俺様の視線で変な妄想して悶えてた事もあったようだが。


「んで、何か俺様に伝える事があんじゃねーのか? コハクがなんの裏も無しに酒出すわけねぇしな」

「あら、酷い言い草。ならおまけでチョリソー、どう?」

「けっ、こいつぁ面倒くせぇ事押し付けるつもりだな。ブレイズちゃんよ、ちょっとだけ席外すぜ」


 ビール一気飲みしてから、一旦外に出る。大方魔王絡みの話だろう、レヴィに聞かれるわけにゃいかねぇぜ。


「ハワードさん、貴方質屋に、大量の魔具を入れていたわよね?」

「あー、確かにそんな事もあったな。それがどうした?」

「その魔具が、質屋から奪われたらしいの」

「あんだと? 犯人は」

「分からない。不可解なのは、お店を壊されたりとかの明確な被害が出てないって事なの。それに鍵をこじ開けられた形跡もなくて。まるでテレポートで、直接室内に入り込んだみたいで」

「へぇ……魔具だけを的確に狙うか。面白そうな事が起こってるな」


 ちなみに言っとくが、魔具は俺様以外に使う事は出来ねぇんだ。

 というのも、俺様の魔王の右腕が使用条件になっていてよ。使用時には俺様の魔力を魔具に流さねぇと機能しねぇようになっているのさ。


 だから常人が使ってもただの武器でしかねぇし、魔物や魔王に至っては、触れるだけでも防衛機能が働いて、むしろ大ダメージを受けちまう呪いの道具になる。安全面のセキュリティはばっちしなんだが。


「そいつを無傷で手に入れるか。くくっ……こいつぁ、骨のあるヤロウが出てきたもんだ」

「笑ってる場合じゃないでしょう? いくら制限をかけているとはいえ、強力な魔具を集めて何かをしようとしているんだから」

「なら事を起こしてくれた方がやりやすいぜ。魔具みてぇな強力なもんを使って事件起こすんだったら、必ず目立つ事が起こる。そしたら、被害が広まる前に片を付ければいい」

「でも……」

「昔ならいざ知らず、今人間界には俺様が居る。カインもコハクも、ヨハンもだ。俺らが居れば、相手が誰だろうが軽く捻れる。だろう?」

「……本当、頼もしい人ね」


 俺は強い。この世界の誰よりもな。だから事件が起こっても問題はねぇ。

 絶対無敵最強の主人公様に任せておけば、安心して見ていられるだろ。なぁ読者諸君。


「話をまとめると、俺様の作った魔具が誰かに奪われた、そいつの捜索をしてほしい。そんな所だろ。確かに製作者の俺なら探せるからな」

「ん、正解。けど元をたどれば魔具を質に入れたハワードさんのせいでもあるからね?」


 あーあー俺ちゃんきっこえなーい。


「そんじゃ、ま。早速サーチアンドデストロイしてみっか。魔具ともなればあっという間に見つけられらぁ」


 魔具には俺の魔力を込めているんでね、いわば自分の体の一部ってわけさ。ちこっと意識すれば、すぐに場所が分かるのさ。

 って事で、即刻やってみたらだ。


「……近いな。ベルリックの、すぐ傍だ」

「えっ?」

「近くに放牧場があったろ、そこだ。しかも、でけぇ反応と一緒でな」

「まさか、上級の魔物!?」

「そうらしい。一体どうなってんだこりゃ」


 俺以外に魔具は扱えねぇはずなんだが。ちっと面白い事になり始めたぜ。


「コハク様! 今、郊外に気配が出現して……間違いない、魔物です!」

「分かってる、ハワードさん、対処お願いできるかしら」

「ま、普段なら断る所だが……状況が状況だからな」


 俺様の魔具を扱ってるって事ぁ、強さにそれなりのブーストがかかってるって事だろ?

 ……楽しみじゃねぇか♪

 それに、なんか余計な奴まで来てるっぽいしな。そいつも助けるついでに、暇つぶしと行こうか。

 暫く平和が続いたから、歯ごたえのある奴と闘りたかった所だ。せいぜい期待させてもらうぜ!

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