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15話 後半、彼の言う事は全て反対の事です。

 魔王が元気になる前に、とっとと見つけてぶっ殺す。あーだこーだ話し合おうが、俺達のやるべき事はそれ以外にねぇだろう。

 しかも厄介な事に、学園は勿論、街の連中にも知られないようやんなきゃならねぇってのが面倒くせぇ。どうせなら完全復活させた、全力全開の魔王様と対面してぇんだがな。

 このところ平和過ぎて退屈なんだよ、たまにゃあ思いっきり強ぇ奴と遊びてぇぜ。


「ふぁ~~~~……眠ぃ」

「あのね、もう少し真面目に働いたら?」

「おーブレイズちゃん、来たの。ちゃんと働いてるよ俺様。次の授業まで体休めるって仕事」

「それサボってるって事じゃないの!」


 おーぷりぷり怒ってんねぇ。そのプンスカ顔可愛いぜ。いいじゃん別に、だって他の連中が困るわけじゃないし、俺様が困るだけだし。サボリーマン万歳だ。


「こうしているのを見る限り、善人には見えないのだけど……助けられたしなぁ……」

「なんか言った?」

「なんにもっ! そろそろ中間試験の時期でしょ、試験問題とか作らないわけ?」

「もー作り終わってる。やってみるかい?」


 これでもカインの奴に勉学も教えていたからな、テスト作成なんざ慣れっこさ。


「えと、確かフラウロスは雷が弱点だけど、それをフードで対策してるから……あと魔界には血の池地獄ってエリアがあってそこにいる魔物の特徴は……こ、これ凄く難しくない?」

「勇者目指そうってんなら必須の知識だ。それに授業でやる範囲内だし、理不尽な難易度じゃねぇさ」


 俺様の授業聞いてりゃ楽に単位をとれるテストだ。俺様もそこまで鬼じゃねぇ、きちんと進級できる絶妙なラインに留めてあるよ。


 っと、ここまで長々と説明不足が続いたか。失礼したな読者諸君。


 俺達のやる事は、今までと変わりはない。生徒達に感づかれないよう、昼間は学校での仕事に励む。ただし、時間の合間合間では魔王の手掛かりを探し、力を取り戻す前に駆除をする。これがカインの立てた行動方針だ。


 んでよぉ、新学期が始まって一月経ったら、学生の読者諸君なら何があるかわかるんじゃねーか?


 そう、中間テストだ。


 これがまた面倒な仕事でよぉ……テストを作るだけじゃなくて、テストが不安なガキどものために、放課後にゃ試験前講座なんてもんをやらなくちゃならねぇんだ。

 他にも試験日の打ち合わせだの色々会議せにゃならなくてな、休んでる暇なんざありゃしねぇ。だからサボれる時にサボっとかねぇと、身が持たねぇのよ。


「暇なら、魔王の情報集めでもすればいいのに」

「それも大丈夫、ちゃーんとやってるよ」


 噂をすればなんとやら、だ。来たぜ情報源が。

 窓に止まってる鳩の群れ、こいつが俺様の情報源だ。


「ほうほう、そうか。そんなもんね。まぁ期待はしてなかったから別にいいさ。ほれ、報酬のとうもろこしだ。職員室だと目立つから森へ帰っとけ」

「動物と会話できるの?」

「おう、魔界でゲットした力でな」


 こんな感じに、動物を使役し、会話する魔王の力を使って、効率よく情報を集めているのさ。手を抜ける所はきちんと抜いとかないとねぇ。


「ものぐさなんだか、真面目なんだかよくわからないわね。……悪い人じゃない、みたいだけど」

「ふっ、それなら今夜どうだい? そろそろお互いふかーく分かり合う必要があるんじゃないかな? そう、生まれたままの姿でしっぽりと」

「だまらっしゃい」


 お堅いねぇ、そろそろ俺様に気を許して股開いてもいいんじゃなぁい?


 つぅかよぉ、今時の女は遊びがねーわ。5話で紹介したメイリンちゃんもツバキちゃんも、いくら口説こうが俺様と仲良くしてくんねぇし。爆乳Eカップも控えめAカップもこの手に掴めてねぇのは寂しすぎるぜ。せめてブレイズちゃんの美乳Dカップだけでも堪能してぇなぁ。


「はぁ……俺様の夢は世界中の女の子とお友達になる事なんだが……ここで躓いちゃあなぁ……」

「アホな事言ってないで仕事したらどう?」


 はーいブレイズちゃんに怒られちゃったから俺ちゃん仕事しまーす。そんじゃ読者諸君、おやすみー。


  ◇◇◇


 ちぇっ、脳天殴って起こさなくてもよくないブレイズちゃん?


「学内の見回りとか出来るでしょうが! 私はカイン様から貴方のお目付け役を頼まれているの、サボってばかり居たら私の責任問題になるんだからね!」

「別にいーじゃん、俺様は好き勝手やるだけなんだし」

「ここに居るのは私の後輩達なの。皆が卒業後の進路に困らないよう指導してくれないと、私としても気分が悪いわ」

「たはー……君ってば学級委員とかやってた口かい?」

「風紀委員長よ」


 なっはっは! すげぇイメージ通りの委員会で俺様納得! こんだけ真面目一辺倒な子じゃあ、さぞかし厳しい学生だったんじゃねぇかな?


「あ、ここに居たな、先生」

「んで? 学生時代のブレイズちゃんは部活とかやってたのかい?」

「露骨に無視すんなよ!」


 へいへい、うるせーよディジェ。ついでにレヴィも付いてきて、何の用だ? つーかお前ら、随分仲良くなったもんだよな。


「お前らなぁ、学生風情が先公にひっついてんじゃねぇよ。思春期なら思春期らしく、適当に人目のない場所見つけて乳繰り合ってろ」

「ひゃっ! 乳繰り合うっち、なん言うてるんやか!」

「あのな先生、俺達そんな関係じゃないから!」

「あっそ、別にガキの事なんざどーでもいいんだが……きちんと避妊はしとけよ。いくらそいつがむっつりビ○チとは言え盛り時は間違えんな」

「だからちげーつってんだろ!」

「ディジェ君、うちん事そげな目で……」

「むっつりスケベが。ほれ、ゴム持っとけ。ちゃんと勃ってから素早くつけるんだぞ」

「いらねぇしやらねぇよ何その無駄な気遣い!? 頼むから話を進めさせてくれ!」


 こいつ、からかうとおもれーなぁ。というよりレヴィ、むっつりビ○チ否定しないのな。


「えっと、うちたち、先生に相談したばいい事あっけん」

「やだよ、俺様面倒くさいの嫌いって何度も言ってんじゃんか」

「今度うちんお店でお夕飯ご馳走するけんねちゃ。無料たい」

「なんだよ相談って、話せ」

「……貴方、現金よね……」


 今金欠なもんでね、俺様も必死なのよ。


「今月末、中間テストあるだろ? 俺、それでどうしてもAクラスに勝ちたいんだ。できれば一人じゃなくて、Dクラスの皆で。先生も見てただろ、ネロの態度を。あいつの態度が、俺達Dクラスに向けられる評価そのものでもあるんだよ」

「ようはそいつを覆してぇって事かよ。ただ、クラスの連中にそれ言っても、なんも反応してくれなかったと」

「マジで読みすげぇよな、先生って。その通りなんだ。皆やる前から出来るはずがないって諦めててさ、何度声をかけても無駄だった」


 そら、連中のガッツの無さを考えりゃあな。毎回ホームルーム開く度につまんなそうな顔しやがってよ。覇気あんのは、てめぇら二人くらいのもんだ。


「ばってんうちな、ディジェ君に賛成したばい。ずっち負けっぱなしだっち、また前のごたぁにしゃばか物いじめばしゃれてしまいましゅ。そいに、うち達は先生に鍛えてもらっちましゅ。そん成果ば、示したばいいんたい」


「だから俺達、二人だけでもAクラスに立ち向かおうと思っているんだよ。今度の中間でAクラスの、特にネロに勝ちさえすれば、皆の希望になるはずだから」


「そいつぁ、熱心なもんだな。だがよ、レヴィが必死になる理由は分かるんだ。勤務初日にネロからたかられてんの見つけちまったからよ。だがディジェ、てめぇはどうして戦おうとする。特にネロに対して、随分とご執心みてぇだしよ。理由の薄い奴に力は貸せねぇよ」


「あいつが幼馴染だから、だよ。先生には話したと思うけど、俺達は勇者パーティの子供って事で、子供の頃から一緒に遊んでてさ」

「今でもガキだろうが」


「うるせっ。それで昔は、かけっこだとか、絵の上手さとかで競争してたんだ。けどあいつは、十三歳を過ぎてから俺よりずっと強くなっちゃって……俺は何をしても、あいつに勝てなくなった。それからなんだよ、あいつが俺を、見なくなったのは」


「まぁ雑魚を見るような寛容さはねぇだろうなぁ。んで? 寂しくなったディジェちゃんはもう一回あいつを振り向かせたいのか?」


「そうだよ。いくら強くなっても、俺にとってあいつは、ライバルなんだ。ネロには絶対負けたくない。一番の友達だと思っているから、あいつに絶対勝ちたいんだ。それに、親父にもその、俺の今をきちんと見てもらいたいし……そのためには、いい成績取るしかないだろ」

「……へぇ」


 こいつ、目の色変わったな。

 ヨハンと話すようになったからかねぇ、随分やる気が変わったように見えるぜ。初日に俺様へ暴言吐いたのが嘘みてぇだ。


 やっぱヨハンの息子だな、いいガッツだ。


「だがよ、立場上俺様、おおっぴらには手伝えねぇんだよな。放課後の試験前講習も魔界学しか出来ねぇしよ」

「貴方ね、ちょっとは気持ちを汲んであげたらどうなの? 先生でしょ」


「そーんな事言われてもねー、カインからも色々言われちゃってんのよ、あんま一人の生徒に入れ込むなって。なんならブレイズちゃんが教えてあげれば?」

「その方が彼のためかもしれないわね。いいわ、私が協力してあげる。仕事があるから長くは出来ないけど、放課後に一時間程度なら大丈夫だから」


「マジか! ありがとうブレイズさん!」

「うちもよござすか!? ブレイズ様に教わるなんて光栄ばい!」


 へいへい面倒見いいねぇ。そんじゃブレイズちゃんにお任せしちゃおうかしら俺ちゃん。

 あ、そうそう。こっから先は独り言なんだがな。


「昼飯終わった後、俺様大抵図書館で昼寝してんだよね。昼休みは自習スペース使う奴も少ねぇからよ。その隣で勉強してたら、ちょっとした寝言を言うかもしれねぇなぁ」

「先生?」

「所詮寝言よ、ね・ご・と。正直邪魔だから来てほしくはねぇんだが、俺様の美しい声を聴きたい酔狂な奴が、もしかしたら隣に来るかもしんねぇなぁ」


 あん? なんだい読者諸君、そんな描写なかっただろってか?

 そりゃ、俺様の優雅な私生活を全部見せてたらキリねぇだろ? プライベートな所は撮影NGだぜ、パパラッチ共よ。


「先生やっぱり、優しい人たい。素直じゃなかだけで、約束守っちくれる人たい」

「ちょっと好意的に取りすぎ、じゃない? 本当に寝てるだけかもしれないし」

「ぴしゃーっと教えてくれましゅちゃ、先生は。文句言うてるばってん、放課後うち達ば鍛えてくれとるし、うちを虐めから守っちくれたし、うち達ば見て、しゃり気なくアドバイスもくれるし。うち、先生すぃとぉーよ」

「全部聞こえてるぞレヴィ! 言っとくが俺ぁ、てめぇらの事が大嫌いだからな! 正直うざったくてしかたねぇんだ、調子乗ってんじゃねーぞコラ!」


 どんだけ突き放そうがつきまとってくるし、うざってぇくらい甘えてきやがるし、潰そうと思って厳しくしてもついてきやがるし、なんなんだよてめぇらは。


 カイン達もそうだ、俺様が口悪く罵ろうが離れようとしねぇし、それどころか俺様を庇ってきやがるし。のくせして師匠と平気で喧嘩しやがるし。


 ……ったく、よぉ。なんなんだよ。どーして周りの連中は、俺ちゃんなんかに構うんだかなぁ。そう思わねぇか、読者諸君よ。


「ったくよぉ……笑っちまうぜ、ちくしょうが」

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