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うどんを啜る

うどんを啜る-1-

 


 K県では、ある麺類が幅を利かせている。



 日照時間が長く、また平地が多い事から穀物栽培に適しているこの地では、江戸時代以前からの二毛作の流行により、小麦の生産が盛んになった。



 小麦はその麺類の一番の要となる、”麺”の原材料である。



 また、古くから良質の塩、醤油、そして煮干しなどが、K県の特産品であり、その麺類をつくるのに大変適した環境であったことが、現在の地域ブランドを確立できた要因である。



 K県では日常的にその麺類が食されており、その消費量は勿論全国1位である。



 そして、その土地に一人の男が降りたとうとしていた――





 *******************************************



(はぁ、出張で地方に来るのは好きなんだけど……今回の取引先はそう易々といきそうにないぞ)



 あるソフトウェア会社の営業マンとして働いている私は、仲の良い商社から紹介してもらった会社に出向こうとしていた。



 なんでもK県では30年以上続く大きな会社で、最近は関西圏にもその勢力域を伸ばしているということだった。



 安定した地盤を持ちながら、精力的に活動するその会社が、我が社の商品に興味を持ってくれたというのは、大変なチャンスだった。



 その会社では、現行のソフトウェアの一新を考えているらしく、もし我が社のものを気に入れば数十台の購入を考えているとのことだ。



 社内でも期待を寄せる声が溢れ、私は相当なプレッシャーを感じながら、この地にやってきた。



(しかし、商社の話によれば……相当厄介な社長らしいな……)




 今回は直接向こうの社長と商談を行うことになっていた。



 まだ齢40代の2代目若社長だが、大変な切れ者らしい。

 その会社は、社長を交代してからどんどん業績を伸ばしているということだった。



 その社長が自ら交渉の場に着くということからも、この案件への力の入れようが伝わる。



(はぁ、なんで俺にこんな大役が回ってくるんだか……)



 商社からの話を聞いた段階で、この案件は俺では無くもっと上の人間が出向くものだと思っていた。


 エリアとしては、私が担当するべきものだが、キャリアの少ない私には荷が重いと感じたからだ。




 しかし、実際は何の抵抗もなく私がここに出向くことになってしまった。




 噂によれば、どうも我が社の上の連中は、どうもここの社長を苦手としているらしかった。


 彼が、営業部長をしていた時代のことを知っているらしく、その時のトラウマが我が社の尻込みムードの要因だと聞いた。


 それとなく詳しい情報を探ろうとしたが、如何せんそれ以上の情報は知り得なかった。



(憂鬱だなぁ……一体どんな人なんだろう……)



 駅前で、腕時計を見ると9;30だった。


 約束の時間は11:00なので、まだ幾分か余裕がある。



(とりあえず、腹ごしらえだな)



 俺は、スマートフォンを使って、飯屋を探すことにした。

























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