第3話 アーカスよ! 私は帰ってきた!
どうも、今回は「僕のヒーローアカデミア」のピースサインを聴きながら書きました!
よろしくお願いします!
ちなみに次の更新は明日になります。
キャラメイクの白い空間より転移してきたティナ。
ふわりと両足で着地しVR世界に来て初めての一言。
「『アーカス』よ! 私は帰ってきた!」
両手を空へ掲げてそんな事を言う少女に周りの人が驚く。
ここは転移先である始まりの町『アーカス』の中心部である噴水広場へとやって来たティナ。
最後に妖精さんが何か言っていたような気がしたが、あまり聞き取れなかったし、何よりこれからが楽しみ過ぎでそんなものに構っていられないというのがティナの心情であった。
爛々とした目で町を見回すティナであったが、周りのプレイヤーが皆こちらを見ている事に気付くと、先程の奇行が途端に恥ずかしくなってきた。
この場を移動したいのは山々なのだが、『ESO』を起動する前に友人の月との連絡で転移先で集合という約束をしている為に、離れられないのである。
自らの行動を恥じて、顔を赤くしながら俯いていると救世主が現れる。
「ちょっとティナったら。やっと来たと思ったら奇声上げて現れて……」
「る、ルナちゃぁんっ……!」
「……あぁ、そういう事ね。つまり自分でやって恥ずかしくなってしまったと」
「うぅ、正解です……」
現れた親友の胸に顔を埋めて、周りのプレイヤーに顔を見られまいとするティナに、やれやれといった風に彼女を宥めるのは親友の本郷月である。
「えへへぇ……」
「ち、ちょっとあんまり顔をグリグリさせないでよ! 他の人が見てるからっ……」
「ぐへへぇ……。それじゃあ、人気の無い所だったらええのんか?」
「黙れこのエロ親父!」
しっかりと腕をホールドして抱きつくティナを必死で解こうとするルナ。ちょっとしたキャットファイトもどきの始まりに、邪な目線が集まり始めると、ようやくやり過ぎたことに気付いた2人はこんどこそそそくさとその場を後にするのだった。
◇
あの後、しばらく2人仲良く駆け足で逃げていったティナとルナ。
ようやく足を止めて、乱れた呼吸を整える。
「ふぅ、ここまで来れば大丈夫そうね」
「私のせいでルナちゃんも巻き込んでしまって……すみません」
素直にルナへ謝罪をするティナに、ルナは気にしていないと快く謝罪を受け容れる。
「そう言えばツッコミし損ねてたけど……、ティナのその装備は何? どう見ても初期装備とは思えないんだけど」
「えっ? そうなんですか?」
自覚の無いティナの様子に、ルナは懇切丁寧に自分がログインしてきた後の事を説明する。
「確かに私チュートリアル受けてませんね」
「やっぱりね。ほら、ステータスオープンって頭の中で念じてみて」
「わかりました! ステータスオープンッ!」
「いや、だから声出す必要は無いって!」
こういうのは声に出さないといけないという謎のポリシーを持つティナは、周りにルナしかいないのを良い事に大声を出す。
名前:ティナ
種族:美女神
職業:召喚士
サブ職業:戦乙女
召喚獣:麒麟
レベル:1
HP:18/18
MP:16/16
STR:19 INT:9 VIT:12
MND:7 AGI:9 DEX:8
☆技能
・召喚術…レベルが10の倍数に達する度に召喚枠+1(最大6枠)
・双剣術…レベルが10の倍数に達する度に各性能が解放
・騎乗
☆装備
・総剣リリーフ…
聖剣カリバーン 魔剣スレイブ 罪剣ディース
徳剣ヴァーチェ 刻剣ワールド 幻剣ファンタズマ
彩剣エレメント
・聖装•理想郷
・湖妖精の厚底靴
・夢幻の指輪
・妖精皇の腕輪
名前: -
種族:麒麟
位階:5
レベル:1
HP:45/45
MP:90/90
STR:20 INT:35 VIT:18
MND:27 AGI:30 DEX:16
☆技能
・神雷
・霊獣の誇り
「どこからツッコミを入れればいいの……?」
「やっぱり私の召喚獣ってステータスおかしいですよねぇ……」
「いや、ティナも大概おかしいからね!?」
確かに麒麟の存在はおかしい。
これがサービス開始直後にプレイヤーの手にあって良いものでは無い事くらいは理解しているティナであるが、俺TUEEEE物が好きな彼女としては、是非とも私TUEEEEしたいのだ。
そして、ルナのツッコミ通りティナのステータスも初期ステータスとしては数値がおかしい。ここで、そんな事を言っているルナのステータスを見てみる。
名前:ルナ
種族:エルフ
職業:魔法士
レベル:1
HP:9/9
MP:12/12
STR:4 INT:15 VIT:4
MND:11 AGI:6 DEX:7
☆技能
・火魔法
・風魔法
・杖術
☆装備
・見習いの服
・見習いのローブ
・見習いの杖
このようになっている。
ただ、このステータスも実は平均的なプレイヤーのステータスと比べると少々高い。
何故そのような差が生まれるのかと言うと、このVRゲームを起動する際に被るヘッドギアから個人の脳波をスキャンするのだが、その際にその人物の身体的、頭脳的な特徴をスキャンした脳波から『ESO』内のプレイヤーへのステータスに加算されるのだ。
本当の一般的なプレイヤーで言うと、それぞれのパラメータの平均は5~6であるが、ルナの平均値は8.5でティナは12.25を記録する。ちなみに麒麟さんはと言うと35と頭おかしい数値である。
既に自分がランダム機能を使ってレアものを当てたことを吐いているティナのステータスを、ルナが1つずつ整理していく。
「まず、ステータスもさる事ながらサブ職業の存在だね。私には無いし、ティナの戦乙女ってやつも相当なチートっぽそう」
「美女神の特典でしょうか……? 妖精さんには何も教えられませんでしたけど」
「その妖精さんも、私がキャラメイクした時はそんな人間みたいなAIじゃなかったよ」
何もかもがぶっ飛んでいるティナに、当人でもないのに何故か疲れてきたルナ。何だかんだで世話焼きな性格な為に、ティナはこんなにも懐いているのだ。
「それとさっきも言ったけど、その装備だよ。特にその『総剣リリーフ』はヤバい」
「私もそれは同感です。プレイヤーの成長と共に強化されていく武器なんて、こんな初期に手に入っていい筈がありません。とんだクソゲーですね……悪くない」
自分の事だからこそこんなに胸を張って言えるのだというティナ。実に悪い顔をしている。
「まぁ、パーティ組む約束をしている私からすればありがたい話だけどね」
「まっかせてくださいよぉ! ルナちゃんは大舟に乗ったつもりでいてくれれば良いんです!」
ドンッと胸を叩いてドヤ顔。
ちょっとムカついたルナさんが脇をつつくが、すぐにじゃれつきに変わる。
「さっ、気を取り直して初戦闘にでも行きますか!」
「了解です! この『総剣リリーフ』の錆にしてくれますよ!」
そして2人仲良く『アーカス』を出て行くのであった。
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