第14話 やめろっ! ジェ〇ンじゃもたない!
序盤も序盤なのにホオズキちゃん強すぎんか?
そして物語が全く進まない。
そして内容が全く理解できない。
自覚はしています。
「いいから早くあのスライム倒そうよ! いい加減逃げちゃうか他のプレイヤーに横取りされちゃうよ!」
「それは困るな。ティナよ、おふざけの時間はもう終わりのようじゃ」
やっとこっちの話を聞いてくれたのじゃロリが、隣で座り込むティナに声を掛ける。
「よっこいしょうちっと……!」
「古い古過ぎる! そんなネタ今の世代じゃ誰も伝わらないよ!」
昭和の往年のギャグを披露する美少女。
非常にオヤジ臭いものだ。
「まぁまぁ、案ずるより横山やすしですよ」
「だから古いんだって! 言葉通り、私キレるよ!?」
「チッチキチ~」
今回はどうやら昭和のネタが盛り沢山のようで、お馴染みのギャグがあちらこちらから飛んでくる。ルナも着いていくのがやっとなのだが、ツッコミを入れれるだけ頑張っている。
「あたり前〇のクラッカー」
「あれ、妾食べたことないのじゃ」
「私もです。みんな誰しも一度は聞いたことありますからね、気になります」
「いや、私知ってるけども! だから、そんなコアなボケを放り投げないで!? きっと読者はついてこれないよ!?」
博識なルナちゃん。
もうここまで来るとティナのボケにツッコミを入れる為に色々と勉強しているのではないかと疑いたくなってくる程だ。
「スラスラ」
「ほら、あのスライムも''来ないの?''って感じで待ってくてるから!」
いつまで経っても仕掛けてこない3人に痺れを切らしたのか、モンスターであるスライムからこちらに襲いかかってきた。
「む、速い」
「よく見たらあのスライム、ボディが赤色ですね。まさか……?」
「3倍の性能を持っていそうじゃな」
「いや、赤い彗星じゃないからね!?」
ヘルメットがなければ即死だったかもしれない人を連想させるようなワードだが、このゲームには残念ながら大佐はいない。
「いえ、もっとよく見てください。あのスライム、ボディにカミナリマークが付いていますよ!」
「なんと! 稲妻の方じゃったか!」
「ジョニー・ライ〇ンでもないから!?」
少佐もいないというこのゲーム。
ならば一体誰が出演するというのだろうか?
「もしかしてアク〇ズを食い止めるといった緊急クエストもないのかっ!?」
「だからそんなのないよ!! コラボするわけないじゃん!!」
「やめろっ! ジェ〇ンじゃもたないっ!」
「このνガン〇ムなら!」
怒涛のガ〇ダムネタに辟易とするルナ。
これが実現するかしないかは神のみぞ知る事となる……。
「スラスラ~!!」
「ほら、スライムが待ちきれないとばかりに怒ってるよ!」
「きみに決めた ロレンツォ!」
「キュルキュキュ!」
ティナの召喚で久しぶりに出番がやっときた召喚獣のロレンツォ。
数話ぶりの登場で興奮しているようだ。
「ふーふーふーふーふー!」
「おぉ! これが2人が言っておった霊獣か! 神々しいのう!」
「こわい! 麒麟こわいよ! 何でこんなに鼻息が荒いの!?」
「ロレンツォさんもワクワクしてるんですよ! やっと出番が来たかと!」
嘶いたかと思うと、血走った目をギョロギョロとさせて目標を探すロレンツォ。やがて標的を見つけると、何も考えずにスライムへと突撃していく。
「キュルルルルルルル!!!」
「あれ、ロレンツォってあんなキャラだっけ!? 麒麟のイメージが壊れるんだけど!!」
「類は友を呼ぶと言いますからね」
「自分で言い切った!?」
飼い主がこんなならペットも似たようなものでしょうと言い切るティナ。不覚にも確かにそうかもしれないと思ってしまったルナだった。
そんな話をしていると、スライムを倒したらしいロレンツォが、尻尾を振りながら召喚者であるティナの元へ駆け寄ってくる。
「よくやりましたねロレンツォさん! 御褒美にニンジンをあげましょう!」
「キュルルゥ!」
「扱いが犬のそれ!? いや、てかニンジンて馬かい!!」
なんとティナにとっては霊獣であっても自分が召喚したのならば、自宅で飼っている犬みたいに扱うらしい。伝説の存在が形無しだ。
「まさか戦闘描写が欠片もないとは……。どうなのじゃ?」
「これはまずいですね。出来ればスライムの群れなんかがやって来てくれると嬉しいんですけどね」
「ちょっと、それフラグなんじゃ……?」
その瞬間ルナの危惧した通り、先程までは全然見つからなかったスライムたちが群れをなして襲ってきた。
ドドドドドドドドドドドドドド!!!!!
「ほらぁぁぁ! 余計なことを言うからぁぁ!?」
「妾はばっちこいだぞ! なにせ、妾登場してからボケしかほとんど言っておらんからな!」
「私の剣も、ルナちゃんの新しい装備もまだ試せていませんからね。丁度いいじゃないですか!」
言われてみればと納得したルナは、心を落ち着かせて目の前の敵の集団に武器を構える。
「いくよ!」
「はい!」
「妾の力、受け止められるかな?」
ルナの掛け声に合わせてそれぞれが散らばってスライムを相手する。
そして、総剣リリーフに力を込めて聖剣と魔剣を発現させる。
「''聖魔十字斬''!」
「''風機関銃''!」
ティナは白と黒の相反するチカラを持つ双剣をクロスに合わせて飛ぶ斬撃を斬り放ち、群れるスライムを彼方へと吹き飛ばしていく。
ルナは、レベルアップした事で覚えた''弾''を連射する魔法を唱えて、集うスライムの核を的確に撃ち抜いていく。
「ルナちゃん、やりますねぇ」
「やめて! こんなところで先輩なんか出したら折角の雰囲気が台無しだよ!?」
相変わらずのティナであった。
そして、ようやく戦闘描写を貰えた酒呑童子のホオズキ。
背負っていた身の丈よりも大きな金棒を振り回し、スライム軍団に突っ込んでいく。
「''魁''」
ホオズキによると、この技を戦闘の初めに使うと自身のステータスが一気に上がり、更に敵の統率者も倒すとこの技は進化するのだという。
そうこうしている内に、ホオズキの目の前に他のスライムよりも一回り大きいラージスライムが現れる。
「''魘''!」
そう言うとホオズキの姿が一瞬消えたかと思うと、ラージスライムの背後へとまわった。そして、その剛腕を持って一振りによって強襲し即死させるといった技のようだ。
そして、相手の統率者を倒したことで先程のホオズキの技である''魁''が進化する。
額の角が倒したモンスターの魂を吸うことで一時的に急成長し、普段より2倍程の大きさへと変わる。この状態になればホオズキのステータスも全てが2倍になるという恐ろしい性能を誇っている。
しかし、この技は無条件で且つ何もハンデがないという訳ではない。この強力過ぎる技''首魁''を使っている間は、仲間からの支援魔法や道具の作用が働かないといった作用があるのだという。更に、自らが''首魁''となる事で敵からのヘイトを集めてしまうというデメリットも存在するのだ。
しかし、それを含めてもチートと言わざるを得ないこの性能であり、加えてホオズキの素のステータスが高いことも合わさってまともに対峙できるのは、同じレア種族のプレイヤーか、ボスモンスター位しか思いつかない。
見た目に騙されて近づけば背中の金棒でグシャリである。
ここで、気になるホオズキのステータスを覗いてみよう。
名前:ホオズキ
種族:酒呑童子
職業:首領
サブ職業:戦士
レベル:5
HP:29/60
MP:11/11
STR:53 INT:9 VIT:22
MND:12 AGI:32 DEX:27
☆技能
・金棒術レベル2
・鬼術レベル3
・おねだりレベル1
☆装備
・酒呑童子のさいきょーの金棒
・首領の着物
・首領の帯
・烏天狗の下駄
・茨木童子の簪
このステータスが2倍になると言うのだから、1対1ならば最早誰も相手にはならないだろう。
そして、''首魁''状態になったホオズキにスライムたちが抵抗できることなく、ただ蹂躙されていくのみであった。
「す、すごい……」
「ホオズキちゃん恐ろしく強いですね。さすがは私と同じレア種族です」
圧倒的な力を見て感嘆とするルナと、何故か自分のことのように胸を張るティナ。
ぶるるんっ
「はぁはぁ……。うむ、確かにこれは非常に優秀なスキルじゃが、使う度にMPではなく代わりにHPを消費してしまうのじゃ。その上、''首魁''状態になれば回復手段が無いときた」
「ちゃんとデメリットもあるだけマシだよ。これで何もなかったら運営を訴えてた」
戦闘を終わらせたホオズキが息を切らしながら、同じタイミングでスライム集団を討伐したティナとルナの元に戻ってくる。
「あ! ホオズキちゃん後ろ!」
「っ! なんじゃとっ!?」
てっきり全て倒したものだと思っていたホオズキは油断していたのだ。どうやら向かってきたスライムは根こそぎ魂を頂いたのだが、1匹だけ死んだフリをしてスライムの死体に紛れ込んでいたようだ。
不意をつかれたホオズキも残る体力は少なく、また反応も遅れてしまった。このままではやられてしまう! と誰もが思ったその時であった。
「''浄化''」
落ち着いた女性の声がしたかと思うと、スライムの体の中心が白く発光を始める。そしてスライムが内から溢れる光に苦しみ動きを止めると、やがてスライムの体は綺麗な粒子となって分解されていった。
「な、何が起こったのじゃ?」
「あそこの木を見てください! 影に誰かがいます!」
ティナが指をさした方向を見るルナとホオズキ。
そこには、白が基調の神官服を身に纏った綺麗な金髪を携える女性がこちらへ笑顔を向けていたのだった。
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