第1話 『ESO』起動!
どうも、前回書いていて消してしまった小説を、少し加筆したものになります。
正直見切り発車ですが、お付き合い頂ければと思います!
よろしくお願いします!
VRというものが世に認知され始めてから、技術は進みついに初めて日本の大手ゲームメーカーによって、VR空間へダイブするためのハードとVRMMORPGの開発が同時になされる。
その名も『Eden's Stair Online』通称ESOだ。
楽園へ至る為の階段を、プレイヤー自らが掴み取ろうというコンセプトが売りで発売前から様々なメディアによって宣伝される事により、世界中から期待されていた。
今までの未完成なVR技術とは一線を画し、五感の全てを刺激することの出来る『ESO』だが、その事前情報は殆ど与えられなかった。
本来ならば公式HPから逐一更新情報が上がったり、有名タイトルであれば披露会も行ったりする程にゲームの価値というのは世間に受け容れられている。
しかし、この『ESO』に関しては最初にこのゲームが販売されますと言った宣言と同時に上がったティザー動画のみでしか、その内容を知り得なかった。
当然、開発会社に問い合わせが殺到する。
もう少し情報をくれないか、βテストはしないのか、そもそも発表しただけで本当は実現しないのではないか、と様々な質問や苦情なども寄せられたという。
それでも、公式の返答はただ一つ。
「発売までお待ち下さい。絶対に満足させてみせます」
最初はこの一辺倒な返答に対しても苦情が入ったものだが、どれだけこちらが問い合わせしても、本当にそれしか答えないのではキリが無い。モヤモヤした心は抑えきれないが、待つしかないだろうと発表から1年後の発売日まで首を長くして待ち続けた。
そして、ようやくこの時が来た。
初回販売台数は1万台という事で、とんでもない熾烈な競走が起こったものだ。予約開始の時刻が来た瞬間に、人々は予約ボタンを次々に押していく。そのアクセス数たるや凄まじく、サーバが落ちるなど滅多に無いと言われる程に技術力が向上したこの日本において、極端に動作が重くなったというのは記憶に新しい。
そんな戦争を勝ち進み、無事にVRゲームセットを予約することの出来た少女が、まだ朝だというのに満面の笑みでスキップしながら登校している。
彼女の名前は美姫ティナ。
父が北欧の生まれで、母は日本人というハーフの花も恥じらう17歳女子高生。セブンティーンだぜ、ぶいっ! とは本人の談。
両親ともに非常に美形で、そんな2人の良い所を全て吸収したのがティナ。綺麗な淀みの無い銀髪を肩の辺りまでストレートに伸ばしており、毛先は少しカールさせている。美しい碧眼と合わせて小さい頃はその神秘的な容姿から天使と呼ばれ育ってきた。
周りから蝶よ花よと愛でられてきたのにも関わらず、他人の事を見下す事も無く非常に良い娘に育ったというのは親バカ2人の談である。
その美貌は17歳の今でも健在であり、スラッと伸びた白磁のようなシミ一つ無い肌。出る所は出て引っ込むところは引っ込むという、メリハリのあるスタイルは本当に高校生なのか!? と思わせる程だ。
文武両道、容姿端麗、立てば芍薬座れば牡丹という言葉が似合うリアル完璧女子高生である……表の顔は。
家の中でも落ち着いた雰囲気なのだが、いざ自室へ籠ると素早く変身っ! 彼女は重度の廃ゲーマーへとなるのだ!
これまで様々なゲームをしてきた。
ジャンルを問わず1度でも触ったゲームはとことんやり尽くした。
そして勿論、課金もお手の物!
父はやり手企業の社長であり、母はさる日本の名家の一人娘という両親の生まれからお金はたくさんある家庭。ティナはお小遣いというささやかな施しではなく、カードを渡されて自由に使いなさいとの事だった。勿論黒色の。
しかし、カードを渡されても買う者はあまり無いティナ。
大抵家に揃っているし、自分がカードを使って支払いをすると言っても、服やゲーム、そして課金くらいのもの。それでも、月に100万円程は使ってしまうのだが……。
そんな事はさておき、今日の学校の時間が終われば家に予約したVRゲームが届いている。それがティナにとっては楽しみでしょうがないのだ。
取り敢えずは授業に集中しようと心の中で自分に喝を入れて、いつもの通学路を歩いていくのだった。
◇
「ティナちゃんおはよーう!」
「よ、美姫さん、おはようございます」
「てぃなてぃな、早くこっちおいでよー」
学校に着いてティナが自分の教室のドアを開くと、一斉にそんな声を掛けられる。学校でもその容姿と人当たりの良さから人気のある超絶美少女の美姫ティナ。
そんな彼女は交友関係が広く、教師たちからの信頼も厚い。
今日もいつもの様に友人たちへ微笑み返しながら、会話の輪へ入っていく。
「ティナは今日発売の『ESO』勿論帰ったらやるよね?」
「勿論ですよ! 今日の19時からサービス開始ですよね、待ちきれないですよ」
そう言って何故か分からないがシャドーボクシングの様に、拳をシュッシュッと動かすティナ。そんな彼女にゲームをするかと聞いた先程の女子生徒は親友の本郷月。
光沢のある綺麗な黒髪を腰の辺りまで伸ばす超絶美少女。
ティナと比べると少し小柄であるが、日本人の女の子の中では背が高く165cm程で、日本人らしく慎ましやかな胸囲をお持ちである。
そして、ティナと並んでこの学校の2大美少女として、先輩後輩関係なく、他校からも一目見ようとわざわざ来てしまう程に彼女たちの魅力は筆舌に尽くし難い。
そんな自他ともに認める親友同士のティナと月を中心に、いつものグループで会話が広がっていく。話題は勿論『ESO』だ。
「お、おいっ! 美姫さんと本郷さんも『ESO』やるみたいだぞ!」
「マジか!? どうせなら一緒にやりたかったなぁ……」
「お前予約出来なかったんだっけ? ……まぁ、俺もだけどよ」
傍から美少女たちの会話を盗み聞きした男子生徒たちが、彼女たちの話題で盛り上がる。これがティナの通う高校での常であった。
キーンコーンカーンコーン
ここで授業開始の鐘が鳴り、それを聞いて皆が一斉にそれぞれの席に座る。
「さて、今日の学校は長く感じちゃうかもしれないけどしょうがないね」
「はい、1限目は数学でしたよね。頑張りましょう」
そして、特に何かある訳でも無く時は過ぎ、6限目の授業終了を知らせる鐘が鳴った。下校の時間である。
「一緒に帰ろ、ティナ」
「はい、月ちゃん!」
元気いっぱいに返事をして仲良く2人揃って下校する。
その帰り道でも勿論『ESO』の話題で持ちきりだ。
「月ちゃんはもうキャラメイクの構想は出来てるんですか?」
「一応考えてるのは、種族はエルフで職業は魔法士って事かな」
「堅実ですね。月ちゃんならきっと良い線いきますよ!」
「廃ゲーマーのティナに言われるんだから期待しちゃうね」
笑い合いながら話す2人の美少女に、道行く人たちはその笑顔に目を奪われる。そんな事気にしないし、気付いてもいない2人は『ESO』の話を続ける。
「ティナはまだ何も決めてないの?」
「実はそうなんですよ。やりたい事だらけで考えが纏まらなくて……」
「まぁ、今からでも候補は少し絞っておいた方が良いよ。それじゃ私こっちだから、またログインする時は連絡するね!」
「わかりました。お願いしますね」
そう言って別れる2人。
ティナは自宅への帰り道ずっとゲームの事ばかりを考えていたのであった。
◇
「ただいま帰りました」
「あら、お帰りなさい」
自宅のドアを開いてティナがそう言うと、奥のリビングから母である美姫澪が顔を出す。
「注文してた商品は部屋に置いておきましたよ。ティナちゃん、ずっと楽しみにしてましたからね」
「はい! この日をどれだけ待ち焦がれたか……!」
親の前であっても丁寧な言葉使いを崩さないティナ。
しかし、基本的に礼儀正しいティナであるが、家族や親しい友人に対しては少し隙を見せやすい。薄々わかっている方々もいらっしゃるかもしれないが、実はティナちゃん結構アホの子だったりする。
いや、頭脳的なアホという訳ではなく少し抜けている所があるというか……。月の前では特にそれが顕著に出ており、時折意味の分からない事を平気で口にしたりする。
意外とおちゃめな女の子だったりするのだ☆ とは本人の談。
「程々にね」
「大丈夫ですよ。さっきそこのコンビニでゴールドブル買ってきましたから!」
「あら、なら大丈夫ですね」
金色の牛から翼が生えているロゴマークが目立つエナジードリンクを誇らしげに掲げる娘が可愛くて、ついつい甘やかしてしまう母であった。
「夕飯も済み、月ちゃんへの連絡も済んで、いよいよゲーム起動のお時間がやって参りました!」
部屋で1人そんなことを言いながら、着々と準備をするティナ。非常にシュールである。
そして待ちに待った時間がやって来る。
「『ESO』起動!」
瞬間、ティナの意識は真っ白な空間へと飛ばされる。
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