お屋敷ワールド
「雪華!伏せろ!」
「な、なんだ!?」
慌てて雪華をテーブルの下に避難させて俺も机の下に行く、あれはクロックの武器、ということは彼女は、、、
《ドガン!!!!!!!!!!!》
次の瞬間、店内は大きな爆発音と共にグチャグチャになった、周りはかなりの混乱に陥っている、それどころか隣の雪華も混乱している、等の俺は冷静だ、というかあの武器も戦闘スタイルも見たことがある、あれはクロックワールドの魔法職だ
「なんだあれ!?、なんなんだ!?」
「まあ、落ち着け雪華」
雪華をなだめると俺は机の下から顔を出した、そこには杖を握りしめた魔道士が砂埃の中立っている、俺は彼女の元まで両手を上げて近づく
「おい、それクロックワールドの世界の武器と魔法だろ?、俺も実はクロックワールドから来たんだ」
俺がそう言うと少女は杖をおろして少し頬を緩めて俺のもとに歩いてきた
「ほう!、そんじゃお兄さんも日本から来てんかいな、そな少し話をきかせてや」
そう言うと俺は数少ない壊れていない椅子に腰を掛けた、少女もそれに合わせるかのように椅子を持ってきて座る、雪華は後ろで壊れた机なんかを眺めていた、俺達は椅子に座ると早速話を始める
「お兄さんお名前と職業、レベル教えてえな」
「俺は白魔道士の450、カタハだ、君は?」
「お兄さん450プレイヤーかいな!、すごいな、わいは400の魔道士、フライマや、よろしゅうな」
彼女は魔道士と名乗ったが、彼女は正確には魔道士ではなく【殴り魔道士】というものである、全てのスキルポイントをワープと重力魔法に振り込んで、物理攻撃力を上昇させる力学の杖を持つ、そうすることで超高速で敵を殴り飛ばす、クロックワールドでは最速の近接職として名をはせたプレイスタイルである。
自己紹介を終えると、フライマは足を組み直して、少々業務的な笑顔で俺に提案を出してくる
「カタハ、異世界だろうと日本だろうと、生きていくためには全力を尽くさなければいけへん、そうやろ?、そこでわいらでパーティーを組んで冒険者やらへんか?」
こちらとしては願ってもいない話だ、日本もアメリカも異世界も、身元不定者ができる仕事はそう多くない、そういう事で冒険者(魔物退治)をやろうとしていたためこちらとしては断る理由がなかった
「雪華!!、この娘と一緒に行動する、問題は?」
俺が後ろを向いて雪華に尋ねると、雪華はめんどくさそうな表情で器用に木片でペン回しをやっていた
「いいでしょ、むしろお願いしますだよ」
俺はフライマに手を差し出して握手を求める、フライマは笑顔で握手を返してきた、こうして俺達の仲間が一人増えた
「で、、自分ら何処に泊まるん?」
フライマが椅子を立ってこちらを振り向いて宿泊についてを訪ねてくる、俺達は何処に泊まるか、、、恐らくボロ宿あたりに泊まることになる
「恐らくしょぼい宿に泊まる事になると思う、なんせあまり金がなくてね」
「それならいい仕事あるよ?、寝床付きのいい仕事」
「お、じゃあそれやらせてもらおうかな」
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夜の館を巡回する、館の中は非情に綺麗で、赤いカーペット、綺麗なシャンデリア、そして壁に飾られた絵画など、よるといえども月明かりと手に持っているランプの明かりで巡回するには十分な明るさがあった
何故俺がそんな屋敷を散策することになったかというと、フライマが持ってきた仕事は3人1組での屋敷の警備の仕事であった、雇用主がこの街の大商人であるため給金も結構よかった、しかも3人交代で睡眠も取れる、ベットはふかふかのベットであると聞いて早速始めた仕事であった
「カタハ~、次わいの番やで、部屋で休みいな~」
「了解~」
俺はフライマと交代して部屋に戻る、部屋にはベットが3つあり、3つある中の右から2つ目、真ん中のベットに雪華が枕を抱えて座っていた
「おかえり」
「ただいま~、あら、寝ないのか?」
俺がそう言うと、雪華は物凄く申し訳無さそうに、少々顔を赤らめて言った
「そ、、、その、女子力を開放させそう」
「は?」
女子力開放、それは料理であったり、裁縫であったりという能力を女子が発揮することで女子としての品の良さを開放することであったはず
「お手洗い一緒に来てくれないか?」
「おめえ神様だろ!?、幽霊が怖いのか?意味不明だぞ!」
夜、赤面、女子力開放、要するに失禁しそうと言うことであるのは最初から分かっていた、そうで無いと願っていたが、真実はやはり残酷であった
「神様だから怖いんだろ!」
「いや、意味不明、却下、自分一人で行け」
「じゃあ意味わかればいいんだな!」
雪華はそう言うと、足をもぞもぞさせながら、少し考えこんで口を開いた
「お前がもし王様で、独裁政治をやっていました、しかしある時権力を失いました、お前はそれで街に出れるか!?」
「ああ、なるほど、よく分かった、お前の昔の所業もよく分かった」
雪華の出したたとえは凄くわかりやすく、思わず膝を叩いて納得した
「はぁ、じゃあ行くぞ」
「ふぁ、ありがとう」
暗い館の中を歩き、お手洗いの前までたどり着いた、俺は扉を開けてトイレに入り、ドアを閉めて便座に座り、扉の鍵を締めた
「う、、、嘘だドンドコドーン!!出なさいカタハ!!」
「真実は時に残酷だ」
「カタハ貴様!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
ドアの前からは雪華の悲痛な悲鳴が聞こえてくる、まるで拷問でも受けているかのようである、ドアはどんどんと鳴り止むことなく鳴り続ける
「まあ聴け、女子力といったが、今の時代は男子力も大事なんだ、事実男子がご飯を作る企画は見事美味しい料理を作るが、女子のご飯を作る企画は最後王水を使った劇薬になった、つまりそういうことだ」
「お前最初から用を足すつもりだったんだな!!はめたな貴様!!!」
雪華の怒鳴り声はどんどん小さくなり、ドアを叩く音も少しずつ少なくなっていった、俺はそんなことを気にせず用を足した
「頼むカタハ、後生だ、助けてくれ」
「その辺に花瓶あったよね」
「それは死も同然なんだよ!!!!!!!!!!!」
俺は用を足してドアを開けると、そこには涙目の雪華がうずくまっていた、俺を見上げる表情には殺意が見え隠れし、即効でトイレに入ると、ドアの向こうから罵倒の声が聞こえてきた
「鬼畜!!鬼!茶碗蒸し!!!」
「最後のなんだよ、、、」
雪華がトイレから出ると、目を細めて少々表情が曇った、なんとも言えない警戒した感じの表情だ
「主、なんかおかしいぞ、悪霊系統化な、良からぬものがいるぞ」
「おいおいまじかよ」
周りを見渡すと紫色の影が確かに拾遺に漂っていた、クロックワールドにはなかった状態だ、雪華はどんどん表情を曇らせていく、俺は雪華にどうしたら良いかを尋ねた
「雪華、どうする?」
「主は浄化魔法は使えるか?」
「ないない、俺は回復しかできない」
そう言うと雪華は俺の腰についていたMPポーションを二本開けて飲み干した、すると白い髪の毛が一気に赤く染まる、その姿はまるで太陽神か何かを連想させた
「ふむ、まあまあいいものだなそれ、少し力が戻った」
「なにをやったんだ?」
「少し力を戻しただけさ、じゃあ神様の浄化だ、とくとご覧あれ」
雪華がそう言うと、足元が一気に赤く輝きだした、暗い屋敷なのもあって雪華にスポットライトが当たったかのようになっている。
しかし俺はこの時気が付かなければならなかった、彼女が前発した趣味の話を、そして行動に出るべきであった、先に行ってしまうと、この依頼は失敗した、と言うかこれからものすごいことが起きて、失敗どころでは無くなるのであった。