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46.究極クエスチョン

すまない、書くことがあまり多くないから、4000字しか書けてない、本当にすまない。

次回からは、書けることがけっこうあるから、5000は書くから、うん、きっと。



《契約だと?》


 ウロボロスがそう怪訝そうに訊き返した。

 それにリースは頷く。


「そう。私があんたに求めるのは契約って間柄に収まる範囲の助力。できるの? できないの?」

《是非を問われれば無論のこと、是だ。しかし、なぜわざわざ『助力』なのだ? 『代行』をさせれば、それで済むはずだろう》

「ははは、私たちの野望を代行させたら、なにを対価として持っていかれるかわかったものじゃないしね」

《ふむ……?》


 ウロボロスはそう唸ってから、リースの言う野望とやらを考察してみる。

 彼は金銀財宝程度ならば、対価を求めるつもりはさらさらない。

 やはり強欲で、浅慮な人間と評して渡して終わらせるつもりであった。

 特定の人間の殺害であったのならば、人数によって幾ばくかの寿命を頂くという形にしただろう。

 けれど、何を対価にされるかわからないとまで言い切る大望。

 ウロボロスには、それが皆目検討もつかなかった。

 いや、ある程度は思いつくものの、どれも阿呆な、いや、大望などと表現するにら能わぬ絵空事である。

 だからこそ。


《その大望とは、なんだ?》


 リースはその問いに、率直にこう答えた。



「神殺し」



 だからこそ、ウロボロスは心底驚き、そして、リースを愚者と評した。






 ウロボロスとは元来、特定の神話に属する神獣ではない。

 共通点どころか、体系すら全く異なるほとんどの神話に身喰らう蛇、輪廻の蛇などの、尻尾を喰む蛇が登場している。

 このシンボルこそが、ウロボロス。

 破壊と再生、死と不死の象徴。

 矛盾を孕みし不滅の神獣。






《やめておけ》


 ウロボロスは、リースの語る大望をそう切り捨てた。


「どうして?」

《語る必要があるか? 世界とは、そういう風に出来ている。分不相応と言うことすら烏滸がましい、抱くことそのものが誤りだ》

「ははは、かもね」


 ウロボロスの言う通りだ。

 この世界には、種族という位階がある。

 人間が最下位で、神が最上位。

 言ってしまえばこれは、下克上だ。

 底辺が頂点に成り代わろうという、賤しき行為。


《可能性すらないことは、夢とは言わん。ただの妄想だ》

「やっちゃえば妄想じゃなくなるわね?」


 けらけら笑いながら、リースは冗談めかすように言う。

 それにウロボロスは顔をしかめた。


《一応訊くが、敵は?》

「四天使」

《阿呆か》


 ウロボロスは半眼でリースを見据える。

 彼はため息を吐いて、とぐろを巻いた。


《アレらの種は『天使』ではあるが、その力は『主神』さえも凌ぐ。なにせアレらは、『原神』の血肉から産まれ、『権能』を受け継いでいる》

「原神?」

《む、知らぬのか?》


 リースは頷いた。

 それにウロボロスは呆れて、ため息を吐く。

 己が敵と定めている相手を、ロクに調べてすらいないとは。


《原神とは、本当の意味で・・・・・・この世界を創造した神だ。生命、法則は無論のこと、ありとあらゆる概念に至るまでな》

「初めての神様ってこと?」

《そうなるな。この世界にあるものは、全てがあいつの創造物だ。故に、この世界でできることはなんでもできてしまうし、全てを識っているのが、あいつだ》

「…………全知全能ってことね」


 神とは、全知全能には程遠い。

 確かに彼らは、絶大な力を持っている。

 けれど、神には、己に課された役割以上の力を振るうことはできない。

 



 彼ら、『神』が複数いることがその証拠だ。



 そも、彼らが本当に全知全能なのならば、仕事を分けずに一人で世界を回してしまえばいい。

 それをせず己に役割を課し、他の神と仕事を分担して世界を回している。


《その全知全能の存在が初めて創造ではなく、血縁という概念を以て生み出した者こそが、今は『魔王』と畏怖されしルシファーと呼ばれる堕天使だ。『四天使』は、その弟と妹にあたる》

「壮大な話ねぇ」


 面白い話だ。

 けれど、リースはそんなことに興味はない。

 己が気にすることは、ただ一つ、勝てるかどうか。

 相手の正体など、どうでもいい。

 己が宿敵と定めた存在に勝利し、屠ることが叶えばそれだけでいい、満足だ。

 ウロボロスは、リースがそんなことを考えているのだろうな、と読み取って嘆息する。


《お主の在り様は、『修羅』のようだ》

「私が『修羅』? 何言ってるの、本物の『修羅』に失礼よ」

《では、お主は何と呼ばれる存在だ?》

「そうねぇ……」


 リースは己が、何と呼ばれるべきか考えてみる。

 神? 本物がいることを知ってるのに、それを自称するのは余りに不遜だろう。

 悪魔? 己の性格はねじ曲がっている自覚はあるが、流石にそこまではいかないだろう(他人から見ると違う)。

 鬼? 兄のように、あそこまで人でなしになることはできない。

 修羅? 己は、効率を第一に考えてしまう人格だ。打算を考えるようでは、そう呼ぶことはできないだろう。



 嗚呼、ならばやはり、己はこう自称するべきなのだろう。



「天才、かしらね」


 平然と、臆面もなくそう言ってのけた。

 それにウロボロスは、やれやれと言わんばかりに頭を振ってから苦笑する。


《成程。天才か》

「うん」

《只人ではない、そう言いたいのか》

「そうね。私、なんでもできるし」


 なんでも、その中には、『神殺し』すら入っているのだろう。

 リースは自信からではなく、事実を以てそう言った。

 ただし先頭には、手段を選ばなければがつくのだろうが。


《いいだろう。契約を結ぼう》


 そも、望みを叶えると言ったのは自分だ。 

 それが多少、無謀なものであったからといって、どうして曲げることができよう。


「ふふふ、そう。なら、これならよろしくね、ウロボロス?」

《だが、短い付き合いになりそうだ》

「ならないわよ。私はもう、負けないって決めたしね」

《そうか……》


 ウロボロスはそれだけを返した。

 リースは微笑み、 済ませるべきことを済ませるために問う。


「それで、 契約によって得られる物はなにかしら?」

《 何、簡単だ。 俺が契約者に齎すは、再生の『権能』の一端よ。具体的には、致命傷すら死んですらいなければ完治させる程度のな》

「へぇ、それは、いいわね」


 リースは、脳統制身体改造という 人体実験を施されている。

 これはかなり応用がきき、 うまく使えば致命傷を受けても死を回避することが可能だ。

 しかし如何せん命は繋げても、損傷による身体機能の低下は避けることができないことが欠点だったのだが、再生能力があればそれを補うことができる。


《しかも、我は神獣でな。これは『化生』としての契約方式なのだが、我はお主の呼び出しに応じてその場に馳せ参じ、気分や友好度合いによるが共闘もしよう》


 しかも、ウロボロスまで共に闘ってくれるときた。

 ウロボロスはかなりの大物だ。

 持つ力も、再生能力だけなどではないだろう。

 彼は再生だけでなく、破壊も司る神獣なのだから。


「至れり尽くせりね。けど、代償もそれなりと見たのだけど、その辺りはどうなの?」

《ああ、それなりのものではあるな。我がお主に再生を齎すには、お主の肉体が我の力と同期できるようになってもらわねばならぬ。それが対価となる》

「ふむ……」


 リースは、力との同期という言葉の意味を考える。

 そのままの意味で捉えるならば、肉体を弄られるのだろう。

 人体実験にいい思い出がないリースは顔をしかめる。


「その肉体と力の同期とやらのためには、 どの程度肉体を弄らないといけないのかしら?」

《なに、そこまで小難しいことをする訳ではない。我の体の一部を触媒に、再生を齎す故な。お主の体に、我の肉体の一部を移植する》

「それは、どんな風に?」

《我の目を、お主の目に移植する。目意外となると、拒絶反応のリスクが高まるから勧めぬがな》

「想像以上に直接的な方法で驚いたわ」


 てっきり、脳を弄るだとか肉体に魔術やら魔法やらの要因のある何かしらの儀式をやるだとか、そんなものと思っていたのだが。


《やり方は問わん。目が気に召さないのであれば、体液でもよい》

「体液?」

《うむ。ストレートに言うと、お主を丸呑みにする》

「目の移植で」


 迷うことなく即答した。

 清々しいまでの即答っぷりであひ、ウロボロスですら面食らっている。


《そ、即答か……》

「いや、丸呑みはちょっと、乙女としての尊厳が失われそうで……」

《移植は生物としての尊厳が失われる行為だと思うが?》

「…………」


 そんなことはわかっている。

 それらを天秤にかけて、乙女としての尊厳を選んだのだ。

 恋をする前であれば、丸呑みを選んだのかもしれないが……いや、やっぱり目の移植だろう、死ぬのではないかと気が気じゃない。


《さて、移植を始めようか》

「じゃ、目、サクッとくり抜く?」


 リースはナイフを手に、己の目に刃を突きつけた。

 ウロボロスはそれに顔を引きつらせる。


《その迷いの無さ。もうお主、乙女とは呼べないのでは?》

「こ、心は乙女だし……」

《ふはは、笑止》

「あはは、せいっ」

《ナイフ程度では我の鱗は貫けんぞ》

「チッ」


 ウロボロスにナイフを投擲するも、鱗に弾かれてしまった。

 流石は神獣、硬い。


「そう言えば、あんたは目を失くしちゃうけど、大丈夫なの?」

《我は殆ど不死だ。眼球程度の肉体の欠損など、一秒とかからずに治る》

「やっぱりズルいわ」


 上位種はやはり理不尽だ、と改めて思う。

 いや、人間が脆いのだろう。

 なにしろ、人間は些細なことで呆気なく死ぬ。

 上位種と違って、人間には何もないから。


《それと、目をくり抜く必要はない。非効率なのでな》

「え、じゃあ、どうするの?」

《我が魔術で、お主の眼球と我の目を置換する》

「へぇ、そんなことができるの……」

《うむ、では早速》


 あ、これはヤバイ、とこの時になって気づく。

 目の移植は、考えるまでもなくかなり痛い。

 見る限り、麻酔の類いはない。


「ちょっと待って、痛覚を遮断す……」

《我が断片は汝の断片を喰む》

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」



 突然の激痛に、リースは絶叫した。






「所で、私があの時、『四天使』の抹殺を頼んだ場合、対価は何になったのかしら?」

《お主と、お主と友人以上の関係にある人間すべて命だな》

「やっぱり、契約にして正解だったわね。危ない危ない。何事も、自分でやるのが一番ね」



 そんな会話が人間と、なぜかボロボロになった神獣の間にあった。


さて、後一柱上位種と契約すれば、リース編は終わりとなります。

そして、次は主人公ことアンリ。

こいつもやること結構あるんだよなぁ……

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