37.叫ぶ時は、周りに注意するべし
ふぅ、やっとリュウの話にいけたぜ
番外編ばかり描いてたような気がする……
最近はインスピレーションが止まらないから、投稿ペースは少しずつ早くなる、いや、したい。
「キツネ先生、愛してるぅぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!」
未だ朝日が昇ったばかりの刻限。
起床し、活動している人間は少ないであろう時間帯に、そんな叫び声が野に放たれた。
ご老人が聞けば青いなぁ、と微笑ましく感じるであろうその叫び。
その叫びを放った主、リュウ・アストレイは満足気に頷いた。
「よし」
そうして、彼は歩き出した。
砂海の上を。
さて、リュウがいる場所を説明しよう。
彼は旅立ってすぐ、リグレット王国を出た。
彼は彼なりに、己の力量不足を感じていたから。
武者修行だけなら、国内だけでもできると思うだろうが、はっきり言って今のリュウでは不可能だ。
あそこは怪物たちの巣窟である。
『天使』などという人外の怪物を筆頭に、魔術を手足のように扱うアンリ、万能の天才のリース、森羅万象を喰らう修羅ことケイト、人をしてミカエルに友と認めさせた鬼ことオードルなどを輩出するような人外魔境。
だから情けないことだが、リュウは難易度を一段下げるために、他国へと赴いたのだ。
別に、どこでもよかった。
己を磨ける場所であり、あわよくば『上位種』とも巡り合える場所であれば。
だが、それでも。
「砂漠は失敗だったなぁ」
何を隠そう彼は現在、遭難している真っ最中なのだから。
正直、砂漠舐めてた。
ぐいぐい真っ直ぐ進んで、いざとなれば足跡辿って戻ればいいだろうと考えていたら、方向感覚を失ってしまい、足跡は風で全て消えてしまったのだから。
「つっても、なんとかなるだろ」
しかし、リュウは特段慌ててなどいなかった。
はっきり言って遭難程度、彼が今まで経験してきた事柄に比べれば些末亊も良い所なのだ。
『鬼』にしばかれ、張っ倒され、しごかれ、揉まれ続けてきた毎日に比べれば、こんなもの苦にもならない。
起きてすぐにキツネ先生に愛を叫んだことなどが、それを如実に表している。
「お、サソリ発見」
リュウはサソリを指で摘まんで持ち上げて、空いた手で毒針をもぎ取る。
その一連の行動は、もはや手慣れたもので、一種の芸術美すら感じられるほどだ。
「はむ」
そして、生のまま咀嚼した。
調理は不要、真の男は生でいく(キリッ)。
「……しかし、参ったな。地平線しか見えん」
リュウの目でも、地平線しか見えない。
彼は困ったように苦笑して、歩き出す。
☆
日が暮れ、月が昇り、朝日が顔を出した。
「キツネ先生、愛してるぅぅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!」
この男はまた叫んでいた。
そして頷き。
「今回は、八十点かな」
なんか採点していた。
基準はもちろん、なにを採点したのかということさえ不明である。
リュウは荷物を背負い、再び歩き出す。
「お、今日はトカゲか」
砂からひょいっと顔を出したトカゲを、彼はひょいっと摘まんで痛みが生じないように意識しながら、トカゲを絞殺した。
そして素早く血抜きをして、血は飲む。
因みに、肉は焼いた。
何故焼くかだと?
その方が美味しいからさ!
「もぐもぐ……」
今のリュウ・アストレイは訓練を乗り越えた、屈強な男となっている。。
彼は、サバイバル体質になっているのだ。
そう、具体的に言っちゃうと、一日の摂取する栄養と成分をトカゲ一匹でなんとかなっちゃう位の。
話は変わるのだが、ゴキブリは人間の髪の毛一本で一週間生存可能らしいのだが、いや、この話はよそう。
「ふむ……」
焼いたトカゲをモグモグしながら、周りを見回す。
そして。
「なあるほど」
バン!! と。
素早く引き抜いた銃を発砲して、少し離れた所の枯木を穿った。
「さて、行きますかね」
リュウは再び荷物を担いで、歩き出した。
☆
「キツネ先生愛してるぅぅぅううううううううううううううううううううううううううううううううウウウウううううううううううううううううううううううううううううううううううううううウウウウ!!!!!!」
今度は巻き舌風に、リュウは全力で叫んだ。
そして彼は掌で顔を覆い、空いた手を虚空に向かって、突き出すという香ばしいポーズをしながら。
「八十五点ン!!」
なんか高評価をつけていた。
「いや、待て、頑張ればもう少し高得点いけそうな気がする……」
もう一度、大きく息を吸って、吐いて、はいどうぞ!
「キツネ先生、あああいして
《やかましいわァ!!》
「ゴッパァ!!!???」
叫びの途中の突然のアッパーカットにリュウは全く対応できず、おもっくそ良い一撃を顎に喰らってしまった。
その一撃、驚く程鋭く、的確にリュウの急所を穿った。
「ご、ぉ、おぁ?」
的確に脳を揺らされて、リュウは体を失い、膝と掌を土につけた。
意識も混濁してしまっている。
《おい、貴様、毎日毎日毎日毎日毎日毎日、オレの領域でなにを叫んでいるのだ! 砂漠の中心で愛を叫んで、スピリチュアルかなにかになっているつもりか!?》
アッパーカットをくれた犯人は、鳥であった。
いや、火の鳥と呼ぶべきか。
赤い羽根の先端が白い炎となっていて、赤い羽毛と腹が白い体毛の鳥。
頭には、白銀の王冠らしきものを載せている。
大きさは、四十センチ程か。
「いきなりなにすんだ、お前!? 挨拶もなしにアッパーとか、無礼とかそんなの通り越して、この温厚なリュウさんでもガチギレしちゃいますよお!?」
《やかましいわ! 毎朝寝ている所をいきなりの叫びで叩き起こされる気持ちを考えてみろ! 近所迷惑とか考えろ!!》
「うるせぇ! 砂漠に誰か住んでるとか思わねェだろうが!」
《もしかしたら先住民の方々が住んでいるかもしれないだるォ!?》
「阿呆か! こんな開けた場所だったら、誰か住んでたら一発でわかるわ! そしてその方々に配慮して小声で叫ぶわ!」
《結局叫ぶのか!!!!!!》
火の鳥さんは、バッサバッサと抗議するかのように羽ばたいている。
……そのまま天高く飛び立ってくれないだろうか、今すぐに。
《…………というか、貴様、驚かないのか?》
「鳥さんが喋るだなんて、珍しくねえだろ? インコとか」
《それは遠回しな自殺願望か? 不敬でブチ殺されたいのか?》
火の鳥さん、凄くご立腹である。
「まぁ、名前はわかんねぇけど、お前、上位種なんだろ?」
《左様。しかし、その不動ぶり。貴様、上位種との邂逅は初めてではないな?》
「そうだな。お前で、三度目ってとこか」
オーディン、ミカエル、そして何故か脳裏を過ったオードル・シリア。
……あの人素手で上位種縊り殺せそうだから、もう上位種でいいような気がしてきた。
《ふぅむ、詰まらん。もっと驚け》
「はっはっは、期待を裏切ることができたようでよかった。惑わしの術をかけてくるやつの鼻を明かすことができて、愉快だ」
《なんだ、気づいていたのか》
炎の鳥は、心底詰まらなそうに言った。
「わかりやす過ぎだっての。お前、俺を何日も同じところを歩かせてるだろ? もしかしたら、同じ日を繰り返されてるかと疑ったが、それだとサソリとトカゲ、なんて違う生き物が出るはずもないし、俺が銃で穿った枯木も元に戻ってるだろうしな」
《敏いなぁ、間抜けそうな顔をしてくせに》
「オーケー、オーケー、俺に撃ち殺されたいなら最初から言ってくれよ。どこに弾丸ぶち込むか考えないといけないんだからよ」
リュウは銃を引き抜いたが、火の鳥は全く狼狽えない。
《……いや、すまん。ちょっと言い過ぎた》
「……俺も、売り言葉に買い言葉とは、言い過ぎた」
《オレ、毎朝、叫び声で起こされて、イライラしてて……》
「いや、俺も周りに誰もいないからと思ってて、ハジけ過ぎたよ」
リュウは銃を降ろした。
火の鳥は、少しずつ羽ばたきを穏やかにして、地面に降り立つ。
《それで、こんな何もない砂漠になにをしにきたんだ?》
「口調、砕けたなぁ。それがお前の素か?」
《そんな所だ。後、質問に質問で返すな》
「そうだなぁ。まぁ、武者修行ってやつかな?」
《…………こんな砂漠でかぁ?》
「一人になりたかったんだよ、とにかくな」
火の鳥は、首を傾げる。
「そういうお前は、何してるんだ?」
《散歩だよ。面白そうなものはないかなー、と砂漠をグルグル》
「で、たまたま俺を見つけた、と?」
《そういうことだ》
リュウはため息を吐いた。
(……しかし、やっと当たりを見つけた)
リュウがやっていたのは、武者修行であったのは事実だ。
しかし、周っていた場所は全て曰くつきものばかり。
人喰い獣が出るだの、蛮神が棲んでいるだの、とにかくまぁそんな場所ばかり。
この砂漠だってそうだ。
ただ、人が棲むことなどできない、無人の砂漠という噂のみ。
それだけだ。
何故、棲むことができないのかは、知ることはできなかった。
原因は不明。
異常気象なのか、それとも怪物でもいるのかすらわからない。
だからこそ、ここは当たりではないのかとリュウは思った。
「……退屈しのぎで、俺は惑わしの術かけられたのか?」
《悪かったよ。ただ、厳密に言うと、惑わしの術などかけてないぞ? オレがやったのは、大気の温度の差で作りだした蜃気楼と、熱を使ってお前の三半規管を少し狂わせただけだ》
「なにしてくれてんだ、お前!?」
リュウは今度は本当に撃ち殺してやろうかと内心悩む。
しかし、なんとか彼は思い留まった。
折角の上位種との出会いを、これくらいのことで棒に振る訳にはいかない。
《オレのやったことは、そこまで難しいものじゃない。今、蜃気楼を解くぞ》
ふわり、と。
霧が晴れたかのように、砂が舞い散る。
「ぁー、傍から見たら、とんだ間抜けだなぁ、これって」
砂が舞い、薄らととだが先程まで砂によって埋もれてしまっていたリュウの足跡が現れた。
そして、その足跡からリュウの歩いてきた軌跡が顕わとなる。
その軌跡は、綺麗な円であった。
「俺、自分でぐるぐる同じところを歩いてたんだな」
《そういうこった。三半規管をいじったってのは、そういうことだ》
リュウは先程まで、直進にではなく円を描く様にグルグルと歩いていたのだ。
主観では真っ直ぐ歩いていた、これは間違いない。
となると三半規管、というよりは平衡感覚を弄ったのだろう。
例え話をしよう。
目をつぶった状態で、真っ直ぐ歩いてみてほしい。
二十歩も歩けば十分だ。
そして目を開けて、己が本当に真っ直ぐ歩けていたのか確かめてほしい。
これで、本当に真っ直ぐ歩けている人間はほとんどいない。
リュウがやらされていたのは、これの極端バージョンだ。
「と、なるとお前は熱とかそういうのを操る上位種?」
《応よ。そういうや、自己紹介がまだだったな》
バサリ、と。
炎の鳥は力強く羽ばたき、直上に飛び上がった。
《我が名はホルス! オシリス神とイシス神が第五子! 天空と太陽を司る神鳥である!》
撒き散らされるは、圧倒的な熱量と神気。
リュウは撒き散らされるそれに、熱さと畏怖をもって二種の汗を流す。
こいつともし戦ったとしたら、己は何秒生きていられるだろうか。
《よくぞ参った、聖国より出づりし人の子よ! 砂漠の旅は過酷であったろう。我ら砂漠を識る者は、そなたらを無碍にはせん》
ぶわり、と。
ホルスの背後に突如、石造りの三角錐の建築物が現れた。
《さて、堅苦しいのは此処までだ。上がれよ、歓迎するぜ。ようこそ俺のピラミッドへ》
さて、どんどんフラグ回収してくぞー!
今更なんですけど、自分の作品って、神様けっこう出るでしょう?
それで、自分の可能な限り調べて、一説や逸話を拡大解釈したものを作品に反映してるんですが、わかりやすくするため、解説とかほしいですか?
要望やらもとむー(露骨すぎるコメ稼ぎ)
さて、明日までに投稿するために本編書かねば……(まだ一文字も書けていない)
そして明日を乗りきっても、月曜日には普通に生きます(こちらもまだ一文字も書けていない)。
……誰かタスケテ…………
影分身使えるようになれば、そっちに勉強とバイトをさせるのに!(クズい)
では、みなさんまた次回お会いしましょう!