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19.バレなきゃ、イカサマじゃーないんだぜ

遅くなっちゃいましたね。

ですが、最近生活が落ち着いてきたので、更新スピードはもう少し上がるかと。

てか、三作品やってる時点で首が回るかっての!

失礼、これ愚痴ですね。


どうぞー。

 アンリはパンツ一丁で、体操座りになっていた。

 どうして、こんなことになっているかって?

 それは。


『もう一回、はい、もう一回!』


 という具合に駄々をこねて、ジャケットとズボンなど、つまり服を担保にして再戦を申し込んだのである。

 勝敗? 野暮なこたぁ、訊くモンじゃありやせんで。

 ……あ、涙出てきた。

 夜風が肌に厳しい。冷たいよォ……。

 自業自得である。


「君、少しいいかね?」


 お巡りさんに声をかけられてしまった。

 はて? なんの用だろうか?


「ここに、金髪の不良がパンツ一丁が体操座りしてるって通報があったんだ」

「へぇ~」

「君、何か知らないかな?」


 しばらく考え込む。

 うむ、やはり。


「すまんな。俺じゃ力になれそうにない」

「お前のことだよ!」


 こうして、アンリは変態さんとしてお巡りさんに連行されていった。





 アンリは交番で椅子に座らせていた。

 今の彼の格好はパンツ一丁という変態さんな格好ではなく、Tシャツを下にパーカーを羽織っている。

 だがこの服を用意してくれたのは、お巡りさんではない。

 事情を説明することで誤解を解くことはできたものの、服は用意してくれなかった。というかなかった。

 では、これを用意してくれたのは一体誰か?

 それは……


「本当に、すみませんでした」


 隣で頭を下げているドレス姿のリースだ。


「いや、本人も反省しているようだし、大丈夫だよ。ほら、大人しいし」


 確かにアンリは今、借りてきた猫のように大人しい。

 それはなぜかって?

 そんなの、火を見るより明らかだよ?


(リース、絶対怒ってる)


 顔を見ることができない。

 怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……


「それでは、こいつを連れて帰っても大丈夫ですか?」

「あぁ、構わないよ」

「ありがとうございます。ご迷惑おかけしました」


 そう頭を下げて、アンリの首根っこを掴んでリースは交番を後にした。

 ちなみにアンリは、始終子猫のように大人しかった。





 リースはアンリの隣で、にっこり笑っていた。

 彼女は、絶世の美女といっても過言ではない美貌の持ち主だ。

 そんな彼女が笑っているのだから、華やかなものでないはずがない。

 そして、格好もある。

 彼女は今、ドレスを着ている。

 髪型は普段通りのピンクのポニーテールで、胸元と背中が開いている赤いドレスだ。

 裾は足首までで、深いスリットが入っていて生足が覗いていて艶めかしい。

 そして、豊かな胸に視線がついいってしまう。



 それがアンリでなければ。



 彼は今、ガッタガッタブッルッブル震えていた。

 彼には彼女の笑顔が、恐ろしく仕方がなかった。

 だって最近わかったことなのだが、彼女が花が咲きそうなほどまぶしい笑顔になる時とは、怒っている時なのだから。


「そ・れ・で、どうしてああなったのか、説明してもらえるかしら?」

「えぇと、その、負けちゃって……」

「ふーん、どれくらい?」

「その、コインを全部獲られて、ジャケットも獲られちゃうくらい」

「ふーん」


 ガシッッッ!! と。

 リースはアンリの首を鷲掴みにして、膂力だけで彼の体を持ち上げた。

 って、ちょ!?


「じ、絞まっでるがら……」

「あっはっは、あんたバカなの? バカなのよね? もしかして私にぶっ殺されたいのかしらー?」

「い、生ぎだいッ!!」

「あんたに生存権はない」


 あ、ヤバい、本当に殺される。

 だって、この目マジだもん。

 意識遠のき始めたもん。


「「スト―――――――――――――――――――――――――ップ!!」」


 リュウとケイトが慌ててこちらにくるのを見ながら、アンリは意識を手放した。

 みんなー、今逝くよー。





 アンリが目を覚まして最初に見たのは、カジノの天井だった。

 おかしい、さっきまで確かに『三途の川』と書かれた看板とともに川を見て、あちら側の岸へと渡るための船へと乗り込もうとしていたはずなのに。

 訳がわからないよ。


「目、醒めたみたいね」

「はッッッ!?」


 すぐ隣に、悪魔がいた。

 アンリは怯えながら、身を縮める。


「だ、大丈夫よ。私もう怒ってないから。ね? ね?」

「もう苛めない?」

「小動物か」


 リースのもう怒ってない宣言に、アンリは心からの安堵の息を吐く。

 いや、本当に良かった。


「リュウとケイトはどこだ?」

「あそこよ」


 リースの指差した方向を見る。

 そこには、ポーカーをやっているリュウの姿があった。

 チップは、かなりの枚数が積み上がっている。


「あいつ、今日は運が良いみたいだな」

「いや、イカサマよ?」

「はァ!?」


 アンリが素っ頓狂な声をあげたのも、無理はない。

 なにせ彼はリュウの幼馴染だからわかることなのだが、リュウはポーカーなど初心者も同然で、アンリと同じくらい強さなのだから。

 イカサマなどできるテクニックなど持ち合わせていないのだ。

 そんな彼の考えを汲み取っているリースは、解説をしてくれた。


「あいつ、目を弄られたから凄く眼が良いのよ。視力は、相手の瞳に映った手札(・・・・・・・・・・)のカードをカンニング(・・・・・・・・・・)できる程度にはね」

「うわ、ズルいな」


 確かに、それなら負けるはずがないだろう。

 相手の手札を見ることができるのなら、こちらは己の手札とどちらが強いか確かめればいいだけ。

 これなら、引分あっても敗北はあり得ない。


「ケイトは?」

「あのテーブルね」


 ケイトもまた、かなりのチップをテーブルに乗せていた。


「あいつも、イカサマを?」

「当然ね」

「どんな?」

「……見てればわかるわよ」


 そう言われて、ケイトを見た。

 彼は浮かない顔をしている。

 恐らく、あまり強くない手札なのだろう。

 故に、彼はイカサマをする。



 堂々と胸ポケットに手札のカードをしまい、そこから新たなカードを取り出すという。

 ただし、音速を超える速度で。



「……おい、あれ」

「……そう。あれ、技術もへったくれもないただの速度任せのカードのすり替えよ」


 よく見れば、彼女の額には冷や汗が浮かんでいた。

 ケイトの動きは、常人では目で追うことすら許さない速度を持っている。

 今は誰も目で追うことができていないからいいものの、いつバレるのではないかと、気が気ではないのだろう。


「くっ、俺とお前、全然役に立ってないな」

「……ねぇ、私の怒りをまた再燃させたいの?」

「心の底からごめんなさい」


 リースはその謝罪を受け入れ、裾の裏に隠していたナイフを収めた。

 怖い。


「ま、あの二人にはチップを全部渡してあるわ。今晩あれば、なんとか借金返済くらいの額は稼いでくれるでしょ」

「はぁ、これでカップ麺生活とおさらばできる」


 そんな時だった。


「あ!」


 もう一度二人を見たリースは、そんな声をあげた。

 彼女の視線は、今二人に向かい合っている男に注がれている。

 そこには、そこには、サングラスをかけた筋骨隆々としたスーツ姿の黒人マッチョがいた。

 ……あれ、さっきケイトを連行していったガードマンじゃね?


「やばい、あの二人止めないと、ってもう勝負始まっちゃってるし!」


 彼女の取り乱しようを見て、アンリは首を傾げる。


「どうしたんだよ? あの二人なら、大丈夫だろ?」

「いや、あいつここのオーナーなのよ! そして、イカサマを絶対に許さないやつなの!」

「けど、どうやって証明するんだ?」


 勝負は始まった。

 もう止めることはできない。

 そんな彼らを見て、リースは手を合わせて祈る。


「お願いだから、一回で終わってよ。絶対に、ぜーーーーーーーーったいにレイズなんて「「オールレイズ」」

「バカ―――――――――――――――――――――――ッッッ!!!!!!」


 リースは叫んで、その場に崩れ落ちた。

 そしてその意味を、アンリはすぐに知ることになる。

 三人には、既にカードが配られている。

 リュウとケイトは自信がある故なのだろうが、オールレイズといった。

 だがオーナーは不敵に笑い、手札を一度も見ずに(・・・・・・・・・)こう言った。


「コール」

「「「「「「なにィ!!!???」」」」」」


 リュウとケイトだけでなく、周りにいる全員が叫んでいた。

 当然だろう、なにせオーナーはカードを一度も見ていない。

 そんな状態で、彼は勝負すると言ったのだ。


(ま、まさか、リュウのイカサマに気づいているのか!?)


 だが、証明ができないのだろう。

 だから、それの対策だけを打った。

 その効果は、絶大なものであった。


「お、おい! あんたふざけるなよ! あんた、カード見てないじゃないか!」

「そうだなァ、見てないなァ。だが、これは好都合じゃなぇのか? もしかしたら、これはブタかもしれないんだぜ?」

「ぐ……」


 リュウが目に見えて動揺している。

 これは、頼みの綱はケイトのみ。

 そんな彼は、当然イカサマをした。

 その手札は、Kのフォーカード。

 つ、強すぎる。

 この手札に勝てるのは、ジョーカーが混ざったファイブカードにロイヤルストレートフラッシュくらいなものだ。

 ……やりすぎじゃね?


「おい、そこの緑髪の小僧」

「なんだ?」

「俺はな、イカサマが大嫌いなんだ」

「は?」

「だから」


 白刃一閃。

 オーナーがいつのまにやら手に持っていたナイフが、ケイトの胸ポケットを切り裂いた。

 そこから、大量のカードがボーロボロ零れ落ちる。


「な、お前、まさか、気づいて……!?」

「イカサマするようなやつと話をすることなんざなにもねェ! お前は無条件敗北だ!」

「くッッッ!」


 あいつ、見えていたのか!?

 音速を超える、あのケイトの動きを!?


「ここのオーナー、ムエタイの達人で、しかも上位に位置する使い手なのよ」

「はァ!? なんでそんなのがカジノのオーナーに!? ふざけんな! 俺と一緒にこの国変えませんか!?」

「アンリ、本音本音」


 リュウは汗を滝の如く流していた。

 レイズをしてしまったのだから、勝負を降りることはできない。

 もう勝負をするしかないのだ。

 そして、その結果は。


 リュウ:3のツーペア

 オーナー:8のツーペア


 リュウの負けだ。

 見事勝利したオーナーに、野次馬たちが群がっていく。


「やったな、オーナー! あんなイカサマを見破るなんて!」

「俺たちにはできないことを平然とやってのける!」

「「そこに痺れる、憧れるゥ!!」」


 オーナーは気を良くしたのか、リュウとケイトから勝ち取ったチップを手に笑う。

 そんな彼を見て、アンリは顔を青くしてリースを見る。


「どうするよ?」

「……私がやる」

「けど、もうチップがないだろ?」

「まぁ、あまりやりたくないけど、やるしかない。ここのカジノぶっ潰す」

「へ?」



 リースの姿がアンリの視界から消えた。





 オーナーである男は、上機嫌であった。

 イカサマをしたやつを完膚なきまでに叩き潰すのは、どうしてここまで気持ちいのだろうか。

 しかもこちらは、正々堂々とやったのだ。

 これを肴に、今日はうまい酒が飲めそうだ。

 そんなことを思っている時だった。



 すっと。

 音も気配もなく、テーブルの向かい側に一人の女が現れた。



「な、ん?」


 気づくことができなかった。

 違和感を感じることさえできなかった。


(やれやれ、今日はとんでもないやつとよく会うな)


 銀髪は、相手の眼球に映った手札のカードを盗み見ていた。

 そんなこと、自分は当然できない。

 緑髪は、恐ろしい速度でカードのすり替えを行っていた。

 見ることはできた。

 だがもし戦闘となれば、自分は確実に負ける。


(で、今度は気配を全く感じさせない程の穏行の使い手か)


 これでも武の世界に身を置く、達人の端くれ。

 気配を読む術は心得ている。

 それでも、誤魔化されることは幾度もあった。

 だが、違和感すら感じさせない程のものは初めてであった。


「ねぇ、ちょっと一勝負しない?」

これ、まだ続くの?

そうなんです、続くんです。

最初に言っておきますが、オーナーは仲間になりませんよ?

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