Ⅰ
一年前
「またあのメイドを連れているわ」
「あの子を連れていればさぞ気持ちいいのでしょうね」
いつも聞こえる令嬢たちの陰口は、聞こえるように話しているのかよく聞こえる。
ソフィアは令嬢達の陰口にうんざりしていた。自分の容姿や体型をとやかく言われる。確かに身長が高いので目立つ。そして胸の膨らみはないに等しい。お付きのために着ている服も胸がないので令嬢達には大層見苦しいようだった。
ソフィアはアシュホード伯爵家令嬢ステラの専属メイドとして働いて半年経っていた。
ステラは伯爵家の令嬢とは名ばかりの変り者だとソフィアは思っていた。常に自分の容姿ばかりに気を取られすぎている。今年で十七歳になるというのに礼儀作法の勉強もせず、毎日ドレス、アクセサリー、化粧のこと。そしてどんな殿方に嫁ぐのかとそればかりだ。
今日もステラの友人、リッチモンド公爵家令嬢ルイス様の誕生会が盛大に行われるとのことでたくさんのメイドたちに囲まれ念入りに整えられていった。
いつものようにステラはソフィアに友をさせた。自分の引き立て役とばかりに扱うしぐさにも慣れたらいいのだが、なかなかそうもいかない。
今日はいつもと趣向が違っているのか子連れが多いように見うけられる。
どうやらルイス様のご結婚も決まったため、一緒にお披露目するようで、親戚など老若男女が集まっているらしい。ソフィアは久しぶりの大きいパーティに眩暈を隠し切れずにいた。