第四話
それからは、あんまりよく覚えていないんだ。
だって、本当にどうでもいい話だったんだもの。
いかにもお金持ちそうな一軒家から義父が出てきて
『こんにちは、今日から私が君たちのおとうさんになるんだよ。よろしくね^^』
という挨拶がわりの言葉も
『元さん・・・////』
母のうっとりとしたような声も
『美味しいね!』
兄の、並べられる料理の味を褒め称える言葉も
すべてが。どうでもよかった。
逆に、私は不思議だったんだ。
―――どうして、そんなに笑っていられるんだ―――
ってね。
たった今、育ての父親と、理不尽かつ不条理な別れ方をしてきたばっかりなのに
どうして、そんな幸せそうな顔をしていられるのかって。
不思議でたまらなかったわ。
明らかに、場の空気が異常だった。
まるで、何事もなかったかのように。
まるで、実父なんかいなかったかのように。
はじめからこの人が父親だって、言わんばかりに。
そうした空気がいやでいやで仕方なくて、私だけが部屋に閉じこもって偽家族を遠ざけていると――――放っておけばいいものを――――義父が私に接してきた。
それも、わりとしょっちゅう。
『何か欲しいものはないかい?』
『ここの暮らしにも、慣れてきたか?
『一緒にどこか出かけようか』
『君の名前を教えてくれないか?』
『声も、髪も瞳も。綺麗だね^^』
『今日の夕飯はなにがいいかい?』
『お前にはこっちのほうが似合うと思うよ^^』
ほんっっっっっっとうに
ウザったいぐらいに、話しかけてきた。
朝も昼も、夕も夜も。
毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日。
そのおかげか、私ばっかり構われて
母と結婚したはずなのに、実母が放っておかれるようになって
『お前は誰と結婚したんだ』ってぐらい。
それほど、私は義父に構われてた。
いきなりで悪いけど
はっきりいって義父は、モテる。
そこらへんの女性の方々に聞くと
『ワイルド』『イケメン』『優しい』『頭脳明晰』『お金持ち』『顔立ちもはっきりしてる』『声も低くて甘くてかっこいい』『体もがっしりしててギャップがいい』『背が高い』『メガネが似合ってる』=素敵!・・・だそうだ。
なんでそんな疑問系なのかって?そりゃあ私は義父に興味はないから。
興味をもったところで、なんになるっていうの?
だから、私は完結に、簡単に。周りの意見を固めてみただけだ。
そりゃあ、あの実母もベタ惚れするわけで。
あの女が。悪魔のような実母が。実父のときとは大違いで
『元さんなしじゃ、私は生きていけない!』
っていうほど、義父に惚れ込んでいたわけよ。
それこそ、コンビニの女性アルバイトと義父がレジでの会話をしただけで嫉妬して、裏でその女性バイトをクビにしてしまうぐらいに。
そんな母が、最愛の人が自分放ったらかして娘・・・女にかまってたらどう感じると思う?
・・・もちろん、嫉妬するの。
というか、実母はもともと女の子供なんかいらなかったらしい。
男の子供だけで十分だって、いつか今は離ればなれになった実父が私だけにそう、教えてくれた。
・・・って、これはじめのほうに言ったね。
それを聞いたとき、別にどうでもいいと思った。
実母のことは物心ついたときから嫌いだったし、実母は私が嫌いで私は実母が嫌い。それでいいじゃないかって。
優しい実父さえいてくれればどうでもいいって、心のどこかで思っていたような気がする。
でも、今はもう実父は、どこにもいない。
優しかった父は、どこにもいない。
ということは、私を庇う人はどこにもいないってわけで。
そんな嫌いな娘に最愛の義父を取られるのが、嫌で嫌で仕方なかったんだと思う。
だって、そうじゃなきゃ実母の私へのいじめは、始まってなかった。
・・・いじめといっても、そんな、暴力とか暴言とか、そんな激しいものじゃない。
あの人はそういうことはしない代わりに、ねちねちと嫌味ったらしく精神的に周りの人を追い詰めていく。
もちろん、それは私にだって例外じゃない。
事あるごとに、しかもわざと聞かせるように、兄や義父がいる前で、一際大きな声で嫌味を言うんだ。
『あら、ハヅキあなた、お菓子ばっかり食べてるから太ってきたんじゃない?』
『なんか毛深くなってきたわね』
『そのような肌は、近いうち絶対老婆のようなシミだらけの肌になるのよ。嫌だわぁ、不潔』
『対して大きくもない胸のくせにブラジャーのサイズだけは大きくしてるのね』
『最近髪の色が汚くなってきたんじゃない?いやあね、不吉』
ちなみにこれ、100%嘘だから。
実母はあることないこと私に言いかけてくる。
それが家族皆で食事の最中であろうとも、気にもとめずに。
しかもそれをドヤ顔で言ってくるもんだから余計にむかついた。
時には、私物を勝手に捨てられていたり、時には、私が趣味で作ったクッキーを「自分が作った」なんていって兄と義父に食べさせたりもしていた。
しかし、そこで文句をいおうものなら
『ひどい・・・そんなにお母さんのこと気に食わないのね!?自分が作ったとか言って、私を陥れるつもりなのね!?私はこんなにも一生懸命に・・・!』
といってうわああああああああんと泣きだされたこともある。
その時の、実母を見ている時の義父の悲しそうな顔は今でも覚えているわ。
それからは、あまり義父は私に接してこなくなった。
兄も、時々私を見ては顔をしかめるようになった。
なんなんだろう、この人達は。
何がしたいのかさっぱりわからないわ。
これは、小学校ぐらいまでの話。
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