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薔薇と迷宮  作者: 仁美
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第7話 ~灰色の間Ⅳ~

大きな絵画には男女2人が描かれていた

そして、中央に『指定席』のソファー

本棚が数個、置かれているだけだった


その他には特に何も無くて

本も目ぼしい物はなかった


ただ一つ、気になったのは窓と

その横に置いてある、中身がスカスカな本棚


意外と動かせるみたいだ

これは単なる僕の勘なんだけど

この窓、塞いだ方がいいんじゃないかと思う

何だか嫌な予感がする・・・




「ね、ギャリー。この本棚動かして欲しいんだ。」


「本棚?わかったわ。」




軽々と動かしてくれたギャリー

ホント、オネエ口調なのに男なんだよね

時々、性別が行方不明になる事があるもん




「ありがと。」


「いいわよ、これくらい。

 ん・・・?」


「どした?」




ニコリと笑った彼は視線を上にあげ一点を見た

その先に居たのはイヴ


さっきからずっと絵を見たまま動かない

僕も気になったから、声をかけることにした




「イヴ?どうした?」




タイトルは『ふたり』

よくみると女の人の方とイヴの容姿が似ている事に気付いた

もしかして・・・

いや、もしかしなくても、だ・・・



「お父さんと、お母さん。」


「・・・え?これイヴの両親なの?」



お母さんとそっくりねあんた

とギャリーは感心したように絵を見てみる


いやいや、感心してる場合じゃねぇって

イヴにとってはつらい事だ

これ、実際に僕だったら耐えられないよ・・・




「でも何でこんな絵があるのかしらね。」


「ほんとに何でだろう?」


「・・・リオ・・・

 お母さんとお父さんは、どこに居るのかな・・・?」


「・・・それは僕にも分からない、けど・・・」




大丈夫、ここを出ればきっと会えるから


今はそう言うしか無かった


どことなく元気がないのは気のせいではないだろう


だってまだ9歳だろ?

こんな小さい子が精神的ダメージを受けるのは当たり前


辛いよな、苦しいよな、心配だよね

泣きたい時は泣いていいよ

僕が受け止めるから


そう思いを込めてイヴの頭を撫でた




「さ、行こうか。特になんもなかったし。」


「そうね。行きましょう。」




イヴの手を引いて入ってきたドアの前に行く

何かあっては困るので、イヴは少し離れてもらう事にした


ドアノブを握りまわす


ガチャガチャっ



「っあ、かない・・・?」



どういう訳かドアノブを回し、押しても開かない

試しに引いてみたけど開いてくれない・・・


一体どういう事なんだろうか・・・

これは所謂、「お決まりのパターン」ですか?



バンバンバンっ



「「「!?」」」


「外に誰かいるわ!」



2人とも下がって!

と扉の前に居る僕の腕を引っ張るギャリー


物凄い勢いで開かないドアを叩かれた

しばらく叩いていたが、開かない事がわかったらしく

叩く音は次第と弱くなった


諦めてくれたんだろう

そう思い、ドアを開けようと近づいた時だった



     

         バン、バンバンッ




さっきとは違った場所を叩く音が聞こえる

ドアじゃないとしたら・・・壁か!?



                             バンバンバンッ



叩く音からすると、徐々に壁伝いに移動している


これはヤバい・・・

何がって・・・逃げ場が、無い・・・


イヴはギャリーにしがみついていて涙目だ

しがみ付かれているギャリーも音を耳で追っている


移動する音はやがて絵画の横の壁で止まった




「止まった・・・?」



そう呟いた瞬間

壁が崩れたような音がした


壁が崩れたような・・・

いや、崩れていらっしゃるようですね!


何か黄色い彼女も入って来たし、てか何?

あの絵はもしかして体当たりしてこの壁崩して来たっていうの?


・・・女って凄い・・・僕も女だけどさ!




「ちょっ、リオ!

 何ぼーっとしてんのよ!さっさと逃げるわよ!」


「え、ちょっと待って!」




黄色い奴に足を掴まれそうになり吃驚したけど

ギャリ―が凄い勢いでその絵画を蹴り飛ばした


え、これ、良いの?大丈夫なの?

作品壊した事にはならないよね、大丈夫だよね?


一抹の不安を抱きながら走る

何とか出られたと思ったら

目の前はとんでもない事になっていた



「・・・わーぉ・・・」



外に出ると、ほぼ全部の作品が動いていると見て間違いない

無個性も絵画の女たちもみんな動き回ってる



「ほら、行くわよ・・・」



何か、心なしかギャリーの顔が怖く見えた

ような気がしなくもない

何なんだろう、やだなあこの雰囲気

イヴも顔色が悪い




「強行突破、行きますか。」


「それしかないわね。」




お互いに顔を見合わせる僕とギャリー

イヴは彼にお願いして

いざ、参るっ!!なんちゃって・・・





一歩踏み出せば、標的を見つけたように

追ってくる作品たち

まずは、2人を先に脱出させないと

ギャリーはリーチが長いから逃げ切れるとは思う


問題は、この動き回る連中から

どう回避するかだよね・・・

よし、これしかない




「リオ!?どこ行くの!?」


「ちょっと鬼ごっこ。すぐに追いつくから。」




イヴに見つかってしまった・・・

ま、それでもいいけどね

少し遠回りをしながら作品を引き付け

ギャリー達の方に行かないようにする


2人がドアの向こうに消えたのを確認すると

僕は少しだけ遠回りしてドアに滑り込んだ


勢いでドアを閉めて、その場にへたり込む

こんなに走ったの久々だった・・・



2人は待っててくれるかな・・・?

早くいかないと、イヴが泣いちゃうな



乱れる息を整えようと深呼吸するが

中々うまく肺に酸素が入ってくれない


あぁ、視界がかすんで・・・

体がグラッと傾いた、微妙な浮遊感を感じる

これは倒れるフラグっぽいね




≪頑張り過ぎだ、馬鹿。≫




意識が途切れる前に誰かの声を聞いた気がした





灰色の間、終わった!

次話は、一時休戦!ギャリーと団欒しますw


感想等お待ちしてます!


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