第5話 ~灰色の間Ⅱ~
両脇をガードされ向かうは
あの目玉達のいる廊下
「痛そう・・・」
1つだけ充血しているそれは
ドライアイそのものだ
見るからに痛そうである
つい先ほどの追いかけっこで忘れていたが
僕のカバンの中には先ほど取った目薬がある
「じゃ、治してあげましょ。」
「「どうやって?」」
「この魔法の水で。」
「「魔法の水?」」
そう言って僕はカバンから例の目薬を取り出す
2人は口をポカンとあけて
僕のする事を見ているだけ
充血した目に2・3滴垂らしてやる
すると、キョルルンっと
効果音が付くかのように輝きが増した
治ったみたいだ
とっても嬉しそう
視線のみだが「ありがとう」と言っているようだった
「どういたしまして。」
「リオって・・・凄い。」
「十分、イヴもすごいと思うけど・・・」
一応、返してほほ笑む
固まっていた2人は何か言いながら
こちらに歩いて来た
一方、目玉はお礼にと言うのか
とある場所に移動して、壁を見つめている
不思議に思ってそこまで行ってみると
そこだけ壁の色が違った
壁紙が張り替えられているみたい
「隠し部屋って奴?」
「行ってくる。」
イヴをギャリーに任せて
僕一人、その部屋へ入る
奥には紅く光るガラス玉が落ちていた
ふむ・・・
どっかに嵌めろってか?
部屋を出て、2人にガラス玉を見せる
するとイヴは僕の手を引っ張り
とある絵画の前に来た
その絵画には真っ白な蛇が描かれている
よく見ると、目の部分はへこんでいるのがわかった
「よくわかったね。イヴ。」
「えへへ。」
ギャリーに褒められ
僕に撫でられるイヴ
最高に可愛い笑みを返してくれた
あぁ、こんな妹が欲しいっ
って、そういう場合じゃなかった
「じゃ、嵌めますか。」
イヴの指示通り、蛇の目にガラス玉を嵌める
すると、隣の小さな風景画が壁から落ちた
裏には「大きな木の後ろに・・・」と書かれていた
大きな木って・・・そんなモノあったかな?
「リオ!こっち来て!」
またしてもイヴの声が遠くから聞こえる
ギャリーも居なかった
いつの間にか置いて行かれたらしい
「ん?どうした?」
「ここ・・・」
「さっきまでは無かったわね。」
「きっとギャリーが押したスイッチだよ。」
あぁ、と2人は納得し
ノブを回して中に入る
中には4つの展示品があった
『ワインソファ』と名付けられた椅子に
見るからに憂鬱そうな彫刻『憂鬱』
カラフルな色で組み立てられた骨格標本の『パズル』
そして、植物で作られた『感情』
何処を探そうがここしかない
きっとこの緑のオブジェがあの「大きな木」なんだろう
僕が調べている間に
2人は残りの3つをマジマジとみている
ガサガサと揺らしてみると
キラリと奥で何かが光った
「?」
茂みに手を突っ込んで探る
何か固いものに触れた
それをつかんで引き抜いてみる
握られていたのは指輪だった
「それ、結婚指輪じゃない!」
「へぇ・・・」
「興味なさそうね・・・リオ・・・」
「さっきの花嫁さんかな?」
イヴの一言でピンと来た
成程、悲しい思いは指輪がないから、か・・・
入り口付近の「嘆きの花嫁」の前に来る
付き出た彼女の左手に焦点を合わせる
結婚指輪と言ったら嵌める場所は1つ
薬指に通してやると新郎新婦の2人はたちまち笑顔になった
花嫁さんは持っていたブーケを宙に投げる
そのブーケは、イヴの腕の中にすっぽりと収まった
「イヴったら、よかったじゃない!
花嫁のブーケをもらったらね、いい人と結婚できて幸せになれるのよ!」
ギャリーがまるで自分のことのように
嬉しそうな笑顔で、手を合わせて笑っていった
イヴも心なしか嬉しそうにはにかむ
「・・・私、ギャリーやリオのような優しい人の、おヨメさんになりたい。」
イヴが小さな声で言った言葉に
僕とギャリーは目を合わせた
おうふ、花婿に僕も入ってるのかい?
そして、お互いに笑い合うと
ギャリーはイヴの頭を撫で
僕は腰を屈めてイヴと同じ目線になり言う
「大丈夫よ。イヴはいい子だから。」
「そうだね。優しい、いい男の人に出会えるよ。」
え?僕は無理だろって?
まぁ、そうなんだけどね
良いじゃないか
イヴはマジで可愛い天使みたい
僕は大歓迎ですよ、えぇ!←ォィ
その後、出口を探す
心当たりと言えば、あのお花大好きな絵だな・・・
花が欲しいと言ってた絵があった筈
笑い声が今だに継続中、思い出すのは容易い
目薬を取りに行く前
そこで話をしたが、命でもある薔薇をあげるわけにはいかない
だから回れ右して戻ろうとしたんだけど
花弁1枚取られちゃったんだよね・・・
きっとこの事を言ったらまた怒られる
だから、心の中に留めておくことにした
「絵にお花をあげるの?」
本当の事を言えばこんなに綺麗なブーケを渡したく無い
でも、絵は何て話したっけ
“花をくれたらここを通す”と言った絵の声が脳内でリピートされる
「あげるしかなさそうね、イヴ。
危ないかもしれないわ。アタシに貸しなさい。」
ギャリーがブーケを持ち青い絵の前に立つ
心配だから青い薔薇を渡された、其れを握りイヴと見詰める
ギャリーの花の枚数、私より少ない10枚だってこの時知った
「これで、良いの?」
「えへへ、お花。お花、えへへ、嬉しいなー」
ギャリーがブーケを青い絵の口許に捩じ込む
すると青から赤へと色が変化、捩じ込まれたブーケは青い絵だった物に
咀嚼音を響かせながら跡形も無く消える
ぱさりと落ちたリボン
綺麗なブーケは絵に食べられてしまった
「えへへ、ありがとう。ありがとう、約束だからね、ここを通すよ。」
ブーケが可哀想だと嘆く暇は無い
青い絵は直ぐに扉の絵に代わり
イヴが放心状態のギャリーの服を
掴み引っ張りながら新しい空間に向かう
一歩入れば左右の端に真っ白の頭?
多分マネキンの頭だろう、そう思いたい
そのマネキンの頭が綺麗に列に並べられ
さらに、その上には大きな目の向いている方向だけが違う絵
気持ちが悪い絵だな・・・
どんだけ悪趣味なんだよ
僕は奥の方に見える扉を見詰めて
そう思ったのだった
灰色の間は、まだまだ続くと言う・・・やっと前半戦終了らしい。
後半も長いと言う・・・プレイしてて心が折れそうでした。
次話、灰色の間・後編 今度こそ入ります!
感想等いただけたら嬉しいです。