第1話 ~プロローグ~
昼下がりの灰色の空の下
学校を体調不良の名目で休んで
真っ白な美術館にやってきた
「ワイズ・ゲルテナ展」
業界でそこそこ有名らしい
僕も来た事があるのだが、いまいち覚えていない
普通、こんな展示会なんて興味の欠片もないが
今回は私用で来た
まぁ、社会勉強を兼ねての謎解きだ
つい昨日、とある依頼の調査の為、新聞をあさっていた時
偶然目にした記事がこの「ゲルテナ展」での失踪事件だ
何でも、数年前
この展示が行われている期間中に11歳の男の子が行方不明になったらしい
しかも、証拠が残らず神隠しの様にいなくなっていた
特に興味はなかったが何故か行かなければならないような気がした
あ、言い忘れていたが
僕は謎解きや推理が得意でこの町では結構有名な
高校生探偵紛いな事をしている
警察からの要請も週に3回はある
お蔭で退屈しなくてすんでいるんだけど・・・
まぁ、オカルトとかは信じる方で
こういう捜査も嫌いじゃない
滅多に美術館なんて行かないが
面白そうな謎に出くわすなら行ってみようと思ったのだった
中に入って受付を済ませ
取りあえず一周してみる
この展示されている品々はどれもぶっ飛んでいた
「凄いな・・・」
どれもこれも・・・
なんて思いながらフラフラと歩いていれば
足に小さな衝撃が来た
「あ。ごめんなさい!」
ぶつかって来たのは小さな少女
赤が印象に残る小さな女の子だった
「御免ね、大丈夫?
あぁ、スカートに誇りがついちゃったね。」
「え?あ、ありがとうございます・・・」
身長差からして少し吹っ飛んだ少女を抱き起し
服に着いた誇りを払ってやる
少女は顔を赤らめ「ありがとう!」と言って
直ぐ何処かに行ってしまった
とても可愛い女の子
まだ小さいのに見に来たんだ・・・
このよくわからない品々を・・・
ゲルテナの作品は
何処か不気味な像や絵に恐怖心が沸いて来て
何が一番怖いって、足元に描かれたこの深海の絵
今にも吸い込まれてしまいそうなのに目が離せなくて
それに足を踏み入れてしまいたい衝動に陥る
もしかして、本当に吸い込まれたりして・・・
まさか、んな事ある訳ない・・・
2階の展示品を見ようと
歩き出した時だった・・・
カラン
「?」
目の前を通り過ぎた
裾がボロボロのコートを着た人が
銀色の何かを落とした
近づけば、ライターと言う事がわかった
「あのっ。」
急いでその人を呼び止める
「ん?」
「コレ、落としましたよ?」
「あらやだ、ありがとう。」
ライターを手渡して顔をあげた途端に驚愕した
えぇぇええ!?
落とした人はかなりの美人さん
通称、イケメンと言われる類だった
「あ、ではまた。」
「え?あ、ちょっと!」
僕はその場から一目散に逃げ出した
2階の展示室の「無個性」と言われる頭のないマネキン辺りに来る
あぁ、マジビックリした・・・
まだ心臓がドキドキいってる
凄い綺麗な人だった・・・
声と身長からして男なんだろうが
口調がオネエだったよ・・・
でも違和感を感じなかったのは何でだ?
と、脳内は物凄い速さで回転し続けているが
表情は変わらない
この時、初めて表情筋が固まっててよかったと思った
この後も、モンモンと一人考えながら歩いていると
さっきまでは無かった絵画の前にいた
「え・・・?」
壁一面に張られている大きな絵
『絵空事の世界』と書かれている
「絵空事」つまり、架空のって事か・・・
漫然と眺めていると
照明は不意に点滅し始めた
「!!」
それに尋常じゃないと本能が察した
逃げるようにその場を発ち去る
しかし、この一瞬の間で
美術館にはあり得ない事が起こっていた・・・
プロローグです!
イヴとギャリーに早々会いました。
しかし、まだ知り合いでもないですw
前回より少しだけ変えてみました
感想頂けたら嬉しい限りです!