第11話 ~紫の間Ⅲ~
メアリーはすっかりイヴに懐いている
僕達とは未だ距離が有るけれど
イヴと手を繋ぎ、イヴも楽しそうだ
4人で道を進む
けれど、イヴの隣取られちゃった
邪魔も出来ないし・・・ギャリーの隣で歩く
「あら、花瓶があるわ。一回寄りましょう?
そう言えば私達全員薔薇を持ってるけど
メアリーは?」
「・・・うん、持ってるよ!黄色い薔薇!」
赤と青とオレンジの薔薇が活けられた
そしてメアリーの手の中には黄色い薔薇
それを強く握るメアリー
活けなくて良いのかな?
あまり強く言うのも良く無い気がして
その鮮やかな黄色を見詰める
横でギャリーが説明をしてるが
メアリーは聞く耳持たずにイヴと話す
「・・・んま、最近の子は話を聞かないのかしら?」
「さぁ?嬉しいんじゃ無い?
イヴからすれば大人ばかりだった訳だし。
メアリーも独りだったみたいだし・・・」
「寂しいの?」
「少しだけ、ね。」
アタシが居るわよー
何て冗談を謂うギャリー
2人は先に進んでしまうから、追い掛ける
「わー、イヴの薔薇は赤なんだね。
わたしの薔薇は黄色だよー。
黄色も好きなんだけど、オレンジも好きなんだ。
あと青も!」
「そうなの?私は赤が一番好きだよ。」
楽しそうな会話が聞こえる
進んだ先には絵を真ん中に二手に別れてる扉
右側は開かない
仕方無いので左側から行く
“一体、どちらが正しいのか”
張り紙を廊下で見たがこの事?
片方は鍵だし、決まってる気がする
まぁ、良いや
イヴとメアリーが部屋を開ける
そこに広がる人形の数々
ぞわりと背中が粟立つ、ギャリーも良い顔をしてない
なのにイヴとメアリーはそれを見てはしゃぐ
こんな気持ち悪い物の何処が可愛いんだ?
「・・・ギャリー、可愛いと思う?」
「イイエ、全く思わないわ。」
「良かった。僕の目が変じゃ無いよね?」
「青い、人形よね?」
「うん。」
うん、よかった
僕が可笑しいんじゃなかった
2人には一体何に見えているのだろうか?
僕はそれが気になった
「ね、ねぇ。気味が悪いわ。1回出ない?」
「えっ、そうかな?カワイイと思うけど・・・」
「これのどこがカワイイのさ。」
「イヴは?イヴは可愛いと思う?」
「・・・うん、可愛いよ?」
縫いぐるみを見る目の様に優しく
気持ち悪い人形を見る
「赤い色の目」って絵は吐き気が来そうな位なのに
どこがどうと問い詰めたいけれど
イヴの目は輝いてる
「はあ、もういいわ。はやくここ調べて出ましょ。
この部屋、見られてるみたいで落ち着かないわ。」
ギャリーの言葉に同意する
青い人形を1つずつ調べていると
背後でグシャと音が聞こえた
人形の御腹部分から出た鍵をイヴは普通に拾う
何か可笑しい、絶対
外に出ると再び絵のない額縁の前にきた
4人で改めて、謎解きをしようと考えていた
しかし、絵から変な音が聞こえる
「ねぇ、変な音がするよ?」
「なに?近付いてくる!」
イヴとメアリーが絵を凝視
絵の奥と言う表現が正しいか分からないけれど
何かが迫って来る
それだけは分かる
「な、なんか不味いわ!みんな絵から離れて。」
ギャリーが叫ぶと絵から薔薇の絵
そして地面を突き抜ける蔦
それだけでも吃驚なのにイヴに向かって
鋭く素早く蔦が迫る
「イヴ、危ない!」
咄嗟にイヴを突き飛ばす
手を繋いでいたメアリーも同じ様に飛んだ
そして僕達を遮る様に突き刺さる蔦
幸い怪我は無さそうだ
「リオ!大丈夫?」
メアリーから離れ蔦越しに僕に駆け寄るイヴ
その背中を追い掛けるメアリー
蔦を真ん中に僕とギャリー
反対側にはメアリーとイヴに別れる
蔦は固くて冷たい、作り物みたいだった
「・・・大丈夫?リオ。」
「大丈夫。ありがと。」
それよりも、重要なのは僕とギャリーが
そちらに行けないと言う事実
メアリーは楽しそうだけれど・・・
どうしたらいい?
場所的に僕ら遠回りもできない
となると、イヴ達が行動しないといけなくなる
「ねえ、イヴ。さっきの部屋でカギ拾ったよね?」
ギャリーが蔦を観察してると
唐突にメアリーが口を開く
人形の腹部から出された鍵の事だろう
「そのカギで、そこのドア、開けられるんじゃない?
もしかしたら、違う部屋にこれを壊せる道具があるかもしれないよ。
ねえ、見てきていいよね?」
メアリーの目がキラキラと輝いてる
既にイヴの手を握り
こちらが頷けばそのまま行ってしまう勢いだ
イヴに対するメアリーの反応が少し、不安
2人で行かせて大丈夫なのかと、ギャリーを見る
ギャリーも同じ事を考えてる様子で指先で毛先を弄る
「うーん。でも2人だけで大丈夫かしら?」
「大丈夫よ!ね?イヴ?」
「うん、大丈夫。」
「僕は納得できないけど・・・でも良い?
何かあったら直ぐに戻って来ること。
無理はしない、絶対にね。
無いなら無いでまた違う手を考えるから。
それと・・・」
「なに?」
僕は耳に着けていたピアスを外して
イヴたちがいる方に向かって投げた
ピアスはそっち側に無事到着し
イヴがそれを拾って不思議そうな顔をした
「これは?」
「魔除けのお守り。
絶対に2人を守ってくれるから
ちゃんと持っててね。」
そう言えば、イヴは納得してくれたみたいで
ポケットに入れてくれた
「それじゃ、行って来るね!!」
「待っててね!」
「いい事?無茶はしないのよ!」
「「はーい!」」
イヴとメアリーは手をつないで行ってしまった
どちらかあっち側にいるべきだったか
いやいるとしたらギャリーだね
「リオ、あのピアス一体何なの?」
「母さんから貰ったお守り。
効くかどうかはわからないけど、
持ってた方が力になるかなっって・・・」
「そう・・・」
直ぐに背中が見えなくなる
同時に心配で心配で仕方がない
まだ9歳で子供なのに・・・
溜め息を吐き出すとギャリーが肩を叩く
「大丈夫よ、イヴもメアリーも。」
そう言われても、やっぱり不安で
蔦を強く掴み飛び越え様にも
ギャリーの身長を越える高さ
隙間は腕が通るだけ
ギャリー曰く、石っぽいとの事で
ここから出るのは不可能
「諦めなさい。」
「・・・うん。」
蔦に執着する僕の腰を掴み引き離す
なかなか帰って来ない、音もしない
きっとまだ数分しか経ってないんだろうけど
この数分がとっても長く感じる
あー・・・もう
只待つだけ何て嫌だった
でも、探索するにも
あの部屋に突撃するのは気が引ける
しかし、道は1つしかないのだ
「どうする?」
「行かなきゃ、駄目っしょ・・・」
ふう、と一呼吸
扉を捻り室内に入る
身の毛も弥立つ毒々しい室内
青い人形の視線が怖い
恐怖以外の感情が湧かない部屋も珍しい
イヴが探った人形の腹部が真っ赤
こんなもの良く触れたな
ギャリーが嫌々ながら本棚を調べる
僕は反対側の本棚を調べる事にした
“心壊”
そんなタイトルのページを見つけた
“あまりに精神が疲弊するとそのうち幻覚が見え始め最後は壊れてしまうだろう。
そして厄介なことに、自身が「壊れて」いることを自覚することは出来ない”
もしかして、イヴは・・・
この気味悪い人形が何に見えているのかはわからない
しかし、きっと青い人形には見えていないはずだ
さしずめ、可愛い猫かウサギだろう
という事は、メアリーも・・・
「・・・あ。」
「ん?どうしたの?」
「見付けちゃった。」
思考にふけっていると
ギャリーが本棚の裏に道を見付けた様で
そこを通れば広い通路
迷子防止にギャリーのコートの裾を掴み移動した
「何、寂しいの?」
ギャリーはそう言うって僕の頭を掴むと
自分の胸へと持って行った
僕まだ何も言ってない・・・
なのになんでわかるの?
「寂しいならこうしてあげるわ。」
「・・・うん。」
なんでだろ、ギャリーの側にいると
不思議と寂しい気持ちは薄れて行った
分岐ルート突入です!!
ここからは主人公目線でお送りします!
感想等頂けたら嬉しいです。




