仮想彼氏・只今・戦闘中 第11回 貴方の心を覗いてみたい
ラドクリフの斬撃がレイを襲う。そしてストーリーは急展開!是非、第1回〜第10回も、この機会にお読み下さい。DIG クリエイティブ アワード 2012投稿作品!!所々・猥褻な表現が含まれます。各自・モザイクをかけてご覧下さい。ではどうぞ!!
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「レイ、キミは本当にいい子だ。ナニも怖がる必要はない。・・・痛くしないから」
ラドクリフはスラリと剣を引き抜き、わたしめがけて振りおろす。あまりの恐怖に声さへも出ない。怖れが身体を蝕んでいき、やがてわたしは失禁してしまった。
剣が頭に突き刺さり、やがてそれが二つに割れていく。傷口から血が流れ出し、尿と混ざって地面に滴り落ちる。
痛みが全身に伝わっていき、やがて生命が抜きとられていく。
『痛い。本当に痛い。パックン助けて』
ここでわたしの意識はとだえた。
『わたしは死んでしまったのだろうか?』
『でもなぜだろう?ログアウトできていない』
ーわたし、本当にどうなってしまうのでしょうか?ー
《ナニも怖がる必要はない。レイ、キミはボクだけのモノだ》
暗闇の中でわたしは目を覚ました。
そこには仮面の男が一人で佇んでいる。
『あのおとこはラドクリフ?ここは一体?』
拷問の様に台に縛り付けられていた。四肢を鎖で繋ぎとめられている。両手両足の自由がきかない。
『そう言えば、なぜわたしこの場所にいるのでしょうか?』
《キミは現実と空想の境目がわからないようだ。たぶんそれは、薬の副作用に違いない》
『あれ、このステージ、確かコロシアムでの戦闘がメインのはず?』
ーなんで監獄の中を、移動しながら戦っていたのだろう?ー
血は止まっているが、頭は確実に二つに割れてしまっている。
空気が傷口にふれて身体を蝕む。
ソイツはわたしの服を引きちぎる。まず衣とパレオがビリビリに破られ、つぎに黒のチューブトップビキニが剥がしとられた。
産まれたままの姿にされて、その場所にさらされている。丸裸のこのわたしは、まるで辱められている様だ。意識はモウロウとして、現実のナニも理解できない。
《綺麗だ。本当に綺麗だ。半年前よりも》
ーナニこれ?プレイかナニか?ー
《ボクはもうキミを、他のヤツにとられたくない》
《だからこんな事を……》
《今からはじめる事は禁忌の呪術に近い》
裸のわたしに対して、ヤツは血で梵字を刻んでいく。わたしはその感覚に悶え苦しむ。ヤツはさらに会話を続ける。
《死んだ人間にこの術を使えば、その人間を傀儡の様に使う事ができる》
《では死んでいないが、生きてもいない人間にそれを使うとどうなるだろう?》
《もっと酷い事にそれはなる》
悶えながらも、その苦しみを声に出す事は決してできない。そしてある事実に気付かされる。わたしは半殺しだ。そして仮死状態に違いない。
梵字を刻むその血は私のモノ。そして仮死状態にするのが、この術をかけるための必須条件。さらに最も恐ろしい事に気付かされる。
『ラドクリフは黒田さん?』
それは単なる妄想なのかもしれない。しかしそれは、この狂った世界の中では、普遍的な真理として確立されてしまっている。
《レイ、キミの事を心から愛している》
《キミの身体はボクだけのモノだ》
《そしてキミは今日から、ボクだけの玩具として生まれかわる》
ーどうやらわたしの身体は、ナニかに使われてしまう様だー
ー一体ナニに?ー
「ねーちゃん、諦めるな。駆けろ炎の道・バースト!」
ーえっ、イトウさん?確実に厨二病ですよー
ー頭がおかしくなって幻覚が見えましたー
ーなんでよりによってイトウさんなの?ー
「幻覚じゃねえよ。ねーちゃん・助けにきたぞ。その、丸見えだけど」
わたしは意識を取り戻した。頭は二つに割れていない。服を全て脱がされて、四肢を鎖でガラスの台に縛り付けられている。
まるでコピー機にかけられている様に、下側から灯りで照らされている。
かろうじて、前側はバスタオルで隠されている。しかしそれ以外は丸裸で丸見えだ。
身をよじるが、今にもタオルがずれ落ちそう。それ以前にボディラインが丸わかりだ。そしてどちらにしろ、イトウさんには透視されてしまっている。
『本当になんだか、恥ずかし過ぎるのんです』
「うっ、本当にたまらん。モウレツ」
わたしは頬を赤らめるが、イトウさんは鼻血を流している。今・確実に覗かれてしまっています。
『嫌ーーー、乙女の恥じらいどうしてくれるのよん』
仮面のおとこはラドクリフではなかった。イトウさんの魔法で辺りが照らされる。
「照らす世界は闇より暗き・ライディング」
ヤツは機械仕掛けのオレンジで、かつ残酷なロボットである。
「フレア!」
ロボットは吹き飛ばされた。攻撃力の少ない魔法の攻撃は、たいして効いている訳ではない。
それ以前に前振りであるセリフを端折った。イトウさんにも少しだが、照れが生じている。
バスタオルで前は隠されているが、その下にはナニも身につけていない。なんだか少しスースーする。
「あともう少しで、69のコードを読みとる事ができたのに。悔しいです」
ロボットなのに顔をしかめる。なんの事だかさっぱりわからない。色々な疑問がわき上がってくる。
「イトウさん、御免なさい。注射さへしていれば、・・・こんな事には」
「ナニ言ってんだ。愚那民Cなら注射しただろ」
思いもよらない話だった。よく考えれば注射なしで、こんな身体能力を維持できる訳はない。
「きっとそれは、注射の副作用だ。コロシアムで、ロボットにキミはさらわれたんだ」
それをイトウさんは追いかけてきたと言う。パックンとははぐれてしまっていた。わたしの見ていた、あの映像は一体なんなんだ?
『ガー・ギー・グー・ゲー・ゴー』
ロボットが音をたてる。耳障りで神経を逆撫でする。ヤツは確実に狂っている。ネジが何カ所か外れているに違いない。
「ねーちゃん、攻撃してくるぞ。構えろ」
『構えろと言われても、縛り付けられてナニも出来ません。一体どうしろというのよ?』
ヤツは鉈を構える。こちらに切り込んでくるつもりだ。少しでも動いたなら、次の瞬間にはやられてしまっている。そして次の瞬間。
『・・・・・・』
あっけなくもヤツは音をたてて崩れた。どうやら飛ばされた時の衝撃で、本当にネジが何本か飛んでいってしまっていたらしい。
バラバラの金属の塊が、スクラップになって辺りに散らばっている。
「最近じゃあ、日本製もこんなもんか?安物の部品を使って、腕の悪い職人が組み上げるとこんな感じになる」
イトウさんはあまりに世知辛い事を言っている。このゲームの設定は一体どうなっているんだ。
「ところで・ねーちゃん、触ってもいいかな?」
「触ったら、次の瞬間には殺します」
「・・・じょ、冗談だよ」
残念そうにそう答えて、両手両足から鎖をはずした。イトウ氏は本当に、安心ならない人間である。
「もう、このタオル、チョット小さい」
少し身体をくねらせて、バスタオルを身に巻き付けた。ゲームの中ではナイスバディなのだ。色んなところが、今にもはみ出しそうであった。
「ところで、なんなんですか、この場所?」
「さあね、検討もつかない」
場所一面にコンピュータが敷き詰められている。それは俗に言うスーパーコンピュータと言うモノで、わたしも実物を見たのははじめてであった。
「とにかく先を急ごう、ここは目的の場所じゃない」
「・・・目的の場所?」
どうやら最終目的地にたどり着くのが、このゲームのミッションであるらしい。だけどもその目的が、なんなのか全くわからない。
わたしはどうやら薬の副作用で、ナニか大切な事を忘れてしまっている様だ。
「コマンド・コール・マップ」
地図を立ちあげ、目的地を確認する。その場所にはパックンがいる。そしてどうやら、ラドクリフと戦っている様だ。
『待ってて、パックン。今・逢いにいきます』
「おい、オレは厨二病じゃねえぞ」
本人はそう言っているが、イトウさんは確実にその類いの人間だ。
「これから起こる事は、極めて残酷な事だ」
この人の説明は極めて論理性を欠いている。そしてワルを装い、不思議ちゃんを演じている。本当は根の真面目な小心者に違いない。
「キミはこの事実を受け入れなければならない」
イトウさんは、いつの間にか、わたしの事を【ねーちゃん】ではなく【キミ】とよんでいた。
暗闇の中を走り抜ける。ただひたすら、ひかりのさす方向に。そこにはナニか答えが用意されているらしい。
わたしは確かに生きている。それはパックンの事を思い、それを実感する事で感じとる事ができる。
♢♦♢♦♢♦
やがてひかりが広がっていき、視覚の中でそれを感じとる。眩し過ぎて、最初はナニも見る事ができない。やがてその感覚は弾け飛び、ある部屋にたどり着いた。
ーそこでパックンは死んでいたー
まるでぬいぐるみの様に、地面に倒れ込み、身動き一つしない。だがそれはお人形ではない。カレそのモノだ。
ラドクリフの剣先から、地面に向かって血が流れ落ちる。
「・・・こんなはずじゃなかった」
謎の言葉だ。意味不明だ。それを何度も何度も発しながら、その場に立ちすくんでいる。
『パックン、死なないで』
『嫌だよ。キミのいない世界なんて』
『命の重さなんて理解させないで』
わたしはこのゲームの主旨が、疑似恋愛体験にあると勘違いしていた。
残酷な殺陣の戦闘も、激情すぎる愛情表現も、露出の高すぎるエロ衣装も、全てはそれを燃えあがらせるためのモノだ。
けど本当はそうじゃなくて、悪趣味な評論家の連中が戦争の恐ろしさや醜さを伝えるために、こんな悲惨なエンディングを用意していたに違いない。
パックンはもう息をしていない。カレの肌にふれる。それは傀儡ではない。今度こそ本当に死んでしまっている。
「危ない。よけろ」
「排除シマス・排除シマス・排除シマス」
オリンだ。大鎌を振りおろす。わたしは殺される。悪夢と同じでここでゲームセットだ。周りはゾンビみたいな連中に、すっかり取り囲まれている。
(本当に悪趣味で最悪なラストシーンだ)
「最後まで諦めるな。きっと世界は変わっていく」
どさくさに紛れて、イトウさんはわたしを抱きしめた。いつもの変態とはまるで違う。なんだかとても力強い。
だけどもその力が、少しずつ弱くなり、やがて抜け落ちていく。真面に攻撃をくらってしまっている。
「いい臭いだ。もっと嗅いでいたいけど、そうもいかないな」
背中から血が流れている。大鎌には血痕の跡がへばりついている。わたしをはらいのけ正面を向く。そしていつもの様に呪文を唱える。
「ファイアーボール」
炎が辺りを焼き尽くす。ゾンビたちは悲鳴をあげる。やがて焼けこげくちていく。黒こげの残骸だけが周辺に残る。
「イトウさん」
弱々しく、そのまま地面に倒れ込んだ。
もういいよ。本当にいいよ。
なんでこんなにリアルに造るのよ。
データの塊ですよ。
また造りなおせはいいわよ。
でも、・・・こんな、
・・・こんなにリアルに造る必要ないじゃない。
わたしの口から心の声が漏れる。
(もう、やめる)
(・・・こんなゲームやめる)
(・・・本当にやめる)
『やめれないんだ。キミもオレもそこにいるラドクリフさへも』
(誰?もしかしてイトウさん?)
イトウさんはテレパシーを使って、直接わたしの心に囁きかける。
『この69の謎を解きたいか?』
『パトリックが死んだ意味?』
『キミが存在している意義?』
『そして、ナニよりも、ラドクリフの心の奥の闇を覗いてみたいか?』
「その方法は一つだけだ」
「なんですか、それ」
「・・・オッパイ揉ませてくれ」
おい、イトウ。人が真剣に話を聞いていたら、最後までそれですか?全くぶれない極エロだな。アンタには付きあいきれない。
『いや、これは冗談でもなんでもない』
『相手の思考を読みとるには、オレの身体の一部に触れなければならない』
『しかも深層心理を覗くとなると、相当神経が集中している箇所にだ』
『人間の神経が集中しているのは数カ所に限られる』
「・・・・・・」
「それは頭と手だ。だからオレはキミのオッパイを揉みちぎる」
「・・・・・・」
「揉んで・揉んで・揉みまくる」
おいなんだ、もっとな理由を言い出したぞ。無茶苦茶の理屈だが、一応筋は通っているのか?
だがあんたの場合前科が多すぎる。どうせ触るだけ触って、どうにもなりませんと言のだろう。きっとそう言うオチに違いない。
「おい、オレを信じろ」
「無理です。信じろとか、どうかしてます」
『残念ながら、オレの寿命もあとわずかだ』
『キミの身体をお触りする余力が全く残っていない』
『だから最後に提案する』
『オレの頭をキミの胸で、おもいっきり挟み込んでくれ』
『オレの思考をキミのハートに直接飛ばしてみせる』
おい、触るだけじゃ飽き足らず、オッパイで挟み込めというのですか?この人、本当にチョット変。はーーー、本当にもう嫌だ。
しかし、それをしないと、全ての謎はとけないようだ。人生には苦痛がつきものだ。わたしはそれを受け入れ、またそれを乗り越えようとしている。
まず倒れ込んでいるイトウさんを抱え起した。次にその顔面を、わたしの胸におもいっきり押しつけた。
「うーーーん、たまらん。本当に最高」
「おい、やっぱり、ただのセクハラじゃないか?あれ?直接・声が聞こえてきます」
「言った通りだろう。じゃあ、ラドクリフの心を覗いてみようか」
深い闇の中に、イトウさんと二人で落ちていく。心と身体が混じりあっていく様な錯覚を覚える。暗黒のこの世界を灰色の霧が覆い隠し、視覚でナニかをとらえることはできない。
ラドクリフの表層上の心理には暗闇しか存在しなかった。そこを抜けていくと、戦いの記憶がホログラムの様に浮かんでは消えていく。
やがてその場所にたどり着いた。
そこにはひとりの青年がいた。
・・・黒田さん。
『もしかして、レイなのかい?』
『あいたかった。けどこんな姿見られたくなかった』
『しかしキミには、全ての解答をしなくちゃね』
『すべての謎は69の中にある』
キミはこの答えに驚くかもしれない。
だけども、キミの知っている現実は作り物の世界だ。
全てはマザーに支配されている。
その世界でキミ達は恋愛ゲームをしているに過ぎない。
「・・・・・・・?」
キミがクレージーキャッツに入ったのは、三年前の話だ。
まず、三年前の前の話をしよう。
終われませんでした。次回最終回!たぶんエロいよ!