強奪
オドワケルを偵察に来ていたフラヴィウス。
リナに釘付けになってしまった。
「あの娘・・・・・・」
フラヴィウスはライバルでもあるオドワケルが憎たらしく想えてきた。
実はフラヴィウス、今まで欲しいと思うものはじっと我慢をして耐えてきたので、リナのことは是が非でも欲しく想えた。
「じい! おれは、あの娘が気に入ったので、奪ってでもつれて参れ!」
いきなり言われて驚くヒルデブランド。
しかし愛する若のためと、リナがひとりになる頃を見計らい、声をかけた。
「ラヴェンナの王子、フラヴィウス殿下が、あなたをお待ちです」
リナは何かの間違いではないのか、と尋ねたが、
「いえいえ。あなた様を望んでおられるのですよ、若は・・・・・・」
と答えるヒルデブランド。
リナは仕方なく、置き手紙をしてオドワケルに伝えたが、彼が気づくのはそれから二日後のことだった。
さて、ラヴェンナ領にたどり着いたリナは、豪華なドレスを着せられてフラヴィウスの前に召し出された。
「思った通り綺麗だな」
綺麗と言われて、リナは思わず赤くなる。
「相手をしてくれぬか」
リナはいきなり抱きすくめられて、フラヴィウスを突き飛ばそうとする。
だが、男の力にはかなわなかった。
「いやーっ、やめてーっ、誰か助けて、助けてぇ!」
天蓋つきのベッドにねじ伏せられ、リナは望まない人から、望まない寵愛を受ける。
当然、リナは口をきく元気さえ失せていた。
「乱暴なことをして、すまなかった」
フラヴィウスは悪びれた様子もなしに、しれっとして言った。
その様子がなおも気に入らないリナは、ふて寝をする。
「・・・・・・オドワケル・・・・・・」
リナはフラヴィウスが部屋を出ていったあとで、悲しくなり、嗚咽した。
それから二日後。
オドワケルがリナの行方をつかんだ当日のことだ。
彼の背筋に悪寒が走り、なぜだかイヤな予感が走った。
このころ、オドワケルは傭兵隊長に任命され、ラヴェンナのフラヴィウスとの対決を強いられてもいた。
「フラヴィウス・・・・・・」
オドワケルは苦々しい表情をしていた。
その理由は、リナである。
「大事にしたいものは、みんなあいつに奪われてしまった」
領地も、女も、そして・・・・・・両親の命も・・・・・・。
「待ってろよ、フラヴィウス」
オドワケルは自慢のショートソードをかまえ、ラヴェンナに向けて馬を走らせる。
このへんからフィクション。
テオドリクスはまだ王子であるという設定ですな。
それにしても、イヤなヤツじゃないはずなのに、テオドリクさん(w
オドワケルもさほど、悪いヤツとは想えないし、複雑な感情が入り交じる時代ですわ、こりゃ(笑。