山の声と波の音 4
中学生になり 蘭はバスケットボール部ではなくソフトボール部に入部した
どこに入部するか何も考えていなかったが
部活動PRの時に 可愛い先輩がいた
ただそれだけでいさぎがよすぎるくらいの即決だった
そういえば小学校の頃 親友だった凛は
6年生に上がるタイミングで親の転勤で転校した
6年生では綾と仲良く
頻繁に遊んでいた
休みの日は朝から夕方までずっと一緒だった
綾は中学生になるとバレーボール部に入部した
部活動もクラスも離れてからはずっと一緒にはいなかったが仲良しだった
中学生になってからの蘭の一番の変化といえば
男友達が減ったことだ
みんな "男" "女"を意識するようになっていたからだ
当然ながら蘭はよくある 女グループみたいなものには属さず
誰とでも話はするが誰とも連まなかった
ソフトボール部に蘭とよく似たタイプの子が一人居た
口が悪くテンションが高く声が大きく
蘭とは正反対の性格で
突っかかってきたらよく口喧嘩していた
それが香里奈だ
香里奈とは絶対に仲良くなれないタイプだと思っていた蘭だが
すぐに特別な友達になった
香里奈は"自分は女が好き"と急に暴露してきたからだ
蘭の心情は
自分と同じだ 分かち合える とかではなく
"こいつおもろ"だった
人と比べる事が嫌いな蘭は 同じような人を探す等という思考が一切なかった
色々な情報が安易に飛び交うこの時代
当事者は 悩んだ 辛いを沢山した カミングアウトについて等
語っている人が多い
それも間違いではないとは思うが蘭はあまりピンとこなかった
そう 蘭は別に悩んではいない
辛いとも思っていない
カミングアウトなんて尚更必要がなかった
言わなくても皆知っているからだ
知らなければ知らなくてもいい
聞かれれば答える
理解が出来ない人は近寄ってこないし
気持ちが悪いと言われても"そっか"程度だ
好きだと思えば 好きだと言う
それで相手の反応が変だったら変で
その人とはそれまでなだけだった
良いも悪いも蘭は自由で頑固な性格だ
頭は切れる方だが 人の感情を読み取りすぎてメンタルは強い方ではない
ただ 自分の事については全てがハッキリとしていた
そこから香里奈とは常に一緒だった
私服をカッコよく極める為に服を買いに行ったり
近くのショッピングモールで他校の子をナンパしたり
今までの蘭には考えられないくらいはっちゃけていた
プライベートは調子に乗っていたが
勉強はというと全くと言っていいほどしなかった
部活動は真剣だった
ソフトボール部に入るきっかけになった先輩はずっと可愛いかった
小学校で少年野球をしていた香苗もソフトボール部に入部していた
小学1年生から野球をやっていただけあってかなりの腕前だった
すぐにレギュラーになっていた
蘭は 香苗とは小学生の頃はほとんど喋った事がなく
どちらかというとあまり好きなタイプではなかった
すぐにレギュラーになった香苗が羨ましくて 必死に追いつこうと努力をした
練習以外でも練習を沢山した
すぐに結果は出た
蘭は やれば出来ると本当に信じていた
努力は裏切らなかった
蘭と香苗は戦友になった
中学生になって嫌な制服を正しく着飾りながら
半年が経過した頃
練習試合で運命の出会いをする
見た目はタイプではなかったが 一瞬で何かに取り憑かれたように 惹かれた
蘭の猛アタックが始まった
その子の学校は近場の地元でもなく 強豪校であまり試合では被らなかった為
被った時には猛アタックを繰り返した
皆 戦闘モードであまり喋ってはいけない空気の中でのアタックは相当苦労した
連絡先を手に入れるまでなんと半年
出会って惚れてから 半年
ようやく連絡先を手に入れた蘭は更なるアタックを試みた
当初 好きな人がいると聞いていたが
そんなの関係ないのが 蘭だ
アタックをし続け 半年後の中学2年生半ば
とうとうゴールインを果たした
人生最高かよと思った
全てが輝いて見えた
休みの日には電車で会いに行った
休みが合わなければ 練習を見に行った
呪われたように 限られた時間の全ての時間を尽くした
部活動も恋愛も全てに全力で楽しんでいた
勉強以外は。
だか蘭は 勉強していなくても国語だけは高得点だった
読めば答えが書いてあるからだ
他は暗記でなんとかなった
それ以外がさっぱりだった
特に数学は 自慢ではないが二桁の点数を取ったことがない
xとy どこから飛んできてどこに置くんだよ
そして何故また戻ってくるんだよ
そんな文句を謳いながら 空ばかり見ていた
そうして中学最後の3年生を迎える




