山の声と波の音 2
小学生になり凛と出会い
他にも友達が出来てそれなりに過ごしていた蘭だが
3年生になり自分自身の感覚に違和感を感じるようになっていた
性別に対してや心の違和感という感覚より、どちらかというと男の子の着る服や髪型、遊びが羨ましかった。ただそれだけだった。
蘭は普段から物や人に対して無関心に近くあまり感情を表に出さないが
自分が何か思い立ったときは何が何でも絶対にそうしないと気が済まない性格だった
エピソード1では"何も言えない子"と捉えれるようなところはあるが
そういう訳ではないのだ
だからすぐ母に言った
坊主にしたい
バッドボーイの洋服が欲しい
男の子の靴がほしい
蘭は言い出すと本当にしつこかった
洋服と靴は手に入れた
しかし坊主は許しが出ず出来るだけ短くして終わった
髪を切るのはいつも母だった
元美容師らしい
そこからは男の子と遊ぶようになった
遊戯王カードゲーム
鉛筆を転がして戦うドラクエ
ドッヂボール
それはそれは楽しくて仕方がなかった
そんな時 近所のよく遊んでいた同級生(男の子)が剣道を始めた
蘭もしたくなった
すぐ母に言った
"いいよ"と言ったが母は車の免許を持っていない
母は やりたいなら自分でお願いしなさい
と言ったので同級生の親にお願いしに行った
子どもが直接来たら断れなかったのか本当に良いと思ってくれたのかは分からないが承諾してくれた
剣道がある日は一緒に行ってもらっていたが
勿論、集金はあった。
母は集金をはぐらかしている様にみえた
そう 言っても払ってくれなかったのだ
それでも行きたい蘭は集金の封筒を渡さず通ったが毎回行く前から気は重たかった
先生の目を見るといつも通り笑っているがすぐに感じとっていた
引け目に思っていたら当然そう見えることでしょう。
試合後の打ち上げに皆でお好み焼き屋に行った事があったが、味がしなかった。
母は練習も試合も打ち上げも何一つ顔を出してくれなかった。心が哀しかった。
気まずくなって練習もまともに集中できなかった事を鮮明に覚えている
そして行かなくなった
いや、行けなくなった。
来るなと言われた訳ではないが、行けなかった。
集金も渡さず何も言わずに行かなくなった
母は何も聞いてこないし何も言ってこない
蘭も何も聞けないし何も言えなかった
蘭の耳には入らなかったが 噂された事でしょう
蘭はその同級生とも喋れなくなって遊ばなくなった
実際には直接何も言われていなかったが皆んなが自分を責めている様に見えてきた
学校に行きたくなくなっていた。
3年生終わる頃のことだ
4年生になってすぐに学校へ行かなくなった。
その頃父はトラックではなく建築現場で工事の仕事をしていた
母は、専業主婦ではなく保険会社に勤めていた。
母は朝は出て行くが昼〜夕方までは家に居ることが多かった為、学校へ行かず一人で居ても寂しくもなければご飯の不便もなかった。
父も学校の時間前に出て行き夜に帰宅する毎日だったからか母は蘭が学校に行っていない事を言わなかった
父は何も知らなかった
父は歌が好きという事もあり蘭は家に居ながら歌にハマった
食事とお風呂以外は常に歌を聴いていた。
自分の頭の中のモヤモヤ やり切れない感情
何もかもから解放された気にさせてくれる音楽は当時の蘭は本当に救いだった
母は学校へ行かない事も勉強しない事も
何一つ責めなかった
理由も聞かれなかった
学校からは連絡はあるが体調が悪いの一点張りで通っていた。
そうして一年が過ぎようとしていた頃
家の裏に学校へ行っていない人が集う集会場があった
施設とは掛け離れた様なコンテナハウス一つあるような場所だったが、お昼過ぎになると皆でバレーボールをしていたりサッカーをしていたり楽しそうな笑い声が聞こえていてたまに覗いていた
蘭は段々その場所に行きたくなり
またもやすぐ母に言った
母はあそこに行くなら学校に行きなさいと言った
久しぶりに学校に行くというニュアンスが耳に入った
蘭は案外あっさりだった
"まぁ学校も行ってみよう"
家に居て気が済んだのか
嫌な記憶が薄れていたのか
5年生になったら行くと返事をした
5年生になり学校へ行き始めた蘭は何事もなかったかのように通い始めた
そして楽しかった
友達が優しかったからだ
5年生の学校生活が始まってまもなく
小学校のミニバスケットに入った
蘭は運動が得意ではないが運転神経は悪い方ではなかった
楽しく出来れば何でもすぐに上達するタイプだ
夏休みになると毎年父の実家へ帰省していたが
そこにいつもひとつ上の男の子がいた
他にも従兄弟達が集まっていたからか蘭は何も考えず皆と遊んでいた
その年 それが兄だと知った




