山の声と波の音 1
1990年 蘭は誕生した
家族は5人
父母と長女の真季、次女の蘭、三女の紗希、の三姉妹
そしてこれは真ん中、蘭のおはなし。
蘭が産まれた頃はボロいアパートに住んでいたが、蘭はほとんど住んでいたというだけの記憶しかない。
微かに残っているの記憶といえば
空を飛んだことがある事と
玄関のチャイムが鳴りドアを開けると真っ赤なワンピースを着たものすごい大きなお顔の女の子が立っていた事だ
ものすごいというのは人間の顔で例えると8個分くらいの大きさだ
これは夢の記憶なのか大きくなってから母に確かめた事がある
真相は、全て"本当"という事だった。
そのとき蘭は なんて適当な返事を言ってるんだと思った。
当時 母は専業主婦、父は長距離トラックの仕事をしていた。
仕事に行く時は運転席の後ろに乗って一緒についていくのが日常だった
後ろは子どもが2人くらい寝転べるスペースがあった
だが両親は仲良し夫婦ではなかった
長距離の仕事へも連れて行く父の行動を母は"監視"と言った。
蘭はまだ幼く、トラックの後ろが秘密基地みたいで居心地が悪いとは思っていなかった
母は離婚を切り出していたそうだが実現せずにいたみたいだ
そんなある日、父の監視がある中でどうすれば逃げれるかを考えた母は大胆な作戦を実行した。
いつも通り長距離の仕事を終え全員で帰宅した後、寝ている父のタイミングを見計らって父から逃げる為に友達と協力して蘭を籠にいれてアパートの3階から落とした。
アパートの下で待機している友達が受け取ってすぐに母が全速力で走って逃げるという作戦だ。
今では考えられない。いや、いつの時でも考えられない。
しかしその作戦は失敗し車で追いかけてきたと聞いた。
蘭のキャッチは成功したが・・・
恐ろしすぎるエピソードだ。
そしてその瞬間の出来事を蘭は空を飛んだと思い込んだのだと知った。
顔がものすごい大きな女の子については夢か本当か謎のままだ
その後 地元の保育園に入園した蘭はそれなりに楽しく過ごしていた。
絵が好きで 内閣総理大臣賞をとったこともあった
そんな中 年長の頃、保育園の入園パンフレット表紙に蘭が選ばれた。
当時の担任保育士は自身の子供が同じ園にいたこともあり、逆恨みをしたのだ。
暗く狭い場所に入れられたり、風船を目の前で割られたりと嫌がらせの日々がはじまった。
蘭は 自分が怖がってる様子を楽しんでいる様にみえた
蘭は幼い頃から常に無表情だった。
ほとんど笑わないし泣かないし発言も少ない方だった
喜怒哀楽を我慢しているというよりも
母の育児方法なのか、当時の家庭環境が原因なのかは分からないが
物心ついた頃には既に人の目を見ながら空気を読む子どもになっていた
考えなさい
察しなさい
時には、蘭は賢い 蘭は分かる子
蘭が幼少期から常に言われてきた言葉である
とにかく想いやりや、人として、など
人間の中身に対しての教育が凄く厳しかった
考えないと
察しないと
賢くいないと
分かる子でいないと
常に親の顔色を気にしながら過ごしてきた蘭は保育園でも先生の顔色を伺いながら過ごすようになっていた
保育園の出来事は誰にも言わず
言えずのまま卒園した
保育園最後の一年は楽しい思い出は何一つなかった
蘭は絵を描いている時だけは
頭の中が"キレイ"な状態になること
子どもながらにその感覚が分かっていた
蘭は色々な言葉や状況に応じてその都度、全て頭で理解しようとしていた
理解しようとすればするほど笑わないし喋らない子どもになっていった
そんな蘭も いよいよ小学生になりました
目と思考回路だけが肥えて大人びていた蘭は友達を作るのが下手だった
苦手という訳ではない。
そもそも 友達を作る、作りたい、欲しい、という感情がなかったのだろう
いや もっと本心を言えば、周りが"ガキ"にみえた。
しょーもない事でキャッキャ騒ぐ子
すぐにカッとなって暴れる子
自分こから寄っていったくせに一番に泣きはじめる子
目に映る全てに嫌気がさしていた
家から小学校までは歩いて約50分
その頃は気にしなかったがかなり遠い方だと後に知った
登校班のリーダーと副リーダーに挟まれて登校していたが
蘭はリーダーと副リーダーが大嫌いだった
歩くのがとにかく早くて毎日ついて行くことに必死だった
何より、2人の声を聞いた事が一度もない。
今思えば本当に不思議な人達だったな
蘭は入学して少し経った頃
同じクラスで家も近かった凛と仲良くなった
馴れ初めは全く覚えていないが
凛には気を遣わず一緒にいてるのが楽で
心が安心できる存在だった




