残りの夏休み。
真桜は、快人の別荘から、寮へ帰ってきていた。
「あ〜、暇だ。
暇すぎて、宿題全部やってしまった。」
真桜は、実家に帰るつもりだったが、
帰ると色々面倒な事に巻き込まれる気がして、帰るのをやめ、寮でゴロゴロしていた。
「気分転換に、出かけよ〜かな。」
真桜は、寮を出て、女子寮の前を通って、通りすぎようとしたとき、
「あれ?真桜くん?」
真桜は呼び止められた。
真桜が振り向くと、
「あれ、愛理?なんで?」
「う〜ん。実家帰ると面倒事に巻き込まれたら嫌だな〜と思って帰るのやめたんだ。」
「俺も大体、同じ。
愛理こっちにいたなら誘えば良かった。
俺、めっちゃ暇だったんだよ!」
「ふふっ。実は私も。でも・・・」
「愛理、お前、顔色悪くない?」
「風邪引いたみたいで・・・薬買いに行こうと思ってた。」
愛理はふらついて倒れそうになる。
「危ない!」
真桜は愛理を受け止めた。
「熱っ。」
真桜は愛理の肩に手が触れ、驚く。
「薬買ってきてやるから、部屋に戻ろ。」
「えっ、やだ。一緒にいく。」
「ダメだ。言う事きけ。」
「はい。」
真桜は、愛理を支えながら、愛理の部屋へ行き、ベッドに寝かせた。
「ちょっと薬買ってくるから、ちゃんと寝てろよ!カギ借りるぞ。」
「うん。ありがとう。」
真桜は急いで薬を買いに走った。
「ただいま。大丈夫か?」
「おかえりなさい。
なんか買い物袋大きくない?」
真桜は買い物してきた袋の中を出していく。
「まずおでこにはるやつ。」
真桜は箱を開け、愛理のおでこに貼った。
「冷たい。きもちいい。」
「で、おかゆ。こんなの初めて買ったな〜どうやってつくるんだ?
ちょっとキッチン借りるぞ。」
「うん。」
真桜は、インスタントのおかゆを作った。
「ほら、食べろ。どうせ何も食べてないんだろ?」
「うん。動くのしんどくて・・・」
愛理は恥ずかしそうに口を開ける。
「はぁ?」
「はぁって!食べさせて。」
「なっ何言ってんだよ!」
「だって・・・しんどいから。
ちゃんとフフーってしてね。」
真桜は、仕方なく愛理におかゆを食べさせる。
「おいしい・・・ありがとう。」
愛理は泣き出した。
「ごめん。熱かった?」
「うぅん。すごく不安だったから、真桜君が来てくれて、ほんとに嬉しい。」
「うん。俺も、来れて良かった。」
真桜は愛理におかゆをさしだす。
「あむっ。」
「よし、ちゃんと食べたな。
次は薬。咳は出てなさそうだったから、
コレにした。」
真桜は、水と薬を愛理に渡した。
「ふふっ。」
「何?」
「水くらい水道から出るのに。」
「いゃ、たまに水道水飲めないやついるじゃん。」
「私はそんなに育ち良くないよ。」
「ははっ。でも買ってきたから飲んでくれよ。」
「うん。ありがとう。」
真桜はベッドで座る愛理を支えながら、
横にさせた。
「寝ろ。」
「はい。」
「じゃぁ、なんかあったら電話しろよ。
おかゆのストックと、冷蔵庫にゼリーとスポーツドリンク入れてあるから。」
真桜は立ち上がる。
愛理は、真桜のズボンの裾を掴んだ。
「帰るつもり?」
「えっ?俺がいたら寝れないだろ?」
「そこにマスクあるから、付けて。」
「えっ?」
真桜は言われるままマスクを付けた。
愛理は、マスクを真桜が付けるのをみると、布団を少しめくった。
「一緒に寝て。」
「はぁー!?」
「前も寝たじゃん!じゃないと寝れない。」
「はぁ。分かった。」
真桜は愛理の隣りに横になった。
「ありがとう。おやすみ。」
「うん。おやすみ。」
愛理は真桜の肩にしがみつく様にして目を閉じた。
(寝れる訳ないだろこれ!またかよ!)
真桜は動けないまま数時間耐える事を覚悟した。
カチカチカチカチ。
静かな部屋に時計の音が鳴り響く。
「あっ、俺、寝てたのか。」
真桜は愛理を見た。
「まだ寝てるのか。」
愛理のおでこのシートの隙間に触れてみた。
「熱下がったかな。良かった。」
愛理の目がゆっくり開いた。
「真桜君おはよ。しんどいの治ったかも。」
「良かった。もう少し寝てろ。
夜ご飯なんか作るわ。」
真桜ほやる気満々でキッチンに立つ。
「できたぞ。」
「こっ、これは?食べ物ですか?」
「すまん!」
「はぁ。いつもどうしてるの?」
「コンビニとかスーパーとか?」
「なぜ疑問系?」
「面目ない。」
「よいしょ。」
「あっ、寝てろよ!」
愛理は真桜を無視してキッチンに立つ。
慣れた手つきで料理する。
「できたよ。」
「えっ?すごいな愛理!」
「あるもので作ったから、こんなくらいしかできないけど。」
「食べていい?」
「どうぞ。」
「いただきま〜す!うまい!」
愛理は真桜の食べるのを笑顔で見ている。
「愛理も早く食べて寝ないと。」
「ふふっ。そうだね。いただきます。」
「ごちそうさま。あ〜久しぶりにちゃんとしたご飯だったわ〜!」
「真桜くんの食生活が心配になった。」
「大丈夫!大丈夫!一応元気だから!」
「たまにご飯食べに来て!私作るから。」
「いいのか?楽しみにしてるよ!」
「うん!」
真桜は愛理をベッドに無理やり寝かせ、
後片付けをした。
「さっ、帰ろうかな。」
「やだ。」
「はぁ?もう治っただろ?」
「今日は一緒にいて・・・欲しい。」
「はぁ。分かった。」
「じゃあ一緒に寝よ。」
「はいはい。」
渋々、真桜は愛理の横に寝た。
「一応いっとくけど、俺男だからな。
結構これ辛いんだぞ。」
「ちょっと・・・なら・・・真桜くんになら・・・触られてもいいよ。」
「バカ。寝るぞ。」
「・・・うん。」
(これはなんだろ?なんだか胸の辺りが暑くてドキドキする。また、熱上がってきたのかな?)
愛理は、真桜といると、
不思議な感覚を感じていたが、
やっぱり何かのピースがかけている。
そんな感覚だった。
カーテンの隙間から、
朝日が差し込む。
愛理は目を覚ました。
「朝か。体が楽・・・治ったかな。」
愛理は真桜を見た。
「まだ寝てるのかな?」
愛理は真桜の頬に触れてみた。
「熱いっ。」
「おはよ。」
真桜は目を覚ました。
「なんだか体がダルい・・・帰って寝るわ。」
真桜は立ち上がろうとしたが、ふらついて、愛理に覆いかぶさる様に倒れた。
「きゃっ。」
「愛理ごめん。痛くない?」
愛理は、真桜のおでこを触る。
「やっぱり・・・ごめん。私の風邪うつってるよね?・・・わがままいって一緒に寝てもらったから・・・ごめんなさい。」
「いいよ。俺にうつって愛理が楽になれたなら、それでいい。」
真桜は立ち上がろうとする。
「ダメ。」
愛理は、真桜を抱きしめた。
「寝て。」
真桜は、愛理の隣りに倒れる様に横になった。
「朝ごはん、おかゆ作るね。」
「悪いし、またうつったら嫌だから帰る。」
「寝てなさい!」
「ははっ。立場逆転だな。
ありがとう。」
真桜は力無く答えた。
「私のせいでごめんね。」
「いいよ。ちょっと寝るわ。」
「うん。」
愛理は起きあがり、キッチンに立った。
「よしっ!おいしいのつくるぞ!」
「真桜くん。ご飯できたから、食べてお薬のも。」
真桜はゆっくり目を開けた。
「ありがとう。」
愛理は、真桜をベッドに座らせた。
「はい、あ~ん!」
「い、いいよ。自分で食べれるから。」
「ダメ。私だってしたんだから。」
「いや、お前は自分でしてって・・・」
愛理は無言で、おかゆをスプーンにのせ差し出しながら、見つめてくる。
「分かった。」
真桜は仕方なく、愛理に食べさせてもらった。
真桜は、おかゆを食べ、薬を飲んで横になる。
「さぁ、寝て。」
「うん。ありがとう。」
しばらくして、愛理が真桜を見ると、
震えていた。
「真桜くん、どうしたの?」
「寒い。」
「大変だ。まだ熱上がるのかな?」
愛理は布団に入り、真桜を抱きしめた。
「どう?少しはあったかい?」
「うん。ありがとう。」
「ゆっくり寝てね。おやすみ。」
真桜はしばらく震えていたが、落ち着いたのか、眠った。
愛理はしばらくの間、真桜を抱きしめていた。
熱は下がったはずなのに、体が熱く、
ドキドキする。
それが何なのか考えていた。
そして、眠った。