約束。
研修旅行も終わり、平凡な毎日が始まる。
「愛理、おっはよ〜!」
「あっ、明里、おはよ〜!」
「なんか早速つまらないよね〜。
研修旅行楽しかったな〜。」
「そうだね。でも、今日からしっかり勉強もがんばろ!」
「さっすが、学級委員!・・・で?その髮とメガネがない件について教えてもらおうかー!」
明里は、愛理の脇腹をくすぐる。
「きゃー!ダメダメ!恥ずかしいからひみつ〜。」
そのやり取りを見ていた快人と真桜。
「いや〜!女子がじゃれてる光景はたまりませんな〜真桜くん。」
「お前、鼻の下着伸びてるぞ。」
「元々こういう顔なの。母ちゃんに謝れ!」
「はいはい。」
「・・・で?こちらもくすぐりタイムいきますか?」
「なっ、なんでだよ!」
「そりゃーお前、白石と理由は同じだよ。髮とメガネ!お前、割とイケメンだしなんかムカつくわ〜。」
「はっ?何だよそれ。」
「白石となんかあったの?」
「まぁ。
海から二人で岸に上がった時に、メガネは流されて無かったし、髪も濡れてたし、お互い今みたいになってて、二人とも今の方がいいなってなって言い合ったらさ、今日からは地味な感じ禁止みたいに言われたから。」
「何それ?お前ら付き合ったの?」
「いや。俺も愛理も好きとか良く分からないから・・・」
「待て待て待て待て!今、愛理って?」
「あ〜名前も強制的に、
愛理って呼べって言われた。」
「真桜、お前・・・ダメだ。
お前ら問題児すぎだわ〜。」
「俺は至って正常だ!」
「はいはい。」
キンコンカンコーン。
ガラガラ。
「おはよー!お前ら座れよー!
ホームルームだぞ〜!」
「きりっつ。れい。」
「いや〜研修旅行楽しかったな〜!色々事件もあったが、黒川と白石のおかげで先生はクビがつながったよ。
礼をいうぞ!」
「良かった!先生今日からまたお願いします!」
愛理はうれしそうに言った。
「おっ!白石、イメチェンか?すごくいい感じだな!ついでに、黒川もな!」
「俺はついでかよ〜。」
「はははははっ!」
クラスが笑いに包まれた。
「いや〜!全員揃ってるって素晴らしい事だな!お前達の担任は1年間だが、
お前達全員をを2年生にできる様に先生は頑張るぞ!お前達もしっかりがんばれよ!」
「はーい!」
愛理が海に落ちた一件以来、先生は熱くなり、クラスの団結も生まれていた。
その日の放課後、
真桜は、学級委員の仕事を終わらせ、帰ろうとしていた。
「あ〜疲れた。愛理のやつ、用事ってなんだよ!学級委員の仕事押し付けやがって。今度御礼してもらわないとな〜。」
真桜は、荷物をまとめて、寮までの道を歩いていた。
「謝ってるじゃないですか!」
「謝って済むかよ!ちょっと今から付き合ってくれたら許すっていってんだろ?」
「だから、イヤです!」
誰かが揉めている。
真桜は関わりたくないな〜。
と思いながらも近付いていく。
「あっ、愛理!」
「真桜くん!」
愛理は真桜に気づくと、
真桜の後ろに隠れて、
男に向かって言う。
「この人、私の彼氏!
だからあなたに付き合っうのはムリ!」
真桜が現れて、愛理は強気だ。
「はぁ。」
真桜は、ため息をつき、
愛理の腕をつかんだ。
「愛理、走るぞ!」
真桜は、愛理を引っ張りながら逃げた。
「あっ!おい!待ちやがれ!」
男は追いかけて来る。
「ハァハァハァ。愛理がんばれ〜!」
「あははははっ!」
愛理は楽しそうだ。
男から見えない所まで距離が離れたのを確認して、真桜と愛理は、公園のドカンの中に隠れた。
「ふふっ。狭いね!」
愛理はものすごく楽しそうだ。
「はぁ。なんで楽しそうなんだよ。」
「だって〜。
二人で逃げるの楽しかったんだもん。」
狭いドカンの中に愛理のいい匂いが広がっている。
「ちょっと近づきすぎ。」
「えっ?いいじゃん。くっついてた方が、小さく見えるから、見つかりにくいよ。」
真桜は、愛理の距離感に今日も悩まされる。
「ちくしょう!どこいきやがった!」
男は、公園の前を歩きながら、二人を探している様だ。
「ふふふふ。」
愛理は、口を手で覆い、笑うのをこらえている。
「はぁ〜。行ったな。
しばらくはこの中にいよう。」
「うん!」
愛理はうれしそうに真桜の腕に絡みつく。
「だから近いって〜。」
「やだ。くっつきたい。」
「はぁ。」
真桜は、ドキドキしながら、ため息をついた。
「愛理。あのさ。」
「何?」
「やっぱり地味なカッコに戻さないか?」
「えー!なんでー?かっこいいのに。」
「俺さ、父さんとの約束で、あんまり目立ちたくなくてさ、今日みたいな事続くと困るんだ。」
「う〜ん。私も?」
「うん。」
「なんで?」
愛理は不思議そうにしている。
「さっきみたいに愛理が絡まれると、
俺、困るから。」
「あれは偶然だよ。」
「偶然ぶつかった?」
「うん。」
「偶然ぶつかった相手を、誘うか?
因縁付けるなら、普通は土下座しろとか、金出せとかじゃない?
多分あいつはわざとぶつかったんだよ。」
「なんで?」
愛理はとぼけている様だ。
「ブツブツブツ。」
「真桜くん、聞こえないよ〜。」
「愛理が可愛いすぎるからだよ!」
真桜は投げやりに言った。
「分かった・・・。じゃあこれから、
ダテメガネ買いに行こ?」
愛理はうれしそうに、真桜を誘った。
「うん。行こうか。」
真桜と愛理は、メガネ屋に向かって歩いていた。
「そう言えば、用事ってなんだったの?」
「あ、うん。ごめん。
先に謝罪します・・・授業終わってからお母さんと電話してたんだけど、お父さんの病院行くからっていきなり電話きられたの。
お父さんが入院してるなんて聞いて無かったから、何回もお母さんに電話したんだけど出ないし、心配だし、急いで実家に帰ったんだけど・・・ただのギックリ腰で、1日だけ病院で安静だって〜!
すごい心配したのに、ムカつくから直ぐ帰ってきた!で、寮に戻る途中にあの男に絡まれたの。」
「そっか。なら許す。
お父さん、病気とかじゃなくて良かったな。」
「うん!ありがとう!」
愛理はうれしそうに真桜を見つめた。
二人は、無事にメガネを買い、その場で髪を元に戻し、メガネをかけた。
店員さんは不思議そうに見ていた。
店を出ると、向こうからさっきの男が不機嫌そうに歩いて向かって来る。
「ヤバい!愛理、逃げるぞ!」
真桜は愛理の腕をつかんだ。
「大丈夫。絶対気づかないよ。」
真桜は地味な姿に戻ったのを忘れていた。
ドキドキしながら男とすれ違う。
「おい!どけ!その制服ムカつくんだよ!」
真桜に男はそう吐き捨て、去って行った。
「ね!バレなかったでしょ?」
「うん。やっぱりこのカッコが落ち着くわ〜。」
「ねぇ、真桜くんがさっき言ってたお父さんとの約束って何?」
「あ〜。目立つな。怒るな。ケンカはするな。全力で楽しめ。って言う約束なんだ。」
「えっ?私の高校生活の目標とまったく同じだ!
余談ですが、私はの目標おしとやかに。がプラスされています。」
真桜は口に出さなかったが思った。
(「ケンカするな?」も?)
「そう。じゃあ元に戻して良かったんじゃない?」
「うん。そうだね!真桜くんて実は中学の時ヤンキーだったの?」
「違うよ。でも色々あったから。」
「そっか。私も色々あったな。」
「愛理。
元に戻してくれてありがとな。」
真桜は、愛理にでも過去の事はあまり話したくないと思って、話題を変えた。
「うん。絡まれないからこれもいいよね!」
「愛理の事、俺が守るから。」
「嬉しい!約束ね!」
「うん。約束だ。」
二人は気付いたら寮まで帰って来ていた。
「じゃあ、真桜くん、また明日!」
「うん。また明日!」