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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

耽美

『理想の少年』を造る為に、僕は定期的に部品を(あつ)めている


僕自身も中学に通っているので『少年』と言えなくも無いのかも知れないけど、造ろうとしているのは、もっと綺麗なやつだ



家の裏山には洞窟が在る


僕は幼い頃から、そこに色々ながらくたを溜め込んで秘密基地を作っていた

今でも、或る意味では僕の拠点としてそれは使われている


例えば『少年の作成』とかに




科学は偉大だ


僕は同い歳の子と比較してもかなり力が弱いんだけど、毎週のように少年の死体を手に入れる事が出来ている

金鎚で後頭部を殴れば、ほとんどの生き物は死ぬからだ


運ぶのだって、多少は疲れるけどコツを掴めば楽だ

両脇に腕を差し込んで引き摺ると、自分と同じくらいの躰重の子ならどうにか運ぶ事が出来る


たまに僕は、「科学は、神様が僕の研究を応援する為に用意してくれた物なんじゃないのかな」とすら思っている



「また改造ですか……?」


ベッド代わりに用意したソファに死体を載せて、メスを振るって新しい部品の摘出を行っていると、『作りかけ』が横からぬっと覗き込んできた



「話し掛けないでくれる?」


「偉大な作業の途中なんだけど」


摘出はそこそこ精密な作業だ

実のところ、『作りかけ』も相当な美少年だし好みなのだが、構っている余裕が無かった



「でもそれ、僕の為なんですよね……?」


『作りかけ』が後ろから抱きついてくる

遺憾だが、僕は彼の鼻に後頭部で頭突きすると作業を継続した



「お前はまだ、下睫毛が短い」


「足首にも改善の余地が有るし…」



「もっと美しくしてやりたいんだ」



脂汗を額に浮かべながら、死体の足首にゆっくりとメスで線を引いていく


この時の皮膚切断面がどれだけ綺麗かで、『作りかけ』に継ぎ足した時の繋ぎ目の視かけが相当変わってくる



さっき口に出した通り、僕は彼に何処までも美しくなって欲しかった


僕は「変わり者なのに秀でたものが無い」事のつらさを知っている

僕はそんなのは今更慣れたけど、彼には苦しんで生きて欲しくなかった



「足首よりも、僕は服が欲しいです…」


後ろで、『作りかけ』が鼻を押さえてむくれている声がする


「いつまで僕にお下がりを着せるつもりですか?」




「ま、いつかね」


適当に答えて誤魔化したが、本当はお下がり以外の服を用意するつもりは無い


僕は本当は、弟が欲しかったからだ



「とりあえずこれ、薬液に漬けといてよ」


後ろを視もせずに『作りかけ』に、親指と人差し指で摘んで、さっき摘出した下瞼(しもまぶた)を手渡す



『作りかけ』が近寄ってくる気配のあと───何故か、冷たくて湿った感覚が指を包んだ


「おい、どうした?」と僕は振り向く

『作りかけ』は、あろうことか手渡した下瞼を、仏頂面で不愉快そうに咀嚼していた



「………美味しくないですね」


作業を中断して僕は立ち上がった

そしてそのまま『作りかけ』を殴ろうとして───彼が、真剣な瞳で自分を視詰めている事に気が付いた



「綺麗にしてくれるのは嬉しいんですけど……」


「そんなものより、僕は名前が早く欲しいです」



『作りかけ』が仏頂面のまま言う


「考えてみれば、こいつの為にやってるのにこいつを殴ろうとするのはおかしいな」と思い直すと、僕は握った拳を開いた



「あー…」


「あと……」



『作りかけ』が思案し始める


僕は申し訳無さも手伝って、「次に欲しがったものは本当に与えてやろう」と考え始めていた



「………手がもっと沢山欲しいです」



「それは駄目だ」



却下した


でも、後日それが『僕を沢山抱きしめるため』だと聞いて僕は泣いた

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