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第4話 クオセル・フォーリス

「という訳で、我が家にクオセル様をお迎えすることになった」

「なっ!?」


 翌日、ルーシャの父フルドは我が家にクオセル・フォーリスを連れてきた。


「我が家は広いし部屋もいっぱいある。ルーシャ、構わんだろう……」

「年頃の乙女もいるんですけど……」

「はは、共和国の魔術師様がノイドなんかを変な目で見る訳ないだろう。ルーシャも魔術師を目指しているなら、クオセル様から色々教えていただきなさい」


 フルドはどうせ他の有力者にこのクオセルという若者の世話を押し付けられたんだろう。昔から頼まれると断れない性質なのだ。


「えーと、そういう訳で、俺はクオセル。これからここでお世話になるみたい」


 近くで見るクオセルの顔はなかなかに整っているとルーシャは思ったが、そのやる気のない声と、ボサボサの髪がそれを台無しにしている。


「『みたいって』なによ。あなた、家は宿屋じゃないのよ」

「こら、我らの島を救いに来てくれたお方になんてことを…… すみませんクオセル様。私の教育がなってないものでして……」

「別にいいよ。というか、俺は寝床さえあればどこでもいいから、彼女が嫌だっていうんなら他を当たってもいい」


 クオセルは言葉通り、本当にどうでも良さそうだった。


「嫌とは言ってないわよ…… その驚いただけ。 ……あなたはノイドの家に泊るのは嫌じゃないの?」

「うん? どうして?」

「どうしてって…… だってあなたは共和国本土の生まれで、魔術師だし……」


 てっきりもっと露骨に差別されるのかと思っていたが、一応会話はしてくれている。


「別に、家なんて雨風を凌げればどこでもいいよ。それにここはあんた達の土地だ。あんた達のルールに従うよ」


 そう言って、彼は大きな欠伸をした。ルーシャは彼は別にノイドを下に見ている訳ではなく、単に面倒くさがりなだけだと理解する。


「……いいわ。そういう事なら泊っても」

「そう、ありがとう」


 彼は愛想はないけど、お礼は一応言えるらしかった。


「良かった! ではお部屋に案内しますね」


 クオセルはフルドに連れられて、二階に上がっていった。


「……悪い奴……ではなさそうね」


 実際、ルーシャは魔術や共和国の話など色々聞いておきたかった。それに……あの駆動巨人のことも……


(そう言えば、駆動巨人はどこにあるのかしら)


「ねえ、あなた。駆動巨人はどこに置いているの」


 ルーシャは二階を駆け、部屋を見ていたクオセルに問う。


「うん? 庭に止めさせてもらったよ…… 広いから別にいいでしょ?」

「嘘? あれが庭にあるの?」


 ルーシャは急いで庭に向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「近くで見ると迫力凄いわね……」


 駆動巨人は庭に直立していた。


「魔力のある私なら動かせるかしら?」

「それは無理だよ。この機体・『玖狼くろう』は俺専用だもの。他の魔術師では動かせない」


 いつの間にか、クオセルがルーシャの隣に立っていた。


「うわ! ちょっと、びっくりするじゃない。というか、玖狼というのねこの駆動巨人」

「そう、命名者は俺の魔術の師匠」

「師匠か……」


 ルーシャはルードが魔術の師匠のようなものだった。彼が死に、今は師匠がいない状態だ。


「あと、駆動巨人が欲しけりゃ自分で悪魔と契約するんだね」

「ねえ、現役魔術師さんから見て、私は魔術師になれると思う?」

「うーん…… そうだな…… わかんない」


 クオセルは少し考えこんだ末にそう言った。


「魔力はけっこうな量あるけど…… それで魔術師になれるかどうかは難しいんだよね」

「他にどうすれば?」

「まあ、魔術を勉強するしかないんじゃない?」

「でも、師匠いないのよ…… ねえ、父も言っていたけど、家に泊めてあげる代わりにあなたが師匠になってくれない?」


 その言葉を聞いて、クオセルは露骨に嫌そうな顔をする。


「ちょっと、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない!」

「だって人に教えるのって面倒くさいし…… 第一俺、感覚派だから……」

「もう、ちょっとくらいいいじゃない…… ケチ!」

「えー、じゃあ、暇なときね……」


 仕方ないといった感じでクオセルはルーシャの要請を受け入れた。


「しかし、魔術師なんて別に良いもんでもないよ……」

「そう? でも魔術師になったら島を出られる。私は島から出たいの」

「ふーん、そういうもん?」

「あなただって、しばらくここに住んだら嫌になるわよ」


 島の閉鎖的な環境は本当に息が詰まる。


「それに、鎧殻巨類だって出るわ」

「……たしかに、さっそく出て来たね」

「え?」

「海辺の砂丘の方だ。行ってくる」


 そう言うと、彼は魔術で浮遊すると玖狼の胸に近づき、手を光らせて、胸のハッチを開ける。そして、コックピットに乗り込んだ。


「ちょ、ちょっと!」


 クオセルはルーシャの言葉も聞かず、そのまま玖狼のスラスターを吹かせ、飛翔していった。

 

 



 


 


 



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